海外事業における積極的な情報収集の重要性 —中国国際ビッグデータ産業博覧会の視察報告会で感じた2つの驚き—

情報過多とも言える今の社会において、自らの足を使って積極的に情報収集を行っている日本企業は果たしてどれくらいいるでしょうか。
我々は先日、学生たちが行ったある視察報告会を訪れ、海外事業を展開する上での重要なポイントを再認識するに至りました。
そこで今回は、視察報告会で感じた2つの驚きと、そこから得た気付きについてお伝えします。

一次情報に触れ、自分の目で判断することの重要性

インターネットの発達によってさまざまな情報があふれる現代社会。幸いと言うべきか、日本にいれば積極的に情報を取りに行かずともある程度の情報は得られるようになりました。
しかし、こうした環境に満足して、必要な情報を自分の足で取りに行き、自分の目と耳で判断することを忘れてしまっている人も多いのではないでしょうか?

 
ネットで簡単に手に入るような情報は、あくまでも誰かの手によって編集された二次・三次情報に過ぎません。そういった情報があふれる現代社会において、積極的に一次情報に触れ、その真偽も含めて自ら判断することは非常に重要な価値を持ちます

 
多くの日本企業がこういった当たり前のことを忘れつつある中、我々はある学生たちとの出会いによって、その重要性にあらためて気付かされたのです。

ビッグデータ産業で発展を遂げた貴州省貴陽市

皆さんは、中国・南西部に位置する貴州省という場所をご存知でしょうか?貴州省は中国政府によって選ばれたビッグデータ産業のモデル地区であり、今世界中から大きな注目を集めています。

 
貴州省はもともと中国国内でも過疎化の進んだ貧困層の多い地域でしたが、中国政府が内陸部の経済発展に注力していたことやデータセンターに適した気候であることから、ビッグデータ産業のモデル地区に選ばれました。
現在では省都の貴陽市や新たに設立された貴安新区を中心に、ビッグデータを用いたさまざまな実証実験の場となっています。

貴安新区の都市構想
ビッグデータ交易所 データ取引規格に

特に2015年から貴陽市で開催されている「中国国際ビッグデータ産業博覧会(BIG DATA EXPO)」は、ビッグデータへの関心の高まりと共に国内外から注目を集める一大イベントへと発展しました。2018年には300社を超える企業が出展し、来場者数12万人を超える国家級の博覧会となっています。

 
そして我々は今回、2019年5月末に開催された「2019年中国国際ビッグデータ産業博覧会」を視察した学生たちの報告会を訪れ、そこでさまざまな驚きと出会いました。

 
参考:中国貴州BIG DATA EXPO視察報告会&Meetup

中国の驚異的なスピード感と実行力

報告会を見てまず驚いたのは、中国の圧倒的なスピード感です。彼らは現状に対する不満があればすぐに改善策を立てて実証実験に取り組み、トライアンドエラーを素早く繰り返していきます。
その一例が、最近は日本でもたびたび名前を聞くようになった「社会信用システム」です。現在、中国では国民の社会的な信用度を数値化し、信用スコアのランクによってさまざまな特典や制限、罰則などを設けるシステムの普及に取り組んでいます。

 
具体的にどういった場面で信用スコアが用いられるかというと、例えば学生の成績と家庭状況を紐づけ、より成績が良く家庭が貧しい学生に対して奨学金を与えるなど、奨学金制度にも応用されています。
また、高速道路の監視カメラで撮影した車を1台ごとに識別し、ディスプレイ上でリアルタイムに「スピード違反やシートベルトを締めていない人は赤く、正常な人は水色に表示されるシステム」なども存在します。赤く表示された人は信用スコアが下がり、違反が続くと罰則として特定地域への出入りを制限されることもあるようです。

社会信用システム 画面
社会信用システム 画面

このようなシステムが本当に必要とされているのか、またどこまで実証されているのかは不明ですが、彼らがこうした理想を描き、圧倒的なスピード感をもって取り組んでいることは確かです。
これに限らず、彼らは「現状をどう変えたら良くなるか?」というアイデアを行動レベルに落とし込むのが早く、翌日にはすでに形が出来上がっていることも多々あります。

 
「100%完璧にできていなくても、とりあえずやってみて後から改善すればいい」という彼らのスタンスは、慎重な日本人にとっては時に危うさを感じるかもしれません。
しかし、日本の場合は検証に長い時間かけて終わった頃には環境が変わってしまっているといった本末転倒なケースも多く、中国の驚異的なスピード感には学ぶべきところがあるのではないでしょうか。

 
参考:中国を変えた”信用格付けシステム”の怖さ

日本と海外の現状を冷静に見極める学生たち

この報告会を見てもう一つ驚いたのは、博覧会の視察に行った日本人学生たちの意識や分析の視点です。
特に香港大学の日本人学生は、「BIGDATA EXPOに出展している企業がビッグデータやAIをどの程度活用しているのか」について見極め、分析する視点に長けていました。

BIG DATA EXPOの主な展示を区分け
報告会イメージ

そして、彼らは「仕事として」ではなく、純粋な知識欲をもって自分の知らない世界を追求している。そういった姿勢にも感銘を受けました。
裏を返せば、学生たちは日本よりも海外(中国)の方がはるかに技術が進んでいる分野があることを素直に認め、わざわざ足を運ぶほどの価値があると考えているということでもあります。

 
かつての日本は海外から技術を学びに来られる側の立場でしたが、今やビッグデータ産業をはじめ、AIや5Gといった最新テクノロジー分野に関しては圧倒的に中国の方が上回っています。
そして、学生たちはこうした現状をきちんと捉え、最新の情報収集先として当たり前のように中国をはじめとした海外を見据えているのです。
もはや「学生だから(若いから)知識や判断力がない」という考えは先入観に過ぎず、彼らは企業も感心するほどの情報量と、冷静に状況を見極める判断力を持っていることが分かりました。

 
翻って考えた時に、日本でこのような事実に気付いている人がどのくらいいるのかは疑問です。学生たちのように旺盛な知識欲を持ち、さまざまな角度から世界を捉え、「最新のものはどこにあるのか」という感度を持って情報収集ができているでしょうか?
特にグローバルな視点で事業を広げていく際には、正しい情報に触れることできちんと現状を把握し、他のアジア各国同様、早急に次の打ち手を考えて行動していかなければなりません。

 
今回の視察報告会を経て、これまで海外現地で一次情報に触れてきた我々もその必要性を再認識し、今後もビジネスを正しく、早く、確実に進めていくための道筋を示していかなければならないとあらためて感じました。


【参考サイト】
【号外】中国のビッグデータシティ「貴陽」が凄いことになっている!貴陽ビッグデータEXPOツアー開催
https://whitehole.asia/2019/03/18/sz_bigdata-6/

貴州省貴陽市・貴安新区 現地レポート
https://www.idec.or.jp/shanghai/report09.php

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