COVID-19(コロナショック)によって変化するフィリピン人の購買行動

世界中で、新型コロナウイルス(Covid-19)が猛威を振るい、欧米やブラジルでは感染者、死者ともに非常に多くの人数を記録しています。

日本にいると、国内の感染状況についてのニュース、世界でも一段と感染が拡大している国の情報くらいしかニュースで取り上げていません。

しかし、日本企業の進出も著しく、多くの邦人も滞在する東南アジアのフィリピンやインドネシアでも多人口、密集といった面から感染拡大が深刻な状況となっています。

それにも関わらず、あまり日本では大々的に取り上げておらず、自ら検索エンジンなどで調べないと現地の情報が得られないといった状況になっています。

今回はフィリピンに焦点を当て、コロナウイルス感染の現状と、それに伴う人々の購買行動についてお伝えしていきます。

フィリピンのCovid-19対策・政府の対応

6月29日時点で、フィリピンの新型コロナウイルスによる感染状況を見てみると、感染者は約3万5400人、死者は約1250人となっています。

2020年初旬~4月

世界的にコロナウイルスの危険性が騒がれ始めた1月下旬、フィリピンでは初となるコロナの感染者が確認されました。

その男性は数日前まで武漢に滞在していた中国人患者であることがわかり、翌日には中国湖北省からの渡航を禁止、2月2日には中国本土や香港、マカオからの渡航者も入国禁止措置を下しました。

2月中旬には台湾からの渡航者も入国を禁止するといった、世界の国々よりもいち早く厳格な体制を敷いたフィリピンですが、対策の比較的緩い日本よりも感染者、死者ともに多いのが現状となっています。

3月15日からマニラがロックダウンされ始め、セブやそのほか主要都市も同じ状況になりました。

依然として感染が収まらない現状から、周辺国がロックダウンなどの隔離規制を緩和している中、フィリピンではなかなか解除できない状況となりました。

実際3月15日にマニラがロックダウンされるにあたっては、3日前にSNSなどのメディア上で政府がマニラのロックダウンを15日から行うことを正式に発表したとアナウンスされました。

しかし、そのほかの都市では地方政府の急な判断により、アナウンスなしの突然のロックダウンが行われた地域もありました。

アナウンスよりも前に、バスや船、飛行機の運航停止措置が取られ、国内線しか便が通っていない都市では、在比外国人が取り残されてしまうといったケースも出ていました。

2020年6月~

6月に入ってから、国内線・国際線とも運航を再開する動きが出ており、外出・移動制限措置が緩和されました。

国内線の運航が再開されるようになったにも関わらず、マニラから地方都市へ向かう便が直前に欠航になり、空港に混乱した乗客があふれかえるという事態も出ています。

これは地方政府による対応が地域で異なっているために生じた問題とされていますが、未だフィリピン国内ではスムーズかつ自由に移動をすることができません。

3月中旬のロックダウン

フィリピン政府は、3月の中旬ごろから、各地域でロックダウン体制を敷き、食料品を買いに出かける場合以外の外出を原則として禁止しました。

ドラッグストアや食料品店、水や電気といったエネルギー分野における生活必需施設の営業のみ認め、それ以外の施設は営業を停止するようにしました。

また、各家庭から一人だけ生活に必要なものを買うための外出許可が出され、それ以外の家族は家の外へ出てはいけないことになりました。

その外出できる年齢にも制限があり、20歳以上の成人であることが必須条件であるため、遊び盛りな子どもは長期間外へ出られません。

食料品などあらゆる製品を中国からの輸入に依存している傾向が強いため、ロックダウンに伴い、食料の調達にも影響が出ると懸念した人々は、スーパーマーケットで大量買いをするなど、日本のトイレットペーパー騒動と同じような事態が起きていたところもあります。

こうした食糧確保での問題、経済循環が滞った影響から収入が激減してしまったことで食糧すら買うことができなくなった人々のために政府は1家族2~3週間で5㎏の米を配給する対策を取りました。

しかしながら、フィリピンは親戚一同同じ家に住んでいるため、世帯人数が多く、2.3週間にたった5㎏の配給米では足りないのが事実です。

また、きれいな人口ピラミッド型であることからもわかるようにフィリピンには食べ盛りの子どもの数が多いため、こうした点からも食糧不足が問題となっています。

実際に飢えに苦しむ人々による抗議デモが、外出禁止の法令を破ってまでも行われているケースがあります。

貧困層では周りの人々と支え合って生活をしている人が多いため、より世帯人数が多い傾向があります。

国内外の慈善団体が食料品の寄付を謳っているところもある状態でコロナの感染が収まらず、移動規制も完全に緩和されないので問題がより深刻化していっています。

フィリピン人が元の職に就けない、故郷に戻れず待機している様子

ドゥテルテ大統領は封鎖当初、マニラが位置するルソン島全域において封鎖機関の食料供給は十分であると強調していましたが、ルソン島だけでなくその他フィリピン全土において不足する事態になってしまいました。

フィリピンではIT化、インフラ整備も遅れており、テレワークによる労働体制の変更が厳しい状態です。

パソコンを持っていない人も多く、持っていたとしても家族全員がケータイを家の中で使い、接続が悪くなってしまう問題もあります。

収入を確保できない人々が増え、食料を買えない、そして政府も財源を使い切ってしまったことでこれ以上供給できるものがないとし、食料配給は1か月以上前の5月中旬ごろに終了しています。

国民の収入について

国際通貨基金(IMF)が行った2020年4月の経済成長率で見ると、フィリピンは前年比0.6%増と横ばいの結果となりました。

しかし、国民のうちおよそ半数が収入が減ったと回答しました。

また、フィリピン労働雇用省(DOLE)は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、4月24日時点で失業者が140万人を超えたと報告しました。

失業者を地域別にみてみると、マニラ首都圏が68万7,634人、中部ルソン地域が28万1,278人、ダバオ地域が20万7,789人、カラバルソン地域は15万8,646人、北ミンダナオ地域は10万6,162人、イロコス地域8万8,531人、中部ビサヤ地域(

セブ島など)が8万6,767人、ミマロパ地域7万4,533人、西ビサヤ地域は6万5,892人となっています。

人口の割合でマニラ首都圏が一番多くなっていますが、地方都市でも特に海に面している地域では、リゾート地で有名なセブ島など、観光業でダイビングショップを運営していた人々、船員として働いていた人々などが職を失っています。

フィリピン観光省は、2020年1月~5月で新型コロナウィルス(Covid-19)の影響で外国からの旅行者が激減、観光収入も61%となったと発表しています。

その金額は810億ペソ、約1,780億円に相当する値です。外国からの観光客数は、前年同期の349万人から62.21%減り、130万人という結果が出ました。

しかし、これは観光目的で入国した人ではありません。

3月22日以降、ビザの発給を停止しているため、実質ゼロです。

フィリピンは海が綺麗なスポットが沢山あり、海外からの観光客のなかでも中国人を受け入れて生計を立てていた人々が多かったため、コロナ休業、失業によって現在収入がゼロになっています。

また、この外出・移動制限措置により、マニラ首都圏の都市高速鉄道(MRT)3号線と軽量軌道交通(LRT)2号線で、合計5億ペソ(約11億円)を超える収入が減っていることが確認されました。

フィリピン現地の購買行動の変化

外出禁止、食料用品やドラッグストア以外の店は営業禁止となったことで著しく変わった購買行動は、外食の激減です。

詳しくは、ショッピングモール、多くの飲食店や教会、その他の宗教的サービス、レジャー施設が営業を禁止され、許可されたのは、食料雑貨店、薬局、銀行、一部の飲食店に限定されました。

上記にも記載されている通り、ひと家庭から一人しか外出できないため、食料を買い、家で調理する機会が増えました。

食料品やスーパーマーケットの利益率は向上していますが、イートインやテイクアウトで利益を上げてきたジョリビー(Jollibee)やマクドナルド・フィリピン、ケンタッキーフライドチキン(KFC)・フィリピンなどのファストフード店は苦しい状況に立たされています。

ファストフード文化が浸透するフィリピンでは、外出制限中店舗が休業し、人々も家族で外食に行くことが無くなりました。

また、この影響でフィリピン国内の外食最大手ジョリビー・フーズ(JFC)が発表した2020年の1~3月期における連結決算は最終損失が17億9,200万ペソ(約38億円相当)となり、前年同期の14億6,100万ペソの黒字から赤字に転落しました。

フィリピンだけでなく、アメリカや中国にも店舗を進出させているジョリビーですが、展開先の地域でも同じような外出禁止状態であったため、打撃が大きくなりました。

しかし、フィリピンで使われている宅配フードサービスのfood panda やGrab Foodといったアプリ機能付きサービスとの連携を強化し、コロナに対応した形で営業を行う方向です。

GrabFood

今後、4〜6月期にはさらなる赤字が見込まれていますが、ジョリビーはコロナ収束後の消費行動の変化を見据えて、国内外の事業を見直す方針でおよそ70億ペソを投資する予定です。

Covid-19対策に対応し、こうした食料品だけでなく、その他生活必需品のオンラインショップでの購入も増えています。Eコマース(電子取引)の市場が今後も拡大していく傾向が伺えます。

食料品、観光市場では現在利益がマイナスになっていますが、唯一フィリピン国内で活気を見せている市場があります。

それは、不動産業界です。

コロナのこうした影響で、フィリピン経済が打撃を受けていることで、不動産価格が高騰しています。

国内の不動産会社が資金繰りのために保有している物件を売却せざるを得ない状況になる可能性があるため、ビジネス上、フィリピン国内に大きな影響力を持つ中国企業は投資の好機とみて、多くの中国人投資家が買いに走っています。

まとめ

これまで、フィリピンの新型コロナウイルスによって、生活面で様々な移動制限がかけられる現状をお伝えしました。

そして、それを踏まえた上で、現在フィリピン人の購買行動、市場はどのような状況になっているのかを見ていきました。

食料雑貨店が店舗での営業を再開できないことから、オンラインショップでの販売に切り替えていくことが、withコロナの時代に欠かせない大切な対策と言えます。

今後も戦略次第で、好転させることができる市場を見極めてビジネスを拡大させていくことがAfterコロナ時代に繋がる重要なポイントとなってくるでしょう。

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