コロナ米中対立と激化する貿易摩擦、GAFAM / GAFA vs BATH

数十万人の命を奪い、世界経済に大打撃を与えている新型コロナウイルス。当初トランプ大統領は中国との対立をせずに、新型コロナの封じ込めをしようとしていました。

しかし、米国におけるコロナウイルスが原因での死者は中国を超えました。また、中国による「アメリカ犯人説」をきっかけに米中は対立をますます深めています。2020年5月15日、トランプ大統領は中国に対する関税の引き上げを行いましたがこのことは新しい「冷戦」と言われています。

そもそもコロナウイルス感染拡大以前からアメリカの中国への締め付けには、壮絶な戦いがありました。

アメリカと中国にはどのような貿易摩擦があったのでしょうか。

この記事では、ビフォーコロナから続いていた米中の貿易摩擦、「GAFAM vs BATH」による米中メガ企業の覇権争い、この2つの対立についてまとめました。

米中貿易摩擦

米中貿易摩擦

摩擦の発端

米中貿易摩擦の発端となった企業は、ファーウェイです。そのいきさつを時系列で見てみましょう。

・2000年:ファーウェイは中国市場に入り、米企業と連携を開始。しかし、「ソースコード盗難」疑惑事件により訴訟問題へと発展。

・2009年:米国家安全保障局が任正非(ファーウェイのCEO)に対するスパイ工作、内部文書や周囲の順物とのやりとり調査、動向監視していたことがが判明。

・2012年:米連邦議会はファーウェイと「ZTE」(中国の通信機器大手)は米国の安全保障への脅威であると主張し、米企業に対してこの2社の製品を使用しないように促す。

・2014年:ファーウェイ側はアメリカによる疑惑を全面否定してきたが、米政府は正式に政府機関でファーウェイ製品の使用を禁止。

・2018年11月:トランプ政権が中国の通信機器大手ファーウェイへの締め付けを強化したことが大きなニュースとなる。

※コロナウイルス感染拡大後の2020年5月、更に関税を引き上げました。

中国製造2025への圧力

「中国製造2025」というプロジェクトは、「国の現状に立脚し3ステップで製造強国になる」という戦略目標です。

中国製造2025のマイルストーン
中国製造2025のマイルストーン

※中国情報化部のHPより

  • 第一段階:2025年までに製造強国の仲間入りを果たす
  • 第二段階:2035年までに製造強国の中位レベルに到達する
  • 第三段階:建国100周年の2049年までに製造強国の先頭グループに入る

9大戦略目標の展開

  1. 国家の製造業イノベーション能力の向上
  2. 情報化と産業化のさらなる融合
  3. 産業の基礎能力の強化
  4. 品質・ブランド力の強化
  5. グリーン製造の全面的推進
  6. 重点分野における飛躍的発展の実現
  7. 製造業の構造調整のさらなる推進
  8. サービス型製造と生産者向けサービス業の発展促進
  9. 製造業の国際化発展レベルの向上

10大重点産業分野

ハイエンド設備、新材料、バイオ医療などの戦略的分野に各種の社会資源を集積させることで、強い産業を作ることを目標としています。

  1. 次世代情報通信分野
  2. 先端デジタル制御工作機械とロボット
  3. 航空・宇宙設備
  4. 海洋建設機械・ハイテク船舶
  5. 先進軌道交通整備
  6. 省エネ・新エネルギー自動車
  7. 電力設備
  8. 農業用機械設備
  9. 新材料
  10. バイオ医療・高性能医療器械

アメリカは「中国製造2025」において中国が産業政策を通じて不公正な補助金で対象産業の過剰な生産能力を伸ばすこのサポート体制を批判し始めました。

米国の制裁措置案は、この「中国製造2025」をターゲットとしたとも言われています。

2014 年、ついにトランプ政権は中国のGDPがはアメリカの60 %を超え、2020 年代の後半にはアメリカを追い抜きかねない中国に対して「中国製造2025」の撤回を求めました。

その後も米中間には巨額な貿易不均衡が生じてきました。

米中間での議論は難航し、米国は一方的な貿易制裁措置という極端な方法で中国に迫っているものの、中国も対抗措置を発表。2018年4月には、米通商は部品輸出を禁ずる措置を取りました。

トランプ大統領と習近平国家主席

アメリカの対中関税引き上げ強化

「米中貿易摩擦」という言葉は2018年頃から経済ニュースでよく耳にするようになったのではないでしょうか。

トランプ大統領はアメリカ国内の雇用を確保するために他国の製品に関税をかけて商品の値上げをさせて、自国の製品が売れるように促しました。

その後トランプ政権は次々と中国製品に対して関税や関税引き上げを行います。

中国もアメリカからの輸入品に関税をかけるなどし報復措置で対抗。米中は泥沼合戦に突入します。

「中国製造2025」、米中ハイテク覇権争い、関税引き上げ。

これらにコロナウイルス感染拡大の未曽有の問題が加わり、2020年5月、トランプ大統領は更に関税を引き上げました。

GAFAM vs BATH

GAFAMとは

アメリカのグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)の頭文字を取ってGAFA(読み方:ガーファ)とまとめて呼ばれます。

最近ではGAFAにマイクロソフト(Microsoft)を追加してGAFAM(読み方:ガーファム)と呼ぶ方もいらっしゃいます。

それに対して、中国の百度(バイドゥ Baidu)、阿里巴巴集団(アリババ  Alibaba)、騰訊(テンセント Tencent)、華為技術(ファーウェイ Huawei)の頭文字を取ってBATH(読み方:バス)と名付けられています。

GAFAMもBATHもハイテクIT関連企業です。

  • G:グーグル(Google)
  • A:アマゾン(Amazon)
  • A:アップル(Apple)
  • F:フェイスブック(Facebook)
  • M:マイクロソフト(Microsoft)
  • B:バイドゥ(Baidu))
  • A:アリババ(Alibaba)
  • T:テンセント(Tencent)
  • H:ファーウェイ(Huawei)

GAFAのほかにも、FAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Google)などの呼び方もあるようです。

GAFAの事業内容

GAFAの事業内容を見ていきましょう。

・G:グーグル(Google)

米国発の検索エンジン最大手サービスを展開する多国籍企業となります。

検索エンジンから派生して、GmailやGoogleドライブ・Googleカレンダー・Google Analytics・Google ConsoleなどWebブラウザ上で使用できる様々な製品をリリースしています。

YOUTUBEもGoogleが買収してGoogleがオーナーとなります。

広告収入のほかにもGoogle Cloud Platform(通称GCP)などのクラウドサービスも展開しています。

・A:アマゾン(Amazon)

米国発の多国籍IT企業およびECサービス企業となります。

日本でも大きく浸透しており、消費者向けのE-コマースは勿論のこと、E-コマースから派生したAWS(Amazon Web Service)というクラウドサービスも展開しています。

・F:フェイスブック(Facebook)

米国発のSNSサービスとなります。

日本では少しユーザー離れが進んでいる印象がありますが、根強いSNSとなります。

収益はFacebook広告となります。

・M:マイクロソフト(Microsoft)

ご存じ有名のマイクロソフトとなります。

エンタープライズ製品としての王者であり、Windowsブランドのオフィス製品は勿論のこと、Azureなどのクラウドサービスも展開しています。

リモートソリューションにも力を入れており、Skypeを買収し、Teamsという会議システムなども展開しています。

BATHの事業内容

中国のBATHがそれぞれどんな事業を行っているか、詳しく見てみましょう。

・B:バイドゥ(Baidu))

中国版のGoogleとも呼ばれ、最も中国で利用されている検索エンジンです。

音声アシスタントや自動運転技術も取り入れ、「複雑な世界をシンプルにする」ことを目的としています。

・A:アリババ(Alibaba)

アリババは「世界一のEC企業」と呼ばれています。海外バイヤーとの取引を希望する中国企業が登録しています。

マーケットプレイスはBtoBだけではなく、BtoC、CtoCまで対応しています。

・T:テンセント(Tencent)

テンセントはSNSサービス「WeChat」を運営しています。また、ゲーム事業も行っており、「世界最大のゲーム・アプリ会社」の名を持っています。

・H:ファーウェイ(Huawei)

日本でも以前ファーウェイの携帯電話をよく見かけた方も多いのではないでしょうか。

通信事業者向けネットワーク事業、法人向けICTソリューション事業、端末事業を展開しています。

GAFAとBATHの時価総額

GAFAとBATHの2018年1月末時点の時価総額は下記の順位でした。

テンセント、フェイスブック、アリババの時価総額がほどんど変わらないことが見てとれます。

GAFAM vs BATHの時価総額
GAFAM vs BATHの時価総額

2018年1月31日時点。単位は百万米ドル

中国新興企業の正体 (角川新書) (日本語) 新書 – 2018/4/7 沈 才彬

次に、コロナ前とコロナ後を比較するために、2020年1月と2020年4月の「世界時価総額ランキング」を比較してみましょう。

(出典:https://www.180.co.jp/world_etf_adr/adr/ranking.html)

【2019年1月】単位は百万米ドル

2019年1月_時価総額ランキング
2019年1月_時価総額ランキング

中国のアリババグループの研究機関アリババDAMO アカデミーはCT画像解析ソリューションのアルゴリズムを用い、中国で新型コロナウイルスに感染した5000件のCTスキャンデータを使用し、アルゴリズムで様々な肺炎の確率を予測し医師の診断を支援していくためのサービスを開始しました。

2020年3月27日、株式会社日本ブレーンはこのアリババの技術を活用し、CT(コンピューター断層撮影装置)画像によって新型コロナウイルス感染症の分析をするクラウドシステムを開発しました。新型コロナウイルス感染症の研究を希望する病院は、感染の疑いのある患者のCTスキャン画像をアップロードすると分析結果が得られるというものです。

アリババはこの他新型コロナウイルスに全社を挙げて戦った記録をレポート「DIGITAL ACTION FOR ENTREPRENEURS IN THE AGE OF COVID-19」としてまとめ、公開しています。アリババや関連企業が実際にとった対応を元に、「今取るべきデジタル・アクション」が紹介されており、このレポートは今後中国企業だけでなく世界から必要とされる貴重なものとなるでしょう。

コロナウイルス感染拡大後、アリババが2ヶ月の間に8位から6位に浮上しているのは中国を始め世界に広がるコロナウイルス感染拡大阻止に一役を買っているからと見ることもできるでしょう。

米中貿易摩擦による影響が出始めた

2018年3月22日、トランプ大統領は中国製品に対して追加関税措置を発表しました。

これを皮切りに米中貿易摩擦が始まと冒頭でお伝えしましたが、その結果米国と中国の企業には株価に大きな影響が出ているとIMFの調査で明らかになっています。

韓国への影響

韓国は米国の追加関税措置によっては直接的影響は回避したと言われています。

しかし、米中摩擦のきっかけとなったん半導体においては韓国経済に大きなマイナスを与えました。

韓国の輸出の約2割を占める半導体市場。2019年以降スマートフォン、基地局、データセンター向けに大幅需要が見込まれましたが、アメリカが5G関連において世界市場で圧倒的競争力を持つファーウェイなどの中国企業に対し禁輸措置を加えた後、半導体市場が過剰在庫に転じ市況が悪化しました。

アメリカのスマートフォン市場でサムスンやLGは「漁夫の利」を得るとみられていましたが、実際はそうはいきませんでした。

収益を半導体に大きく依存するサムスンは、半導体価格の下落と在庫調整による販売量の減少により2019年7~9月期は売り上げは前年同期比5%減、営業利益は同56%減となり、大幅に落ち込みました。

日本への影響

米中の貿易摩擦は、日本企業への影響としては数値で明らかになっていませんでした。

しかし、コロナウイルス感染拡大が続く中、中国に生産拠点を構える自動車産業では少しずつ数値になって影響が出始めました。

コロナウイルスにより日に日に米中対立を深める今日、米中貿易摩擦も近い将来日本への影響してくるでしょう。

この場合も特に自動車業界が懸念されています。

米中貿易摩擦とコロナウイルスの拡大により米中の関係がますます悪化すれば、米国経済の悪化し、米輸出依存度の高い日本の自動車産業が、アメリカに輸入課税を引き上げられることも考えられます。

アフターコロナもまだまだ続く米中貿易摩擦。しかし、日米間にもまだまだ貿易摩擦が残っていることも忘れてはなりません。

さいごに

米中貿易摩擦の影響がこれから日本に出始めることを考えると、米国寄りの日本は板挟み状態になってしまうことが目に見えています。

特に日本の自動車産業を始めとし、日本の製造産業は今までの方法では収益が上げるのが難しくなるでしょう。

ターニングポイントが強いられることを踏まえての対策が必要となってくるでしょう。

参考

https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2018/2018-5-1.html

https://wired.jp/2020/02/14/huawei-backdoors-us-crypto-ag/

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/publication/kinyu_itf/2018/09/itf_201809_3.pdf?la=ja-JP&hash=E498D1952A3A256DF8C944264926EC49C759774A

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