インド三大財閥とは?Tata Group/Reliance Group/Birla Group

インドの2022年のGDP(国内総生産)は3兆3,851億ドルで世界5位でした。また数年後には5兆ドルを突破するとみられており、日本とドイツを抜き世界3位に浮上すると考えられています。

そのため、成長の著しいインドでビジネスチャンスを掴もうと考えている方も多いでしょう。

本記事ではそのような方に向けて、インドに進出する前に押さえておくべきインド三大財閥について紹介します。

インド三大財閥とは?

インド三大財閥とは、具体的に以下のグループのことです。

  • Tata Group(タタ・グループ)
  • Reliance Group(リライアンス・グループ)
  • Birla Group(ビルラ・グループ)

これらは一族経営により巨大化したグループで、インド経済への影響力が強く、あらゆる産業に進出しています。各分野の企業を傘下に収めているため、インドでビジネスを展開する際は、取引企業や競合企業として関わることになるでしょう。

そのためインドに進出する際は、基礎知識としてインド三大財閥について把握しておくことが重要です。

Tata Group(タタ・グループ)

出典:タタ・グループ

タタ・グループは150年以上前に発足した、インド西部のムンバイを拠点とする世界有数のコングロマリット(複合企業)です。ここではタタ・グループの概要・歴史・中核事業について紹介します。

タタ・グループの概要

タタ・グループは、ジャムシェトジー・タタが1868年に設立した綿貿易会社を始まりとする財閥です。現在では10業種の主要企業30社でグループが構成されており、100社以上の子会社を有しています。総従業員数は93万人以上で、100カ国以上で事業を展開しています。

日本の代表的な企業であるトヨタ・グループの従業員数は37万人であることから、タタ・グループの大きさがわかるでしょう。

タタ・グループが展開している事業はITや鉄鋼、自動車、ホテル、紅茶など多岐にわたります。2021年度のグループの売上高は1,280億ドルでした。

タタ・グループの歴史

タタ・グループの歴史は、ジャムシェトジー・タタの設立した綿貿易会社が始まりです。ジャムシェトジー・タタは、「インド産業の父」と呼ばれるほどに綿事業で成功を収めました。

そのジャムシェトジー・タタの信念は、産業を興し社会貢献することでした。後継者もその信念を引き継ぎ、次々に事業を拡大する戦略をとっています。その戦略は現在も同様で、2000年にはロンドンの紅茶メーカー、2007年には鋼鉄メーカー、2008年にはアメリカのフォードモーター傘下のジャガーとランドローバーを買収しました。

このような企業理念・経営戦略により、現在では鉄鋼・電気・自動車・IT・ホテル・紅茶など、10事業を展開するまでに至っています。

タタ・グループの中核事業 

タタ・グループの中核事業はIT・自動車・鉄鋼・電力です。中核事業を担う4つの関連企業について簡単に紹介します。

・タタ・コンサルタンシー・サービシズ(Tata Consultancy Services)

タタ・コンサルタンシー・サービシズは、インドのムンバイに本社を置くITサービス企業です。ITサービス・コンサルティング・ビジネスソリューションの提供が事業内容となります。従業員数は61万人で、2023年の売上高は279億ドルでした。

・タタ・モーターズ(Tata Motors)

タタ・モーターズはインド最大の自動車会社で、先述したようにジャガーやランドローバーの親会社でもあります。2009年には約20万円台で購入できる世界最安車の「ナノ」を発表し、世界を驚かせました。

・タタ・スチール(Tata Steel)

タタ・スチールは1907年に設立された製鉄企業です。2007年にイギリス・オランダのコーラス社を買収したことで、世界有数の製鉄企業に急成長しました。

・タタ・パワー(Tata Power)

タタ・パワーは100年以上の歴史を持つ総合電力会社です。発電・送電・配電などの事業を展開しています。インドのインフラ整備に長年貢献しており、現在はムンバイにEV充電ポイントを1,000カ所設置するなど、グリーンエネルギーの推進にも力を入れています。

Reliance Group(リライアンス・グループ)

出典:Reliance Industries Limited

リライアンス・グループは、ディルバイ・アンバニが一代で築いた財閥です。ここではリライアンス・グループの概要・歴史・中核事業について紹介します。

リライアンス・グループの概要

リライアンス・グループは現在、リライアンス・インダストリーズとリライアンス・ADA・グループで構成されています。各社の概要は以下のとおりです。

・リライアンス・インダストリーズ

リライアンス・インダストリーズは石油やガス開発、バイオテクノロジー、繊維事業を展開するコングロマリットです。従業員数は38万人で、インドで初めて時価総額が2,000億ドルを突破した企業でもあります。

・リライアンス・ADA・グループ

リライアンス・ADA・グループは、金融サービス・通信・電力・不動産などの事業を展開しているコングロマリットです。従業員数は10万人で、年間売上高は93億米ドルを超えています。

リライアンス・グループの歴史

リライアンス・グループは、ディルバイ・アンバニが1958年に設立した貿易会社が始まりです。その後1966年に繊維会社を設立し、事業の拡大に成功しました。さらに石油化学事業に進出することで、インド三大財閥と呼ばれるまでに成長しています。

しかし2002年にディルバイ・アンバニが亡くなると、息子2人による後継問題が勃発しました。

2005年には後継問題により、リライアンス・グループがリライアンス・インダストリーズと、リライアンス・ADA・グループに分裂しました。兄がリライアンス・インダストリーズ、弟がリライアンス・ADA・グループを率いています。

リライアンス・グループの中核事業

リライアンス・グループの各企業の中核事業を紹介します。

・リライアンス・インダストリーズ

リライアンス・インダストリーズの中核事業は石油関連事業です。2022年から5年間で7,500億ルピー(約1兆3,500億円)を石油関連事業に投資し、さらなる事業拡大を目指しています。

参考:JETRO「新興財閥アダ二とリライアンス、新たな投資計画

・リライアンス・ADA・グループ

リライアンス・ADA・グループの中核事業は、リライアンス・インフラストラクチャーが担う電力事業です。リライアンス・インフラストラクチャーの2022年度の売上高は、1,855億ルピー(約3,339億円)で前年比22%増でした。インフラ分野で成長している企業といえます。

Birla Group(ビルラ・グループ)

出典:Aditya Birla Group

ビルラ・グループは、インドのビルラ一族により運営されているインド三大財閥です。現在、ビルラ・グループは複数に分裂しており、その中でも代表的なアディティア・ビルラ・グループについて解説します。

アディティア・ビルラ・グループの概要 

アディティア・ビルラ・グループは、アルミ産業、繊維産業などの事業を展開しているコングロマリットです。40カ国以上で18万人以上の従業員が働いています。また海外売上比率が50%以上で、インド以外でも大きな利益を上げているのが特徴です。

アディティア・ビルラ・グループの歴史

アディティア・ビルラ・グループはシブ・ナラヤン・ビルラが1857年に、繊維の一種であるジュートの事業を興したのが始まりです。1919年には、シブ・ナラヤン・ビルラの孫であるガンシャム・ダス・ビルラがベンガル州のカルカッタに、最初のビルラ・ジュート工場を設立しました。繊維産業以外に機械・自動車などにも進出し大きな成功を収めています。

1969年には、アディティヤ・ヴィクラム・ビルラによりグループ初の海外会社の設立を実現しました。その後も事業拡大を続け、現在では売上高650億ドルの巨大企業にまで成長しています。

アディティア・ビルラ・グループの中核事業

アディティア・ビルラ・グループの中核事業は、アルミ産業と繊維産業です。アルミ産業は傘下企業のヒンダルコ・インダストリーズ、繊維産業はグラシム・インダストリーズが担っています。

インドへ進出するなら三大財閥を押さえておこう

インド三大財閥は多種多様な業種に事業を展開しています。現地での知名度や資金力に優れ、影響力も強いことから、インドへの進出を検討している企業は各財閥について知ることが重要です。とくに同業種の動向については、進出する前に把握することをおすすめします。


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