2023年最新情報!ASEANの経済の現状と見通し 

ASEANの経済は成長を遂げており、世界からも注目される存在です。近年、コロナの影響や中国の経済減速、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻など、世界情勢に大きく影響する事象が多数発生しています。 

経済的リスクも大きくなっていますが、その中でもASEANのGDPは大きく成長中です。そんなASEANの規模拡大や経済成長の背景について、気になる方も多いのではないでしょうか。 

この記事では、ASEAN最新の経済情報から、中国の経済減速やウクライナ情勢がASEANにもたらす影響について深堀りしていきます。日本との関係性についても解説しますので、2023年の最新情報としてお役立てください。 

ASEAN設立背景 

ASEAN(東南アジア諸国連合)は、1967年に「東南アジア諸国が地域としての独自性を確固なものとし、地域の問題を自らの手で解決していくことが、地域の平和と安定に繋がる」との理念に基づき設立されました。 

2023年現在は東南アジア10か国が加盟しています。加盟国一覧は次の通りです。 

  • インドネシア 
  • カンボジア 
  • シンガポール
  • タイ 
  • フィリピン 
  • ブルネイ 
  • ベトナム 
  • マレーシア 
  • ミャンマー 
  • ラオス

ASEAN経済の現状 

ASEANは今後、世界の「開かれた成長センター」となる潜在力があるとされ、世界各国から注目されている存在です。ASEAN総合計の面積は日本の約12倍、人口は約5倍にあたります。アジア圏の中でも大きな基盤を作り上げているASEANの経済状況について、「経済規模」と「経済成長率」の観点から解説します。 

ASEANの経済規模 

2021年のASEAN合計名目GDPは約3兆3,475億米ドルで、日本の約1/3の値でした。世界の合計GDPは約97兆米ドルなので、ASEANのGDPは世界の約3.4%を占めています。 

ASEAN主要5カ国のインドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナム(ASEAN-5)の2022年4〜6月期における実質GDPは、フィリピンを除く4か国で前年比の伸び幅が拡大しました。 

実質GDPの水準は、統計のないベトナムを除き4か国全てで新型コロナ感染拡大前の水準を回復しています。 

ASEANの経済成長率 

2021年のASEAN主要6カ国の経済成長率を高い順にみると、次の通りです。 

国名 成長率 
シンガポール 7.6% 
フィリピン 5.6% 
インドネシア 3.7% 
マレーシア 3.1% 
ベトナム 2.6% 
タイ 1.6% 
引用:JETRO

2021年は、各国でデルタ異変株の完成が拡大しましたが、経済維持と感染抑制の両立を目指す「ウィズ・コロナ」政策をとったシンガポール、フィリピン、インドネシアでは経済成長率が高くなりました。 

各国でコロナに順応に対応する政策をとった結果、2021年第4四半期の各国の成長率は、ASEAN主要6カ国全ての国でプラス成長を遂げています。第3四半期に統計史上初めてマイナスを記録したベトナムは、マイナス6.0%から5.2%のプラス成長となりました。また、同じくマイナス成長だったマレーシアもマイナス4.5%から3.6%に、タイはマイナス0.2%から1.9%にプラス転化する急成長が見られています。 

2022年に入ると、ASEANの経済を牽引するインドネシアは、2022年第3四半期のGDP成長率が前年同期比5.72%とさらなる急成長ぶりをみせました。 

中国経済の減速によるASEANへの影響 

2022年、中国は世界の潮流に逆らって金融・財政政策を緩和しているにもかかわらず、経済全体において減速傾向にありました。世界上位の経済大国として成長してきた中国の経済が縮小傾向となっていることは、世界各国からも注視されています。 

ここでは、中国経済の現状をおさえながら、経済減速がASEANにどのような影響をもたらすのかについて解説します。 

中国経済の現状 

中国の2022年GDP成長率は3.0%で目標の5.5%を大きく下回り、2021年の8.4%から比較すると大幅に減速する結果となりました。経済減速の要因としては、2022年4月から開始された上海ロックダウンなどの「ゼロコロナ政策」の徹底や不動産業の低迷が挙げられます。 

2022年12月からは「ゼロコロナ政策」を緩和し、「ウィズコロナ」とともに2023年を迎えています。中国がゼロコロナ政策を緩和し、今後は景気の高まりが期待できると思いきや、徹底したゼロコロナ政策の急な緩和により国民も困惑状態となりました。感染者は一気に6億人までおよんだことが発表され、2023年2月には春節を迎えることからさらなる感染者拡大が予想されています。これ以上感染者が拡大すれば、経済のさらなる悪化や社会不安にもつながりかねない状況です。 

さらに、中国の経済減速の要因はコロナだけではありません。長い間世界人口のトップを走ってきた中国ですが、一人っ子政策などの影響から今後は人口が縮小傾向になり、経済成長の鈍化にも影響すると見られています。 

ASEANへの影響 

世界の経済を牽引する中国が今後減速傾向にあることで、ASEANにもマイナスの影響があると見られています。中国はASEAN諸国に多額の経済支援をおこなっているため、ASEANにとって大きな存在となっている状況です。今後中国の経済が縮小すれば、ASEAN経済もおのずと縮小傾向になることが予想されています。 

ASEANの経済が成長を遂げている一方で、実際に2022年には中国の景気後退による影響を受けてASEAN各国も成長率の目標値を下げる取り組みが見られました。 

2023年以降、中国のウィズコロナ政策が始まったばかりで今後どのような政策が取られるかは未定ですが、しばらくはASEANを含め世界経済に悪影響がおよぶと予想されます。 

ウクライナ情勢によるASEANへの影響 

ロシアが2022年2月24日にウクライナに攻め込み、戦争が始まりました。今もなおウクライナ市民の犠牲は増え続けており、国際社会からはロシアへの厳しい非難の声が上がっています。このウクライナ情勢の現状を踏まえながら、ASEANにおよぼす影響について解説します。 

ウクライナ情勢の現状 

ロシアのウクライナ侵攻を受け、G7を中心とする先進国は前例のない大規模な経済制裁を導入し、ロシアとの経済・政治関係の見直しを実施しています。 

これを受けて、新興国や途上国はロシアへの経済制裁などの干渉は控える傾向にあり、ロシアとの経済・政治関係には中立的な姿勢を示す国が多いです。しかしASEAN各国ではロシアに対する姿勢が異なっています。シンガポールはロシアに対し批判的であり、カンボジア・ミャンマー・ラオスは中立的立場。また、インドネシア・フィリピン・マレーシア・タイは米中対立の板挟みになりどっちつかずの状況にあります。 

ASEANへの影響 

世界各国でウクライナ情勢への懸念が高まっていますが、ASEANも経済へのマイナス影響を受けています。特にウクライナ情勢がASEANの物流に影響を与えており、タイでは一部の企業で納期の長期化がみられました。 

しかし、シンガポールを除くASEAN各国はロシアに経済制裁するような言及を避けています。なぜならロシアは世界最大の小麦輸出国であり、さらには石油や天然ガスの資源大国なので、経済発展のためにもロシアに頼らざるを得ない部分があるからです。今後もG7を中心とするロシアへの経済制裁が続けば、ASEAN諸国の経済も減速する可能性があります。 

ウクライナ侵攻が発生してから、世界全体でみても減速が続いています。ロシアの孤立化が今後も進んでいく以上、石油や天然ガスの価格も下落に転じていく一方です。ASEAN諸国が今後も経済成長の発展を遂げるために、各国は世界情勢に見合った対策や行動をする必要があります。 

日本とASEANの関係 

日本とASEANは過去40年以上にわたり協力関係を築いているビジネスパートナーとして、アジア太平洋地域の平和と安定を目指してきました。日本はASEANに加入していないものの、多民族多宗教などの弊害を乗り越えてASEAN各国が互いの多様性を尊重しながら世界の平和を目指す姿に強く共感しています。 

ASEANにとっても日本は重要な対話国のひとつであり、経済関係を結んでいる有力な相手です。ここでは、お互い歩み寄って協力してきた日本とASEANの関係性について、「貿易」「投資」「観光」の観点でそれぞれ解説していきます。 

貿易 

2021年、日本におけるASEANとの貿易額は21兆円にもおよび、貿易総額の15%を占めています。反対に、ASEANにとっても日本は重要な貿易相手国であり、2021年には貿易総額の約7%を占める結果となりました。 

かつてはASEANから輸入した原材料を日本が輸入し、製造した製品をASEANへ向けて輸出する流れが主流でした。しかし近年ではASEANからの製品輸入率が大きく伸び、2021年には電気機器、木製品、衣類、服飾品などを中心に、約84%を占めるまでに成長しています。ASEANからの輸入製品は、食料品から家電製品、衣類など、多岐にわたっています。今後も日本とASEANは、お互いに重要な貿易相手として関係性を深めていくでしょう。 

投資 

日本からASEAN諸国への直接投資は近年加速傾向にあり、2021年には中国の約3倍の額がASEANに投資されています。また、ASEAN諸国にとっても日本は投資先として有力であり、2021年の対外投資は米国に次ぐ2位となりました。 

投資事例としては、日本はASEANに向けて政府開発援助(ODA)を通じて援助をおこなってきました。その他にも、インフラ整備や投資環境整備など様々な投資をおこない、ASEANのビジネス拡大に貢献しています。 

また、ASEANは製品の製造拠点として成長しただけではなく、巨大な人口を誇る有力市場としても注目されています。 

観光 

近年、日本とASEAN間における人の往来が増えてきました。日本とASEANは同じアジア圏ということもあり、比較的時差が短いので観光地としても人流が盛んになっていることが挙げられます。コロナ前は年間500万人以上の日本人観光客がASEANを訪れ、経済活性化にも寄与しました。 

また、ASEANからの日本人気は高く、アニメやJ-POPなどの日本文化に興味を持つ留学生も少なくありません。2020年以降はコロナにより一時的に人流が途絶えましたが、日本人気は今後も衰えないと予想され、日本とASEAN間の人の往来は増加していくことでしょう。 

今後の見通し 

ASEANは今後も経済成長が加速していくことが予想されています。ASEANにとって、今後「脱中国」を達成できれば経済力のさらなる促進が期待されるため、サプライチェーン変遷に力を入れていく可能性があります。 

2023年は、日本とASEANが有効協力を結んでから50周年の記念すべき年です。今後は、ポストコロナの成長を見据えた課題解決に努め、持続可能な経済社会をリードしていくことが重要となります。 

これまで作りあげてきた経済成長基盤をもとに、今後も良い「心と心のパートナー」として日本とASEANの関係性を構築していけると良いですね。 

まとめ 

今回はASEANの経済状況と今後の見通しについて解説しました。東南アジア10か国が加盟するASEANは、近年の経済成長率の大幅な伸びと、大きな人口によるマーケティング市場により世界から注目されています。 

コロナや中国の経済減速、ウクライナ情勢など、ASEANの経済を脅かす要因には懸念が必要ですが、今後も総じてゆるやかに経済は成長していく見通しです。また、日本との交流も深く、お互いの経済基盤に欠かせない存在となっています。ASEANに進出する日本企業も数多く存在し、現地に暮らす日本人も増加傾向にあるため、日本にとってASEANの存在は今後も大きくなることでしょう。 

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