課題

クライアントは創業から約60年を迎える老舗企業で、同社の設備設計・施工に係るノウハウは業界内でも評判が高く、国内の医薬品メーカー向けの設備導入でトップシェアを誇っています。国内顧客を主軸に事業成長を遂げてきたものの、国内の医薬品メーカーの設備投資は頭打ちの状況にありました。

そのため海外市場への進出は、中長期的な事業成長に不可欠な状態で、後発薬市場の拡大が著しい中国市場への進出を検討します。

医薬品製造設備は、プラントの設計・調達・施工だけでなく、現地の医薬品製造基準に準拠した設備が必要です。またプラント毎の製造許認可取得（バリデーション）への対応や、納入後のメンテナンス対応等にバリューチェーンを分解することもできます。

これらの特性により日本国内では、初期設計・施工・試運転など包括的な事業を展開していますが、中国では基準準拠や書類作成に関するノウハウ不足しており、まずはプロセス機器販売を行うことにしました。

しかし、中国における設備設計・設備メーカーの情報が入手困難であったことから、機器販売のみでの参入可能性や期待できる市場規模等の推計が難しい状態でした。 そこで、「医薬品製造バリューチェーンに関する知見が豊富」や「同業界におけるネットワークや知見・経験を生かして、事業化へ向けた伴走を行っている」などの強みがある当社に、事業支援を依頼するに至ります。

支援内容

具体的な支援策は以下のとおりです。

1. 中国事業の事業化へ向けた課題整理と検証点の抽出・整理
2. 医薬品メーカー/医薬品向けエンジニアリング会社/各種設備メーカーのリストアップ
3. 医薬品メーカーのエンジニアリング担当者へのアンケート調査
4. 有力エンジニアリング会社へのインタビュー調査
5. 調査結果を基に中国市場進出へ向けた、シナリオ策定及びアクションプランの検討

支援におけるポイントは「中国市場参入に向けたシナリオ策定」にあたり、事業の実現性を定性的に検証するだけではなく、定量的な事業へのインパクトも重視して分析を行ったことです。

他業界と同様に医薬品メーカーにおいても、プラントの設計思想はメーカーにより異なります。机上調査やインタビューを基に、業界バリューチェーンの抽出や参入可能性の検証は可能でしたが、より確度の高い事業戦略には定量的情報を用いた判断が必要だったためです。

そこで市場セグメント別の定量性を担保する目的で、医薬品メーカーのエンジニアを対象としたアンケート調査を実施しました。中国におけるアンケート調査の実施では、以下の3点について注意を払っています。

• アンケートの回答率を低く見積り、期限内に必要なデータ量を収集すること
• 十分な回答が得られるように、多くの打診先を確保すること
• 打診を行うための社内、及び現地人材を確保すること

また支援を行うにあたり、中国の医薬品メーカーという粒度ではなく、「製造品目や外資・内資の違い」や「出荷先が国内・海外か」等、細かな指標を設定したのもポイントです。顧客属性別に市場規模、成長性、採算性を試算することにより、ターゲット見定めの粒度を向上できるためです。

結果

中国市場への進出をサポートした結果、3つの成果を得られました。

• クライアント社内での中国市場参入へ向けた方針固めを行えた
• 現地市場参入へ向け、仕様・品質・コスト等の課題が明らかになり、サプライチェーンの見直しの方向性が固まった
• 現地進出へ向け、必要な事業パートナーのイメージが具現化され、現地パートナーへ求める機能・役割が明確化された

今後は中国市場参入へ向け、抽出された課題の解決や国内外での事業推進を行います。またクライアントから中国事業の支援結果が評価され、現在、他国での市場参入支援も依頼されています。

今回の事業支援に取り組んだことで、市場性検証は「定量的」「定性的」な評価の両面で行うべきであると改めて実感しました。また国内の事業モデル・製品を横展開するだけでなく、業界バリューチェーンの中で価値を発揮すべき点を柔軟に検討することで、市場参入への糸口がつかめるといえるでしょう。

今回の事例は、PROVEの以下の強みを示せたケースといえます。

• 医薬品業界の知見・ノウハウなど、業界ならではの前提条件を理解していたこと
• 事業化へ向けた課題抽出と課題解決のためのリサーチ・分析のノウハウがあること
• 中国国内でネットワークを有していること