
2025年は、米国の相互関税や地政学リスクが重なり、世界経済が大きく揺れ動いた1年でした。そこで本記事では、主要な国際ニュースを手がかりに、2025年の世界情勢・経済・産業のトレンドをわかりやすく整理します。海外のビジネス環境にどのような影響があったのか、どの領域にチャンスが生まれたのかの総まとめです。
トランプ大統領就任と相互関税の発動
1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代米国大統領に就任しました。同氏は、米国の貿易赤字を「国家の緊急事態」と位置づけ、4月には輸入品に関税を課す政策を発表。さらに、貿易赤字国に対してはより高い「相互関税」を課すことを宣言し、各国との交渉を本格化しました。
この政策により国際貿易に混乱が生じ、企業は生産拠点の移転や調達先の変更といったサプライチェーンの見直しを余儀なくされました。
このように相互関税は、国際貿易に混乱をもたらし、世界経済全体を下押しする要因となっています。
世界で懸念される地政学リスクの動向
2025年は、世界各地で地政学リスクが一段と高まった年でした。その中でも、特に世界経済に影響を及ぼしているのは、ウクライナ・ロシア戦争とイスラエル・ハマス戦争です。ここでは、2つの戦争の現状に加え、新たに表面化した地政学リスクについて紹介します。
イスラエル・ハマス|停戦合意後も続く先行き不透明感
10月9日、イスラエルとハマスは米国の和平案を受け入れ、停戦に合意しました。この合意により、ガザで拘束されていたイスラエル人の人質は解放され、イスラエル軍もガザ地区の一部から撤退する方針が示されました。
しかし、停戦後も各地で犠牲者の報告が続いており、先行きは依然として不透明です。停戦合意が確実に履行され、終戦へと向かうのかに国際社会の関心が高まっています。
イスラエルとハマスが対立する中東は、産油国が集中する地域です。同地域で地政学リスクが高まると原油価格が不安定になることから、この紛争は世界経済にも大きな影響を与えています。
ウクライナ・ロシア|米国の和平案が左右する戦局
2022年2月に始まったウクライナとロシアの戦争は、2025年11月現在、重大な転換点を迎えています。米国はウクライナに対して和平案を提示し、その回答期限を11月27日に設定したためです。提示された和平案にはロシアへの領土割譲が含まれており、ウクライナや欧州からは「ロシア寄り」との批判も出ています。
これに対して、ゼレンスキー大統領は和平案を拒否した場合、米国からの軍事支援を失う可能性があることを示唆しました。
和平案を受け入れれば、戦争終結への道が開ける一方、領土割譲を容認することはウクライナ国内で強い反発が予想されます。逆に拒否すれば、米国の支援縮小によって戦況の悪化や戦火がさらに広がることも否定できません。
この決断は、ウクライナの運命を決めるだけでなく、欧州の安全保障体制や世界経済に大きな影響を与える重大な分岐点となっています。
ポーランド・ロシア|地政学リスクの顕在化
ウクライナが重大な岐路に立たされる一方で、その緊張は周辺国にも広がり、欧州全体の地政学リスクを高めています。中でも深刻なのは、ポーランドとロシアの対立です。
11月16日、ポーランド東部の鉄道線路が爆破される事件が発生しました。ポーランド政府はロシア情報機関が関与した可能性が高いとして、ロシア総領事館の閉鎖を決定。ポーランド軍の最高司令官が「ロシアはポーランドとの戦争に向けた準備を開始した」と発言したことも報じられており、この発言は両国の対立が激化していることを示しています。
加えて、ポーランドはNATO(北大西洋条約機構)加盟国です。そのため、両国の対立が軍事衝突へ発展すれば、NATOを巻き込み、欧州全体に戦争が拡大するリスクがあります。このようにポーランド・ロシアの対立は、世界経済にとっても無視できない地政学リスクの一つとなっています。
高市首相の台湾発言による日中関係
世界各地で地政学リスクが高まる中、日本でも日中関係の悪化が深刻化しており、国内企業にとって看過できない状況となっています。そのきっかけは、11月7日に高市首相が台湾有事を念頭にしたあるケースにおいて、「存立危機事態」に該当する可能性を示したことです。※存立危機事態とは、日本が直接攻撃を受けていなくても日本の存立が脅かされる事態を指し、集団的自衛権を行使するための要件の一つです。
この発言に対し中国は強く反発し、日本産水産物の輸入停止を決定。さらに中国国民に対して、日本への渡航自粛を呼びかけました。加えて、レアアースの輸出制限が行われる可能性も指摘されており、日本企業の資材調達や製造体制に影響が及ぶ懸念が高まっています。今回の一連の動きは、改めて「チャイナリスク」の問題を浮き彫りにしました。
進む中国からインド・ASEANへの移転
米国の相互関税や地政学リスク、チャイナリスクなどを理由に、中国からインド・ASEANへ生産拠点を移転する動きが加速しています。実際に、米国向けのiPhoneの製造拠点が2026年末までに、中国からインドへ移転する計画があることが報じられました。iPhoneの約80%が中国で生産されてきただけに、この報道内容には大きな意味があります。
日本企業においても、中国以外に生産拠点を分散させる「チャイナプラスワン戦略」にシフトする動きがみられ、ベトナム・タイ・インドネシア・マレーシアなどのASEAN諸国への投資が活発化しています。これらの動きは、海外進出を検討する上で注目すべきトレンドと言えるでしょう。
参考:Reuters「米国向けiPhone生産、来年にも中国からインドへ移転=関係筋」
AIインフラ投資の爆発的拡大

2025年は生成AIブームを背景に、世界各地でデータセンターの建設が拡大しました。特に米国の大手IT企業は、AI処理に必要な膨大な計算能力を確保するため、かつてない規模の投資計画を次々と打ち出しています。その一例は次のとおりです。
Meta:AIデータセンターの建設と人材雇用に3年間で6,000億ドルを投資予定
Amazon:米国内に500億ドル規模のAIデータセンターを建設予定
Google:インド南部に150億ドル規模のAIデータセンターを建設予定
Microsoft:ポルトガル沿岸部に100億ドル規模のAIデータセンターを建設予定
このような動向を受け、大手IT企業によるAIインフラ投資は2029年には2兆8,000億ドルに達するとの予測もあります。大型プロジェクトが次々と進む中、半導体・電力・再生可能エネルギーなどの関連産業も需要が拡大しており、AIインフラは今後の有望な成長領域として期待されています。
参考:Reuters「IT大手のAIインフラ支出、29年に2.8兆ドル超=米シティ」
EV市場の世界的な成長

世界のEV市場は急成長を続け、2017年から2024年の7年間で約14倍に拡大しました。2025年には世界販売台数が2,000万台を突破する見通しで、英国やサウジアラビアなど各国で需要が伸びています。
こうしたEVシフトは、充電インフラの整備や再生可能エネルギーなど、関連産業の成長を後押ししています。一方で、EV電池の世界生産能力はすでに需要の3倍に達しているとされ、供給過剰が新たな課題です。日本においてもトヨタ自動車株式会社が新工場の建設計画を延期するなど、リスクが顕在化しています。
EV市場は今後も成長が見込まれるため、多くの企業が参入しています。しかし、EV電池のように供給過多に陥るリスクもあることから、持続的な成長が期待できる領域を見極めることが重要です。
まとめ
2025年は、相互関税や地政学リスクが世界経済に大きな影響を与えた1年でした。その一方で、AIインフラ投資の急拡大やEV市場の成長など、世界では新たなビジネスチャンスも数多く生まれています。
こうしたチャンスを掴む上で、海外進出は有効な戦略です。しかし、海外には大きな可能性がある反面、リスクも存在します。
そこで重要になるのは、市場調査・現地調査・法規制調査といった事前準備です。プルーヴでは、海外進出や海外事業を展開する企業様に向けて、各種調査や事業展開を支援しています。海外で新たな成長を掴みたい経営者様やご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
