イラン紛争の現状と世界経済への影響|主要国の戦略をわかりやすく解説

米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃により勃発したイラン紛争は、すでに1カ月が経過しました。この紛争は、エネルギー供給や金融市場を通じて世界経済に広がり、企業活動や市場環境にも大きな変化をもたらしています。そのため、ビジネスパーソンにとっても注視すべき重要なテーマです。そこで

本記事では、2026年4月8日時点の情報をもとに、イラン紛争の現状や世界経済への影響、主要国の戦略をわかりやすく解説します。

イラン紛争の概況

イラン紛争の主な流れは以下のとおりです。

・2026年2月28日:イラン紛争勃発

米国とイスラエルが核・ミサイル開発阻止を理由にイランの軍事・核関連施設を攻撃。イラン最高指導者ハメネイ師を含む多くの軍高官が死亡しました。これを受けイランは、イスラエルや湾岸地域の米軍拠点への報復攻撃を開始するとともに、ホルムズ海峡を封鎖しました。

・3月9日:イラン指導体制の継承

ハメネイ師の後継として、息子のモジタバ・ハメネイ師が最高指導者に就任し、対米・対イスラエル強硬路線を継承しました。なお、同日にトランプ大統領はイランへの攻撃について「すぐに終わる」と発言しています。

・3月14日:トランプ大統領の呼びかけ

トランプ大統領はSNSで、ホルムズ海峡の封鎖への対応として、中国・フランス・日本・韓国・英国などに艦船派遣を要請しました。

・3月19日:日米首脳会談

ワシントンで日米首脳会談を開催。ホルムズ海峡への自衛隊派遣が焦点となる中、高市首相は法的な制約を理由に慎重な姿勢を示しました。

・3月23日~4月6日:エネルギー施設への攻撃を延期

トランプ大統領は、再三にわたってイランの発電所やエネルギーインフラへの攻撃の延期を発表。このように米国は、イランのエネルギー施設への攻撃を示唆しつつ、早期決着に向けた交渉を優位に進めようとしています。

・4月8日:2週間の停戦に合意

パキスタンの仲介によって、米国とイランはホルムズ海峡の解放を条件に2週間の停戦に合意しました。イラン側も停戦を受け入れていることから、今後の動向に注目が集まっています。

イラン紛争による世界経済への影響:原油高騰と供給不安

イランは報復措置として、湾岸諸国のエネルギー関連施設への攻撃に加え、ホルムズ海峡の封鎖を実施しました。これにより、中東からの原油・天然ガスの輸送に深刻な支障が生じ、世界的なエネルギー供給不安が高まっています。

その影響は原油先物価格に表れており、開戦前の1バレルあたり66ドルから、2026年4月8日時点では111.78ドルまで急騰しました(※1バレル=約159リットル)。この急激な上昇は、企業活動や家計に直接的な負担をもたらしています。実際に経済産業省の調査によると、レギュラーガソリンの全国平均小売価格は、3月9日の1リットルあたり161.8円から3月16日には190.8円に上昇しました。

さらに影響は広範囲に及び、次のような問題が顕在化しています。

・インフレ圧力の高まり

・コスト増による企業収益の圧迫

・金融市場の不安定化

・為替の急激な変動

・サプライチェーンの混乱

・原材料の供給不安

肥料の原料の尿素やアンモニアの多くもホルムズ海峡を経由して輸送されているため、農業分野への影響も懸念されています。今後は食料価格の上昇につながる可能性もあり、経済全体への波及が一層警戒されています。

参考:経済産業省「石油製品価格調査 調査の結果

フーシ派の参戦でさらに拡大する懸念

イエメン北部を拠点とする親イラン武装組織フーシ派がイラン紛争に参加したことで、情勢はさらに複雑化しています。戦火が紅海へと拡大するリスクが高まっているためです。

紅海は、地中海とインド洋をつなぐ重要な海上輸送ルートであり、ここでの緊張の高まりは原油の輸送や物流に深刻な影響を及ぼします。実際、ホルムズ海峡の封鎖を受け、先日日本に到着した原油タンカーは代替ルートとして紅海を経由しました。

仮に紅海が封鎖されれば、船舶の迂回や保険料の上昇、輸送の遅延などが発生し、エネルギー価格や物流コストのさらなる上昇につながる可能性があります。こうした動きは、世界経済への影響を一段と深刻化させる要因として警戒されています。

主要国はどう動く?イラン紛争への戦略

イラン紛争をめぐり、各国はそれぞれの立場や利害関係を背景にスタンスが異なっています。ここからは、主要国の方針や戦略について紹介します。

米国:イランの核開発阻止が第一目標

米国がイランへの攻撃に踏み切った主な理由は核開発の阻止です。2026年4月1日に行われたトランプ大統領の米国民向け演説では、目標達成は目前と強調し、今後2〜3週間での撤退することも言及しました。

一方で、トランプ大統領はイランに対して交渉期限を設定し、ホルムズ海峡の封鎖が解除されない場合には大規模な軍事行動に踏み切る方針を示していました。

加えて、トランプ大統領はイランの原油資源の獲得についても関心を示しており、イランの主要な石油拠点であるカーグ島への地上部隊派遣の可能性も指摘されています。

どちらも実行されれば、戦闘の激化は避けられません。4月8日に停戦を合意したものの、米国の今後の方針により、イラン紛争は泥沼化するリスクがあります。

欧州:米国と距離を置く戦略

欧州各国は、ウクライナ支援を最優先とする立場から、イラン紛争への直接的な軍事関与には慎重な姿勢を取っています。英国首相が「これはわれわれの戦争ではない」と発言したように、欧州では米国主導の軍事行動と一定の距離を置く戦略が主流です。

一方で、ロシア産天然ガスからの脱却を進めてきた欧州にとって、中東エネルギーの重要性は高まっています。そのため、イラン紛争の長期化は、欧州のエネルギー安全保障に直結する重大なリスクとなっています。

また、欧州各国がホルムズ海峡への艦隊派遣に消極的な姿勢を示していることに不満を持つトランプ大統領は、米国のNATO離脱に言及しました。これにより、欧米間に亀裂が生じており、同盟関係の行方にも注目が集まっています。

こうした中、欧州各国は次のような戦略を取っています。

・英国:エネルギー価格高騰への対策として、ガス・電気料金の上限の見直しや燃料税増税の凍結などを検討

・フランス:燃料価格高騰への対策案として、漁業・農業・物流への7,000万ユーロの支援策を発表

・イタリア:エネルギー製品への物品税の引き下げや自動車・物流・漁業を対象とした税額控除を実施

このように欧州は、軍事的な関与に消極的な立場で、自国の燃料価格高騰への支援が基本的な戦略です。

中国:内需を拡大させる方針

中国は、米国に次ぐ世界第2位の石油消費国です。サウジアラビアやイランからの原油輸入は全体の1割以上を占めており、特にイラン産原油については、米国の制裁の影響もあり中国が主要な買い手となっています。このように、中国はイランと良好な関係を維持している点が特徴です。イランは友好国に対してホルムズ海峡の通航を認めていることから、中国は他国と比べて原油価格の高騰による影響は限定的と見られます。

また、中国はロシアからの石油調達に加え、再生可能エネルギーの開発も積極的に推進してきました。こうした調達先の多角化やエネルギー政策の推進により、エネルギーリスクの分散を進めている点も重要なポイントです。経済政策の面では、第15次5カ年計画において内需拡大を掲げており、外部環境に左右されにくい市場の構築を目指しています。

ロシア:イラン紛争は好機になる可能性

イラン紛争による原油価格の高騰は、ロシアにとって追い風となる可能性があります。米国はイラン紛争によるエネルギー供給の逼迫を受け、各国に対してロシア産原油・石油製品の購入を一時的に容認する姿勢を示しました。制裁下にあるロシアにとっては、資金流入の拡大につながる局面となっています。

一方で、ロシアは国内の燃料供給を優先するため、2026年4月2日にガソリンの輸出を7月末まで禁止する措置を発表しました。これは、国内価格の上昇や供給不足を抑制する狙いがあると見られます。

インド:ルピーが下落し市場が混乱

インドは原油の約8割を輸入に依存しており、その多くは中東から調達しています。以前はロシアから大量に輸入していたものの、米国との協議を経てロシア産原油の購入を大幅に削減しました。米国はその見返りとして、インドへの関税を下げています。このような背景から中東地域へのエネルギー依存が高まっていたこともあり、インドにとってイラン紛争の影響は不可避です。実際にルピーが過去最安値に下落し、メーカー向けの天然ガスが配給制になるなど、インド市場は混乱しています。

ASEAN:再生可能エネルギーへの移行を推進

ASEAN諸国の多くも原油や天然ガスを中東に依存しており、イラン紛争による燃料価格高騰の影響を受けています。こうした状況を受け、ASEANの経済相会合ではイラン情勢に対する深刻な懸念が共有されるとともに、再生可能エネルギーへの移行を推進する考えを確認しています。イラン紛争は、ASEAN諸国にとってエネルギー政策を見直す契機になるかもしれません。

4.0 イラン紛争で問われるリスク管理と戦略の見直し

イラン紛争は、燃料価格急騰や金融市場の不安定化を通じて、世界経済に大きな影響を及ぼしています。企業活動やサプライチェーンにも波及しており、ビジネス環境の不確実性はこれまで以上に高まっています。 一方で、その影響の度合いは国や地域によって異なる点に注意が必要です。経済構造やエネルギーの調達先の違いにより、受けるダメージや機会は一様ではありません。そのため、海外事業のリスクを軽減するには、各地域の最新動向を的確に把握して柔軟に戦略を見直していくことが重要です。

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