石油メジャー企業を徹底解説!ExxonMobil/Shell/BP/Total/Conoco

2023年10月11日、Exxon Mobil(エクソンモービル)がアメリカの大手シェール会社を、約9兆円で買収すると発表しました。原油高を背景に、石油メジャーによるM&Aが活発化しており、業界再編の流れが加速するかに注目が集まっています。

石油メジャーとは、強大な資本力・政治力により石油の採掘から販売までを垂直統合し、石油市場のシェアの大部分を独占している巨大な石油系企業複合体のことです。

しかし、「石油メジャーはどのような会社なの?」と疑問に思う方もいるでしょう。そこで本記事では、石油メジャー5社の会社概要・経営状況・事業内容について紹介します。

石油市場の展望

OPEC(石油輸出国機構)の報告によると、2024年の世界全体の石油需要は2023年と比べて、日量225万バレルの増加となる見込みです。具体的には、世界全体で日量1億425万バレルと予想されています。2022年の石油生産量は日量9,385万バレルであったことから、2年で約11%の拡大です。

なお、比較までに日本の2021年の石油需要は日量334.1万バレルでした。このように石油市場の拡大が見込まれるなか、石油メジャーは今後も成長すると期待されています。

参考:JETRO「OPEC、2023年と2024年の石油需要は拡大と予測

原油価格の推移

石油メジャーが注目される背景に、昨今の石油やガソリンなどの燃料費高騰が挙げられます。原油価格は、2022年6月に1バレルあたり120ドルに達しました。その後に下降したものの、1ドルあたり80ドル前後で高止まりしている状態です。

原油価格の推移は以下のとおりです。

出典:新電力ネット「原油価格の推移

また新電力ネットの予想によると、現行政策に大きな変化がない場合は、2040年には1ドルあたり150ドルに達するとのことです。つまり、石油生産量の需要拡大にともない、原油価格もますます上昇すると見込まれています。

出典:新電力ネット「原油価格の推移

石油メジャー特集

石油メジャー特集として、5社の会社概要・経営状況・事業内容を解説します。

Exxon Mobil(エクソンモービル)

出典:Exxon Mobil

Exxon Mobil(エクソンモービル)は、時価総額が約4,300億ドルの世界最大級の民間石油会社です。「Exxon」「Esso」「Mobil」のブランド名で知られています。

1999年にエクソンとモービルが合併したことで巨大化しました。アメリカに本社を置き、設立が1882年で140年以上の歴史があります。従業員数は約62,000人です。

Exxon Mobilの経営状況

Exxon Mobilの直近10年の売上高・純利益の推移は以下のとおりです。

参考:Exxon Mobil「Annual reports」」

2015年以降は、売上高が3,000億ドルを下回る状態が続き、2020年には224億ドルの赤字に陥ります。しかし2022年・2023年は、2年連続で売上高が3,000億ドルを突破し、業績を回復しています。

また、地域別の売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:Exxon Mobil「Annual reports

過半数がアメリカを占めており、その他の主要な地域はヨーロッパであることがわかります。

Exxon Mobilの事業内容 

Exxon Mobilは、世界200カ国以上でエネルギービジネスを展開している企業です。世界中の傘下企業や関連会社により、石油と天然ガスの採掘から販売、石油製品や石油化学製品の精製・製造・販売を担っています。

また近年では、シェールに含まれる石油や天然ガスを生産する化石燃料事業を強化しています。2023年10月に発表した、アメリカのシェール大手のパイオニア・ナチュラル・リソーシズの買収もその取り組みの1つです。

シェールとは、地下深部にある頁岩の層のことで、水圧をかけることでシェール層に含まれる石油や天然ガスを取り出せます。

Shell(シェル)

出典:Shell

Shellはイギリスのロンドンに本社を置く石油メジャーです。1907年に設立されたヨーロッパ最大のエネルギーグループです。70カ国以上の拠点で、約83,000人の従業員が働いています。

Shellの経営状況

Shellの経営状況について、売上高・営業利益の推移から考察します。売上高の推移は以下のとおりです。

出典:Shell「Chart generator

営業利益(損失)の推移は以下のとおりです。

出典:Shell「Chart generator

2つのグラフより、Shellも2020年に赤字に陥ったものの、2021年以降はV字回復をしているのがわかります。2022年の売上高は2019年以前の水準に戻り、売上高は2倍以上となっていることから、利益率が向上していることも伺えます。

地域別の売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:Shell「Annual reports and publications

Shellはヨーロッパ最大のエネルギーグループのため、ヨーロッパが主要地域です。ただしアメリカ・アジア・オセアニア・アフリカなどにも進出しており、ヨーロッパ以外で売上高の約65%を占めています。

Shellの事業内容

Shellは石油メジャーの1つに数えられるように、石油や天然ガスが主要な事業です。その他に特徴的なのは、世界で再生エネルギーや新エネルギーの事業を推進していることです。具体的には、太陽光・風力・水素などの事業を推進しています。

産業向けのグリーン水素製造プロジェクトを立ち上げるなど、次世代のエネルギー技術の開発も積極的に行っています。

BP(ビーピー) 

出典:BP

BP(ビーピー)はイギリスのロンドンに本社を置く、石油・天然ガス関連のエネルギー関連事業を手掛ける石油メジャーです。1909年に設立され、現在の従業員数は約87,800人です。世界中で石油や天然ガスの開発、石油所、パイプラインなどの運営を行っています。

出典:BP「Gas & low carbon energy

BPの経営状況

BPの売上高・純利益の推移は以下のとおりです。

参考:BP「Archive of results, reports and presentations

BPの2014年の売上高は3,535億ドルでした。しかし、2023年の売上高が2101億ドルなので、約10年で約40%も減少しています。純利益は赤字と黒字を行ったり来たりしているものの、2023年は150億ドルを突破しました。

また売上高の多い地域は605億ドルのアメリカで、全体の約29%を占めています。

BPの事業内容 

BPは石油や天然ガスの事業に加え、低炭素電力や水素の取り組みを加速しています。例えば、電気自動車には欠かせないEV充電ポイントの拡充です。2030年までに100,000カ所以上のEV充電ポイントの稼働を目指しており、すでに29,000カ所以上に設置しています。

Total(トタル) 

出典:Total

Total(トタル)はフランスに本社を置く石油メジャーです。石油やバイオ燃料、天然ガス、再生可能エネルギーの事業を150カ国以上で展開しています。また従業員数は約105,000人で、世界に15,000カ所以上のサービスステーションを運営しています。

Totalの経営状況

Totalの売上高・純利益の推移は以下のとおりです。

参考:Total「Annual reports including annual financial reports

Totalは2020年に赤字に陥ったものの、2020年を除けば営業利益が上昇傾向にあります。2022年には売上高が2,810億ドルで、2020年の2倍を達成し、営業利益は200億ドルを突破しています。

地域別の売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:Total「Annual reports including annual financial reports

Totalはフランスを含めたヨーロッパの売上高が64.4%を占めています。グラフより、アジア地域への進出が他地域ほど進んでいないことがわかります。

Totalの事業内容

Totalの主な事業は、石油と天然ガスの採掘・生成・販売です。さらに再生エネルギーを利用した発電、石油や化学基礎製品、ゴム製品、工業用潤滑油などの開発・販売も行っています。

ConocoPhillips(コノコフィリップス)

出典:ConocoPhillips

ConocoPhillips(コノコフィリップス)はアメリカに本社を置く石油メジャーです。1875年に設立され、現在は13カ国で事業を展開し、9,900人の従業員を抱えています。

ConocoPhillipsの経営状況

ConocoPhillipsの売上高・純利益の推移は以下のとおりです。

参考:ConocoPhillips「Annual Report

ConocoPhillipsも他の石油メジャーと同様に、2020年に赤字に転落したものの、2020年には売上高が約785億ドル、純利益が約187億ドルでV字回復を達成しています。

地域別の売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ConocoPhillips「Annual Report

ConocoPhillipsはアメリカでの売上が77%を占めているため、アメリカに特化した石油メジャーといえるでしょう。

ConocoPhillipsの事業内容

ConocoPhillipsは石油や天然ガスの採掘・精製・販売を一貫して行っています。それらに加えて石炭やウラン、シェールオイル、地熱発電などの事業にも進出しています。

石油メジャーの買収による業界再編の動きが活発化

石油メジャー各社は2020年に赤字に陥りましたが、近年の石油高騰を受けて、2022年には5社すべてがV字回復を達成しました。太陽光や風力などの再生可能エネルギーに注目が集まるなかでも石油需要が拡大しており、石油産業は今後も成長が期待できる分野といえます。

このような背景のなか、エクソンモービルがアメリカのシェール大手企業を買収するなど、業界再編の動きが活発化しています。エネルギー事情にも影響を与えかねないだけに、今後の石油産業の動向に注目しましょう。


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