シャネル(CHANEL)は、日本でも知名度の高いラグジュアリーブランドです。
香水やバッグをはじめ、洗練されたデザインのアイテムは世界中から人気があります。2022年12月期決算では売上高が2兆円を突破しました。
本記事ではシャネルの会社概要や経営理念、事業内容を紹介し、決算資料から好調の理由や成長戦略を考察します。
シャネルとは
出典:CHANEL
シャネルはフランス発祥のラグジュアリーブランドです。現在は、イギリスのロンドンにグローバル本社を置いています。シャネルの基礎知識として会社概要や創業者のガブリエル・シャネル、経営理念について紹介します。
会社概要
シャネルの会社概要は以下のとおりです。
企業名 | CHANEL, Inc.(非公開企業) |
創業 | 1909年 |
グローバル本社 | ロンドン |
進出国 | 110カ国 |
従業員数 | 32,000人以上(2022年) |
売上高 | 172億ドル(2022年12月期) |
シャネルは、1909年にガブリエル・シャネルがフランスにショップをオープンしたのが始まりです。1921年には、女性のための香水として「シャネルN°5」を発売し、大ヒットしました。
現在、シャネルはラグジュアリーブランドとして、ファッション・アクセサリー・フレグランス・ジュエリーなどを展開しています。また、2017年にはグローバル業務の大半をロンドンに移しています。
創業者
シャネルの創業者はガブリエル・シャネルです。ニックネームのココ・シャネルの名でも知られています。ガブリエル・シャネルの主な歴史は以下のとおりです。
1909年:パリにショップをオープン
1910年:パリに独立系帽子店をオープン
1921年:シャネルN°5を発表
1926年:リトル・ブラック・ドレスを発表
1955年:キルティングバッグ「2.55」を発表
1957年:スリングバックシューズを発表
ガブリエル・シャネルは女性の服の解放をコンセプトに、これまでにはない斬新なアイコンを次々と生み出しました。
例えば黒一色のシンプルなドレスの「リトル・ブラック・ドレス」です。発表当時は喪服の色としてタブー視されていた黒一色にすることで、慣例を覆すことに成功しています。シンプルで洗練されたデザインは絶賛され、リトル・ブラック・ドレスは現在も定番のアイテムとして定着しています。
なお、現在のシャネルのCEO(最高経営責任者)はリーナ・ナイール氏です。
経営理念
シャネルのコンセプトは、「女性の服の解放」や「古い価値観にとらわれない自立した女性像」です。これらのコンセプトが女性から支持され、ラグジュアリーブランドとしての地位の確立につながったといえます。
またシャネルは長期的に価値を生み出すための経営理念として、以下の3つを柱に掲げています。
・創造主導型のブランド
創造をブランドの核心に位置付け、顧客に唯一無二の体験を提供すること。
・ラグジュアリーブランドのリーダー
ブランドの影響力を利用し、サステナビリティの課題に野心的に取り組むこと。
・人間中心の企業
人々の生活に関わるあらゆる場所で、自己達成と自己決定を促進すること。
シャネルの経営状況
シャネルは非公開企業ですが、ステークホルダーへの説明責任を果たすために2017年から決算を毎年発表しています。その決算資料をもとに、シャネルの経営状況について考察します。
まずは、決算資料からまとめたシャネルの売上高・営業利益の推移です。
参考:CHANEL「Financial Results」
2020年は新型コロナウィルスの影響により、売上高・営業利益ともに大幅に減少したものの、2021年に見事なV字回復を遂げました。さらに2022年の売上高は172億ドル(約2兆640億円)で、わずか6年で売上高が約2倍に拡大しています。※1ドル=120円換算
次に、2022年の地域別の売上構成割合は以下のとおりです。
参考:CHANEL「Financial Results」
2022年のアジアでの売上高は約80億ドルで、約半数を占めています。このことから、シャネルの主要な市場はアジアであることがわかります。なお、2022年のヨーロッパの売上高は約40億ドル、アメリカは約35億ドルでした。
地域別の売上高の推移
シャネルの主要な3地域における売上高の推移から、さらに地域別の業績について掘り下げます。
ヨーロッパ
ヨーロッパでの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:CHANEL「Financial Results」
ヨーロッパでは新型コロナウィルスの影響が大きく、2020年に大きく落ち込みました。しかし、2022年には2019年の水準を超えるまでに回復しています。
アジア
アジアでの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:CHANEL「Financial Results」
アジアの売上高は6年で約2.7倍に拡大しています。アジアの右肩上がりの成長が現在のシャネルの好調を牽引していることがわかります。
アメリカ
アメリカでの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:CHANEL「Financial Results」
アメリカでの売上は2021年以降の伸びが顕著で、2016年と比較すると約2倍に拡大しています。
シャネルの主要事業
2022年は主要の3地域すべてで、コロナ禍前の2019年を上回りました。とくにアジア・アメリカの伸びが大きく、全体の売上高を引き上げています。ここでは、好調を維持した2022年の主要事業の近況を紹介します。
ファッション
ファッション事業は、シャネルクリエーションとシャネルコレクションが好評です。とくに革製品と鞄の需要が拡大しています。
また、2022年12月に、シャネルはセネガルの首都ダカールでファッションショーの「メティエ・ダール」を開催しました。シャネルにとってアフリカでの初めてのショーでしたが、同時にラグジュアリーブランドがサハラ以南のアフリカで初めて開催するショーにもなりました。この取り組みで、シャネルは現地と長期的なパートナーシップを築くのに成功しています。
香水&ビューティー
2022年の香水&ビューティー部門は、旅行小売業の回復やリピーターの持続的な需要から売上を拡大しました。また、新たにガブリエル・シャネルが愛した植物のカメリアのエキスをふんだんに使った、スキンケア商品の「N°1 ドゥ シャネル」を投入しています。
時計&高級宝飾品
2022年の時計&高級宝飾品部門は引き続き好調でした。主な要因は「ココ・クラッシュ コレクション」の業績が好調なことと、シャネルの名作ウォッチであるプルミエール ウォッチの復刻版が好評だったためです。
シャネルの成長戦略
シャネルの成長戦略の特徴は、EC化をしていない点です。グッチなどのほかのラグジュアリーブランドではECを活用する動きがみられるなか、シャネルはあえてEC化しない戦略をとっています。
またコスト増に伴う値上げを何度も実施しており、2021年に4回、2022年に4回の値上げをしました。値上げは結果的に希少性を高め、ブランド価値の向上につながっています。
さらに、2021年に就任したCEOのリーナ・ナイール氏は、ダイバーシティーとインクルージョン(D&I)を支持している人物です。今後はD&Iの取り組みにより、企業やブランド価値の向上を目指すとみられます。
※ダイバーシティーとインクルージョンとは、人材の多様性を受け入れ、個々の能力を発揮できるようにする考え方です。
ブランド価値を高めることが成長の秘訣
シャネルの2022年の売上高は172億ドルでした。営業利益は57億ドルで前年比5.8%増を達成し、好調を維持しています。コスト増に伴う年4回の値上げは、結果的にブランド価値の向上につながったと考えられています。ブランディングに悩みを持つ企業は、シャネルの成長戦略を参考にしてみてはいかがでしょうか。