
NVIDIA(エヌビディア)は、主にGPU(グラフィックボード)を開発・販売している大手半導体メーカーです。GPUはパソコンのディスプレイ表示の処理をするパーツです。パソコンでゲームをする際やビットコインのマイニング、生成AIのサービス化にも必要とします。
生成AIブームによりGPUの需要が急増し、NVIDIAの2024年度の売上高は過去最高の609億ドルで、前年と比較して約2.3倍に拡大したことが話題になりました。そこで今回は躍進を続ける企業として、NVIDIAの会社概要や事業内容、経営状況などについて解説します。

出典:NVIDIA
パソコンに詳しい方ならNVIDIA(エヌビディア)は聞きなれたメーカーかもしれません。しかし、ほとんどの方はNVIDIAがどのような会社なのかイメージできないでしょう。そこでこの章では、NVIDIAの会社概要や基本的価値観、事業内容を紹介します。
会社概要
NVIDIAの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | NVIDIA Corporation |
本社 | アメリカ |
設立 | 1993年 |
拠点数 | 50カ所以上 |
従業員数 | 27,000名以上 |
売上高 | 609億ドル(2024年度) |
NVIDIAは主にGPUを開発・販売しているメーカーです。そのGPUはパソコンで高負荷のゲームを楽しむのに欠かせないパーツで、世界で2億人以上のゲーマーやクリエイターがNVIDIA製のGPUを使用しています。
2024年度の売上高は609億ドルで、Intel(インテル)やSamsung(サムスン)などの大手企業を抑え、半導体の売上世界1位を獲得しました。競争が激化する半導体市場で成長を続ける企業といえるでしょう。
基本的価値観
NVIDIAがどのような企業かは、同社の掲げる5つの基本的価値観(NVIDIA’s Core Values)が判断材料となります。
・Innovation(革新)
革新とは、「夢は大きく、まずは小さなことから始め、リスクを冒して学ぶこと」です。世界が必要とするものを発明し、それにより未来を発明することを目指しています。
・Excellence and Determination(卓越と決意)
卓越と決意とは、「最高の仕事をするために自分自身に挑戦すること」です。
・Intellectual Honesty(知的で正直)
知的で正直とは、「真実を求め、間違いを学び、学びを共有すること」です。現実を理解することで、仕事の改善に役立ちます。
・One Team(ワンチーム)
ワンチームとは「透明性・情報共有の環境を促進すること」です。従業員のモチベーションを高めるだけではなく、単一の統合されたチームを目指しています。
・Speed and Agility(スピードと機敏性)
スピードと機敏性とは、「画期的な製品を驚くべきスピードで生み出すこと」です。
NVIDIAはこのような基本的価値観をもとに、従業員の満足度を重視した人事採用・人事開発や福利厚生の充実を図っています。離職率が5%以下と低いのも同社の特徴といえるでしょう。
事業内容
NVIDIAは、1993年にゲームやメディア市場に3Dグラフィクスをもたらすというビジョンのもとに設立し、1999年にGPUを発明しました。NVIDIAはGPUの開発で培った技術力をもとに、GPUやCPU、DPU、データセンターを提供しています。またAIサービスをハードウェア・ソフトウェアの両面から支えるソリューションの提供もしています。
※CPU(中央演算処理装置)とは、コンピュータの演算処理を担うパーツです。
※DPU、データセンターでデータの移動やデータ処理を担うパーツです。
NVIDIAの経営状況
NVIDIAの売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:NVIDIA「Quarterly Results」
NVIDIAの2024年度の売上高は、609億2,200万ドルで過去最高を更新しました。営業利益は43億ドルから約6.8倍の297億ドルでした。グラフからも2024年に急激に成長を遂げたことがわかります。
地域別の売上高の割合は以下のとおりです。

参考:NVIDIA「Quarterly Results」
2024年度のアメリカの売上高は269億ドル、台湾が134億ドル、中国が103億ドルでした。アメリカ・台湾・中国がNVIDIAの主な市場で、全体の83.2%を占めています。
NVIDIAの事業別売上高の推移
NVIDIAが好調を維持している要因を事業別売上高の推移より考察します。NVIDIAの主要事業は以下の4つです。
・Data Center
・Gaming
・Professional Visualization
・Automotive
各事業の売上高の推移や事業内容について解説します。
Data Center「データセンター」
データセンターとは、サーバーやネットワーク機器を設置し、運用するための施設のことです。データセンター事業の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:NVIDIA「Quarterly Results」
NVIDIAはデータセンター用GPUにより、高機能計算や大規模なデータセンターの構築に対応できます。そのため、消費者向けインターネット企業やクラウドサービス企業、大学などにデータセンターを供給しています。とくに、AIに取り組んでいる数千もの組織と提携しているのがNVIDIAの強みです。
例えば、生成AIブームのきっかけとなった「ChatGPT」を開発したOpenAIに、NVIDIA DGX プラットフォームを提供しています。
データセンター事業は近年のAIブームを背景に、急激に拡大しており、2023年度は150億ドルを突破しました。さらに2024年度は約3倍の475億ドルを達成しています。
Gaming「ゲーミング」
ゲーミング事業は、ゲーミングパソコン向けのGPUが主力製品です。2023年にはゲーミングGPUのGeForce RTX 40シリーズを販売し、前世代の最大4倍の性能を実現しています。ゲーミング事業の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:NVIDIA「Quarterly Results」
ゲーミングパソコンはeスポーツの普及やゲーム配信者の影響、クリエイターの人気の高まりなどを背景に成長している分野です。NVIDIAの主要事業の1つで、売上高の全体の17.1%を占めています。
Professional Visualization「プロフェッショナル・ビジュアライゼーション」
プロフェッショナル・ビジュアライゼーションとは、映像や設計関係のプロ向きのソリューションを提供する事業です。仮想空間のシミュレーションや歴史的なシーンの再現などに活用されています。プロフェッショナル・ビジュアライゼーションの売上高の推移は以下のとおりです。

参考:NVIDIA「Quarterly Results」
2024年度の売上高は15億ドルで横ばいとなっています。
Automotive「自動車」
NDIVIAは自動車メーカーや研究機関と協力し、自動運転車向けAIシステムの開発に取り組んでいます。自動車事業の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:NVIDIA「Quarterly Results」
2024年度の売上高は約11億ドルで、前年比21%の増加を達成しました。
NVIDIA全体に占める自動車事業の割合は1.8%で大きくないものの、自動運転車の普及が期待されているだけに、注目の事業といえるでしょう。
NVIDIAの成長戦略
NVIDIAの成長戦略は、従来のGPUやデータセンターの事業の拡大に加えて、自動運転車向けのAI技術の開拓です。
近年の生成AIブームにより、NVIDIAのGPUやデータセンターの需要が高まっています。2024年度はデータセンター事業の売上が約3倍に拡大したほどです。このことから株価が急騰し、2024年2月には時価総額2兆ドルを突破しました。
NVIDIAは生成AIに重要な技術を持つ企業
NVIDIAは年々、売上高を拡大している企業です。とくに最近はAIブームの影響により、売上高が609億ドルを突破しています。GPUやデータセンターなどにより、近年のAIサービスを支えている企業といえるでしょう。日本においても生成AIが注目されるなか、今後も注目すべき企業の1つといえます。