世界で起こる不動産バブル。コロナ禍の低金利政策と東アジア諸国のトレンドは?

新型コロナワクチンの接種が順調に進み、経済がV字回復しつつあるアメリカでは、空前の不動産ブームが起こっています。不動産仲介会社ナイト・フランクが2021年6月に作成した「世界住宅価格指数レポート」によると、今年3月までの1年間に住宅価格は平均7.3%上昇し、コロナ禍で特に住宅市場が好調ぶりを示していることが分かりました。

この各国の現象は、世界各国で新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて政策金利を下げていることが起因しています。アメリカを見てみると、2020年4月以降、アメリカは政策金利において年0~0.25%を維持しており、リーマン・ショック後の金利と同じ水準になっています。8月4日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、「低金利政策は何年も続く」と述べています。

米政策金利の推移

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031800214&g=int&p=20210318ax02S&rel=pv

 

ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミストのニラージ・シャー氏は「記録的な低金利、行動制限に伴う貯蓄、世界経済の堅調な回復への期待、前例のない財政出動、限定的な住宅在庫など、世界各地でいくつかの要因が住宅価格をかつてない水準に押し上げている」と指摘。過熱する住宅市場に対し、ニュージーランドや中国は、すでに加熱する住宅市場の冷却に動いており、不動産投資家を対象とした税優遇措置の撤廃や不動産業界への銀行融資や開発業界の動きの抑制が行われています。住宅市場の熱狂は次第に弱まるとの見方が専門家に広まっていますが、国際通貨基金(IMF)は、主要都市の住宅価格の連動性があることから「他国の住宅価格変動が自国に影響する可能性を無視すべきではない」と警告を示しています。
この記事では、世界で不動産の価格が上昇している国、不動産価格が高騰してバブル崩壊が危ぶまれている国、政策金利と不動産価格の上昇の関係性についてお話します。

 

政策金利と不動産の価格上昇の関係性

世界の不動産バブルについて説明する前に、まず「政策金利と不動産価格の関係性」について触れておきましょう。政策金利とは、中央銀行が一般の銀行にお金を貸し付ける際の金利のことです。中央銀行(※日本で言えば日銀)の金融市場の調節手段として利用されます。

 

景気が悪い時の金利政策

どこの国でも一般的に、景気が悪いときは金利を下げます。

金融機関は日銀から低い金利で資金を調達できる ⇒ 企業や個人に対する資金の貸出金利が低くなる ⇒ お金が個人消費や設備投資に回りやすくなる ⇒ 経済活動が活発になり、景気が上昇する

 

金利が安くなった時の不動産購入への影響

個人やマンションディベロッパーが不動産を購入する際、銀行からお金を借りるのが一般的です。この際、金利が安くなればお金を借りやすくなり不動産を購入しやすくなります。

不動産を購入しやすくなる ⇒ 需要者が増える ⇒ 不動産価格が上がっていく

という流れになるのです。

 

以下は、日本における10年長期国債利回りと、過去20年間の東京圏の住宅地の地価公示価格の推移です。(青線:10年長期国債利回りの年間平均金利、赤線:東京圏の住宅の地価公示価格の平均値) 金利が下がるにつれて不動産の需要が上昇し、土地の価格が上がっています。一方、金利が上がれば、この逆の減少が起きます。

https://www.home4u.jp/sell/juku/mansion/sell-116-135092020

2020年の新型コロナウイルス感染拡大後の各国の制作金利の推移を見てみると、アメリカが突出して金利を下げていますが、日本では日銀マイナス金利政策を導入した2016年2月以降ずっと低い状態を維持しています。

各国地域の政策金利の推移

https://www.smd-am.co.jp/market/lastweek/monthly/2021/month210803gl/

 

それでは次に、世界で不動産の価格が上昇しているニュージーランドとアメリカを例にとってご紹介します。

 

不動産価格上昇が最も高かったニュージーランド

住宅バブル番付

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-06-15/QUPXN7T1UM1C01

 

ニュージーランドは、政府の景気刺激策や歴史的低水準の金利も影響し、また、新型コロナウイルスの感染対策が成功した数少ない国のため、不動産価格が上がっています。海外から帰国した国民や投資家が、不動産に資金を投じる傾向が強まり、住宅価格は1年で23%上昇しており、上記の世界各国の「不動産価格高騰の国ランキング」を見ると、ニュージーランドは1位になっています。

ニュージーランド都市の地価

https://news.yahoo.co.jp/articles/c5a645b0eddd9426f22666030d1a37bd31b082ae?page=2

※オークランドなど主要都市の不動産価格上昇値

 

現在NZの中央銀行は、一部の住宅ローンに関する規制案を検討しています。また、アーダーン首相は記者会見で「経済に最も不要なのは危険な住宅バブル。だが多くの指標がそのリスクを示している」と警鐘を鳴らしています。

 

不動産バブルのリスクを孕む中国と韓国

日本では1980年代後半から1990年にかけて「不動産バブル」と呼ばれる現象が起こり、地価が高騰しました。地価も株価も急激に下落する背景には何があるのでしょうか。このバブル崩壊のきっかけとなる出来事に、1990年に行われた「総量規制」が挙げられます。

日経平均株価の推移

https://overseas-realestate.jp/japanese-bubble-why2/

 

 

総量規制とは、不動産融資を抑えるための政府が行う規制です。

総量規制の影響

総量規制が行われる ⇒ 土地に投資する資金の動きが止まる ⇒ 買い手がつかない状態になる

もともと、バブルの時に購入された土地は、何かを建てるために購入したものではなく、値段が上がったときに売却して差額を得るためのもの。買い手がつかないと投資した分は損になります。従って、土地や株で儲からないと気付いた投資家たちができるだけ早く資産を売ろうとします。(利益が下がったとしても) このことがバブル崩壊を引き起こす要因となったのです。

今、中国と韓国では、以前の日本が経験したような不動産バブルの崩壊が懸念されています。どのような状況にあるのか、見てみましょう。

中国

中国の不動産価格は、2019年の中国4大都市における不動産価格の年収倍率(※年収倍率とは、マンションの価格が年収の何倍に相当するかを示す値)は、下記の通りでした。

 

・深セン 35.2倍

・上海 25.1倍

・北京 23.9倍

・広州 16.5倍

 

これらの数値は、日本で最も年収倍率が高い首都東京の13.3倍を大幅に上回る状態で、バブル時の日本の18倍です。しかし、新型コロナウイルス発生以降、新築物件も中古物件もますます上昇しており、右肩上がりが止まらない状況です。

中国住宅の値上がり

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM304BZ0Q1A730C2000000/

 

この状況は、専門家の間で「灰色のサイ」と叫ばれています。この言葉はしばしば、経済によって、「ブラックスワン」と比較して示されます。

 

・ブラックスワン:発生する確率は低いが大きな影響を与える事件のこと

※リーマン・ショックなど目に見えて大きな影響となる事件

・灰色のサイ:発生する確率が高い上に影響も大きな潜在的リスクのこと

 

動物のサイは、体が並外れて大きくて重く、反応も遅いですが、一旦狂ったように走り出すと一直線に猛突進します。「あまりにも突如過ぎて防ぎきれない経済」を喩えています。

中国は新型コロナ感染拡大以降、住宅価格の高騰を抑える政策を強めてきたのですが、最近、その効果が出始めたと見られています。民間不動産調査大手中国指数研究院によると、6月、7月の国内100都市の新築住宅価格は前年同月比で3.89%、3.81%の上昇となっており、5ケ月ぶりの鈍化となっているようです。また、更に規制は強化されており、8月2日、広東省東莞市と浙江省金華市では、不動産仲介業者に参考価格とかけ離れた高額物件は紹介をしないよう求めています。実際に、「灰色のサイ」を免れることができるのか、世界は注視しています。

 

韓国

韓国でも、不動産バブルが来るのではないかと懸念の声が上がっています。韓国でも、首都圏を中心とした住宅価格の急騰が続いています。KB国民銀行によると、2021年4月のソウルのマンション平均売買価格はおよそ11億1100ウォン(日本円にして約1億954万円)で過去最高を記録しました。もともと過熱状態にあった不動産市場に、新型コロナウイルスの危機対策において低金利政策が取られ、歯止めがかからなくなったと見られています。

韓国不動産価格変動

https://www.dlri.co.jp/pdf/macro/2020/nishi200827korea.pdf

 

明知大学の不動産学を専門とするクォン・デジュン教授は、この現象について「世界的に見ても韓国の住宅価格は特に上昇が激しいため、不動産バブルには相対的に弱い」と述べています。韓国では財閥系企業の韓国脱出も始まっているといいます。このように、バブルがはじけ価格が急落する警戒感も日増しに高まっています。

 

タイ・マレーシア

バンコクの不動産

タイやマレーシアではもとから不動産価格が上昇しています。例えば、タイの不動産価格は、2018年において、昨年前半時点で前年から6~7%上昇しています。2020年以降は他国と同様に低金利政策が取られ、現在さらなる高騰が止まりません。しかし、これらの東南アジアの国の不動産価格の高騰の背景には中国マネーが大きく影響しています。タイやマレーシアは引退後移住したい国として中国人に人気で、例えば、タイのシアヌークビルは、人口の25~30%が中国人と推定されているほどです。

しかし、非常に高い空き家率が続く中国において不動産バブルの崩壊が起これば、タイやマレーシアに対して行われる不動産投資へのマネーは滞り、悪影響を受けるでしょう。中国の不動産バブルの崩壊は他国に大きな波紋となるとして警戒されているのです。

 

不動産バブルのリスクは今のところなし?日本の状況

冒頭で、世界各国に比べると日本の金利は低金利が続いていると説明しましたが、コロナ禍において追加の金融緩和政策が取られたことで、下げ止まりと言われていた金利がさらに下降しています。全期間固定期間金利が1%強、変動金利が0.4%前後、10年固定金利が0.5%強、とかつてないほどの金利水準となっています。この影響により、他国同様、不動産の価格は上昇しています。

日本の不動産価格指数

https://t23m-navi.jp/magazine/other-sell/mansion_-bubble/

 

 

価格の上昇の要因には下記が挙げられます。

・コロナショックにより生活や働き方が変化し、新しい住宅需要が生まれた

・住宅の「広さ」と「安さ」を求める動き

・マンションにも広さを求める動き

 

東京23区の中古マンションの平均価格

https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20210531.html

 

都心から郊外に広い住宅を購入する人が増えている一方で、都心の中古マンションの平均価格が上昇しているのも特徴的です。相対的にコロナの死者数が少なかったため、国内外からの投資マネーが増加していると専門家は見ています。

 

さいごに

世界中で低金利政策が取られ、それに連動して不動産価格の上昇が起こっています。中でも、バブル崩壊が危ぶまれている中国と韓国。一見他国での出来事で関係ないように感じますが、日本経済への影響も大いにあるでしょう。特に中国の不動産バブルの動向については、今後注意が必要です。

 

 

 

https://diamond.jp/articles/-/251358?page=5

https://www.kanto-housing.co.jp/wp/topic/covid-loan-kinri.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/cbb805e79c889cd98fea1faff8d576e26c813616?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/c6c809f84c77c96b320ba148bceb316eb0c7e75c

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63492670V00C20A9NNE000/

https://news.yahoo.co.jp/articles/84ac410f3fc25154a14ab1af846154e4d2ba93dd

https://www.j-cast.com/2017/08/19306103.html?p=all

https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fuji-kazuhiko/281.html

https://jp.reuters.com/article/china-banking-idJPKBN28A2ER

https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20210531.html

https://www.dir.co.jp/report/research/economics/china/20210521_022299.html

https://www.sagabank.co.jp/unyou/toushin/saginsensei/vol52.html

https://www.iwaicosmo.net/report/220.html

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210804/k10013180951000.html

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031800214&g=int

https://news.yahoo.co.jp/articles/fa50c3bdb60bb28b03a4c8e7c6d2985eb5ad9386

 

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