グローバル企業のローカル戦略およびコミュニケーション戦略のヒント

グローバルに展開する企業にとって、ローカルでの販売戦略やコミュニケーション戦略をどうするかは大きな関心事です。今回は、とあるヨーロッパの国に本拠を置き、世界各国に製品を展開しているメーカー(以下、A社)が行っている戦略を紹介します。

A社の戦略のポイントその1:現地のスタッフに徹底的に考えさせる

A社のローカル戦略の最大のポイントは、ローカルでの販売戦略やコミュニケーション戦略を現地のスタッフに委託し、その内容を彼らに徹底的に考えさせることです。日本企業では、例えグローバルに展開する企業であっても、これらの戦略は日本の本部が考えるというケースが多いのではないでしょうか。しかしA社は、現地のスタッフが広告やブランディング、キャッチコピー、場合によっては「この国の消費者にはこの機能をアピールしたいから、この商品名の方がいい」といったことまで検討しています。
 
もちろん、企業として守ってほしいことはガイドラインを作成し、遵守させます。例えば、A社のイメージを損なう戦略は行わない、製品の特徴とは異なる部分を訴求しないなどです。そして、ガイドラインを遵守さえしていれば、A社の本部は現地スタッフの提案を聞き入れて承認します。そのため、現地の事情をよく知るスタッフが考え抜いた戦略が採用され、その国にフィットした戦略を展開できるのです。
 
このような話をすると、日本のグローバル企業の中には「うちの会社は現地の販売代理店に販売を任せているので、A社と同じではないか」と思う方もいるでしょう。しかし、販売代理店は「この店舗でこのプロモーションをしよう」といったことだけを考えるのが通常の業務です。それとは反対に、A社の現地スタッフが行っているのは、その国で行われるマーケティング全般です。したがって、販売代理店の業務より遥かに大きな領域を担当すると同時に、大きな権限を持っています。

A社の戦略のポイントその2:その国にマッチした機能を強調する

A社はどの国でも基本的な機能が同じ製品を販売していますが、各国の消費者の習慣や好みに合わせて製品をマイナーチェンジしています。
 
調理家電であれば「この国のローカルフードを作るのに必要な機能をアタッチメントとして取り付ける」、美容家電であれば「この国の消費者はこんなことに悩んでいるので、それを解消できる機能をつける」といった戦略です。そして、さらに興味深いのは、このマイナーチェンジについてA社本部の承認は必要ないことです。これらを承認するのは、そのエリアを統括しているオフィス(例えば、東南アジアであればシンガポールオフィス)なのです。
 
そのうえ、これらのマイナーチェンジにはさほどコストがかけられていません。その国に販売するために搭載された独自のアタッチメントや機能のための生産ラインは、そのほとんどが現地の家電メーカーが使っている工場に委託されていますので、大幅なコスト削減が可能です。しかし、人口が多くターゲットの多い中国は例外であり、現地に研究所を設立して対応しているそうです。
 
そして、ローカルの販売戦略やコミュニケーション戦略においても、マイナーチェンジを行った部分が強調されるような方法が取られます。先ほど例として挙げた、ローカルフードを作るのに必要な機能をアタッチメントとして取り付けた調理家電であれば「○○(ローカルフードの名前)メーカー」といった風に、時には商品名すら変えてプロモーションを行います。

A社がこれらの戦略を行っている理由

A社がこのようなローカル戦略やコミュニケーション戦略を行っているのには理由があります。
 
1つは、このメーカーの発祥地であるヨーロッパの国は人口があまり大きくないため国内マーケットが小さく、最初からグローバルに販売をしていくという考えにならざるを得ません。つまりグローバルスタンダードの製品づくりが当たり前で、一つ作った製品を最大限売ることを考えています。
翻って日本は、人口は中国やアメリカに比べれば少ないですが、それなりにマーケットとして成立する人口規模といえます。そのため、新商品を作るとしてもひとまず国内で売れるものをつくって販売し、うまくいけば海外進出を狙うといったケースが多いのではないでしょうか。
 
2つ目は、文化の違いにあると考えられます。一概にはいえないことかもしれませんが、ヨーロッパは議論をする文化があり、教育においても小さい頃から自分の意見を他人に伝え、説得する訓練をうける機会が多くあります。日本は、近年では義務教育にもディベートが取り入れられるなど変わりつつありますが、基本的には教育現場や会社では上から言われたことを実行し、上にはっきりと何かを主張したり説得したりといった機会は少ないのが現状です。
 
そのため、日本企業がこのグローバルメーカーのようにローカルに全てを委託するという体制になったとしても「果たして、ローカルに全部任せてよいのだろうか?」という思考に陥る可能性があります。また、本部がそのように考えていると、それを察知した現地のスタッフは「こんな風に考えている本部の人にアイディアを提案しても、承認されるのだろうか?」と疑心暗鬼になってしまいます。日本企業がA社のような戦略を行うのであれば、まずはマインドセットから大きな変革を遂げる必要性がありそうです。

ローカル戦略を現地へ委託する際のポイント

「マインドセットを変えるなんて大変だ。やはり従来通り本部が全部考えた方がいいのでは」と考える海外戦略担当者の方もいるかもしれません。しかし、グローバル企業は現地に権限を委託することによって大きな成果を挙げているのです。この方法の大きなメリットは、本部の負担を減らすことができるので、本部は最小限の投資効果で最大限の売上を期待できることです。
 
現地に権限を委託する際の重要なポイントは、本部がやるべきこととやらなくてもよいことの線引きを明確にすることです。この考え方はグローバル戦略に限らず、ビジネスにおいてレバレッジ効果の高い戦略を立案する際に重要なポイントです。
 
企業の戦略立案において、他の企業が行っていることを一から十まで真似することは必要ありませんが、成果を挙げている例を観察し、必要があれば取り入れるという姿勢は重要です。今回紹介したA社の戦略が、海外進出関係者のみなさまの参考になれば幸いです。

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