海外拠点の移転先はどこがいい?メキシコ・ベトナム・インドの評価

トランプ関税の発動や米中関係の悪化、地政学的リスクの高まりを背景に、サプライチェーンの見直しが進んでいます。こうした中で注目されているのは、拠点を分散または移転する「リロケーション」です。本記事では、海外拠点の移転先として有力視されているメキシコ、ベトナム、インドの3カ国の評価を整理します。

人件費の安さだけじゃない!リロケーション先の評価軸

海外拠点の移転を検討する際、これまでは人件費の安さが重視されがちでした。しかし近年は、不確実性が高まっていることから、人件費だけを基準に移転先を判断するのは十分とは言えません。リスクや事業環境の変化に備えるためには、より多角的な視点で移転先を評価する必要があります。特に重要となる評価軸は、以下のとおりです。

  • 市場規模・成長性:将来的な需要拡大が見込めるか
  • インフラ環境:物流網や電力、通信などのインフラが十分に整備されているか
  • コスト:人件費、関税、税制、各種優遇措置を含めた総合的なコスト
  • 人材確保の難易度:必要なスキルを持つ人材を安定的に確保できるか
  • 地政学的リスク:政治情勢や国際関係の影響を受けにくいか

これらの要素を総合的に比較・検討することが、海外拠点の移転で成功するための重要なポイントです。

メキシコの評価:北米市場への生産・輸出拠点

メキシコは米国の南に位置し、北米市場へのゲートウェイとしての役割を担っています。人口は約1億2,601万人で、平均年齢は29歳です。労働力が豊富なことから、製造業を中心に移転先として注目されています。メキシコの基本的な概要は以下のとおりです。

メキシコの基本概要

人口約1億2,601万人(2020年)
言語スペイン語
宗教国民の7割がカトリック教(2020年)
政治体制立憲民主制による連邦共和国
名目GDP1兆8,530億ドル(2024年)
一人当たりGDP1万4,007ドル(2024年)
GDP成長率1.5%(2024年)

参考:外務省「メキシコ合衆国

また、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を締結している点も、メキシコが海外拠点の移転先として注目される理由です。USMCAとは、3カ国間の自由貿易協定のことです。

メキシコ拠点の強み

メキシコの強みは、米国と国境を接する地理的優位性にあります。陸路で北米最大の市場である米国へ直接アクセスできます。加えて、太平洋側・大西洋側の両岸に主要なコンテナ港を有しており、北米・アジア・オセアニア・欧州への輸送にも優れた立地です。こうした条件から、メキシコは生産・輸出拠点として幅広く活用されており、特にサプライチェーンの連携が重要な自動車産業を中心に、多くの企業が進出しています。

課題・懸念点

移転先として注目されるメキシコですが、いくつかの課題や懸念点も存在します。中でも大きな懸念は、トランプ大統領の関税政策により、対米輸出に高関税が課される可能性がある点です。関税の上昇は事業戦略に大きな影響を与えかねません。そのほかの主な懸念点は以下のとおりです。

  • 治安問題:地域差が大きく、慎重な立地選定が不可欠
  • インフラの地域格差:道路や物流などが十分に整備されていない地域も存在
  • 言語の壁:公用語はスペイン語で、英語が通じない場面もある

さらに、USMCAの見直しに向けた協議が進められていますが、米国は自国産業の保護を重視しており、交渉が難航する可能性が指摘されています。仮に協議が決裂すれば、関税面での優位性が損なわれる恐れがあるため、今後の動向にも注目する必要があります。

向いている企業

メキシコへの移転に特に適しているのは、以下の業種です。

  • 自動車産業
  • 電気・電子産業

北米市場をターゲットとする企業にとって、メキシコはアクセス性・人材の確保・人材コストの削減などが魅力の移転先と言えるでしょう。

ベトナムの評価:ASEANのハブ拠点

ベトナムは東南アジアの中でも高い経済成長を続けている国の一つで、中国に代わる生産拠点、いわゆる「チャイナプラスワン戦略」の有力候補として注目されています。人口は約1億30万人で、平均年齢は31歳と若いのが特徴です。近年は外資の誘致を国家戦略として推進しています。ベトナムの基本的な概要は以下のとおりです。

ベトナムの基本概要

人口約1億30万人(2023年)
言語ベトナム語
宗教仏教、カトリック、カオダイ教
政治体制社会主義共和国
名目GDP4,300億ドル(2023年)
一人当たりGDP4,285ドル(2023年)
GDP成長率5.05%(2023年)

参考:外務省「ベトナム社会主義共和国

また、CPTPPやEVFTA(EU・ベトナム自由貿易協定)など、複数の自由貿易協定に参加している点も、ベトナムが海外拠点の移転先として評価される理由です。

ベトナム拠点の強み

ベトナムの強みは、高い成長性とコスト競争力を両立している点にあります。経済成長率はASEAN諸国の中でも比較的高水準で推移しており、内需市場の拡大が期待できます。一方、人件費は比較的安く、若年層人口も多いため、労働力を確保しやすい点が魅力です。地理的にも東南アジアの中心に位置していることから、ASEANのハブ拠点としても期待されています。

課題・懸念点

ベトナムにはいくつかの課題や注意点も存在します。その一つは、法規制や行政手続きの複雑さです。進出する際は、現地に精通したパートナーの存在が不可欠です。また、経済成長に伴い、賃金は上昇傾向にあります。中長期的なコスト上昇を見据えた上で進出の検討が必要です。

向いている企業

ベトナムでは、中産階級が拡大しており、その影響により以下の産業の内需が高まっています。

  • 小売業
  • ファッション
  • 外食産業

これらの産業には、多くのビジネスチャンスがあると言えるでしょう。

インドの評価:巨大内需と中長期成長を狙う拠点

インドは世界最多の人口を抱える国であり、今後も高い経済成長が見込まれています。人口は約14億5,094万人に達し、平均年齢は28歳と非常に若いのが特徴です。そのため、インドは生産拠点としてだけでなく、将来的な市場拡大を見据えた進出先としても多くの企業から注目されています。また近年は、「Make in India(メイク・イン・インディア)」政策のもと、製造業の国内誘致を国家戦略として推進しています。インドの基本的な概要は以下のとおりです。

インドの基本概要

人口約14億5,094万人(2024年)
言語連邦公用語はヒンディー語 他に憲法で公認されている言語は21言語
宗教ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、シク教、仏教、ジャイナ教
政治体制共和制
名目GDP3兆9,127億ドル(2024年)
一人当たりGDP2,697ドル(2024年)
GDP成長率6.5%(2024年)

参考:外務省「インド

2024年の名目GDPランキングでは、インドは日本に次ぐ世界5位に位置しています。しかし、2026年には日本を抜き、順位が入れ替わる見通しです。このようにインドは巨大市場へと成長を続けており、今後も人口ボーナスの恩恵が期待できます。そのため、中長期的に見て非常に魅力的な市場の一つと言えるでしょう。

インド拠点の強み

インドの強みは、世界最多の人口が支える内需市場と将来性にあります。人口増加と中間層の拡大により、自動車、家電、デジタルサービスなど幅広い分野で需要の拡大が期待されています。

また、若年層人口が非常に多く、労働力の供給が安定している点も魅力です。加えて、人件費は安く、コスト競争力を確保しやすい環境と言えます。税制優遇や補助金などのインセンティブ制度もあり、うまく活用することで、初期投資や運営コストを抑えることも可能です。

さらに、公用語の一つが英語であることから、欧米企業や多国籍企業との連携がしやすい点も強みの一つです。

課題・懸念点

インドには課題も存在します。代表例は、インフラの未整備です。道路や電力などのインフラは地域による差が大きく、生産拠点の安定した稼働に影響を与える可能性があります。また、カースト制度は禁止されたものの、影響が残っている地域もあります。進出する際は、トラブルを避けるためにもカースト制度について理解を深めておくことが大切です。

さらに、インドは多様な宗教や民族が共存する国であり、宗教的価値観や使用される言語も多様です。宗教行事や祝日はビジネス活動に影響を与えることもあるため、現地の文化や慣習を踏まえた事業運営が求められます。

向いている企業

インドはIT人材が豊富な国としても知られています。そのため、以下のような業種は、特に適しています。

  • 自動車産業
  • 電気機器産業
  • IT産業

これらの分野では、拡大する内需市場と豊富な人材という二つの強みを同時に生かせます。中長期的な市場成長を取り込みたい企業にとって、インドは戦略的価値の高い移転先と言えるでしょう。

海外拠点移転を成功に導く次の一手

海外拠点の移転を成功させるには、人件費の安さだけで判断するのではなく、各国の成長性やリスクを含めて総合的に検討することが不可欠です。そのためには、海外市場調査や法規制調査を通じて、自社に最適な移転先を見極める必要があります。

プルーヴでは、海外進出や移転を検討している企業様に向けて、海外調査を通じた支援を行っています。海外進出や海外事業について疑問やお悩みがある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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