
海外で事業を展開する企業にとって、ESG規制の理解はますます重要になっています。近年は規制を強化する国や地域がある一方で、緩和や反発の動きも見られ、進出先ごとに異なる対応が求められるためです。
本記事では、こうした海外事情を踏まえ、ESG規制の基本概念や注目される背景、世界の動向についてわかりやすく解説します。(※2025年8月26日時点)
ESG規制とは
ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字です。ESG規制とは、持続可能な社会の実現に向けて、ESGの3つの視点を重視した制度を指します。具体例は以下のとおりです。
・再生可能エネルギー推進のための規制
・強制労働廃止を目的とした規制
・企業の情報開示の透明性に関する規制
このようにESG規制は幅広い領域を対象としています。
ESG規制が注目される背景
ESG規制の重要性は世界的に高まっていますが、反対の立場を取る国や地域もあり、取り巻く状況は複雑化しています。ここでは、ESG規制が注目される背景について解説します。
気候変動対策
地球温暖化や異常気象の頻発など、気候変動は世界的な課題です。そこで、日本は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを宣言しました。また、世界各国でも同様の取り組みが進められています。企業も環境負荷の削減や脱炭素化が求められており、こうした取り組みを促しているのがESG規制です。
SDGsに対する意識の高まり
持続可能な開発目標(SDGs)への関心が世界的に高まる中、企業も社会課題への取り組みを重視しています。このような背景から、ESG規制の重要性が認識され、注目が集まっています。
ESG投資の拡大
ESG投資とは、ESGに取り組んでいる企業を評価し、投資対象として優先的に選ぶ手法です。2024年の日本におけるESG投資額は625兆円で、2023年と比較して88兆円増加しました。2024年の世界のESG投資規模は29.8兆ドルで、2033年までに140.4兆ドルに達する見込みです。つまり、企業にとってESGは企業価値を高める一つの手法であり、ESG規制を遵守することはその取り組みの信頼性を示すことを意味します。
参考:NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム「日本サステナブル 投資白書 2024」
参考:株式会社レポートオーシャン「ESG投資市場規模」
各国の規制強化
EUはこれまで、ESG規制を積極的に推進してきました。日本においては、上場企業に対して情報の透明性が求められています。さらに、2023年にはシンガポールや台湾でもESG規制が施行されました。実際、2021年以降に施行されたESG関連規制は2023年時点で300を超えたとのことです。このように、多くの国や地域で規制が導入されていることから、ESG規制への関心は一層高まっています。
参考:日経ESG「改革を迫る7つのESG規制」
米政権の反ESG方針
ESG規制を複雑化させている背景の一つが、米国政府による反ESG方針です。米国では、ESG規制が民間企業に不当な負担を与えるものとして反対の声が上がっており、トランプ大統領の再選後にはその動きがより強くなっています。米国の影響力を考えると、反ESGの考え方が世界に広がる可能性もあるため、注目が集まっています。
世界のESG規制の動向

ここからは、世界で注目されたESG規制の動向を紹介します。
欧州
欧州はこれまで、ESG規制を積極的に推進してきました。主なESG規制は、以下のとおりです。
- 2021年:サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)
- 2023年:炭素国境調整メカニズム(CBAM)
- 2024年:企業サステナビリティ報告指令(CSRD)
欧州がESG規制を強化してきた背景は、欧州の競争力や優位性を高められると考えられていたためです。しかし、2025年に入ると反ESGの動きが活発化し、CSRDについては規制緩和や一部の適用が延期されました。
CSRDは、気候変動に加え生物多様性など、約500項目に及ぶ情報開示を企業に求める規制です。中小企業の大きな負担になると懸念されていました。
このように、欧州では行き過ぎたESG規制は、企業の競争力低下につながる可能性が指摘されています。
米国
米国では、トランプ大統領が再選したことで、反ESGの動きが強まっています。例えば、年金基金によるESG投資の禁止や関連規制の撤廃が行われました。
この影響で、州ごとの対応にも大きな差が生じています。一部の州では厳しいESG開示を企業に義務付ける一方、開示を妨げる州法を制定した州も存在します。その結果、企業は州ごとに異なる規制への対応が必要です。
カナダ
カナダは2024年12月に、開示情報の透明性を高めることを目的とした「カナダ・サステナビリティ開示基準(CSDS)」を発表しました。しかし、2025年4月には、気候関連情報の開示規制の策定や多様性に関する開示要件の改正が一時停止されました。これは、欧州や米国の動向を意識した対応と考えられます。
このように、欧米では一部のESG規制が後退しています。
ASEAN
ASEANではESG規制への取り組みが加速しています。具体的な動きは以下のとおりです。
- シンガポール
2025年からIFRSサステナビリティ開示基準(ISSB基準)に準拠し、温室効果ガス排出量の報告が義務化されます。
- マレーシア
2024年に国家サステナビリティ報告フレームワーク(NSRF)が導入され、2025年からISSB基準が段階的に適用されます。
※いずれの基準も、企業の開示情報の透明性を高め、ESGへの取り組みを促進することを目的としています。
参考:EY「急速に進むASEANサステナビリティ政策の構造変化 日本企業に求められる戦略的対応と成長機会の模索」
日本
日本では、2023年3月期決算から有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」を記載する欄が新設されました。2025年にはサステナビリティ開示基準が策定され、早ければ2027年3月期以降から、時価総額3兆円以上の企業に対して情報開示が義務付けられる見通しです。
ESG規制が企業にもたらす影響

ESG規制は、企業にとって情報開示の義務化やそれに伴うコスト増といった負担をもたらします。しかし、対応が遅れればESG投資の対象から外れるリスクがあるため、積極的な取り組みが必要です。また、米国では「反ESG」運動が広がっており、「ESG」という言葉自体を避けるなど、現地の状況に合わせた柔軟な戦略が求められています。
このように、ESG規制は遵守が不可欠である一方で、対応にはコストや複雑さといった課題もあります。
ESG規制対応の第一歩として法規制を押さえよう
ESG規制は、国や地域によって強化が進む一方、欧米では後退する動きも見られます。特に米国で「反ESG」運動が活発になっていることから、他地域にも波及する可能性があるので注意が必要です。このような背景から、海外進出や海外で事業を展開する企業にとって、現地の法規制を正しく理解することの重要性が増しています。 しかし、各国の法規制を自社で調査・把握するのは容易ではありません。そこでプルーヴでは、こうした課題を抱える企業様に向けて「法規制調査」を支援しています。ご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。