グローバル・デカップリングとは何?意味や影響をわかりやすく解説

米中対立を背景に、近年の国際情勢や経済ニュースの中で「デカップリング」という言葉を耳にする機会が増えています。世界経済の動向を示す重要なキーワードですが、「デカップリングって何?」という方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、グローバル・デカップリングの意味や現状、影響についてわかりやすく解説します。

グローバル・デカップリングとは何?

グローバル・デカップリング(Global Decoupling)とは、国家間の経済や市場の結びつきを意図的に弱め、切り離していく「経済分断」のことです。具体的には、関税の引き上げや各種規制を通じて、特定の国や企業を市場から排除するケースが挙げられます。

企業にとって、サプライチェーンの再構築やコスト増加といったリスクがある一方で、新たな市場の開拓やビジネスチャンスが生まれるという側面もあります。

デカップリングとデリスキングとの違い

デカップリングと混同しやすい言葉に、デリスキングがあります。

デリスキングとは、国家間の関係そのものは維持しながら、特定の国への過度な依存を避けるためにリスクを分散する考え方です。取引先や生産拠点を複数の国に分けることで、政治情勢の変化や規制強化といった不測の事態による影響を抑えることを目的としています。

デカップリングは経済関係を大きく縮小したり、場合によっては完全に切り離したりするのに対し、デリスキングは依存の「度合い」を調整する点に特徴があります。関係を断つのではなく、他国へ分散させながら、経済的な協力関係を維持するアプローチです。

実際の政策や企業戦略では、すべての分野を一律に切り離すのではなく、重要度に応じてデカップリングとデリスキングを使い分けるケースが一般的です。例えば、安全保障に直結する重要分野ではデカップリングを進め、それ以外の分野ではデリスキングによってリスクを抑えるといった対応が取られています。

グローバル・デカップリングの現状

グローバル・デカップリングは、特定の国だけが進めている動きではなく、世界各地で広がりを見せています。ここでは現状をより具体的に理解するため、主要地域の動向について解説します。

米中デカップリング

現在、グローバル・デカップリングが世界各地に広がっている背景の一つに、米中対立があります。米中両国は長年、貿易や投資を通じて密接な経済関係を築き、いずれも経済成長を実現してきました。

しかし、2017年に発足した第一次トランプ政権下で両国の対立は激化しました。近年では、半導体やAI、通信技術といった先端分野を中心にデカップリングが進んでいます。米国は中国に対して輸出規制や関税を強化しており、それに対し中国は技術の国産化を進めることで対抗しています。

日中デカップリング

米国の同盟国である日本が、米国と同じように中国とのデカップリングを進めているかと言えばそうではありません。日本にとって中国は最大の貿易相手国で、経済的に切り離すことが難しい関係にあるためです。

ただし、近年は日中関係が悪化しており、中国によるレアアース輸出規制といったデカップリングを想起させる動きも見られます。また日本企業の間でも中国依存のリスク、いわゆる「チャイナリスク」の警戒が強まっています。

その結果、注目されているのがチャイナプラスワン戦略です。これは生産拠点や調達先を中国に集中させるのではなく、他国にも分散させる取り組みです。このように日中関係は難しい局面を迎えていますが、日本企業の多くはデカップリングではなく、デリスキングを選択しています。

ロシアへの経済制裁

ロシアがウクライナに侵攻して以降、欧米諸国を中心とする各国は、金融・エネルギー・貿易など幅広い分野でロシアに対する経済制裁を実施しています。その結果、ロシアは欧州を中心とした経済圏から事実上切り離されている状態です。この事例は、地政学リスクがデカップリングにつながる可能性があることを示しています。

グローバル・デカップリングによる影響

グローバル・デカップリングは国家間の関係性だけでなく、世界経済や企業活動、さらには特定の産業に大きな影響を及ぼします。ここでは、「世界経済」「企業」「戦略物資」という3つの観点から、その影響を解説します。

世界経済への影響

グローバル・デカップリングが進むことで、まずは国際分業体制の弱体化が起こります。これまでの世界経済は、最も効率的な国や地域で生産し、グローバルに供給する仕組みによって成長してきました。しかし、デカップリングが進むことで、効率性が低下し、コストの上昇や供給の不安定化が起こりやすくなります。

その結果、貿易や投資の流れが滞り、世界経済の成長に下押し圧力がかかります。国や地域ごとの経済圏が分断されることで、世界全体としての成長スピードが鈍化するためです。このように、グローバル・デカップリングは一時的な政治戦略にとどまらず、中長期的に世界経済に影響を及ぼすリスクがあります。

企業への影響

グローバル・デカップリングが進むと、多くの企業にとって課題となるのは、サプライチェーンの再構築です。これまで特定の国や地域に生産や調達を依存してきた企業は、生産拠点や調達先の分散を迫られるためです。その結果、コストの増加や管理業務の複雑化といった負担が生じるリスクがあります。

一方で、デカップリングはリスクばかりではありません。生産拠点の移転や分散に伴い、新興国や第三国への投資が活発化するなど、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もあります。さらに、安全保障やリスク管理に関連するサービスへの需要が高まるなど、新しい市場の拡大も期待できます。

戦略物資への影響

グローバル・デカップリングの影響が特に顕著に表れやすい分野は、半導体やエネルギー資源、レアメタルといった戦略物資です。これらの戦略物資は、製造業の基盤を支えるだけでなく、国家安全保障とも深く結びついており、安全保障上の理由から規制や管理の対象となりやすいためです。

こうした背景を受け、多くの国では自国の生産能力の強化や安定した供給網の確保を重視するようになっています。実際、日本でもレアアースを深海底から採掘する実験が進められるなど、資源確保に向けた取り組みが本格化しています。

米欧関係の変化が生む新たなデカップリングリスク

近年、これまで価値観を共有してきた米国と欧州の関係に亀裂が生じています。その背景にあるのが、トランプ米大統領の言動です。例えば、グリーンランドの領有をめぐる発言やアフガニスタンにおけるNATO部隊の貢献を軽視する姿勢、さらには複数の国際機関からの脱退などが挙げられます。

こうした言動は、欧州諸国の間でトランプ政権に対する不信感を強める結果となりました。その影響もあり、これまで西側諸国とされてきた国々の中で、中国との関係強化を模索する動きが広がっています。

実際に2025年12月以降、フランス・カナダ・英国の首脳が相次いで中国を訪問しており、さらに2月にはドイツのメルツ首相も訪中する予定です。

こうした欧州の動きに対し、米国が今後どのような政策で応じるのかにも注目が集まっています。すでに米国は、カナダに対して関税強化を示唆するなど、強硬な姿勢を見せています。このような米欧関係の変化は、新たなデカップリングを生み出すリスクがあり、今後の動向を注意深く見守る必要があるでしょう。

まとめ

グローバル・デカップリングとは、国家間の経済的な結びつきを分断する取り組みです。米中対立を起点に、こうした動きは世界各地へと広がり、世界経済や企業活動、さらには戦略物資の供給体制にも大きな影響を及ぼしています。

海外事業を展開する企業にとっては、リスクと同時に新たなビジネスチャンスを見極めることが重要です。ただし、米欧関係に亀裂が生じつつある中、国際情勢の先行きを見通すことは、これまで以上に難しくなっていると言えるでしょう。

このような環境下で海外進出を成功させるためには、海外市場調査や海外法規制調査などの重要性が一段と高まっています。進出先の選定や事業戦略の立案など、海外展開でお悩みの方は、ぜひプルーヴまでお気軽にご相談ください。

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