【2026年2月】高市政権圧勝で何が変わる?海外事業への影響を分析

2026年2月8日に実施された衆議院選挙において、自民党は単独で3分の2以上の議席を獲得しました。これにより、参議院で法案が否決された場合でも自民党単独で再可決が可能です。つまり、法案を単独で成立させる力を持つに至りました。

圧倒的な政策実行力を得た第2次高市政権ですが、世界経済は不確実性を増しています。トランプ関税や米中対立の激化、地政学リスクの高まりなど、先行きは不透明です。このような状況下で、同政権がどのような外交戦略を展開するのかに注目が集まっています。

本記事では、2026年2月時点の情報を基に、第2次高市政権が海外事業に与える影響について分析します。

高市政権の基本方針は「責任ある積極財政」

まずは、高市政権の基本方針について解説します。

高市首相は、「責任ある積極財政」を政策の柱に据えています。これは成長が見込まれる分野へ政府が積極的に投資し、経済成長を促すことで、結果的に税収を増やして財政を健全化していくという考え方です。

従来の支出を抑制する緊縮型の財政運営とは一線を画し、必要な支出拡大を前向きに認める点が特徴です。

この基本方針は、国内経済の活性化にとどまらず、国内企業の技術力や競争力を高める効果が期待されます。結果として、企業は海外市場でも競争力を発揮しやすくなり、成長分野での海外進出が一層進むことが予想されます。

高市政権の外交・国際戦略の方向性

海外進出の機運が高まると予想される中、高市政権が今後どのような外交を展開するかに注目が集まっています。政権の外交方針によって、世界のどの地域でビジネスチャンスが生まれるかが変わるためです。ここでは、2026年2月20日の施政方針演説を基に、第2次高市政権の外交の方向性をわかりやすく解説します。

参考:首相官邸「第221回国会における高市内閣総理大臣施政方針演説

対米政策は「連携強化」

高市政権は、日米同盟を日本の外交・安全保障政策の基軸と位置付けています。施政演説では、「安全保障、経済、文化など、あらゆる分野で日米関係をさらに強化」と明言。また選挙期間中には、トランプ米大統領が高市早苗氏への支持を表明しており、日米首脳の良好な関係が伺えます。

2025年10月に両首脳は、日米が「黄金時代」を築くことを確認しており、両国がさらなる成長を目指す姿勢を鮮明にしています。

また、2026年3月に高市首相は訪米を予定しており、日米間の信頼関係をさらに固める方針です。企業にとって安定した日米連携は、米国進出の追い風となる可能性があります。

対中政策は「戦略的互恵関係」を維持

高市政権の対中政策は、従来通り「戦略的互恵関係」の維持を基本方針としています。「中国とは建設的かつ安定的な関係を構築することが重要」と述べつつ、国益の観点から冷静に対応する姿勢を示しています。

一方で、高市首相の台湾に関する発言をめぐり日中関係が急速に悪化しているのも事実です。この影響で、中国は日本企業に対する輸出規制や日本への渡航自粛の呼びかけなどを行っています。こうした状況は、対中ビジネスを展開する企業にとって大きなリスク要因となっています。

「自由で開かれたインド太平洋」の推進

高市政権は、安倍晋三元総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を踏襲し、インド太平洋地域の安全保障と経済連携の強化を進める方針です。演説では、AI・デジタル技術の急速な進化や地政学的競争の激化を背景に、地域の自律性と強靭性を高める必要性を強調しています。

具体的には重要物資のサプライチェーン強靭化や経済成長の機会創出、官民連携による安全保障能力の強化、ODA拡大などを通じて「インド太平洋を強く豊かにする」取り組みを進めるとしています。

出典:外務省「自由で開かれたインド太平洋

自由貿易協定の拡大

高市政権は、経済外交の柱としてEUやASEANとの自由貿易協定の拡大を重視しています。CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)についても、締約国の拡大や協定改定を目指す方針です。

自由貿易体制の拡大は、国内企業にとって海外市場へのアクセスを容易にし、競争力の強化につながることが期待されます。特にASEANやEUとの連携強化は、海外進出先を検討する上で重要なポイントです。

サプライチェーンの強靭化

高市政権は、中国によるレアアース輸出規制などを念頭に、サプライチェーンの強靭化を目指す方針です。演説では、戦略的自律性と不可欠性を確保するため、特定国に依存しないサプライチェーン再構築と同志国との連携強化を明言しています。これにより、国内企業は安定した原材料・部品調達体制を構築しやすくなり、海外進出や製品競争力の維持にもプラスに働くことが期待されます。

2026年2月時点:高市政権による海外事業への影響

高市政権の基本方針や第221回国会施政方針演説、そして現在の外交関係を踏まえ、日本企業の海外事業への影響について5つの視点から分析します。

対米巨額投資による商機の拡大

2025年7月の日米合意に基づき、日本は5,500億ドル(約85兆円)の対米投資を予定しています。この合意は、前石破政権時代に相互関税や自動車関税の引き下げと引き換えに、日本が巨額の投資を行うことを約束したものです。

2026年2月18日には、第1弾として人工ダイヤ製造、原油輸出インフラ、ガス火力の3プロジェクトへの投資が決定しました。高市政権もこの対米投資を継続する方針を示しており、今後さらに米国内への投資は拡大すると考えられます。

また、対米投資は日本側にもメリットのある事業を中心に選定されているため、日本企業にとってもビジネスチャンスです。こうした巨額投資は、日本企業が米国市場で存在感を高める絶好の機会とも言えるでしょう。

チャイナリスクの再評価

高市政権は、対中政策として戦略的互恵関係の維持を基本方針としていますが、日中関係は急速に冷え込んでいます。

実際に中国が国民に日本への渡航自粛を要請した結果、春節期間中の訪日観光客は約6割減少しました。GDPベースで1.7兆円規模の損失が見込まれています。

また、中国は第2次高市政権発足後も報復措置を継続しています。高市首相が掲げる国防費の増額や憲法改正が地域の安定を脅かすとしているためです。そのため、今後も中国は日本に対して強硬な姿勢を貫くと考えられています。

企業はこうした状況を踏まえ、対中ビジネスのリスクを改めて評価する必要があります。

サプライチェーンの再構築

高市政権は中国を念頭に置きつつ、特定国への依存を避けるサプライチェーンの再構築を進めています。これに伴い、企業も部品や原材料の調達先を見直す動きが加速する可能性があります。日中関係の悪化やトランプ関税、地政学リスクの高まりを背景に、特に海外事業を展開する企業にとっては、安定的な供給体制を確保するためのサプライチェーン再構築が急務となるでしょう。

インド太平洋地域・EU・ASEANの商機拡大

高市政権は「自由で開かれたインド太平洋」の推進と、EU・ASEANとの自由貿易協定の拡大を重点政策に据えています。この方針は、海外事業を展開する企業にとって重要な意味を持ちます。

まずインド太平洋地域では、安全保障や経済連携の強化に伴い、新たなビジネスチャンスが広がるでしょう。また、地政学リスクの高まりを踏まえると、リスク分散の観点からこの地域へ進出する重要性も増していると言えます。

さらに、EUやASEANとの自由貿易協定が拡大すれば、関税や手続きの障壁が下がります。日本企業にとっては現地での販売や拠点設立の機会が増えるため、海外事業拡大の追い風となるでしょう。

最後に、トランプ関税や中国市場の不確実性といった既存市場のリスクを踏まえると、インド太平洋やEU・ASEANへの進出は事業の安定性を高める戦略的な選択肢にもなります。

今後は、政策の動向を踏まえながら、これらの地域への海外戦略を見直す必要があるでしょう。

顕在化した為替変動リスク

高市政権の基本方針は積極財政です。一般に、積極財政は円安圧力を高める傾向があるとされています。実際に第1次高市政権発足以降、円安傾向が強まり、1ドル=159円台まで円安が進みました。

しかし、1月23日には状況が一変し、為替は1ドル=158円から155円へと急速に円高へ転じました。これは、米当局が為替介入の前段階とされる「レートチェック」を実施したことが背景にあります。その後も円高は進み、一時は1ドル=152円台に達しました。

その後、為替介入が実施されなかったことから、再度円安傾向へと転じました。そのような中、高市首相が日銀の追加利上げに慎重な姿勢を示したことで、円安を容認すると見られています。

このように、高市政権の政策や発言に加え、海外要因が重なることで為替は不安定な動きを続けています。海外事業を展開する企業にとっては、こうした急激な為替変動に備えたリスク管理がこれまで以上に重要です。

まとめ

衆議院選挙で圧勝したことから、第2次高市政権は外交・経済の両面で大きな影響力を持つことになります。対米関係の強化により商機の拡大が期待される一方で、対中関係の悪化に伴うリスクやサプライチェーン再構築といった対応が必要です。

また、「自由で開かれたインド太平洋」の推進やEU・ASEANとの連携強化により、新たな市場機会が広がる可能性もあります。海外事業を展開している企業は、商機を的確に捉えるためにも、今後の高市政権の動向に注目しましょう。

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