世界で活躍する女性起業家と日本企業の今後の課題

日本の女性実業家として最も知名度が高いと言われるIT大手DeNAの南場智子氏が、2021年3月8日、経団連の副会長に内定したと発表されました。経団連の副会長に女性が就任するのは初めてのことで、森喜朗元オリンピック会長の女性蔑視発言直後の嬉しいニュースとなりました。

 

現在から15年以上前、2003年小泉政権は「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%にする」という目標を打ち出しました。

その後、2012年12月から約7年続いた安倍晋三政権は「アベノミクス3本の矢」を提唱し、この第3の矢である「成長戦略」の中にある「女性の活躍」を中核とし、2016年4月に「女性活躍推進法」が全面施行されました。女性管理職の登用を進める風潮が広まっている感じは受けますが、実情はどうでしょう。

女性の社会進出はグローバルスタンダードとなってきていますが、ここでは、日本において女性の社会進出は進んでいるか考察するとともに、海外で活躍する女性起業家についてご紹介します。

 

日本の女性管理職比率

森喜朗

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2021020500005.html

 

2月3日、東京五輪組織委員会の森喜朗会長は、日本オリンピック委員会の臨時評議員会で、JOCが女性理事を増やす方針を掲げていることに対して「たくさん女性が入っている理事会は時間がかかる」と発言し、このことは「女性蔑視である」とメディアや各界の著名人から激しく叩かれることになりました。また、米ニューヨーク・タイムズ紙も、「東京五輪トップ、会議への女性の参加制限を示唆」という見出しをつけて記事を掲載するほど注目されました。

政府は女性管理職比率を「2020年までに30%」とする目標を掲げてきましたが、現実は2016年度に厚生労働省が発表した「雇用均等基本調査」全体で12.1%と、目標には遠く及ばない水準となりました。

女性管理職

https://sourire-heart.com/8386/

 

2019年時点で女性の管理職比率は17%で、2020年に目標年次を迎えましたが、達成は実現しませんでした。

なぜ日本では、管理職の女性の割合が少ないのでしょうか。

日本の女性管理職

https://mainichi.jp/articles/20180107/ddm/008/020/060000c

※総務省による「労働力調査」より

日本の女性管理職2

https://financialservicesblog.accenture.com/japan/female-success-and-financial-institutions?lang=ja_JP

 

 

日本で女性の管理職の割合が低い理由

日本で女性の管理職の割合が低いのは、主に下記2つの「昇進システム」に問題があると法政大学の武石教授は述べています。

 

海外との昇進の仕組みの違い

外国では転職する人も多いが、中途入社から昇進することが当たり前になっています。そのため、出産などでキャリアが中断されたとしても、途中から参入した女性も昇進することができるシステムがあります。

 

一方、日本では終身雇用が一般的で、年功序列のシステムの中で昇進していきます。女性が出産や子育てで一度キャリアコースから外れてしまうと、復帰はできても昇進のチャンスに恵まれないと指摘しています。

 

女性の非正規雇用率が高い

日本では、女性の非正規雇用率が高いことも問題です。平成の初期の頃は、主婦のパートが中心でしたが、1990年代後半から「若年非正規」と呼ばれる人たちが増加しました。

 

※若年非正規

新卒で正社員になれず、派遣社員や契約社員になった人たちで、非正規でスタートしてしまったために昇進コースから外れてしまった女性

女性正規労働者

https://www3.nhk.or.jp/news/special/heisei/view-data/view-data_04.html

 

企業は、非正規スタートの女性も昇進できる仕組みを作らなければ、女性の管理職の割合を増やすのは難しいでしょう。

 

 

世界から見た日本の女性起業家の数

 

それでは日本の女性「起業家」の数値は世界に比べてどのようになっているのでしょうか。アメリカの下記2つのレポートをご紹介します。

 

米Dell女性起業家に関するレポート「Global Women Entrepreneur Leaders Scorecard」(2015年度)

 

日本を含む31カ国における女性起業家の現状を評価しました。日本は2015年時点で、100点満点中49点の10位でした。(スペイン、ジャマイカと同順位)

女性CEOの比率をみると、アメリカではS&P500インデックスの企業に女性が4.6%を占め、上級管理職は21%、取締役の肩書きを持つ女性は19.2%となっていました。

 

米クレジットカード大手のマスターカード「女性起業家指数ランキング」(2020年度)

 

このレポートによると、女性起業家指数の上位5か国は下記の通りとなりました。

  • 1位:イスラエル(74.7ポイント)
  • 2位:アメリカ(74ポイント)
  • 3位:スイス(71.5ポイント)
  • 4位:ニュージーランド
  • 5位:ポーランド(68.9ポイント)

日本は51.4ポイント、47位だったのですが、女性起業家の割合は世界に比べて高くないことが分かります。女性が起業家にチャレンジしにくい日本独特の環境に「経験の差」が挙げられます。起業する人が多い30代後半までに、男性は仕事で様々な経験を積むことができます。

一方、女性は機会を与えられないことが多いという現状があり、このことが足かせになっていると指摘されています。また、起業した後も女性が育児や介護を担っていることが多いことも事業拡大の妨げとなっているのでしょう。

 

女性起業家を増やすメリット

アメリカの心理学者で元エール大学教授のアービング氏は、ニクソン元米大統領が辞任に追い込まれたウオーターゲート事件などを分析し、意思決定層が偏った属性で占められる組織では、大きく誤った判断をしてしまう『集団浅慮』と呼ばれる傾向があると指摘しています。

男性ばかりが経営判断に関わる企業や、男性経営者ばかりが存在感を持つ社会は、実力の過大評価や忠告の無視が起こりやすいということです。

女性が経営する企業が影響力を持つようになれば、日本の経済を支える企業の営者の多様性が増し、日本全体が集団浅慮となるリスクを下げることができるというメリットが生れるでしょう。

 

世界で活躍する女性起業家

それでは次に、世界で活躍する女性起業家を5名ご紹介します。

ABCサプライ ダイアン・ヘンドリック氏

ダイアン

https://acthouse.net/column/fentre/

 

大富豪の格付けメディアForbesで「世界で最も成功した女性起業家」に選ばれたダイアン氏は、1982年に建築資材卸売のビジネスを屋根工事の職人である夫と共に開始しました。ABCサプライは、同業買収を積み重ねた後、3年目には33店舗にまで拡大します。

しかし、二人三脚で頑張ってきた夫が屋根から転落したことで帰らぬ人となり、数々の困難を経験しています。夫の死を乗り越え、一念発起し、年商を2倍にしました。7人の子を持つ母親でもあります。

 

ボディショップ アニータ・ロデック氏

アニータ

https://acthouse.net/column/fentre/

 

日本でも有名なイギリスの「ザ・ボディショップ」の創立者アニータ氏は、イギリスのハンプトン1号店でたった15品の商品販売からスタートし、現在では世界約3,000店舗まで拡大しています。

「自然由来の成分・動物実験をしない・容器のリユース・フェアトレードで原材料を購入」をモットーに、CSRと商業戦略を同時に確立したビジネスモデルを成功させました。

 

藍思科技(Lens Technology)周群飛氏

周

https://acthouse.net/column/fentre/

 

中国でディスプレイグラス製造の事業を創業した周氏は、極貧の山村に生まれ、盲目の父と共に過ごすという壮絶な幼少期を過ごしています。

昼間は低賃金の工場勤務とアルバイトをしながら夜間に勉強、税関の補助員やトラックの免許を取得するなど、そのストーリーは波乱万丈です。創業から12年後、自社ビジネスを1兆円規模まで成長させ、現在は大手取引顧客にiPhoneも入っています。

 

ISAKジャパン 小林りん氏

小林倫

https://resemom.jp/article/img/2020/07/22/57337/262780.html

 

社会起業家である小林りん氏は、学校法人ISAKジャパンを立ち上げた代表理事です。

東京大学経済学部卒業後、スタンフォード大学大学院で修士号を取得し、その後イエール大学で学びました。1998年からモルガン・スタンレー日本法人に勤務後、国際協力銀行を経て、UNICEFにも勤務した経験を持つ国際派の女性です。

2014年、日本初の全寮制インターナショナルスクールを開校し、世界各地から多様な生徒を集め、国際社会で活躍するリーダーを育てる教育に注目が集まっています。

 

EastMeetEast  時岡真理子氏

時岡

https://www.asteria.com/jp/inlive/startup/3222/

 

現在アメリカでは結婚する夫婦のほぼ1/3がマッチングサービスから誕生しているほど、この市場規は規模が大きい業界です。

しかしアメリカでは、「アジア人」というだけで一括りにされてしまうことに違和感を持っていた時岡氏は、周りで婚活に苦労しているアジア出身の友人たちを助けたいという想いから、アジア人に特化したサービス「East Meet East」をニューヨークで創業しました。

Forbes JAPANにより「世界で闘う日本の女性55」の一人として脚光を浴び、500 Startupsを含む有名VCから資金調達に成功しています。

 

日本企業における女性管理職多い会社

パナソニック

https://news.panasonic.com/jp/topics/2014/38578.html

 

全ての女性が抱く「美しくありたい」という想いを美容家電で支えるパナソニックは、「忙しい人を、美しい人へ」のコンセプトを掲げ、フェイスケア、ヘアケアなどの商品をパナソニック ビューティとして世界に展開し、活躍する女性を応援しています。

 

日本で女性の社会進出を応援する企業には、どのような会社があるのでしょうか。日経新聞が発表した2020年度と2019年度の「女性管理比率ランキング」を見てみましょう。

女性管理職比率

https://toyokeizai.net/articles/-/377811?page=3

※2020年度

女性管理職比率2019

https://toyokeizai.net/articles/-/269128?page=3

※2019年度

 

1位の料理教室のABC Cooking Studio、2位のシーボン(美容)、3位のミュゼプラチナム(美容)などは女性であることが活かせる職場は同時に女性の管理職が増える傾向があります。

2019年、2020年は2位に下がってしまいましたが、2017年、2018年1位となったシーボンは、「女性が働きやすい環境づくり」についてどのような取り組みをしているのでしょうか。

 

直営106店舗を持つシーボン

フェイシャリストサロンを中心に化粧品販売やアフターサービスを提供する化粧品メーカーです。

「お客様の肌に最後まで責任を持つ」という想いから、化粧品の販売に加え化粧品の購入金額に応じて東洋式美顔マッサージなどのアフターケアサービスを提供しています。

従業員1065人のうち女性が983人と女性が圧倒的多数を占めており、管理職138人のうち女性が122人、女性管理職比率は88.4%に達しています。

シーボン

https://www.cbon.co.jp/company/csr/women

 

結婚、出産、介護などと両立するための多様な働き方に関して、下記のような取り組みが挙げられます。

  • 1日6時間など短時間勤務であろうと正社員と同等の福利厚生がついている「ショートタイム正社員」制度
  • 社員が一度退職しても即戦力として再入社できる「ウェルカムバック制度」

 

上記の取り組みにより、「女性の管理職比率85%以上」の目標をクリアすることに成功しました。

シーボン経緯

https://www.cbon.co.jp/company/csr/women

女性活躍の実績

 

日本企業の残る課題

女性活躍推進は、政府の方針でも掲げられていることもあり、一足飛びに対応しようとする企業も多くあります。現在在籍している女性社員をできるだけ早く登用しようと急ぎ、問題が発生することもあるようです。

 

プレジデント社が女性社員に対して取った「管理職になりたいと思うか」のアンケート結果を見ると、「管理職になりたくない」と回答している女性一般社員が82%もいました。その理由は、「責任のある仕事を家庭と両立できるのか」「負担だけが増えてしまうのではないか」などの不安でした。仕事と子育ての両立に非実現性を感じ、管理職になることにマイナスイメージを抱いていることが分かります。

 

女性社員が管理職になることに良いイメージを持てるよう、企業は女性社員とコミュニケーションを取りながら職場の環境を改善していく必要があるでしょう。

 

最後に

女性の管理職だけでなく女性の起業家も世界に比べるとそれほど多くないのが日本です。

女性の社会進出を促進するには、子育てや家事を任されがちな主婦が男性の協力を得たり、企業からサポートしてもらえる環境が必須です。

今後は、2020年に達成できなかった「女性管理職30%」の目標を振り返り、早期に実現してほしいと思います。

 

 

<参考>

https://hrnote.jp/contents/news/soshiki-cbon-20200218/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ106AN0Q1A210C2000000/

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e6bfe00e3f19ec88c310e3a1b90b7f1822a2474

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63975

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN03EDV0T00C21A2000000/

https://toyokeizai.net/articles/-/377811

https://www.panasonic.com/jp/corporate/management/business-initiatives/beauty.html

https://note.com/kenhasuda/n/nc4ac82e05499

https://toyokeizai.net/articles/-/98266?page=5

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO61731130Q0A720C2EAC000/

https://sourire-heart.com/8386/

https://news.mynavi.jp/article/20150709-woman/

https://www.viet-jo.com/news/social/201202181752.html

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ213NG0R20C21A2000000/?unlock=1

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