海外進出支援のプロが教える「地政学」とは

「地政学」というワードを聞いたことがありますか?

昨今のロシアによるウクライナ侵攻を始め、米中対立や台湾問題など、世界中の争いの背景を理解するには、この地政学の考え方が大切です。

本コラムは海外進出支援のプロの目線から、地政学についての概要と事例を紹介します。

地政学とは?定義と由来

地政学とは地理学と政治学とを組み合わせた学問です。具体的に国家間の地理的な位置関係からくる地理的要素と政治的要素により、その地域や社会に与える影響やリスクを研究しています。

地政学の定義と由来

地政学は、1916年にルドルフ・チェーレンによって提唱された考えがもとになった学問です。定義は国家間・地域間の地理的な要因がどのように関係しているか、世界経済や周辺地域にどのような情勢の変化をもたらすかを研究することです。

地理的要素の影響力

地政学で国家間・地域間に変化を与える要素の1つに地理的要素があります。地理的要素は国家間の紛争やクーデター、あるいは地域間の宗教的対立などが挙げられます。

政治的要素の関係

政治的要素も地政学の要素の1つです。例えば、輸出規制や関税の引き上げなどが挙げられます。このような貿易摩擦による国家間の関係の冷え込みも周辺地域に影響を与えます。

ランドパワーとシーパワーの考え方

地政学で国家はランドパワーとシーパワーに分類され、国家情勢を読み解くに当たりこれら2つに着目することは重要です。各国の置かれている立場や歴史的な背景の理解を深められるためです。

ランドパワーとは

ランドパワーとは大陸国家のことで、中国やヨーロッパ諸国が挙げられます。ランドパワーの特徴は隣国と陸続きのため、国境を警備するために陸軍を重視する傾向にあることです。

シーパワーとは

一方シーパワーとは海洋国家のことで、日本やアメリカ、イギリスが代表的です。シーパワーの特徴は資源などを確保するために、海上交通路の確保が重要で、海軍を重視する傾向にあります。アメリカは大きな国のため、「ランドパワーなのでは?」と思うかもしれませんが、長い海岸性を持っているためシーパワーに分類されます。

過去に生じた、地政学に関連する国際問題

過去に起こった国際問題で地政学に関連する国際問題は多数あります。例えば、日本への影響が大きかった近年の国際問題は以下の3つです。

  1. ロシアによるウクライナ侵攻
  2. 米中の貿易摩擦
  3. 中国と台湾

ここでは、これら3つの国際問題について詳しく解説します。

1.現在のロシアによるウクライナ侵攻

2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。この侵攻は地政学に関連する国際問題といえます。

ウクライナはもともとソ連を構成していた地域で、ロシア系の人が多く住むなど、ロシアと関係の深い国です。そのため1991年に独立した後も国内では、親ロシア派と親欧米派が対立を続けていました。

またウクライナは西欧諸国とロシアの中間に位置しており、西欧諸国・ロシアの緩衝地帯ともいえるような地理的な位置に存在しています。

そのような情勢のなか、ロシアの脅威に対抗するために北大西洋条約機構(NATO)が次第に勢力を強め、バルト三国などに東方拡大します。このことに危機感を持ったロシアが、ついに行動に移したのが2014年のウクライナ南部のクリミア併合です。

つまり、西欧諸国とロシアの地政学的な緊張の高まりで起きたのが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻といえます。

2.米中の貿易摩擦

2018年トランプ政権時代に勃発したのが米中貿易摩擦です。

きっかけは毎年膨れ続ける米中貿易赤字に対して、アメリカが高い関税をかけたことでした。すると、中国もアメリカに対して高い関税をかけ、双方が報復を続ける事態に発展しました。

双方の輸入品の多くに高い関税がかけられるだけに収まらず、ハイテク産業などにも飛び火します。例えばアメリカが安全保障を理由に、スマホメーカーのファーウェイに対して厳しい規制を発動したことが有名です。

米中の対立は中国がGDPで世界2位となり、1位のアメリカに迫るなか、様々な分野で世界の覇権をかけた争いとなっています。近年では、ロシアのウクライナ侵攻などから地政学的なリスクを考慮して、中国からのサプライチェーンなどを切り離すデカップリングなども進んでいます。

米中の対立は、現在も世界経済に大きな影響を与えている国際問題です。

3.中国と台湾

中国と台湾の問題は、日本に限らず世界に大きな影響を与えている地政学的な問題です。

台湾は複雑な歴史を持っており、1842年にイギリスの領土となり、1941年に日本に占領されました。その後は、1945年にイギリスの領土として復帰し、1997年に中華人民共和国に返還されます。

返還から20年以上たった現在でも台湾は、民主主義の政権を維持しています。しかし、中国は「台湾は中国の一部」を強く主張し、台湾との国交を結ぶ国に対して強い圧力をかけているほどです。

昨今では、中国による台湾進攻の可能性が指摘されるなど、軍事的な緊張も高まっています。日本と台湾は目と鼻の先にあるため、今後も注力すべき国際問題といえるでしょう。

海外進出支援のプロ目線での、今後考えうる地政学上のリスク

海外進出を検討されている企業も多いと思いますが、地政学上のリスクを把握していないと様々なトラブルに巻き込まれる原因となります。そこで海外進出支援のプロの目線から、今後考えうる地政学上のリスクについて紹介します。

リスク①:中国

中国はGDPが世界2位と大きな市場のため、海外進出先としては魅力的な国です。しかし米中対立や台湾問題、日本の安全保障戦略のリスクなど、地政学的なリスクも多い地域となります。

またウクライナ侵攻を受けて、地政学的なリスクを避けるために、重要なサプライチェーンは中国から切り離すデカップリングも進んでいます。このように、複雑なリスクが絡みあっているため、中国へ進出する場合は相応の準備が必要です。

リスク②:アメリカ 

アメリカに進出する場合は、米中対立やサプライチェーンの地域化、人権関連規制などのリスクがあります。

とくに中国工場からアメリカに出荷するといったビジネスモデルの場合、アメリカの輸出規制が強化される今日、リスクが高いといわざるを得ません。そのため、カナダやメキシコなどにサプライチェーンの拠点を移転する動きも活発になっていることから、同地域に進出するのも1つの方法といえるでしょう。

また、バイデン政権により「輸出管理と人権イニシアチブ」に関する行動規範が策定され、日本を含めて24ヵ国が参加しています。このような新たな取り組みについても注意が必要です。

リスク③:ヨーロッパ

ヨーロッパはロシアによるウクライナ侵攻が大きな地政学的リスクとなっています。

いまだに終結がみえないばかりか、ベラルーシに核が配備されるなど、状況は悪化しているためです。場合によってはヨーロッパに戦火が拡大する恐れもゼロとは言い切れず、ウクライナ情勢を注視する必要があります。

また、ヨーロッパのロシア産エネルギーからの脱却により、エネルギーの高騰や不安定化もリスクといえるでしょう。

まとめ

世界には様々な地政学的リスクがあり、世界進出の成功には、該当地域にどのようなリスクがあるかの把握が欠かせません。

また、ロシアによるウクライナ侵攻も終わりがみえないなか、世界情勢が目まぐるしく変わることも予想されます。正しい知識をつけて海外進出するためにも、ぜひ一度プルーヴにご相談ください。

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