FTA(自由貿易協定)とは?現状とEPAとの違い

FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)といった経済協定は、近年ますます注目を集めています。私たち消費者の生活だけでなく、世界経済にも大きな影響を与えることがあるのです。

今回はFTAとEPAについて、その意味、違いや影響について詳しく解説します。これらの協定は、日本経済にとっても大きな転換点となるもので、ビジネスパーソンなら必ず知っておくべき内容です。

FTAとは?

FTA(自由貿易協定)は、2カ国以上の国や地域が相互に関税や輸入割当などその他の貿易制限的な措置を一定の期間内に撤廃あるいは削減することを定めた協定です。Free Trade Agreementという英語の頭文字から作られた言葉です。関税や非関税障壁をなくすことで締結国・地域の間で自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指すものです。

FTA相手国と取引のある企業にとっては、無税で輸出入ができるようになる、消費者にとっても相手国産の製品や食品などが安く手に入るようになるなどのメリットが得られます。近年締結されるFTAは多くの場合、関税やサービス貿易の自由化だけでなく、投資、知的財産権、貿易の技術的障害(TBT)など幅広い分野をカバーしています。

90年代以降、WTO(世界貿易機構)の設立によって、世界経済を取り巻く環境では、貿易の自由化や促進と、貿易障壁の撤廃のため様々な取り決めが行われてきました。現在183ヵ国が加盟していますが、加盟国が増えるにつれて各国の利害対立が増え、世界全体でのルール作りが難しくなったところに、例外として各国間での自由貿易を認める形でFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を認め貿易を推進していくことになりました。

FTAの目的は?

FTAを締結することによって、締結国・地域の間で自由貿易が可能になり、お互いの貿易や投資が拡大されます。FTAを締結する国々が増えるほど、世界経済は活性化されていくことが期待されます。

FTAの目的は、国・地域間の貿易の自由化を促進し、関税などの自由貿易に関する障壁をなくし、国・地域同士の市場を統合し、世界の経済を成長させることにあります。これによって、企業の国際化が進み、効率的な生産が可能となり、価格競争力が高まることが期待されます。また、FTAを締結することで、政治的な連携や国際協力の強化にもつながるとされています。

FTAのメリット・デメリットは?

FTAのメリットは「関税の軽減・免除」にあります。FTAを相手国と締結することで、協定の内容および交渉によって、段階的な関税の軽減・免除ができるようになり、お互いのメリットを追求した貿易ができる可能性が高まるのです。

もしアメリカが車を作るのが得意で、中国がテレビを作るのが得意であれば、自由貿易によって自由にお互いの国の製品を輸出入できるので、それぞれの国が効率の悪い仕事をするために浪費する時間と労力を減らし、それぞれの国の強みを発揮できるようになるのです。
また、貿易の自由化により各企業間での競争が高まり、資源の再配分が生じて、生産性の低い企業から高い企業へと労働者が移動し、生産量も同様にシフトしていくことで産業全体としての生産性が向上するという貿易利益が生じると考える専門家もいます。

消費者の観点からも、輸入ありの製品は、輸入無しの製品と比較して購買力が高まるという検証結果が発表されました。品質の良い自国製品を購入するのか、安価な輸入品を購入するのか、同じ値段であれば、品質のよいほうを選択するといった、比較検討をすることで購買力が高まるというものです。

FTAにはこうした経済的なメリットだけではなく、政治・外交上のメリットもあります。経済的な関係を深めることで政治的な関係を深めることができます。また、様々な国・地域との関係を強化することで、世界の中で日本が活動しやすい環境をつくることができます。

とりわけ、食品やサービスを自由に依存し合うことによって、自国の消費や経済が安定するだけでなく、お互いの依存関係によって紛争や戦争の可能性可能性を減少させる効果があるのではないかと専門家は考えています。

ただその一方で、FTA締結により関税・非関税措置がなくなるため、ものとサービスの自由化が進み、輸出入の市場拡大に繋がります。 そのためFTAには「自国産業の衰退」を招く恐れがあります。 締結国・地域間の輸入規制を撤廃・引下げるため、協定内容によってはこれまで守られていた自国の産業が追い込まれる可能性があります。

自国産業が衰退に追い込まれた結果、雇用を失うことになりかねません。1994年1月に米国、カナダおよびメキシコの北米3カ国間で発効した、NAFTA(=北米自由貿易協定 North American Free Trade Agreement)では、 関税や数量制限など自由な貿易を妨げる障壁を撤廃するために複数国間で締結する自由貿易協定(FTA)を締結しました。ところが実際にNAFTAでは100万人以上の雇用が失われてしまった可能性があります。

また、環境や労働力を外国に移す企業が増えることによって、組織的な環境破壊や治安の悪化を招く恐れがあります。例えば、アメリカを拠点にすることで、高い労働力を払い、更に法律によって環境を守る為の取り組みをしなければならない場合に、外国へ拠点を移したとしたら、労働や環境に対して規制がないために大幅なコスト削減が期待できるかもしれません。しかし、その反面、労働力の確保が難しくなったり、環境破壊が進む恐れがあるのです。

このように、自由貿易にはメリットとデメリットがあることを十分に承知しておく必要があるでしょう。

FTAの現状は?

2020年、FTAは世界各国・地域で広く締結され、貿易自由化を促進する重要な役割を果たしています。FTAは、一般的には二国間協定から始まり、複数国参加の協定へと発展していきます。EUやNAFTAはその代表的な例であり、現在は約200以上のFTAが締結されています。世界各国・地域では、FTAを含めた貿易協定の締結が盛んであり、日本もシンガポールを皮切りに、FTA・EPAの締結が進んでいます。

FTAの歴史を振り返ると、1990年以前は世界のFTAは約20件にとどまっていましたが、WTO交渉の停滞や途上国の経済開放路線のシフトなどの要因により、90年代に約60件増加し、2000年代に入るとFTA締結が加速し、2000年以降300件近くのFTAが新たに発効しました。現在も多くのFTAが交渉中あるいは発効を待っている状況です。

一般的にFTAは、交渉を経てまず大筋合意の形で妥結し、その後署名、双方議会での批准を経て発効するというのが一般的なプロセスです。発効しなければ優遇された税率を利用することもできません。従って、交渉がプロセスのどの段階にあるのかを見定める必要があります。FTAは、貿易の自由化を促進することで、経済の成長や雇用の創出などの効果が期待されています。

日本は、2001年にシンガポールからの打診を受け、2002年に初めてFTAを締結しました。日本が締結するFTAには、投資、政府調達、ビジネス環境整備など、WTOが規定する以上の内容(WTOプラス)が含まれています。

日本は、シンガポールとのEPAを契機にFTA戦略を進め、二国間のFTAだけでなく、ASEAN・日本包括的経済連携協定(AJCEP)、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、通称TPP11)、日EU経済連携協定(日EU・EPA)、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定など、複数の国間の協定も締結しています。2022年2月現在、発効・署名済みのFTAは21件あります。

これらの大型FTAの締結・発効により、日本のFTAカバー率が引き上げられ、企業の貿易コストが低下することが期待されています。

FTAとEPAの違いとは

そもそもEPAとは何かというと、経済連携協定(Economic Partnership Agreement)を正式名称とする、特定の国や地域間の貿易や投資を促進するための条約です。

結論から言えば、FTAとはEPAに含まれるもので、FTAが「関税の撤廃・削減を定める」のに対して、EPAは「関税だけでなく知的財産の保護や投資ルール、さらには人的交流の拡大なども網羅」したものになります。つまり

■FTA:

特定の国・地域間での関税やサービス貿易の障壁などを削減・撤廃するルールを定めた協定

■EPA:

投資規制の撤廃、知的財産制度の保護、人的交流など、FTAと比較してより幅広い分野での共通ルールを定めた協定

ということになります。

FTAは、特定の国・地域間で物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定で、自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指します。FTAにより、取引のある企業は無税で輸出入ができ、消費者にとって相手国産の製品や食品などが安く手に入るようになります。

FTAは主に関税の撤廃・削減を定めますが、EPAはFTAの範囲に加えて知的財産の保護や投資ルールの整備などを含みます。また、EPAには人的交流の拡大や、教育・文化・観光などの協力も含まれており、外国人の看護師や介護福祉士などが日本で働く機会が増えて、新たな雇用が創出されるなど、多様な分野での相互利益が期待されます。日本のEPAでは、インドネシアやフィリピンにおける日本語講師の派遣なども実施されています。

このように、日本ではEPAを積極的に締結しており、現在では14カ国とASEAN地域全体で締結しています。

その後、日本はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加し、2016年2月に12カ国で署名しました。しかし、2017年1月にトランプ米大統領が離脱を宣言したため、発効が危ぶまれました。TPP参加11カ国の国内手続きが進んだため、米国を除くTPP11が2018年12月30日に発効しました。

TPPはEPAと同様、国境を越えた経済活動をスムーズにするための必要なルールを決めますが、WTO、EPAよりも多くの項目が対象になり、高いレベルの自由化が目標とされています。関税撤廃に関しては「物品市場アクセス」という項目で話し合われますが、必ずしも全ての品目が対象となるのではなく、交渉全体のパッケージの中で決まることとされています。

また、TPPはFTAで謳われる物品の関税の撤廃・削減やサービスの貿易自由化に留まらず、非関税分野(投資、競争、知的財産)のルールづくりや、環境・労働などの新しい分野の内容を取り決める協定として交渉されていることも大きな特徴です。

日米両国は、2019年9月26日にTAG(日米物品貿易協定)について交渉を開始することで合意しました。TAGは、商品にかかる関税の削減や撤廃を目的とした協定であり、農産品についてはTPPで合意した以上の譲歩には応じないこと、交渉中は輸入自動車への追加関税措置を発動しないことで合意されました。しかし、交渉が進んでいく中で、ムニューシン米財務長官が10月13日に今後の通商協議で、日本にも通貨安誘導を防ぐための為替条項を求めていく意向を示したことで、協議の行方に不透明な要素が加わりました。

さらに、交渉が進展するにつれて、米政権が望む「事実上のFTA交渉」に発展する可能性が高いとされており、協議の行方が注目されています。また、TAGの交渉を通じて、日本は米国との経済関係を強化することで、中国の影響力拡大に対抗する意図もあるとされています。TAGの交渉は今後も続く予定であり、その成果や展開に注目が集まっています。

まとめ

90年代以降、自由貿易の進展により世界経済は大きく変化してきました。これからも、日本を中心に周辺諸国の動向が大きく変化する可能性があり、私たちはその動向に十分な注目を払う必要があります。FTAやEPAは、ビジネスやマーケティングにおいても重要なキーワードとなっています。それらをしっかりと把握しておくことは、今後のビジネス展開にとって必要不可欠なことでしょう。

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