2019年11月14日の世界糖尿病デーに、国際糖尿病連合は世界の糖尿病に関する最新の調査「IDF 糖尿病アトラス 第9版」を発表しました。世界の糖尿病人口は爆発的に増加し続けており、2019年時点の糖尿病有病者数は4億6,300万人に上ることを明らかにしました。
世界では11人に1人が、65歳以上では5人に1人が糖尿病にかかっています。
https://dm-net.co.jp/calendar/2019/029706.php
糖尿病を含む生活習慣病への懸念などを持つ健康志向の高い消費者は増加しており、栄養補助食品市場の主要な成長因子になると予測されています。合成薬を使用せずに健康的な生活を送るための選択肢として、栄養補助食品やサプリメントのニーズが急速に高まっています。
ここでは、世界の栄養補助食品の動向についてご紹介します。
サプリメント(栄養補助食品)の市場動向
サプリメントには、錠剤、ソフトジェル、カプセルなどのさまざまな剤形があり、栄養不足を改善するだけでなく、正常な身体機能を強化することが目的として服用されます。
英国調査会社のユーロモニターのレポート「Global Vitamins and Dietary Supplements2019」では、2018年度における世界のサプリメントの市場売上は、約1,140億ドルに成長しており、国別ではアメリカ291億ドル、中国231億ドル、日本110億ドルとなっています。
地域別では中国を含むアジア地域の成長が目覚ましく、この市場の約半分を占める結果となっています。
2028年までに最大の市場価値を達成すると予想されており、世界的な業界のリーダーカンパニーは下記が挙げられます。
- Abbott
- Bayer
- Otsuka
- Pfizer Inc.
- GlaxoSmithKline plc
- Herbalife International of America, Inc.
- Amway
- NuSkin Enterprises
- Arkopharma
- Nature’s Bounty 等
サプリメントや健康食品をメインに扱う老舗大手企業や大手製薬会社が入っています。
各国の健康食品事情
SDGsの目標3は「だれもが健康で幸せな生活を送れるように」であり、この目標は「疾患を減らすことを含めて、すべての年齢のすべての人々の健康と福祉を確保すること」を目指しています。
https://www.manegy.com/news/detail/491
このSDGsの目標を実現するために、世界中の人々の健康への意識は高まっています。アメリカ、中国、ヨーロッパ、日本にはどのような動向の特徴があるのでしょうか。それぞれ見てみましょう。
アメリカマーケット
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2010/20100908_01.html
「ネイチャーメイド」は、1971年にサプリメント大国アメリカで誕生し、アメリカでの店頭販売シェアNo.1を持ち、現在では世界各国で販売されています。日本でもお馴染みのサプリメントブランドで、1993年に大塚製薬が販売を開始しました。
2018年度、アメリカのサプリメント市場は前年度比3.3%増の244億ドルとなり、ここ数年は伸長率が3%程度ですが、依然として拡大基調が続いています。市場が拡大している要因として、医療費負担の増大により消費者が疾病の「治療から予防」に意識を変えており、健康的なライフスタイルを求める傾向が強まっていることが挙げられます。
世界のサプリメント市場の最先端アメリカの市場規模は、2018年時点で、約2.6兆円と言われ、成人の約8割が何らかのサプリを摂取しています。
それでは、2020年のアメリカのサプリメントのトレンドを5つご紹介します。
サステナブル
SDGsをきっかけに「サステナブル(持続可能性)」という言葉が話題になっていますが、サプリメントにもその傾向が表れています。
国連食糧農業機関は、持続可能な食生活について「環境への影響が軽減され、食物と栄養の安全と、現在と将来の世代の健康的な生活に寄与する食事」と定義しており、健康意識の高い層は環境への意識も高い傾向があります。サステナブルなサプリメントとは下記のようなものを指します。
- 有機栽培などの持続可能な原料を使っている
- 添加物や乳化剤などの化学薬品を使わない
- 再生可能エネルギー、クリーンエネルギーを活用している
- 環境やリサイクルに配慮したパッケージを使用している
- 環境に優しい輸送資材を使用している
植物由来
ベジタリアンやヴィーガンの人々が増え、乳製品や動物由来成分が入っていないサプリメントが人気で、保存料や人工香料などの添加物を使用しない100%天然由来のサプリが好まれるようです。
CBD(カンナビジオール)
最近アメリカでブームとなっているのがCBDと呼ばれる天然に大麻草成分で、自然療法にも利用されています。ストレスや痛みの緩和、不眠症、鎮静作用、リラックス効果があると言われています。
「大麻」と聞いて連想するような、酩酊状態を起こす成分は含まれておらず、依存性の低いもののようです。
薬用キノコ
キノコは古来より生薬として使われてきましたが、薬用キノコがサプリメントの成分として注目を集めており、中でも特に人気なものが霊芝と冬虫夏草です。両者は中国4000年の歴史の中で歴代の皇帝が愛用してきたキノコです。
MCT(中鎖脂肪酸)
日本でも話題となっているMCTは、アメリカでも海外セレブが「ダイエット効果がある」と言って愛用し始めたのをきっかけに、数年前からブームとなっています。主成分である中鎖脂肪酸は、ココナッツオイルやパーム油に含まれる天然成分で、一般的な油よりも短時間で消化が進み、エネルギーになるのが特徴です。
アジア全体と中国の動向
アジア全体
https://dm-net.co.jp/calendar/2019/029706.php
日本では、国内市場が成熟期に入り海外へ進出することへの必然性が高まっていますが、中国や東南アジアでは生活習慣病の予防対策のための改革が進んでいます。サプリメントや健康食品の需要がサプリメントは、アジアを中心に目覚ましい成長を遂げています。
中でも東南アジアでは、糖尿病の増加に伴って甘味清涼飲料に対する砂糖税が導入されるようになり、健康食品業界や消費者の意識は高まっています。
中国の動向
上記のグラフを見ると、中国は突出して糖尿病の有病者数が多くなっています。サプリメントの市場規模は、2019年に約5,788億元(日本円にして92,608億円)で、年率10%以上で拡大しておいます。
健康食品関連企業は沿岸地域に集中しており、輸入品の構成比は小さいようです。中国の国家食品薬品監督管理総局が定める27種に分類される健康食品の効能の中で、最も重視されているのは51.7%の「免疫力改善」で、年代が上がるにつれて重視する割合が高っています。
その次に重視されている効能は「疲労感軽減」で、若年層(18~35歳)ほど重視しているようです。
中国市場では、上位5社の占める市場シェアは約30%に留まっており、全体的に市場は分散化状態です。
参入している外資系は、アメリカのAmwayやHarba Life、マレーシアのPerfectなどがあり、中国系では、多くのブランド展開をする湯臣倍健(By-health)、東阿阿膠(DEEJ)、無限極(Infinitus)などが有力です。
※湯臣倍健 (By-health
http://www.by-health.com/product
中国のサプリメント市場の動向で特筆すべきなのは、健康を心配し始める中年以降の世代の需要を差し置いて、若者の間におけるニーズが急増している点です。中国農業大学食品科学工程学院の程永強教授は、「若者のサプリメントに対する意識の高さは、ある程度合理的」と述べています。
なぜなら、中国の若者は脂肪が過多となる一方で、ビタミン、ミネラルなどが不足した状態になっているためです。また、仕事のストレスや夜更かしによって病気と健康の中間の状態に陥っている若者が増えているという背景もあります。
あるECプラットフォームの統計では、2020年6月に実施されたネット通販イベントで下記のような驚くべき消費動向が分かっています。
- アイケアサプリメント 売上高が前年同期比4126%増
- プロテイン 売上高が同751%増
- ビタミン系のサプリメント 売上高が同387%増
これらを購入している主力な年齢層は、1995‐99年生まれと2000年以降生まれの若者で、アクティブユーザーは前年同期比で126%増となりました。また、バレンタインに恋人へのプレゼントとしてサプリメントを贈る若者が増えているのも興味深い傾向ではないでしょうか。
ヨーロッパ市場とドイツ
ヨーロッパの市場
アメリカの市場は2018年にシェア首位を維持し、2028年までにさらに成長すると予測されています。
また、ヨーロッパの市場も、植物薬の採用率の上昇によって、2028年までに最大なシェアに達するとされています。
EUでは、フードサプリメントと呼ばれるの制度があり、製品の品質の基準により、サプリメントは区分としては、日本での医薬部外品に近い存在です。錠剤やカプセルなど医薬品のような形態のビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブが対象になっています。
EU諸国の国によって異なりますが、在来の伝統薬である西洋ハーブ(生薬)は「ハーバルメディスン」として医薬品の区分が用意されている国もあります。
ドイツ
EUで最も大きなサプリメントの市場は、サプリメントの基準が世界一厳しいドイツです。ドイツはハーブの利用に以前から積極的で、ハーブを使用したサプリメントには「ドイツ・コミッションE」という機関によって医薬品レベルの検証が行わています。
ドイツでは、風邪をお茶で治すという文化があることから、いかにハーブが薬と同じような存在になっているかが分かるでしょう。
https://www.eccobene.com/brand/lebensbaum
オーガニック先進国ドイツでNo.1の オーガニックハーブブランドLEBENSBAUM
日本
2019年度の日本の健康食品とサプリメント市場規模は、1兆4813億円でした。この規模は前年調査の1兆5,353億円から540億円減少となり、性別構成を見ると、男性が39.5%の5852億円、女性が60.5%の8961億円となっています。
60代以上の金額シェアが高く、60代と70代を合わせてみると、男性が7.3%、女性が50.3%となりました。
日本のサプリメント市場は縮小傾向にあるようです。
しかし、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大発生後、市場規模は前年度比1.0%増になると予測されています。
この感染拡大は、サプリメントに対する消費者ニーズを高めています。
コロナウイルスに感染しなように免疫力を上げようとして、食事で足りない栄養素を補う目的でサプリメントを摂取しようとする動きが出てきたためです。
近年日本では、「ユーグレナ」がブームになっています。5億年以上前に誕生した原生動物であるミドリムシは、もともと学名として「ユーグレナ」と呼ばれていました。
植物とその名前から虫なのではと勘違いされることがありますが、動物両方の性質を持った微細藻類で、ワカメやコンブなどと同じ緑藻です。体長は直径0.06~0.09mで顕微鏡でしか見ることができず、その小さな体には栄養素が詰まっていると言われています。
ミドリムシの消化率は約90%もあることが話題を呼びました。野菜や果物の栄養素の消化率は40%前後と言われており、どんなに野菜や果物を食べても、消化吸収がそれほど高くないため、ミドリムシを飲んで栄養を補おうとする人も多いようです。
https://www.sixthsenselab.jp/midorimushi-shop/euglena/
最後に
米国栄養評議会が公表した「ダイエットサプリメント消費者調査2019」では、米国消費者の7割以上がサプリメントを利用しており、過去最高記録の結果となりました。
店舗では植物由来のサプリメントだけでなく、日本企業が得意とする緑茶や大麦若葉などといった青汁素材の人気も上昇しています。日本のサプリメント市場はコロナウイルスの感染拡大の影響がなければ縮小傾向が続くとされていました。
今後、日本のサプリメント製造・販売企業がビジネスチャンスを拡げるためには、期待できる海外市場に進出していくことが先決ではないでしょうか。
<参考>
https://www.this.ne.jp/news/4105/
https://www.kenko-media.com/health_idst/archives/13742
https://www.daiwa-pharm.com/info/world/8016/
https://yakujihou-marketing.co.jp/topics/437/
http://www.tpc-osaka.com/fs/bibliotheque/mr220190482
https://f-marke.jp/2020/05/22/supplement-trends/
https://www.ycg-advisory.jp/learning/oversea_2/
http://j.people.com.cn/n3/2020/1102/c94475-9775677-2.html
http://www.tpc-osaka.com/fs/bibliotheque/mr110200531
https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/63946