「コンサルティングファーム」と聞いてどのようなイメージをお持ちですか。
東大京大や慶應生の就職人気ランキングではマッキンゼー・BCG・アクセンチュア・野村総研といった具合でコンサルティング会社が上位を占めています。
総合系や会計系、外資系や日系と様々なカテゴリーがあります。
今回は、それぞれのコンサルティング企業がどのような特徴や強みを持っているかをご紹介していきます。
外資系と日系コンサルの成り立ち
外資系コンサルティング企業
フレデリック・テイラー氏(1856年- 1915年)
コンサルティングの起源については諸説ありますが、マネジメントについて本格的に分析・仮説・検証という科学的方法を用いて成果を出したのはアメリカのフレデリック・テイラー氏と言われています。
「シャベルすくい作業」は、鉱石や炭などをシャベルですくい、積み降ろしを行う作業ですが、テイラー氏は作業員の協力を得て実験を繰り返し、1回ですくう量を21ポンドにすることで、1日の仕事量が最大化することを明らかにしました。
この考えに基づいて他の従業員と共同して行ったところ、作業人数を70%も減らすことができただけでなく、1人あたりの平均賃金も1.5倍以上アップしました。
この「仮説を立て、検証する」という科学的方法を用いて経営に役立てたことが初のコンサルティングの成り立ちです。
19世紀後半
コンサルファームの始まりは、マサチューセッツ工科大学で教鞭を取っていたアーサー・D・リトル博士の「アーサー・D・リトル」社が発祥と言われています。1911年、アーサー氏はゼネラルモーターズの最初の研究開発センターの設立を支援したことが、経営コンサルティング業界における初の業務が発生した瞬間です。
https://kc-consul.com/interview/inexperience/vol05/
アーサー・D・リトル博士のコンセプト「常にクライアントとともにあれ」のもと、会社設立当初は、技術開発の委託研修を行っており、業務改革といった経営者よりも現場寄りのコンサルティングが主軸でした。
まだコンサルタントという職業があまり知れていない頃、アメリカでは個人で活躍することがほとんどでしたが、大学などでMBA育成が確立され、コンサルタントが増加し、コンサルタント同士で事務所を立ち上げるという動きが出ていきました。
・1962年
大手外資コンサルの名門ッキンゼーとA.T.カーニーが設立されました。
もともと「カーニー・アンド・マッキンゼー」というコンサルファームでしたが、それぞれ。ニューヨークとシカゴにオフィスを起ち上げることがきっかけとない、分裂します。この出来事と同じ時期ぐらいから、アメリカでは多くのファームが登場します。
・1966年
ボストンコンサルティンググループが日本に進出します。現在、外資系ファームは主に大手企業を中心にコンサルを行うところが多いようです。
日系コンサルティング企業
日本におけるコンサルティングは、1900年代初頭、上野陽一氏が「シャベルすくい作業」を提唱したテイラー氏の「科学的管理法」を取り入れたことが起源です。
https://www.sanno.ac.jp/admin/founder/
日本では、経営者が外部の専門家に助言を求めるという風土がなく、代わりに、会社内の「顧問」や「相談役」などの役職の人々が第三者的立場から経営に関する助言を行う形が主流でした。
日本に外資コンサルファームが進出してしばらく経ってから、コンサルティングが広まっていきました。
大手企業が海外進出を進める際に、欧米事情に詳しい外資系コンサルに相談をしたことがきっかけではないかと言われています。外資系コンサルのコンサルタントが著書を出し、戦略系の外資コンサルの本が読まれるようになり、一般的にも広まっていきます。
1980年代になると、コンピューターを活用したIT系のコンサルが登場します。
その後、日本初の戦略系コンサルファームである野村総合研究所、大和総研などといった日本発のシンクタンク系ファームが登場し、調査や分析といったリサーチに強みがあります。
外資系と違って、日本には、経営系や会計系だけでなく、マーケティング、ブランド戦略、企業再生や環境系など専門的なコンサルが多いのも特徴です。
外資系コンサルと日系コンサルの違い
下記の表は、コンサルタントが日系と外資系で働く際、どのように違うのかを比較したものです。求められる能力や風土に大きな違いがあることが分かります。
https://recruit.funaisoken.co.jp/business/position/
外資系でも日系でも、費用面ではピンキリで、コンサルファームの規模の大きさでも違いが出てくるようです。
コンサルの費用の決まり方
- コンサルティングファームの種類
- 担当するコンサルタントの数
- プロジェクトの期間
- その他の必要経費
上記1~4の条件によって金額は変わってきますが、大手企業を主に扱う外資系コンサルは、専任のコンサルタントが3人前後でプロジェクトを担当し、3ヵ月間でおよそ2000万~3000万円です。
コンサルティングファーム企業の特徴
総合系:アクセンチュア(米)、IBM(米)、野村総合研究所(日)、アビーム(日)
総合コンサルの役割は、川上から川下まで、戦略から実行までの企業の経営課題を解決するため、それに伴ってサービスも幅広いのが特徴です。戦略立案・組織改編、オペレーション改善などのさまざまな案件に対してコンサルティングをします。
領域別に専門組織が分かれているのも特徴です。
<インダストリーごとの区別>
- 金融
- 製造業
- 通信
- エネルギー
- 公共機関
<機能別の区別>
- 戦略
- 会計
- 人事組織
- SCM(サプライチェーンマネジメント) など
総合系コンサルティングファームは、どの企業も大規模な人員や拠点数を抱えています。
もともと会計事務所を出自に持つファームが多く、かつては会計系ファームとも呼ばれていました。現在では、資本関係の解消や合併再編が繰り返され、そのような呼び方は一般的ではなくなっています。
外資系ではアクセンチュアとIBMが2強で、日本国内では野村総研やアビームが有名です。
アクセンチュア(米)
世界55カ国に約39万4,000人以上の社員を持つ、世界最大級のコンサルティングファームです。同社は、Fortune Global 500社のうち4分の3を超える企業をクライアントに持っています。世界的ブランドコンサルティング会社 Interbrand社の「The Best Global Brand」にて37位にランクインするなど、ブランドの認知も非常に高い企業です。
野村総合研究所(日)
野村證券を母体とする国内シンクタンクの草分けで、官公庁・産業界のトップ企業に対し、幅広いコンサルティングサービスを提供し、民間系では外資系戦略ファームと並ぶ高い評価を得ています。
アビームコンサルティング(日)
アジアを中心とした海外ネットワークを通じて、各国や地域に即したサービスを提供しています。外資系ファームの多くが、海外の事例を日本に持ち込みナレッジ化している一方で、同社は「アビームテンプレート」と呼ばれるツールを用意しています。
「業務プロセス」「要件定義ドキュメント」「実機環境」の3部で構成されているのですが、日本企業が作成したものがほしいという日本を含むアジア各国のクライアントの声に応える姿勢が評価を得ています。
戦略系:マッキンゼー(米)、ボストンコンサルティンググループ(米)、ATカーニー、ADL、ローランドベルガー
特に、企業戦略や事業戦略のコンサルは、戦略系ファームが最も得意とする分野で、企業全体の経営に関わる課題を依頼されることがほとんどです。
総合系ファームは、外資系が中心でグローバルに展開し、世界に何十ものオフィスがありますが、戦略系のグローバルコンサル企業の数は非常に少ないのが特徴で、「少数精鋭のプロフェッショナル集団」と言えます。しかし、近年、総合系と戦略系の棲み分けは少しずつ曖昧になってきており、総合系ファームが戦略系ファームを買収することで、戦略部門の拡大に力を注いでいるようです。
戦略系ではマッキンゼーとBCGの外資系2社が2強ですが、両者の違いは、マッキンゼーは各エリアの問題をグローバルで解決することに対し、BCGは各エリアの各エリアが解決するという違いがあります。
マッキンゼー(米)
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、戦略コンサルの中でも圧倒的な存在感を誇る世界的コンサルティングファームで、グローバル全体では65カ国に130拠点の支社を持っています。1971年に日本オフィスが開設されました。
マッキンゼーが企業理念として掲げる「One Firm Policy」は、世界全てのオフィスを一つの組織として考え、世界中に点在するコンサルタントが国境を越えて一体運営された企業です。外資系企業は、あくまでもグローバル企業の●●支社のような立ち位置で運営することが多いのですが、同社は人材やノウハウの共有が非常に盛んである点が長所です。
近年では戦略系領域からデジタル領域にもシフトしており、「マッキンゼーデジタル」などデジタル専門部隊も作っています。
ボストンコンサルティンググループ(米)
グローバル全体では50カ国に90拠点以上の支社を持っています。日本に最初に進出した戦略コンサルティング企業のため、日本のビジネス界や日本政府とのパイプが太く、ビジネス規模、コンサルタントの数はマッキンゼーより多く、日本における優位性は圧倒的に強いようです。
様々なバックグラウンドを持った人材が集まる「多様性」というキーワードも同社の特徴です。銀行出身者、商社出身者、メーカーやITのエンジニア、ベンチャー企業出身者、医師弁護士など、非常にバラエティに富んだコンサルタントが在籍しています。
会計事務所系:EY、デロイト、KPMG、pwc
https://type.jp/tensyoku-knowhow/ready/catalog/accounting-consultant/
その名の通り、財務・会計分野に特化したコンサルタントで、財務面の業務プロセス改善、資金調達、投資戦略立案、M&Aに関するアドバイスを行います。具体的には、顧客の事業価値や資産状況を調査・分析し、改善策や戦略プランを提案します。
PwCコンサルティング
同社は、経営戦略の策定から実行まで総合的なサービスを提供する国内最大規模のファームです。PwCのグローバルネットワークと連携し、クライアントが直面する課題に取り組み、グローバル市場における競争力を高めることを支援します。
PwC Japanグループでは、各法人はそれぞれ別法人となっていますが、監査、コンサルティング、税務、法務などのの専門家がシームレスに連携し、トータルサービスを提供。強みは、このトータルサービスとグローバルのネットワークで、各領域において高度な専門能力を持ったプロフェッショナル集団が揃っています。
日系戦略コンサル・シンクタンク:経営共創基盤(日)、フロンティアマネジメント、三菱UFJリサーチコンサルティング、三菱総研、日本総研、みずほ総研
三菱UFJリサーチ&コンサルティング、日本総研、みずほ総研などは「銀行系」と呼ばれ、銀行と一緒になって融資を提案などを得意とするコンサルティング企業です。
三菱UFJ リサーチ&コンサルティング(日)
MUFGグループのファームとして、大企業から中小企業に至る幅広い企業に対して、経営戦略・マネジメントシステム・人事戦略を中心とした総合コンサルティングを行っています。携専門機関を活用したソリューションに定評があります。
経営共創基盤(日)
BCG、CDI、そして産業再生機構COO経た冨山氏が設立したコンサルティングファームで、ファーム出身者をはじめとしたプロフェショナルが多く在籍しています。
扱うのは特定テーマだけでなく、事業面・財務面・組織面の課題が連動したテーマで、通常の経営コンサルティングファームとは一線を画しています。
特化系:プルーヴ(グローバル専門)、ビービット(Web)、日本経営(医療・介護)
次に、専門分野に特化したコンサルティングサービスを提供する企業を3つご紹介します。
プルーヴ(日)
海外進出を考えている企業に対してコンサルティングを行っている企業です。
現在、新型コロナウイルスの影響で海外出張が足止めになって海外市場調査ができない企業が増えています。
同社は、全世界のネットワークを活用し、海外進出する際の事前のマーケットリサーチと実行支援までのトータルでワンストップのコンサルティングを提供してきた実績が豊富のため、コロナ渦における現地の情報やマーケットの動きも踏まえた提案をしています。
ビービット(日)
「人間の心理や行動特性を探求し、真に役に立つ高品質な製品やサービスを創出する」という経営理念の基づき、少数精鋭のプロフェッショナル集団として事業を展開しています。
海外では、香港、上海に拠点を持っています。ユーザ行動調査やデジタルマーケティングを専門とした、特化型コンサルティングファームです。
自社にてソフトウェア開発も行っており、ウェブユーザ一人ひとりのデジタル行動を可視化する「ユーザグラム」や、インターネット広告、SEO 施策、ソーシャルメディアにおける広告効果測定ツールなどを提供しています。
日本経営(日)
同社は、ヘルスケア業界の担い手である医療機関、介護施設、ヘルスケア関連企業に対して、経営コンサルティングを行っています。
人口減少、少子高齢化が進む昨今において、医療費などのる社会保障費のコントロールは重要性を増していますが、医療費抑制、人材不足などで地域医療は疲弊していることから、一刻も早い解決が求められています。
このような日本が抱える問題に取り組み、単なる経営コンサルティング企業を越えた「社会貢献」をモットーとした企業を目指しています。
コンサルティングファームと投資銀行(IBD)の違い
コンサルティングファームと投資銀行の違いについて混同されることが多いようですが、大きな違いは「アドバイスか実行か」で考えると分かりやすいでしょう。
コンサルタントの付加価値は「アドバイス」にありますが、投資銀行は「実行」することが付加価値です。そもそも株式や社債の発行は、法規制で証券会社にしかできず、M&Aに関しても専門的な手続きが必要になるため、投資銀行の付加価値は「実行」になります。
最後に
コンサルティングファームのポジショニングや、それぞれの領域の特徴、企業の特徴が簡単にお分かりいただけましたでしょうか。「シャベルすくい作業」という業務効率化の概念が現在のコンサルティングサービスのベースになっているとは、意外な歴史だったのではないでしょうか。
<参考>
https://www.movin.co.jp/gyoukai/view/general.html
https://www.onecareer.jp/articles/1445
https://www.antelope.co.jp/navigation/consul/works/index02.html
https://www.antelope.co.jp/navigation/consul/foreignfirm/
https://www.onecareer.jp/articles/1445
https://the-buyers.jp/consult-10/
https://job.rikunabi.com/2022/company/r982800011/
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consultingfirm_-investmentbank