2019年、ハイブリッドを含めた世界の電気自動車の売り上げは、世界で220万9831台。
2019年の全ての自動車の販売台数は1,074万2,122台でほぼ20%を占めます。
そして、昨年2020年から今年にかけて世界各国、地域の代表者により、将来的なガソリン車販売禁止に関する声明が多く出されました。
内燃機関の排出ガスによる環境破壊防止の観点や、新しい産業を生み出し経済を潤わせる目的など、さまざまな理由から従来の内燃機関の自動車から、電気自動車(ここではEVと表現します。)への変遷が考えられています。
日本政府も、2030年までにガソリン車禁止を打ち出しました。
各国、地域で提言されたガソリン車禁止の目標において、現在の自動車業界のEVの状況と、そして未来は一体どうなっていくのでしょうか?
このコラムでは、EV業界の現状と、北米のマーケットを中心に説明していきます。
EV自動車とは?
電気自動車について

まずEVとは何のことでしょうか?“Electric Vehicle”の略でいわゆる“電気自動車”のことを指します。
従来のガソリンやディーゼルエンジンは、燃料であるガソリン、軽油をエンジンの中で爆発させ、それを動力にしてます。そのため二酸化炭素や排気ガスを発生させ、環境に悪影響を与えます。
EVは、2021年時点、バッテリーに電気を充電してその電気を動力にするため、自動車の走行自体からは環境に悪影響なガスを発生させません。
そのため、環境保護の観点からEV普及を目指し、EV販売義務化の法律を制定しようという動きが活性化しています。
EVの問題点
EVには問題もあり、ガソリンやディーゼルのを使用する際に比べて、高熱、寒冷地での始動性、航続距離の短さ、充電の長さなどが問題になっています。
例えば北側の寒冷地では電気の性質上、内燃機関より熱が発生しづらく、起動が難しい場合があります。
そして、逆に暑すぎてもバッテリーに大きな負荷がかかるため走行に問題が発生する可能性があります。
さらに、北米などの広大な土地を有する国々では、その広大な距離を移動する必要があるため、ガソリン車のような航続距離を稼ぐのは難しい部分があるのです。
このように、大きい移動距離が必要な地域や、厳しい環境の地域がある中で、EVでは移動手段としての自動車性能が維持できない可能性が存在します。
そのため、EVのみの販売に対して反対の意見も多くあるような現状。
これらの反対を抑えるためにも、ガソリン車販売禁止前に、なんらかの技術的革新が必要になります。
北米のEVに関するルールの現状
アメリカではアメリカ全土の法律と、州ごとに定める法律とがあります。
現状アメリカ全土で具体的なEVに関しての宣言はありません。
トランプ前大統領時代は、環境よりも経済に効果のある政策を多く打ち出していました。
しかし、新しく選出されたバイデン大統領は、同じ民主党のオバマ元大統領のように、環境についての政策を、強く打ち出してくるであろうという見方があります。それでは北米の各地域ではどのような状況にあるのでしょうか?
カリフォルニア
カリフォルニアでは2020年9月、ニューサム知事が、2035年までにガソリン車の販売を禁止すると表明しました。
アメリカのその他の地域ではまだこのような宣言は出ていません。
ただし、バイデン大統領が環境についての政策を多く出せば、カリフォルニア以外の州もこれに追随する可能性は高くなってくると予想されています。
カナダ
カナダでも、州ごとにEVに対しての基準が発表されています。既に2019年ブリティッシュ・コロンビア州で、2040年までにガソリン車の販売を禁止する、と州により宣言されました。
さらにこれからのEV産業を見据え、フォードや、フィアットクライスラーオートモービルもEVなどの新世代動力の生産拠点に、投資する計画があります。しかしながら、現状ではまだガソリン車禁止などの宣言が出ていない地域がほとんどになります。
現在のEVの北米での販売現状
各国の自動車メーカーから、北米ではすでに多くの種類のEVが販売されています。
専用デザインのもの、既存車種をEVにしたものなど、自動車メーカー独自のマーケティングにより多くのEVがランイナップされています。
アメリカで2021年現在、販売している車種
メーカー名 | 車種名 | 備考 |
ジャガー | Jaguar I-Pace | インドのタタモーターズの傘下企業 |
アウディ | Audi e-tron Sportback | |
ポルシェ | Porsche Taycan | |
ボルボ | Volvo XC40 Recharge | 中国、ジーリー(吉利汽車)の傘下企業 |
Polestar 2 | ||
フォルクスワーゲン | ID.4 | |
フォード | Ford Mustang Mach-E | 今までの2ドアクーペスタイルでは無く、クロスオーバースタイル |
ミニ | Mini Electric | 既存のミニをEVに改造 |
日産 | リーフ | 日本でもおなじみの2代目リーフ |
現代 | Kona Electric | |
Iconiq Electric | ||
起亜 | Niro EV | 現代自動車の傘下企業
現代Konaとは共通のパワートレインが使用されている。 |
BMW | i3 | 北米市場では比較的コンパクトなi3専用デザイン |
シボレー | Bolt EV | シボレーはゼネラルモーターズ(GM)のブランドの一つ |
テスラ・モーターズ | 車種が多いため後述 |
https://www.caranddriver.com/shopping-advice/g32463239/new-ev-models-us/
有名自動車メーカーがそれぞれ少なくとも一車種を発売しており、さまざまなブランド戦略がされています。
EVは今までの自動車よりも、どうしても高価格になってしまうため、デザイン性、ラグジュアリー性、スポーツ性などで、ガソリン車との差別化を図ってます。
さらにその高価格帯により、ステータスや付加価値の高いラグジュアリーブランドが強い状態。
日本メーカーのアメリカでのEV販売は、日産のみ発売している現状では、かなり出遅れ感があります。
ボルボ
ボルボは、中国の自動車メーカーである吉利汽車(ジーリー)の傘下に入り、現在は中国資本のメーカーになっています。
EV生産が既に活発に行われている中国でのノウハウを使用できるため、中国資本のメーカーにも注目が集まっています。
ジャガーランドローバー
インドの自動車メーカー、タタが2000年台初頭に、ジャガーと、ランドローバーのブランドを傘下に収めています。
ジャガーやランドローバーの高級車的位置付けが、EV市場と合致する高価格帯となる点や、トレンドのSUV の車種を持つ事、さらにインドの大きな資本力で、多くの魅力的なEVを販売する可能性が期待されています。
テスラ・モーターズ
テスラ・モーターズ(以降「テスラ」と表現します。)は2003年に設立された新しい自動車会社です。
現状では、事故や故障などが多いという報告が多く、コンシューマーレポートでも低評価を受けてしまうなど、品質や信頼性に関しては低い状態です。しかしながら、テスラの共同創設者であり、CEO、イーロン・マスクの存在感が際立っています。
ソーシャルメディアでの発言には時折問題がありますが、それでも彼の発言はより注目を集め、テスラ自体の認知度にも貢献しています。
そのため、イーロンマスク自体のブランディング力と影響力、さらにはテスラという振興の勢力がEV市場を牽引する、という状態に対して期待値が非常に高くなっています。併せて、テスラがEVの普及を促す法律の制定も後押しした要因の一つと考えられ、会社自体の株価やEVの売上も高い状態です。
アップル
パソコンやスマートフォンで有名なアップルも自動車販売に向けて模索している状態です。アップルにおいては、まず自動運転の開発から始まり、2021年時点では、自動車メーカーと提携し、自動車メーカーに生産を委託委託し、開発を進める計画を立てています。
最近では日本メーカーと生産提携になる可能性も話題になりました。
将来的には、莫大な資本量をもとに独自開発の可能性もゼロではありません。
どのメーカー、またはどういった車種をベースにするかはは決定していないようですが、アップルは電子機器メーカーであり、バッテリーを使用したEVになることはほぼ間違いないと思われます。
その他未来の参入メーカー
中国は既にEVへのシフトを始めています。ある程度の生産数がある自動車メーカーは販売数から算出したパーセンテージで、EV、プラグインハイブリッド、または燃料電池車を販売しなくてはならない、と定められています。
現在では中国とアメリカの政治的理由と、車の性能が基準に達していないことにより、北米での輸入販売が難しい状態にあります。
しかしながら、将来的には中国の開発力が上がり、政治的な緊張が緩和され、中国独自のEVが北米で販売される可能性も考えられます。
そして新規参入メーカーの中には、非自動車生産メーカーも多数あり、テスラのような新規参入、アップルのような協業、さまざまな形でEV市場に参入すると考えられています。
発売は未定ですが、ソニーもアメリカで行われた、IT家電ショーにてEVである「CES(セス)2020」を披露しています。
さらに、中国の通信機器最大手であるファーウェイもEV市場に参加を検討、とロイター通信で報じられています。
既存の自動車メーカーでも開発にかなり資金がかかるため、小さいメーカーほど、他社との共同開発が増え新しいアライアンスの誕生や、EV市場が業界再編の鍵となってくると予想されます。
日本のメーカー
トヨタ
トヨタは2021年中に、2車種のEVを出すと発表。2021年現在、超小型の「C pod」を日本で法人向けに発売しています。
業務用として、小型EV発売も考えられますが、一般用にも開発が必須条件です。
大型の車種が好まれる傾向がある北米市場用に大型のものを開発しているとみられます。
世界でも有数の販売台数を誇るトヨタ。後発で他社にアドバンテージが取れるEVを発売する事ができるのか期待ができます。
日産
乗用車でのEV販売は一歩リードしている日産。「リーフ」がすでに2010年に北米で発表されており、現在発売されているリーフは既に2代目となります。それとは別に、トレンドに合わせたクロスオーバースタイルのデザイン、車両サイズもリーフより大型化させ、北米市場にピッタリあった「アリア」を、2021年中に発売する予定です。

ホンダ
既に日本とヨーロッパでは、小型の「Honda 」eを発売しています。
しかしながら、そのサイズの小ささ故か、北米での発売には至っていません。
北米でのホンダの販売台数は2019年で5位。
アコードやCR-Vで北米販売台数1位を取ったこともあるホンダ。
(https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_usa_2019)
北米の厳しい環境規制を「CVCCエンジン」で、初めてクリアしたという開発力もあり、
EV市場でホンダらしさがあるどんな車種を販売するのか期待ができます。
マツダ
2020年にガソリン車として発売された「CX-30」をEVとして発売する予定を立てています。
しかしながら、北米での発売は未定。
ただしサイズ感も北米では小型の範疇に入り、トレンドのクロスオーバースタイルも取り入れているため、北米側のEV環境が整い次第、導入の可能性が高いと考えられます。
その他日本メーカー
小規模メーカーとしては、EVの開発に多額の資金が必要なため、単独での開発が難しい状況にあります。
既に提携先がある場合は提携先の技術を使用、さらに新しい提携先を構築するなど、いまだ模索している状態です。
最後に
ハイブリッドを含めた自動車の販売は現在年にはおよそ10%弱の増加をしています。さらに世界的にガソリン車禁止をうたう宣言が発布されたため、2035年には現在の7から10バイの市場になると予想されています。とくに世界2位の自動車の市場、北米マーケットでは、EVの開発競争が日に日に激しくなっている状態です。
既存のメーカーの新規開発、そしてそれを元にした業務提携など、自動車業界自体の大きな業界再編が考えられます。
そこに新規参入者が入り込むような形で、資本のあるメーカー、中国、インドなど経済力のある国が、市場を狙って、虎視眈々とEVで市場に食い込もうと計画を立てています。
賢い業務提携、新規参入者のブランディング力、そして問題を抱えるEVの性能に関してブレークスルーができるメーカーが北米のEV市場で生き残るのではないでしょうか。