
マレーシアの市場調査・進出支援
マレーシアは、リーマンショックやコロナショックを除く年では毎年約5%のGDP成長率を維持しており、2025年以降も堅調な成長が見込まれます。成長を支える要因としては、政府による積極的な成長産業への投資に加え、マレーシアの主要輸出産業(ゴム、パーム油、エネルギー関連製品など)の拡大が挙げられます。
国民性の観点では、マレーシアは多民族国家であり、多様な文化や宗教が社会に影響を与えています。主要な民族はマレー系、華人系、インド系で構成されており、イスラム教が国教とされています。総人口の約6割を占めるイスラム教徒の存在により、イスラム教に基づく規制が一部の製品・サービスに適用されます。特に、ハラル認証の取得が求められる商品や、アルコール関連商品の販売規制がその代表例です。
ビジネス環境の面では、安定したGDP成長率を背景に、ビジネスフレンドリーな政策、FTA(自由貿易協定)への加盟、そしてASEAN地域の中心に位置する地理的利点により、マレーシアは外国企業にとって魅力的な投資先となっています。特に、半導体やAI関連分野に関しては、政府が積極的に誘致を推進しており、すでにGoogle、Microsoft、ByteDanceなどの大手テクノロジー企業がマレーシアでのAIインフラ構築を進めています。

主要データ
国名 | マレーシア |
首都 | クアラルンプール |
総人口 | 34,564,810人(2024年推定) |
生産年齢人口比率 | 71.1%(2024年推定) |
年齢中央値 | 31.8歳(2024年推定) |
出生率 (出生数/1000人あたり) | 14.2(2024年推定) |
実質GDP | 1兆1,530億USドル(2023年推定) |
言語 | マレーシア語 (公式)、英語、中国語 (広東語、北京語、福建語、客家語、海南語、フーチョウ語) |
通貨 | マレーシアリンギット |
宗教 | イスラム教徒(公式)63.5%、仏教徒18.7%、キリスト教9.1%、ヒンズー教徒6.1%、その他(儒教、道教、その他の中国の伝統宗教)0.9%、なし/不明1.8%(2020年推定) |
主要産業 | ゴムおよびパーム油の加工と製造、石油および天然ガス、軽工業、医薬品、医療技術、電子機器および半導体、木材加工 |
マレーシアの財閥・有力企業
マレーシアには主要な財閥が複数存在しています。
- クオック・グループ(The Kuok Group)
華人実業家ロバート・クオック氏が創設したコングロマリットで、製粉、農業、物流、不動産など多岐にわたる事業を展開しています。 - YTLコーポレーション(YTL Corporation)
1955年に創設されたマレーシア最大のコングロマリットの一つで、公共事業、建設、高速鉄道、ホテル・リゾート運営など、多様な分野で事業を展開しています。 - ホンリョン・グループ(Hong Leong Group)
1963年に設立されたコングロマリットで、金融、製造、流通、不動産、インフラ開発など、幅広い分野で事業を展開しています。 - ライオングループ(Lion Group)
マレーシア最大の鉄鋼メーカーであり、その他にもタイヤ製造、デパート運営など、多岐にわたる事業を展開しています。 - ベルジャヤグループ(Berjaya Group
1984年に設立された財閥で、不動産・ホテル・リゾート開発・飲食業・金融業を営んでおり、
マレーシアでのセブンイレブン経営やスターバックスコーヒーのフランチャイズを保有しています。
マレーシアにおける日系企業の事例
マレーシア市場において日本企業は、製造業と消費財分野で異なるアプローチによる成功事例を確立しています。日立製作所は1971年の進出以来、RM7.3億の累積投資で22の製造拠点を構築し、社会インフラ需要の高まりに対応しています。一方アサヒグループHDは2011年の戦略的買収で飲料市場に急接近し、現地消費者の嗜好を巧みに取り込みました。両社に共通するのは、マレーシアの「多民族社会特性」「政策誘導型経済」「ASEANハブ機能」を戦略の核心に据えた点です。
以下では、半世紀にわたる現地適応を続ける日立と、M&Aを武器に急成長するアサヒの事例から、多様性社会での持続的成長の条件を探ります。
日立製作所
同社は、マレーシアの経済成長とインフラ需要の高まりを見据え、早期から同国市場に参入しました。マレーシア国内では、情報技術ソリューション、電力システム、社会インフラ、産業システム、電子システムなど、多岐にわたる事業を展開しています。
さらに、現地企業であるサンウェイグループとの協業を通じて、日立製作所はエネルギーソリューションの実証実験を現地で実施し、地域ニーズに即したサービス展開を実現しました。また、情報技術ソリューションから産業・社会インフラまで多様なサービスや製品を提供することで、現地のニーズに応える体制を構築しています。

アサヒグループHD
成熟する国内市場から東南アジアの成長市場への参入を目指すための足掛かりとしてマレーシアへ進出しました。オセアニアの既存事業とのシナジーも狙い、東南アジアへの存在感を高める取り組みを推進しています。2011年に当時マレーシアで2番目に大きいシェアを持つ飲料会社ペルマニスを買収し、現地市場に参入しました。その後、マレーシア国内で「WONDA」ブランドのコーヒーを展開し事業を拡大しています。現地企業買収によるスムーズな市場参入とマレーシアの消費嗜好に合わせた商品展開が成功要因であるといえます。
マレーシア市場で長期にわたり成功を収める企業は、単なる「製品提供者」を超えて「社会インフラの共創者」としての役割を担っています。日立が電力供給基盤の整備から省エネソリューションまで一貫して社会課題と向き合う姿勢は、政府の低炭素政策と完全に同期しています。一方アサヒは、多民族国家の食文化を逆手に取った商品開発で、イスラム市場向けハラル認証製品から華人向け茶飲料まで幅広いラインアップを構築しています。

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JETRO・IMFなどの公的機関の二次情報を中心に、PROVE独自の調査により作成