
インドの市場調査・進出支援
インドは、14億人以上の人口を擁する世界最大級の市場です。IMFの10月末発表の見通しでは、2024年度の成長率を7.0%、2025年度の成長率も6.5%と予測しており、これからも6%を超える堅調な伸びが持続すると見られています。この高い経済成長率を背景に、製造業やIT産業を中心とした多様な産業構造が発展しています。急速なデジタル化や都市化、中産階級の拡大によって購買力が向上し、Eコマースやフィンテックなど新たなビジネス機会が次々と生まれています。特に若年層の増加とスマートフォンの普及がテクノロジー分野やサービス業の成長を後押ししており、外国企業にとっても非常に有望な投資先となっています。
インフラ整備の進展により交通、物流、エネルギー供給などの基盤が強化される中、インド政府は外国直接投資(FDI)の促進政策を積極的に推進し、製造業や小売業を含む多くの分野で規制緩和やインセンティブの提供を推進しています。一方で、多様な文化や宗教的背景に基づく社会的特性や地域ごとの消費習慣、輸出入に関する複雑な規制など、多面的な課題も存在します。そのため、現地市場で成功するにはこうした特性への深い理解と柔軟な対応が求められます。
これらの要素を踏まえた戦略的アプローチを取ることで、インド市場では長期的かつ高いリターンを期待することができます。

主要データ
国名 | インド共和国 |
首都 | ニューデリー |
総人口 | 1,409,128,296人 (2024年 推定) |
生産年齢人口比率 | 68.7% (2024年 推定) |
年齢中央値 | 29.8 歳(2024年推定) |
出生率 (出生数/1000人あたり) | 16.2(2024年推定) |
実質GDP | 13兆1,730 億USドル(2023年推定) |
言語 | ヒンディ語 43.6%, ベンガル語 8%, マラティ語 6.9%, テルグ語 6.7%, タミル語 5.7%, グジャラ-ト語 4.6%, ウルドゥー語 4.2%, カンナダ語 3.6%, オーディヤ語 3.1%, マラヤ―ラム語 2.9%, パンジャブ語 2.7%, アッサム語 1.3%, マイティリー語 1.1%, その他 5.6%; 英語は補助の位置づけとしての公用語ですが、国家、政治、商業のコミュニケーションにおいて最も重要な言語です。 (2011年推定) |
通貨 | インド・ルピー |
宗教 | ヒンドゥー教70.8%、イスラム教14.2%、キリスト教2.3%、シーク教1.7%、その他2%(2011年推定) |
主要産業 | 繊維、化学、食品加工、鉄鋼、輸送機器、セメント、鉱業、石油、機械、ソフトウェア、製薬 |
インドの財閥・有力企業
インドの財閥は、長い歴史を持ち、製造業、金融、IT、エネルギー、通信、インフラなどの多様な業界にわたる企業グループです。これらの財閥はインド経済に大きな影響を与えており、その代表的な例としてタタ・グループ(TATA Group)があります。タタ・グループは1868年に設立され、自動車、IT、鉄鋼、金融などの分野で幅広い事業を展開しています。
また、比較的新しい財閥として、1958年に設立されたリライアンス・インダストリーズ(Reliance Industries)があります。創業当初は繊維業を中心に事業を運営していましたが、現在では石油、ガス、化学、通信、小売など多岐にわたる分野に進出しています。リライアンス・インダストリーズのCEOであるムケシュ・アンバニ氏は、2024年のForbes億万長者番付で世界第9位にランクインしています。その他には、エネルギー、資源、物流、農業などの分野で事業を展開するアダニ・グループ(Adani Group)や、自動車、農業機械、IT、金融などの分野で事業を展開している、マヒンドラ・グループ(Mahindra Group)、二輪車、三輪車、金融サービス、家電などの分野で事業を展開しているバジャジ・グループ(Bajaj Group)があげられます。
インドにおける日系企業の事例
インドにおける日系企業の事例を紹介します。
インド市場における日本企業の成功事例として、スズキとテラモーターズは異なる時代背景と業種特性を乗り越え、徹底した現地適応戦略で業界をリードしています。スズキは1980年代から軽自動車技術を基盤に低価格・高品質戦略で市場を席巻し、テラモーターズは2010年代後半からEV三輪車分野で金融イノベーションと充電インフラ整備を両輪に急成長を遂げました。両社に共通するのは、インド特有の所得階層・インフラ課題・政策動向を戦略の核心に据え、10年単位の長期視点で市場構造を変革する姿勢です。
スズキ
スズキは1981年にインド政府との合弁会社「マルチ・ウドヨグ」を設立し、1983年に低価格・高燃費車「マルチ800」を発売することで、インド市場への本格参入を果たしました。同社は日本で培った軽自動車の生産ノウハウを活用し、インド消費者のニーズに適した低価格・高品質の小型車を提供しました。さらに、インドの道路事情に合わせた設計変更、現地生産拠点の設置によるコスト削減、全国規模での販売・サービス網の構築など、徹底したローカライズ戦略を展開しました。これらの施策により、スズキは現在、約40%以上の市場シェアを獲得し、インド自動車業界のリーダー企業としての地位を確立しています。

テラモーターズ
テラモーターズは2015年9月にインド北部ハリヤナ州で電動リキシャの販売を開始し、その後西ベンガル州など東部を中心に販路を拡大しました。2021年には低所得層向けのファイナンス事業を立ち上げ、国内主要5都市で無担保ローンの提供を開始するなど、販売層の拡大に成功しました。2024年には100%国産の新型急速充電器「TAKA」を発表し、2025年までに北インドを中心に100機の設置を目指しています。また、Vedika Credit Capital社との合弁でTerra Finance Indiaを設立し、EVファイナンス市場にも参入しました。これらの取り組みにより、商業用EV三輪車市場で国内シェアNo.1を維持しつつ、現地生産比率の向上や「Make in India」政策に沿った戦略を推進しています。

スズキとテラモーターズの共通戦略
これらの戦略を通じて、両社はインド市場特有の課題に対応しつつ、持続的な成長と強固な市場地位の確立を実現しています。スズキは2030年までにインドで400万台超の生産能力を構築する計画であり、テラモーターズも充電インフラ整備から販売・金融サービスまで幅広い事業展開によってインドの急速なEV化に対応しています。
両社は、インド市場での成功を収めるため、以下の共通戦略を採用しています。
- 現地ニーズに適応した製品開発
- 現地生産・調達の推進
- 革新的な金融サービスの提供
- 包括的なサービス展開
- 政府や現地企業との協力関係構築
- 長期的視点での事業展開
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JETRO・IMFなどの公的機関の二次情報を中心に、PROVE独自の調査により作成