
中国の市場調査・進出支援
実質GDPで世界第2位の経済大国です。国主導の経済統制とインフラ投資が行われており、輸出と製造業で世界の産業をリードする存在です。しかし、2020年のコロナ禍以降は、持続していた経済成長が鈍化しました。労働力の高齢化、生産性の低下、若者の失業率上昇、不動産セクターの苦戦、公的債務などの課題などが浮き彫りになりました。
産業セグメント別に見ると、ハイテク製造業が好調であり、集積回路生産、スマートフォン、太陽電池、産業用ロボット、新エネルギー自動車(NEV)など、より付加価値の高い製造業と新興産業への移行が進んでいるのが窺えます。
文化的には、中華民族の偉大なる復興をスローガンの元、愛国的な傾向が強まっています。中国に反対するスタンス・メッセージを発した企業を排斥するケースもあり、海外企業・日系企業としては中国の文化・歴史に対する十分配慮したコミュニケーション戦略が必須になります。
日系企業が最も進出している国であり(約3万社、2位のアメリカ8千社を大きく上回っています。)、ビジネス視点で非常に重要な国です。

主要データ
国名 | 中華人民共和国 |
首都 | 北京 |
総人口 | 1,416,043,270人(2024年推定) |
生産年齢人口比率 | 69.3% |
年齢中央値 | 40.2歳 (2024年推定) |
出生率 (出生数/1000人あたり) | 10.2(2024年推定) |
実質GDP | 31 兆 2,300 億USドル (2023 年推定) |
言語 | 標準中国語または北京語(公用語、北京語に基づく普通話)、越語(広東語)、呉語(上海語)、閩北語(福州語)、閩南語(福建語・台湾語)、翔語、贛語、客家語の方言、少数言語。 |
通貨 | 元(RMB) |
宗教 | 民間宗教 21.9%、仏教 18.2%、キリスト教 5.1%、イスラム教 1.8%、ヒンズー教 < 0.1%、ユダヤ教 < 0.1%、その他 0.7% (道教を含む)、無宗教 52.1% (2021 年推定) |
主要産業 | 鉱業および鉱石処理、鉄鋼、アルミニウム、その他の金属、石炭、機械製造、兵器、繊維および衣服、石油、セメント、化学薬品、肥料、消費者製品(履物、玩具、電子機器を含む)、食品加工、自動車、鉄道車両、機関車、船舶、航空機を含む輸送機器、通信機器、商用宇宙打ち上げ機、衛星 |
中国の財閥・有力企業
中国では国策として国有企業が優遇されており、国内企業ランキング上位にはエネルギー系が多くランクインしています。一方、民営企業では、JD.comやアリババグループなどのEC企業やテンセントなどのIT企業が上位にランクインしており強い存在感を示しています。 国有企業: 1.中国石油化工集団(中国石化) 中国最大の石油・化学企業で、2021年の売上高は2兆7,400億元(約54.8兆円)に達し、国有企業の中でもトップクラスの規模を誇ります。 2.中国石油天然気集団(中国石油) エネルギー分野で重要な役割を果たす企業で、2021年の売上高は2兆6,100億元(約52.2兆円)と、中国石化に次ぐ規模です。 3.国家電網公司(State Grid Corporation of China) 世界最大級の電力供給会社で、2023年の「フォーチュン・グローバル500」では第3位にランクイン。中国全土に電力を供給する基盤を支えています。 優良民営企業: 1.京東集団(JD.com) 中国最大級のECプラットフォーマー。2022年の売上高は1兆462億元(約20.9兆円)。デジタル産業を代表する企業として成長しています。 2.アリババグループ(Alibaba Group) 中国最大級のECプラットフォーマー。クラウドコンピューティング等でも世界的に認知されており、中国国内外で影響力を持つデジタルプラットフォーム企業である。 3.テンセントホールディングス(Tencent Holdings) ゲームやSNS、フィンテックなど多岐にわたる事業を展開し、中国民営企業ランキングでも常に上位に位置している。 |
中国における日系企業の事例
中国における日系企業の事例を紹介します。
中国市場における日本企業の成功事例として、無印良品(MUJI)と資生堂は異なるアプローチで現地ニーズを捉え、持続的な成長を実現しています。無印良品は「シンプルで高品質」なライフスタイル提案で若年層を獲得し、資生堂はローカライズ戦略と多層的なブランド展開で市場浸透を加速させました。両社の戦略からは、中国市場の多様性に対応する柔軟性と、ブランド価値の一貫性を両立させる重要性が浮かび上がります。
無印良品(MUJI)
無印良品は2005年に上海で中国1号店を開店、現在では中国本土で300以上の店舗を展開しており、海外売上の大半を占めています。主な成功要因は下記だと考えられます。
①革新的なコンセプト
派手で煌びやかなデザインやカラーリングが人気である中国市場において、「シンプルで使いやすい」というミニマルで洗練されたコンセプトが、特に中国の若年層に支持されました。
②実需消費トレンドへの対応
政府の倹約令や消費者の嗜好変化により、ハイエンドブランドよりも日常的に使える実需品へニーズが高まるトレンドが発生しました。この流れに乗り、無印良品は日常生活で必要な機能を満たしつつ、デザイン性と品質を兼ね備えた商品を提供することで成功を収めました。
③徹底したブランド管理
無印良品は、中国進出時に商標問題を解決し、「本物」であることを強調。これにより、中国市場での信頼性とブランド価値を確立しました。

資生堂
資生堂は1981年に中国事業を開始し、1994年には現地専用ブランド「AUPRES(オプレ)」を立ち上げ、国民的化粧品として認知されるまで成長させています。また、免税店や越境ECなどを通じて「クレドポーボーテ」「SHISEIDO」などのハイプレステージブランドも展開、同社の売上の20%以上を占めています。主な成功要因は下記だと考えられます。
①製品のローカライズ
中国の消費者ニーズや肌質に合わせた製品を開発。例として、美白や抗老化など中国人消費者に特化したスキンケア商品を市場に導入することで競争力を高めました。
②オンライン・オフラインの総合的なチャネル展開
Tmallなどのオンライン販売だけでなく、デパートや専門店などのオフラインチャネルも強化しました。店頭でのビューティーコンサルタントの教育にも力を入れ、ブランド体験の質・満足度を高めることでリピータを増やすことに成功しています。
③多角的なブランドポートフォリオ
「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」などの高級ブランドから、中価格帯の「エリクシール」や「アネッサ」まで幅広いブランドを展開しています。この多様なポートフォリオにより、富裕層から中間層まで幅広い層にリーチできています。

中国出張レポート
中国関連事例
中国関連コラム
JETRO・IMFなどの公的機関の二次情報を中心に、PROVE独自の調査により作成