自動車業界とDX(CASEとは、MaaSとは)、海外(米国・中国・インド・ASEAN)の動向

6月のSBI証券企業調査部の調査によると、コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で5月の自動車生産は6割減が明らかになりました。

2020年の世界新車販売は前年比約2000万台減と約2割減少する見込みです。

主要市場の新車販売台数

 

日本の主な自動車メーカー各社は、国内の工場で生産の一時停止を余儀なくされました。

8月現在、需要が着実に回復するかは不透明な状況ではあるものの、世界的に需要が回復傾向にあり生産体制を通常どおりに戻す動きが出てきています。

日常社会では、人との接触や移動を極力減らして生活しなければならない間は、まだしばらく続きそうです。

このことのよって特に大きな影響を受けている業界のひとつが、人々の移動を担う航空・鉄道・タクシー・バスなどの交通業界、この業界を下支えしている自動車業界です。

コロナウイルスが発生する以前から自動車業界と交通業界はデジタルトランスフォーメーションを取り入れる動きがありましたが、この感染拡大で需要がDXの導入が加速するのではないかと言われています。

 

この記事ではアフターコロナに向けて自動車業界が取り組んでいるDXであるCASEやMaasについての動向をお伝えします。

自動車業界における需要減と今後

世界中で需要が激減

リーマンショック時は市場回復まで4年を要しましたが、今回の感染拡大はそれ以上の落ち込みで、前途多難な状況と言えるでしょう。

下記は今年3月時点のpwc Strategy&社のデータですが、中国以上に欧州が最も打撃を受けているようです。

ロックダウン

 

欧州、米国はロックダウンによって1-3月期の売上は激減し、4月の前年同月比で78.3%も落ち込みました。5月から反転しましたが、それでも58.5%減その後も低水準で推移しているようです。

 

各国における日系自動車産業マイナス影響

世界的な自動車の需要が落ち込んだことにより日本の自動車産業はどのくらい海外需要において打撃を受けているか数字で見てみましょう。

・アメリカ

2019年の市場規模が年間1700万台、日本車シェアは約4割です。4月の年率換算台数は860万台まで急激に落ちましたが、5月に1220万台に戻りました。

・ヨーロッパ

2019年は年間1400万台規模で、欧州車のシェアは75%を占めていました。欧州において日本車のシェアは約12%とそれほど存在感はありません。

・中国

2019年の中国の販売規模は年間2100万台でした。日本メーカーのシェアは24%に上昇。今年の1-3月期は例外なく日本車の販売も落ちましたが、4月には巻き返し、日本車は対前年比(4月・5月)で10%ほど伸びています。

・インドネシア

日本車のシェアは96%で寡占状態になっている国です。3月から4月は91%も販売が落ち、5月も96%に続落しています。

・インド

2019年の規模は約300万台で、うち日本車が60%とかなり日本車のシェアを占める国です。4月は完全ロックダウンで売上ゼロですが、5月は85%減と少しずつ回復傾向にあります。

・タイ

日本車のシェアは85%と非常に多い。タイは日本のようにロックダウンはそれほど厳しくなかったため4月の販売の前年同月比は-30%と軽微となっています。

 

中国の自動車関連ビジネスは回復傾向にあり、それに伴い中国における日本の自動車の需要も少しずつ元に戻っているようです。

 

自動車業界におけるDXとは何を指すか

コロナウイルスが出現する以前から、日本を含む世界中の自動車業界においてDX(デジタルトランスフォーメーション)への動きがありました。

DXの分野において自動車業界はまだまだ乗り出し始めたばかりですが、すでに多くの業界でDXは起こっており身近な存在となっているものも多いです。

例えば金融業界ではFintechの名の元、銀行窓口業務の多くがネットで行えるようになりました。

小売業界ではAmazonに代表されるようなECサイトが顧客の消費行動を大きく変えてきました。

 

では自動車業界におけるDXとは具体的に何を指すのでしょうか?それは下記の2つです。

  • CASE(Connected、Autonomous、Shared&Services、Electric)
  • MaaS(Mobility as a Service)

この2つが浸透することよって自動車業界には「100年に1度の大変革が起こる」とまで言われています。

次の章ではまずCASEについて説明します。

CASE

CASE解説

この言葉は、独ダイムラーのディーター・ツェッチェCEOが2016年のパリモーターショーで発表した中長期戦略の中で提唱した造語です

  • Connected:コネクティッド化
  • Autonomous:自動運転化
  • Shared/Service:シェア/サービス化
  • Electric:電動化

この4つの頭文字をとったものがGASEで、「自動車メーカーがただ製造するだけにとどまらず、モビリティのサービスプロバイダへと変わる」という戦略です。

CASEのそれぞれの意味と業界の動向

CASEのC(Connected)

総務省のサイトにコネクテッドカーについて図で説明されていますが、下記の図のような自動車とIoT技術が統合し安全に寄与するのがCASEのCです。

ICT(PCだけでなくスマートフォンやスマートスピーカーなど、さまざまな形状のコンピュータを使った情報処理や通信技術)端末としての機能を持つコネクテッドカーは、車の状態や周囲の道路状況などといった様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析します。

通信機能を生かすことで、エンターテインメントを始めとして多種多様なサービス展開が予想されています。

 

各社の事例を紹介します。

トヨタ自動車

2018年6月の新車発売を機にコネクテッドサービス「T‐Connect」を開始。ほぼ全ての乗用車にDCM(車載通信機)を搭載し、コネクテッド化を加速させています。

通信事業者では、ソフトバンク、NTTやKDDIもトヨタと協業を進めています。

日産自動車

米マイクロソフトとの提携し「NissanConnect」を展開。スマートフォンとの連動機能などが搭載されています。

 

CASEのA(Autonomous)

自動運転の支援レベルには下記の5段階があります。

自動運転

現状では日本の自動車メーカー各社は自動運転レベル2かそれに近い技術をすでに導入済みとなっています。

トヨタ・日産が自動運転レベル3の実現時期を今年2020年に設定している状況で、自動運転レベル5(完全運転自動化)については、本格的な運用は2030年代に入ってからが現実的のようです。

 

海外は日本より進んでおり、ドイツのアウディやアメリカのGMなどレベル3を搭載する企業も多いですが、法整備などの環境が整わないこともあり実質的にレベル2技術の運用に留まっています。

CASEのS(Shared & Services)

ライドシェア分野では、ソフトバンクが海外大手ライドシェア企業である米ウーバー、シンガポールのグラブ、中国ディディ、インドのオラなどの筆頭株主となり世界戦略を進めています。

ライドシェア

ライドシェアに慎重な日本国内と言われていますが、タクシーの配車サービス事業は注目を浴びています。

東京都を拠点とするタクシー事業者5社とソニーらによる「みんなのタクシー」は提供するタクシー配車アプリの「S.RIDE」では、ワンスライドで、同社タクシーネットワークから一番近いタクシーを呼び出すことができるサービスです。

また海外ではダイムラーが「car2go」(カーツーゴー)というカーシェアリングサービスを2018年から初めています。

簡単な方法で車が借りられるようになっており、登録しておけば、携帯電話やパソコンからいつでも予約が可能です。

電子チップを埋め込んだ免許証をウィンドウの読み取り機にかざすだけで車両のロックは解除されます。

 

CASEのE(Electric)

CO2排出による環境への影響が懸念されており、世界各国で環境規制が厳しくなっています。

2020年現在、パリ協定で制定された2050年CO2削減目標。これに向けて各国は環境規制に対してますます取り組みを強化しています。

特に自動車の排出ガスは、環境への影響が大きいと問題視され、排ガス規制が厳しく設定されています。

 

2020年6月4日、ドイツのメルケル首相はコロナウィルス感染拡大による打撃を受けた経済を再始動させるために1300億ユーロ(約16兆円)の経済支援をすると発表。電気自動車購入への補助金額が現在の3000ユーロ(約37万円)から6000ユーロ(約74万円)に倍増するということです。

このように、欧州を筆頭にEV(電気自動車)熱が高まっており、国家レベルでEV化を促進しています。

もはやEV車はトレンドになるといっても過言ではありません。

日本の自動車業界はこの流れを受けてEV車の製造が主流となってくるでしょう。

 

Honda e

2020年8月末に販売開始される「Honda e」。

ジュネーブでの発表によると一充電航続距離は「EV走行距離は200km以上(WLTPモード)を達成。30分で80%まで充電が可能な急速充電にも対応」(プレスリリース)

 

CASEが世の中に与える影響

CASEがすすむことで先ず影響を受けるのは自動車産業自身で、まず生産台数が減少していくことが考えられます。その他、自動車業界と関連する業界がどのような影響を受けるのか見てみましょう。

 

・保険会社

完全な自動運転となれば交通事故の責任は製造者である自動車会社が請けることになります。そのため交通事故の責任が運転者側にあることを前提に組み立てられた損害保険は不要となります。

 

・自動車整備工場

交通事故が減少すれば仕事やタクシーやレンタカーの乗客は減少するでしょう。

 

・タクシー・レンタカー会社

既にライドシェアサービスが普及している米国や東南アジアにおいて、多くのタクシーやレンタカー会社は倒産に追い込まれています。

 

・ガソリン・スタンド

既に自動車の燃費が向上し採算がとれないガソリン・スタンドの廃業が増えていますが、これが電気自動車になれば完全に不要になります。

 

それでは、次の章ではMaaSについて説明します。

 

MaaS

クルマの新しい使い方を意味するMaaSクルマがどんどんと「CASE」を進化させた先にあるもの。

それがMaaSです。

MaaSとは「Mobility as a Service」の略で、直訳すると「モビリティはサービスと同じ」。

意味合いは “移動”すること自体をサービスとしてとらえるという考えです。

クルマだけではなく、自転車のような個人的な乗り物から、電車やバスといった公共交通も含まれているのが特徴です。

Maasは世の中をどう変えるか

MaaS

 

「移動」するための手段は車を持っている人にとっては車だけだったかもしれません。

しかしMaaSを利用することでバスや鉄道などの公共交通機関、さらには、自転車のシェア・サービスなども移動の選択肢となり、どの選択や組み合わせが最も効率的で安いかなどを瞬時に教えてくれるのがMaaSです。

 

このモビリティサービスが活発化すれば、交通の利便性が悪い地域で暮らしている人もニーズに合った移動手段を選択できるようになり、地域経済の活性化や道路渋滞の緩和など、付帯するさまざまなメリットの享受ができる社会となっていきます。

 

どのようなサービスがあるか、事例を見てみましょう。

トヨタ自動車と西日本鉄道による「my route」

トヨタと西日本鉄道がタッグを組んで進めているのがmy routeです。

専用のアプリを利用することで、タクシーやバスの予約、乗車券の購入、決済などがアプリ一つで完結します。

多様な移動手段を組み合わせたルートを検索できるため、効率よく目的地に到達できます。

日本では昔からNAVITIMEが先駆けでこのようなサービスをしていましたが、今後はますます浸透し、サービスも進化していくでしょう。

 

スタートアップ企業による「akippa」

駐車場予約アプリです。駐車場を事前に予約できるというこれまでにない斬新さが注目されました。

また、空いているスペースを貸し出せるのも特徴です。

 

フィンランドの民間企業による「Whim」

欧米を中心に広がっているマルチモーダルサービスの一種です。様々な移動手段の予約から決済までを一括で行うことができます。

配車サービスのUberなどもMaaSの事例ですが、Whimは移動手段が自動車だけでないという点が先進的です。

日本の自動車産業におけるMaaSと言えば、このような面白い自動車があります。

東京モーターショー2019にて、トヨタが一人乗りのMaaS車両「e-4me」を発表。

e-4me

 

自動運転のEVで、移動時間を活用して趣味などの好きなことに没頭するという自動車です。

人目を気にせず、色々なサービスを楽しむことができれば移動時間に対する価値観も変わってくるかもしれません。

※この動画でも分かるように、例えば、ミュージックスタジオとして楽器を演奏したり、トレーニングジムとして体を鍛えたり、VR(拡張現実)ゲームを楽しんだりすることを可能にしています。

 

最後に

コロナウイルスの感染拡大によって自動車業界で加速して進むことが期待されるデジタルトランスフォーメーションの概要、CASE、MaaSの内容がご理解いただけたでしょうか。

CASE、MaaSは異業種を巻き込みながら業界に変革をもたらすため、これらによって自動車や移動の概念を少しずつ変わっていくでしょう。

アフターコロナの社会では自動車への価値観が変わり、移動手段が多様化することでより便利な社会になっていくのではにでしょうか。

 

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<参考>

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/08/943b85ba1b3183f9.html

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4249797015032019000000

https://blog.evsmart.net/ev-news/germany-package-for-electric-vehicles/environmental-regulations-in-automotive-industry

https://jidounten-lab.com/y-case-connected-autonomous-shared-electric

https://www.digital-transformation-real.com/blog/environmental-regulations-in-automotive-industry.html

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00464/

https://www.dhbr.net/articles/-/5450?page=3

https://techfactory.itmedia.co.jp/tf/articles/1912/19/news008.html

https://blogs.itmedia.co.jp/itsolutionjuku/2018/05/post_554.html

https://www.digital-transformation-real.com/blog/maas.html

https://toyokeizai.net/articles/-/360668

https://news.yahoo.co.jp/articles/f536f5e516a843c4c687fbe6b9595fba63a2ed4a

https://www.strategyand.pwc.com/jp/ja/publications/covid-19-impact-to-auto-industry.pdf

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200629/k10012487851000.html

https://www.netdenjd.com/articles/-/234280

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200802/k10012546171000.html

https://work-pj.net/archives/5621

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