再度注目の集まるインド市場。「メイク・イン・インディア」はアフターコロナで日本企業にとってのキーとなるか

インドのGDPは2030年に日本の3倍、2050年には日本の5倍に成長し、インドの人口は日本の12倍で、世界2位の13億1000万人になると言われています。

インド首相のモディ首相は「メイク イン インディア」のコンセプトを掲げ、外国資本からの投資を誘致する経済改革を進めています。

『インドのソフトと日本のハード』が大きな成果を生む」と力説し、インド商工省内に日本企業専門の投資相談窓口「ジャパン・プラス」を設置し、日本企業の誘致を積極的に呼びかけています。

しかし、多くの日本企業が今までインドに進出しビジネスを根付かせようとしてきましたが、成功事例はまだ少なく、ビフォアコロナ時代では「中国での成功体験が通用しない」とインドはそのような評価を受けていました。

新型コロナウイルスの感染拡大によって日本政府は中国の移転先を探すように金銭的支援をしています。そのため中国に工場を持つ日本企業は、インドを移転先に視野に入れ始めている企業も多いでしょう。

 

インド首相

 

この記事では、インドの経済的成長率、インドはASEAN諸国と比べてどのような特徴があるのか、

日本企業のインド進出における成功事例・失敗事例、今後のインドの可能性についてお話します。

 

インドの人口とGDP

今後中国の人口を超えるインド

国連が報告書で示した下記の人口推移予測グラフによると、2027年頃にはインドの人口は中国を上回り世界最多になると示しています。

食糧や雇用などを確保して安定成長を続けていくことが大きな課題となりますが、乳幼児死亡率の低下などでインドの人口は2050年代までは伸び続けます。

中国とインドの人口推移

人口上位国

GDP推移

2016~2017年の間以降GDP成長率は下落し続けています。しかし、他国に比べるとインドの近年のGDPの数値は高いことが分かるでしょう。

GDP成長率

https://diamond.jp/articles/-/241642 (日経ダイアモンドの記事より)

インドGDP推移

https://www.jetro.go.jp/world/asia/in/stat_01.html(JETROのWebサイトより)

 

各国の経済成長率の比較

 

新型コロナウイルス感染拡大により世界の各国のGDPが下落していますが、今回のこの影響により、インドは特に被害が大きく出た国です。

8月26日時点ではインドの感染者数は8万5000人と世界の3割に達しています。

エコノミストのプラチ・ミシュラ、 アンドルー・ティルトン両氏による推計によると、インドの国内総生産は4~6月期に前期比年率45%減となり、想定していた20%減を大きく下回ったとのことです。

 

 

インド経済の課題

人口増加と失業率

人口増加が急速に進み、経済成長が期待されるインドですが、課題もあります。

まず、増え続ける人口に対して雇用の機会が圧倒的に足りないことが課題です。

毎年約1500万人の若者が職を求めて労働市場に新規参入しています。しかし1500万人に安定した仕事を与えるということができていないのが実情です。

 

まだ結果を出せていない「メイク・イン・インディア」の戦略

昨年第二期の経済政策としてメイク・イン・インディアの施策として「今後5年間で世界の製造業のハブになる」と掲げたモディ政権。

2017年に開始されたこの施策は、最初のスタート時点では「わざわざ苦労してインドに拠点を持つ必要があるのか」という声も多かったのですが、コロナウイルスの世界的な感染拡大により世界中の企業が中国から工場の移転先を検討している流れにあります。

その中にインドを選択肢に入れるように、モディ政権は強くアピールしています。

しかし、コロナウイルス発生前まではほとんど実績が出せていません。

メイク・イン・インディアが結果を出せていない理由の大きな要因が次に挙げるGSTと呼ばれる税制があります。

モディ政権政策

 

統一間接税GSTの問題点

GSTの問題点は外資企業がインドに参入する際の税率が高いという点です。

 

関税の項目が多過ぎる

外資企業に対する関税がインドは非常に多く、日本企業から見ると敬遠してしまうレベルのようです。

ほとんどの場合は18%ですが、特殊な材料や農作物には非常に細かい税率が設定されているのです。

厳しさを増す会社法周りのコンプライアンス

国外からを工場を立ち上げることが厳しいくなっています。

巨大企業であればまだ対応できるものの、管理部門にコストをかけられない中小製造業にとっては非現実的とも言える。

特に巨大な設備投資をしたにも関わらず、さらに負担が生じるという実情です。

インド政府要望が強すぎる

「原材料や部品は輸入するのではなくインド内で調達すること」と、要望が強いです

 

日本企業のインド進出の実情

日本企業進出推移

https://www.in.emb-japan.go.jp/Japanese/2018_co_list_jp_pr_nolink.pdf

 

※進出企業一覧をご覧になりたい方は下記のPDFをご覧ください

在インド日本国大使館(インド進出日系企業リスト-2018  )

https://www.in.emb-japan.go.jp/PDF/2018_co_list_jp_r.pdf

 

今後経済成長が見込まれるインドにおける日系企業の進出は、2018年度末時点で1441社でした。

まだまだ中国に比べてまだ少ないのが現状のようです。

これまでは中国で問題がなかったためインドをわざわざ検討する必要もありませんでしたが、感染拡大により工場や拠点の有望な移転先と言われています。

それでは次に、インドはどのようなビジネスの文化や歴史背景があるのかを見てみましょう。

 

インドという国の特異性

ヒンドゥー教徒79.8%の国です。その他は多い順に、イスラム教徒14.2%,キリスト教徒2.3%,シク教徒1.7%,仏教徒0.7%,ジャイナ教徒0.4%となっています。

多様な宗教が存在するだけでもビジネスがしにくい印象を持つかもしれません。

また、「インドを中国や他のアジア諸国と同じと捉えない方がいい」という意見が多く見られます。

これは、インドの若者が特に日本ブランドに憧れがあまりなかったり、日本のタレントやJポップなどもインドで有名になっている人が少ないことが背景にあると思われます。他にもインド特有の商習慣があり、その商習慣の理解ができるかどうかがキーになるかと思われます。

それでは、インドの文化にはどんな特徴があるのかを見てみましょう。

 

個人主義

インドでは会社のために働くというよりも、スキルを上げて高給を得ることに重きを置く人が多く、仕事における価値観はかなり個人主義的と言われています。

リクルートホールディングスの調査では、「高い賃金・充実した福利厚生」と答えたインド人は58.8%でしたが、それに対して日本人は同質問に対しての回答は39.0%です。

日本人は周囲と調和を保ちながら仕事を進める文化なので、ビジネスの場面において「文化が近い」と感じにくいでしょう。

また、起業家の精神を持つ若者が多いのも特徴の一つです。

 

豊富なIT人材

インドでは1950年にカースト制度は廃止されましたが、長い間の制度であったカースト意識はそう簡単には消えずにその影響は残っています。

身分ごとに職業は基本世襲とされ、若者は例え就きたい職業があってもつけないという現状がありました。

 

しかし、ITというカースト制度には規定のない新しいジャンルの職業が登場したことによって変化が起きています。

カースト制度が廃止された後にできた職については、制度の影響を一切受けることがないため、ITの職種を選ぶことは身分の低い人でも貧困から抜け出せるチャンスになっているのです。

当然総人口に占める若年層の割合も非常に高いインドの平均年齢は27歳。日本は47歳です。このように若い人材が多いのもIT企業の土壌を作りやすいと言えるでしょう。

 

国内ではITプログラマの仕事が増加しているもののそれに対応できる人材の数が圧倒的に足りず、企業は採用面で苦戦しています。

優秀なIT人材の多いインドからの採用増につなげるため、NECと人材サービスのパーソルキャリアは、インドのIT人材を日本企業が採用しやすくするサービスをスタートさせています。

NECが開発したスマートフォンのアプリを通じて、各社がエンジニアに直接接触できるというものです。

 

英語を話せる人口が多い

英語を話せる人の数を示す英語人口の第1位はアメリカ合衆国で、次はインドです。(しかし、人口12億人以上に対する英語人口は約10%の約1億2千5百万人です。)

インドでは、英語は政府が定める準公用語となっているため、ビジネスの場において使用頻度は高く、都市部の日常生活ではインド人同士でも英語で会話する人も多いようです。

 

インド進出企業の成功事例・失敗事例

成功事例

インドのGDPの24%を製造業が占め、このうち50%が自動車関連です。良品計画(MUJI)、ユニクロ、壱番屋(カレー)、成功例として、スズキ、ホンダ、ユニ・チャームがあります。スズキ自動車の成功要因はどういう点だったのでしょうか。

インドでロングセラーとなったマルチ800や1980年代に製造販売されています。インドにおいてスズキの自動車はいまだに首位のポジションで、同じ2020年2月の販売データを見ると、トヨタであっても1/10以下の販売台数です。

順にホンダ、日産、と続きますがかなりの差をつけているのです。

この成功の要因となった「徹底したローカライズ戦略」を詳しく見るとともに、他の成功要因も見てみましょう。

 

自動車産業の市場規模が拡大しているインドで、約4割の市場シェアを獲得しているスズキ自動車の成功要因を一言で表すと、「徹底したローカライズ」と言えるでしょう。

インドでスズキの自動車が人気になったきっかけは「マルチ800」という商品がきっかけで、1981年にインド国営会社との合弁会社によって製造されています。

 

  • 「日本と同じもの売る」という発想ではなく、「インド現地の人々が欲しがる車を」という顧客目線の姿勢を徹底して貫いています。日本でも同じ車種がありますが、インド人の身長の高さに合わせて全長4mの仕様になっています。
  • 開発から製造、販売に至るまでインドで行われ、デザイナーも現地に移住。このことによって現地人が好むデザイン設計をしていることが受け入れられた。
  • スズキが他社の自動車メーカーに比べ圧倒的に存在感を示しているのは、参入したのが早かったのも理由です。進出を決めたのは1982年でした。
  • 1980年代のインドは「庶民に手が届く価格で車を一般生活に普及させる」という目標を掲げており、パートナーとなる海外の自動車メーカーを探していたタイミングにスズキがビジネスチャンスをどこよりも先に掴んだと言えるでしょう。

マルチ800

 

失敗事例

NTTドコモ

ドコモが2009年にタタ・テレサービシズ(TTSL)の株式26・5%を27億ドルで獲得後インドマーケットに進出した当時、インドでは既存の5億人の加入者に加えて毎月何百万人もの加入者が増加していました。

しかし失敗に終わります。

インドでは日本と違いプリペイド方式の利用者が多く、日本では付加価値的なサービスが好まれるものの、インドではは機能に関するサービスが中心だったことが敗因です。

 

トヨタ

上記でスズキはデザインなど徹底して現地に合わせる商品にしたとお伝えしましたが、トヨタは日本ブラントが通用すると思い込み、そのマーケティングをしなかったことが失敗の理由となりました。

 

その他に考えられる失敗要素事例

企業名と共に失敗事例をご紹介しましたが、他に企業が失敗しやすいと言われている要素は下記の2つです。

人件費の高騰

インド人従業員の人件費も他のASEAN諸国と比べそれほど低くなく、昇給率が年々上がってきています。

人件費比較

https://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20190508.pdf

 

日本製品のシェアが取れない

インド人には「なるべく安いものを買いたい」と思っている人が多く、「高くて質が高い」日本製の商品はあまり人気がりません。

ASEAN諸国ほど日本ブランド認知が浸透しにくく、インドの家電量販店に展示されている商品の8割は韓国製、1割がインド製、他1割が日本製といった実情があります。

日本ブランドが通用すると思って展開したけれども失敗してしまった企業もあるようです。

 

日本企業の進出においてはネガティブな要素が目立つものの、インド市場が有望であるのも事実です。

 

YouTuberで人気の「バフェット太郎」氏が『世界は「脱チャイナ」へ香港国家安全維持法で漁夫の利を得る新興国』というテーマでインドの市場について分かりやすく説明しています。

 

最後に

インドにはまだまだ課題が残るものの、ITスキルや英語力を備えた優秀な人材の世界での活躍が期待されているのも事実です。

米国のIT大手企業であるマイクロソフト、グーグル、IBMのトップはでインド出身者が増えています。

これは今までに無かった時代の流れなのではないでしょうか。

 

スマートフォンや薄型テレビなどの電子機器を受託生産する台湾の鴻海精密工業の代表劉氏は、コロナウイルス感染拡大が発生する以前から「中国の世界の工場としての首位は終わった」と述べ、早くから中国から撤退し、インドに拠点を開設しています。

 

今回のコロナウイルスの感染拡大によって、多くの日本企業が中国にあった工場の移転先を迫られています。

日本政府が補助金を出すというニュースを聞いたインド企業は「日本企業と連携したい」との意志を示しています。

インドへの移転が現実的かどうかはまずリサーチを徹底して行うことが第一歩になるでしょう。

 

プルーヴ株式会社ではインド事業展開に向けたノウハウや現地ネットワークを豊富に持っています。

インド市場を検討されている方は是非まずはご相談ください。

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<参考>

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00093/060500013/?P=3

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46497070U9A620C1910M00/

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/15474https://note.com/asia_business01/n/n5e91ef0779e0

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00093/060500013/

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/04/96ab4ec765fc8b52.html

https://jp.reuters.com/article/india-economy-gdp-idJPKBN2352C0

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-05-18/QAIMW1T0G1KY01

https://toyokeizai.net/articles/-/345919?page=4

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63145660Y0A820C2000000/

https://toyokeizai.net/articles/-/345919?page=2

https://www.jscore.co.jp/column/lifestyle/2018/jpn-ind/

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-08-12/QEXSYXT0AFBE01

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