YouTubeはもともとPayPalのスタッフの3名によって立ち上がったサービスです。
当初動画を用いて出会い系サイトを作る予定だったそうですが、誰でも自由に動画を配信できるプラットフォームを構築することになり、現在のYouTubeが誕生しました。
最初に投稿されたのは創設者の1人であるジョード・カリムがアップロードした「me at zoo」という動画。
動物園の象の前で撮られたたった18秒の映像は投稿後の13年後の2018年時点で約5500万回も再生されています。
その後、世界中で需要が高まり、私たちの生活や動画への概念を変えていきました。
ビフォアコロナにおいてすでに日本でも人気を博していましたが、このコロナ渦でよりYouTubeが身近になった方も多いのではないでしょうか。
2019年の小学生白書の調査では、小学生の2019年「将来つきたい職業」は、男子1位が「YouTuberなどのネット配信者」と非常に人気の高まっている職業で、そのような子供の夢を叶えるためのYouTube AcademyというYouTuber養成スクールも創設されるほどです。
この記事では動画市場の可能性、YouTubeのビジネスの概要や戦略、YouTuberになりたい小学生は本当にYouTubeで生活していけるのか、など幅広い視点でYouTubeビジネスについてお伝えします。
ウィズコロナで急増したYouTube視聴率
2019年、コロナウイルス感染拡大が発生する前のデータでは、YouTubeは平均月間リーチが第3位とLINEやFacebookよりも上位にあり、需要の高いプラットフォームであることが分かります。
コロナウイルス感染拡大の影響で外出規制、ステイホームをしなければならなくなりました。
この自粛によって動画の需要はどのくらい伸びたのでしょうか。
インプレス総合研究所は、動画配信ビジネス市場の動向を調査し、動画配信に関する調査結果を発表しました。
自粛により家でどのような活動をしたか
「無料動画を見る」が増えた人が「テレビ番組を見る」が増えた人を上回りました。
また、同インプレスの調査において、有料動画ではAmazonプライム、無料動画ではYouTubeがそれぞれ首位となっています。
- 無料動画配信の内訳
- 有料動画配信の内訳
以上の調査から、ステイホームにおけるYouTubeのニーズは高まっていると分かります
YouTubeの市場規模
それでは次に、動画市場とYouTube市場がいかに大きいマーケットであるかについて触れたいと思います。
株式会社サイバーエージェントと株式会社シード・プランニング デジタルインファクトと共同で行った「動画広告市場動向調査」によると、2017年の動画広告市場は1,093億円、2020年には2,000億円を突破すると予測されました。
若年層のテレビ離れによりスマートフォンユーザーの動画視聴時間は増加傾向にあると予測されました。
2022年の国内YouTuber市場は、2017年の約2.6倍の579億円規模に達すると予想しています。
YouTubeビジネスモデルと広告掲載のメリット
収益構造
YouTubeはGoogleと同じく米Alphabetの傘下にあります。Alphabetの収益構造を見てみると、YouTubeを含む広告収入が約7割となっています。
この7割のうちYouTubeの収益がどれくらいあるのでしょうか。
10年以上もの間YouTubeは売上高と利益を一切公表しなかったですが、2020年2月に初めてYouTubeの2019年の広告売上高が150億ドル(約1兆6000億円)だったとCEOのスーザン・ウォシッキーが発表しました。
- 2017年 81.5億ドル
- 2018年 111.6億ドル (前年比37%アップ)
- 2019年 151億ドル (前年比36%アップ)
2年間では86%成長、前年比で36%の成長を遂げています。
人気YouTubeチャンネル「もふもふ不動産」で2020年2月に発表されたYouTubeの売上が詳しく説明されています。20分と長い動画ですが、良ければご覧ください。
ビジネスモデル
それでは、YouTubeの広告収入のビジネスモデルを見てみましょう。
下記のようにしてAlphabet社はYouTubeの広告収入を得ています。
YouTubeで動画を視聴することがあると思いますが、その際動画の前後や途中にCMが流れてきます。
この広告サービスを利用するために、広告主はYouTubeに広告出稿料金を支払っています。
広告掲載したい側の出稿料金がYouTubeの主なキャッシュポイントです。
YouTube広告のメリット
YouTubeに動画広告を掲載するメリットとしてどのようなものがあるか見てみましょう。
メリット①:YouTubeは世界15億人ユーザーをターゲットとする市場である
メリット②:YouTubeが独自のターゲッティングのノウハウにより効率よく配信
YouTubeはランダムに広告を表示しているわけではなく、閲覧している視聴者の属性を参照したり、広告の内容にマッチした視聴者に対して、広告を表示たりするといった仕組みをとっています。
ダイレクトメールやポスティングよりも広大な範囲にアピールしてくれ、さらにクリックされなければ課金されません
メリット③:広告をクリックすることで自社サイトに誘導
ターゲットにうまく訴求すればその視聴者はその広告をクリックし、企業ページに直接訪問できます。
その商品ページを見た視聴者が、その商品を購入することもあります。
コロナウイルス感染拡大後のYouTube広告の利益
「ステイホームによりYouTubeのユーザー数が増え、視聴回数も大幅に伸びている」と先述しましたが、YouTubeに広告を掲載する企業は減ったようです。
これは、コロナウイルス感染拡大によって売上に影響を受けていることや、今後の経営に先行き不安を感じている企業が多いのではないかと推察します。
Googleを傘下に持つ米Alphabetは4月28日2020年第1四半期(1~3月)の決算を発表し、Alphabet全体の売上高は前年同期比13%増の411億5900万ドル、純利益は3%増の68億3600万ドルでした。
Alphabetの売上高は13%増となっていますが、Alphabet Inc.およびその子会社であるGoogleの最高財務責任者ルース・ポラット氏は「第1四半期の最初の数ケ月の業績は好調だったものの、新型コロナウイルスにより3月に広告収益が大幅に鈍化した」と述べました。
Alphabetは、感染拡大の影響を受けてはいるものの、広告収益は前年同期比で5.8%増とわずかな成長の38億1000万ドル(約3980億円)と発表。
しかし、40億4000万ドル(約4220億円)の広告収益を記録した第1四半期と比べると5.7%の減少となっています。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2004/29/news015.html
2019年、2020年を比較してみるとトータルの収益は伸びていますが、前年比で比べると成長率は下がっていることが分かります。
YouTuberはどのようにして稼いでいるのか
すでにご存じと思いますが、YouTuberとはYouTube上に自身の動画配信チャンネルを開設して様々なテーマの動画コンテンツを配信するクリエイターの総称です。
オリジナル性のある動画コンテンツによって若年層を中心に多くのユーザーを魅了し、一部の人気YouTuberは熱心なファン層を獲得しています。
また、動画視聴の普及にともなって動画広告を活用したPRやプロモーション活動が活発化しており、YouTubeのマーケティング市場も拡大しています。
冒頭で触れたように、YouTuberは小学生が憧れる職業にランクインする時代です。
ヒカキンやはじめしゃちょーのような有名YouTuberになるためにはどのくらい再生数を上げれば食べていけるのでしょうか。
再生数と給与の関係
まず初めに、給与が発生するパターンは下記の2つとなっています。
- ・タイアップ広告 : 広告主がYouTuberを起用したタイアップ動画制作に支払う広告費
- ・イベント・グッズ: 消費者が、YouTuberが関連するイベントへの参加やグッズ購入に支払う費用
YouTuberの収益は、チャンネル登録者ではなく①再生回数②広告単価③広告視聴回数となっており、再生回数が給与に反映される要素としては下記の3つがあります。
- 再生回数(チャンネル登録数 ×投稿本数×レコメンド(次の動画)× 検索流入 × SNS流入など)
- 広告単価(動画ジャンル×広告単価×動画評価など)0.05円~0.1円
- 広告視聴回数(継続視聴時間 × 広告本数)※10分以上の動画での複数広告なども
YouTuberとして生活していくにはどのくらいの再生回数が必要か
YouTuberとして生活するための給与として月額20万円を目指した場合、どのくらい再生回数が必要なのでしょうか。
YouTube広告の収益は、広告単価は動画のジャンルや登録者数によって変化し、子供向けは低い設定となっています。
1再生数につき0.05円~0.1円の単価と言われていますので、0.05円の場合と0.1円の場合で比較します。
1再生数単価が0.05円のケース
10万円の収入を得るためには月間200万回の再生が必要となり、20万円を目指す場合は400万回の再生が必要となります。
1再生数単価が0.1円のケース
200万回の再生で20万円となります。
結論、YouTuberとして食べていくのは非常に厳しい
上記の単価で日割りの再生目標を見てみると、毎日1日1本アップしたとしても月30本で 1本あたり 6万6,666回の再生が必要となります。
更に厳しい点としては、1万人の登録者に満たなければこの目標値は厳しいと言われており、サイクルがうまく回るまでは広告費をかけて登録者数を増やす必要があるということです。
今回このコロナウイルスの感染拡大による自粛需要があり視聴者数や再生数は伸びています。
しかし、広告を出し控える企業が増えたため、YouTuberは4月以降収益が激減しているようです。
小学生の人気職業として憧れる子供や若者が多いかもしれませんが、これからYouTuberが増えていくことは間違いないため、ますます競争激化の厳しい業界になってくる可能性はあるでしょう。
YouTube国別ユーザー数
2020年4月現在、全世界に20億人以上のユーザーがいます。100か国80の言語に対応、毎日10億時間視聴されているなど世界で最も親しまれている動画共有サービスです。
YouTubeは日本国内でも人気であり、2018年時点では6200万人以上が利用しています。
下記のデータを見てみると、世界におけるYouTubeの需要として日本はかなりトップに位置していることが分かります。
アメリカ、インド、日本がトップ3となっており、インドが2位に来ていることは意外な事実ではないでしょうか。
実は、インドはYouTube大国とも呼ばれています。
人口13億人のインドでは近年、スマホや格安通信プランの登場によりデジタルビデオ消費が急速に進んでいるのです。
これにともないインドYouTube市場は世界最速と言われるほどの成長スピードを実現し、世界最大のYouTubeチャンネルが誕生しました。フォロワー1,000万人クラスが続々登場しているようです。
アナリスト向けの会見において、GoogleのCEOサンダー・ピチャイ氏はインドは最速で拡大しているYouTube市場の1つだと発言しています。
世界の地域別で見てみるとアジアのシェアが30%と高く、次いで欧州エリアと続きます。
海外におけるYouTubeマーケティング
マーケティング戦略の1つとしてYouTubeを利用する企業が増えてきています。
動画を活用したWebマーケティングを行っている企業のうち、約63%がYouTubeを活用していると回答。
YouTubeはビジネスの側面においても重要な位置づけとなっています。以前はYouTuberが動画の多くを占めていましたが、最近はかなりビジネス系のYouTuberが増えています。
このように、日本におけるYouTubeの存在感はかなり強いものですが、海外のYouTube市場に目を向けるとまだまだブルーオーシャンです。
まだ日本企業が海外向けのYouTubede成功した事例などが挙がっていないため、ビジネス活用としての伸びしろも大きいのではないでしょうか。
bufferの調査によると2019年、アメリカのマーケティング専門家1,842人に対して行った調査では、facebookの次にYouTubeをマーケティングに活用している割合が多く、62.9%となっています。
英語圏の企業によるYouTube発信は英語です。
そのため世界中の英語が理解できる視聴者にアクセスすることができるという点で非常に有利です。
インターネット上で使われている言語のトップ10の割合を見てみると、英語人口は26%、日本語人口は世界の3%しかありません。
このことは逆を言えば、日本企業が英語でもYouTubeを発信することでアプローチできる人数が莫大に変わってくることを意味します。
しかし、ただ計画なしに動画を英語で配信しても意味がありません。
それぞれの国で日本のどのようなコンテンツがウケるのか、事前に調査する必要があります。
YouTubeはGoogleの傘下にありますので、Googleの検索アルゴリズムと連動しています。
Googleが無料で提供する「Googleトレンド」や「Keyword Planner」で対象とする海外の国を選択し、需要を探して見たり、直接現地の人々に「日本に興味があることは何があるか」を聞いてみたりしてもいいでしょう。
最後に
まもなく日本では大手通信キャリアによる5Gサービスが開始します。
それに比例してこれから動画市場は5Gの影響で急速に拡大していきます。
5Gの最も大きな特徴は超高速という点です。タイムラグなしに2時間の動画を約3秒でダウンロードできる時代に突入します。
また、スポーツやライブなどのリアルタイムでの動画視聴だけでなく、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を用いたゲームなど併せて楽しめるようになっていきます。
このようなに動画配信の文化が浸透すると、企業がYouTube動画を使って宣伝やブランディングすることは避けて通れなくなってきます。
しかし、多くの企業がYouTube動画の配信に乗り出すことで、動画コンテンツは飽和状態になることも忘れてはいけません。
「とりあえず動画を投稿すればよい」といった戦略なしにYouTubeのコンテンツを配信するのではなく、媒体そのものの優位性を戦略的に計画し、よりクリエイティブな視点を持って作っていくことが求められるでしょう。
<参考>
https://resemom.jp/article/2019/12/23/53962.html
https://service.aainc.co.jp/product/letrostudio/article/2020/movie-market-data.html
https://markezine.jp/article/detail/27843
https://media.bizmake.jp/example/bm-youtube/
https://nook.blue/businessmodel_youtubetv/
https://creatorzine.jp/news/detail/1200