世界の中古車マーケットと市場規模・流通量。日本・中国・米国・欧州・ASEANまで広く紹介

日本は世界でも有数の自動車生産国です。

新車販売のみではなく、それに合わせて中古車市場も大変活気があります。

世界でも日本と同じように新車で購入した自動車を販売して、中古自動車として購入したり、海外の中古車を輸入したりといった中古車市場があります。

世界の国々では、それぞれの文化によって必要とされる車種や人気のメーカーが異なり、法規制などで日本とは異なる中古車市場が広がっています。

それでは日本とはどのような違いがあり、どういった市場が形成されているのでしょうか。

この記事では、世界の中古車市場について詳しく説明します。

日本の中古車市場

まずは日本の中古車市場について。

新車販売での自動車生産数は2019年に503万台。

そして、中古車の販売台数は、2019年で380万台。金額で表すと、3兆円規模の市場があります。

新車販売台数に対する中古車販売台数は、約3分の2程となります。

この数字からも、日本での中古自動車の人気が伺えます。しかしながらまだまだそ新車販売の方が多く、人々に選ばれているような状況です。

日本の中古車販売台数

しかしながら、日本の四輪自動車の保有数は8200万台。この台数は、1世帯あたり1台以上自動車を所有している計算になります。

免許を取った後に自動車を購入する層を除けば、新車、中古車共に、新規の自動車購入よりは、ほぼ買い替え重要が多いような、とても成熟した市場といえるでしょう。

その中でも中古車販売は古くから数多くの中古車ディーラーにより店頭販売されたり、メーカー直属の販売店、最近では、ネットを使用した個人取引など、さまざまな形態で行われています。

その他、中古車販売への影響が考えられる出来事といえば、2015年に施行された、車歴に関する法律です。

この法律は、車歴が13年以上になると自動車税が高くなる、という自動車税の加算をするという内容。

制度の詳細は、排気量により税の加算金額がかわり、排気量が小さいものは約5000円の加算。排気量が大きいものは約20000円加算されるといった形で、排気量により加算金額が変わります。

この法律は、古い中古車は安全性能が低い上に、環境性能も最新のモデルと比べると劣るという観点から導入されました。より一層の新車販売増加や、別の中古車購入を促す目的にもつながっています。

しかしながら環境の面では燃費は良くなるものの、一つのものを長く使い続けることの方が環境に優しいのではないかという議論にもなっています。

自動車税

日本の中古車の特徴としては、中古自動車の走行距離や、年式、モデルチェンジでの世代、傷などが重視されます。

10万キロを超えるような中古車は、消費者が購入をしない傾向にあるので、よほどプレミアがついた自動車以外は、相当低価格、もしくは、販売することも難しいものが多くなっています。ここからは世界の各地域での中古車市場の特徴を日本の特徴と比べながら紹介していきます。

中国の中古車市場

中国中古車

中国はコロナ後も経済を唯一伸ばす国。その大きな資本力や技術力に関して、さまざまな分野で注目を浴びています。

そんな中国では、新車自動車販売台数も世界一を誇ります。

新車販売台数は約2500万台。現在では約14億人の人口があり、自動車の保有台数はなんと2億6000万台。

日本の人口をはるかに超える台数の自動車が中国では保有されています。

保有台数から全人口を見比べると、まだまだ自動車を所有していない人が多くおり、これから自動車を、新車、中古車と購入するするであろう層が多くいる事が予想できる市場です。

さて、中国の中古車市場ですが、2018年の販売台数は、なんと1400万台。新車販売台数もさることながら、中古車だけの販売台数を比べても日本のものとは桁違いなことがわかります。

購入方法に関しては、中国でも中古車ディーラーを通しての購入ではなく、インターネットを、介した電子取引が対増加傾向にあります。

中国の中古車取引

人気の中古車

2018年の販売実績では、中国国内でも新車販売台数1位であるフォルクスワーゲンが中古車市場でも変わらず人気ナンバー1。

その後、トヨタ、ホンダ、アウディ(ドイツ)、ビュイック(アメリカ)と続きます。

中国人気中古車

ちなみに日本の中古車を中国国内に輸入し、販売することは法律で禁止されています。

そのため、現在輸入中古日本車は中国で販売をしていません。

日本の中古車は主に、自国内で生産された日本車が中古車として流通しています。

それは、日本車の生産が国内でされており、その中で経済を回す目的。さらに、日本車のような右ハンドル車が規制され、使用できないことが理由です。

このように中国の中古車市場は、まだ自動車を所有していない人々の層への販売、経済の成長、電気自動車などへの乗り換えなど、どれをとっても市場が大きく膨らむことが可能性が高い市場になっています。

ヨーロッパの中古車事情

ヨーロッパ中古車

ヨーロッパの中古車販売台数は2019年で約1500万台。(イギリス含む)

新車販売台数もおよそ1500万台。新車の販売台数と中古車販売数は、ほぼ同数となっています。

日本や中国では、新車の販売台数が多く、中古車の販売台数は少ない状況ですので、ヨーロッパの中古車市場とはかなり対照的。

中古車販売数は、自動車生産国であるドイツが中でも1番売り上げがあり、次にイギリス、フランス、イタリア、スペインと続きます。

やはり自動車生産国は新車の販売台数が多いことから、中古車の販売も盛んに行われています。

自動車販売台数の多いドイツはどうなっているか

特に自動車販売台数の多いドイツでは、これだけの量の中古車が販売されているにもかかわらず、日本とは異なり、自動車を長く乗り続ける傾向にあります。

通常、自動車を新車で購入したとしても、パーツの交換やメンテナンスなど必要になってきます。

交換項目は多岐にわたりますが、オイルやパッド類、バッテリーなど簡単に交換できるものは日本でも適宜交換しますよね。

ただし、日本ではタイミングベルト、Vベルト、スパークプラグ、インジェクターなど、交換に手間がかかるものは10万キロ程を交換目安にしています。

日本は、10万キロを超えた中古車を購入しない傾向にあるので、それを超えた中古車は、市場でも相手にされません。そのままベルト類などを交換せずに廃車になってしまうことも多くあります。

しかしドイツ国民は、使用する上で経年劣化する部品に関しては、交換をして自動車自体は長く使用するといった文化があります。

更に、日本とは逆で、30年以上経過して、販売時の状態をキープしている場合などは、Hナンバーというものが与えられ、車検や、税金の減免が受けられるのです。

日本とはものを大切にするという考え方が根本的に異なりますね。

そして、これだけ大切に長く自動車を使用していて、さらに中古車の販売も好調なヨーロッパはかなり中古車市場のポテンシャルも高いことが伺えます。

米国の中古車事情

米国中古車

2020年のアメリカの中古車販売台数は約3900万台。

アメリカの新車販売台数が、1500万台弱なので、中古車販売台数がはるかに新車販売台数を超えるという、活気のある市場だということがわかります。

日本、中国、とは対照的、そして、ヨーロッパともまた異なる中古車市場ですね。

販売は日本と同様中古車ディーラーがあり、CarMaxという大型のディーラーも存在します。

新車販売ディーラーにも同様に中古車販売部門があるところも。

日本と比べて手続きが容易なことと、代理店による手数料がかからないため、スマホアプリなど普及する以前から個人売買も盛んに行われています。

中古車が人気の理由は、アメリカは国土が広く、鉄道などのインフラも大都市の中心部のみなっているため、地域によっては日本以上に日々の生活のために車の必要性が高いということが考えられます。

例えば、一番近くのスーパーへも車で行く必要があるほどの距離であったり、外を出歩くのが危険であるなどの理由により、自動車はアメリカの人々にとって、生きる上で欠かせない生活必需品となっています。

そのためアメリカでは中古車の需要が非常に高く、日本の中古車より割高な傾向にあります。

かなり古い自動車のモデルで、10年落ち、20年落ち、走行距離も10万キロ、20万キロと、日本では考えられないくらい走行している中古車。そして、傷や色落ちのあるものなども販売していて、それでも販売価格は、日本円換算で何十万円となることが多くあります。日本は傷やへこみがあったり、10万キロを超えて走行しているもの、2、3代前のモデルになるとほぼ二束三文のような金額になっていますよね。

自動車そのものの保有台数も2億8000万台と相当な台数になります。一家に一台、もしくは一人一台所有しているといっても過言ではない数字です。

現在アメリカで新車販売されている日本車も、2017年で40パーセントのシェアを誇るなど、日本車は大変人気になっています。アメリカの中古車市場の中でも、日本車は耐久性に優れている点で大変人気があり、長く使用することができるため中古車市場にもかなりの台数が販売されています。

アメリカ市場は他の市場と異なり、中古車の販売台数が新車を大幅に上回り、中古車が大半人気があります。さらに自動車を長く乗り、中古車の価格はそれでも比較的高い形になります。

東南アジアの中古車事情

東南アジアでは、その国によって状況は変わりますが、中古車を輸入して販売している国もあります。ミャンマーでは特に日本車の人気が高く、多くの日本の中古車が輸入され、一時期は9割近い中古車が日本からの輸入となっていました。

ミャンマー人は新車を買うことよりも、信頼性の高い車に乗ることの方がステータスのようです。

しかしながら現在は日本車のような右ハンドル車が、政府によって2018年に輸入禁止になってしまったため、その輸入量はどんどん減少しているような状況です。

中古車の輸入販売ができない国

他にも日本の中古車を、輸入販売することができない国があります。既述の、中国やそしてタイ。

タイは右ハンドルなのですが、「輸入許可取得必要品目」に中古車は含まれ、新車と同様の新しい基準に合わせたものでないと輸入ができません。

個人用などの目的に限られます。

インドネシアも日本と同様に右ハンドルの国なのですが、中古車の輸入が不可能。

2007年に輸入停止して以来、輸入可能品目が後から提示されましたが、そのリストに中古車が載っていないためです。

ベトナムも同様に商用輸入は禁止。

ハンドル位置も左と決められており、例え位置を変更したとしても輸入が認められていません。

その他、ミャンマー、カンボジア、ネパールなどでも禁止されています。

日本からの中古車輸入が多い国々

アラブ

日本の中古車を一番輸入している国は、アラブ首長国連邦。高層ビルなどで有名な「ドバイ」がある国です。

2018年に約126000台の中古車を日本から輸出しています。

ブランド別輸入中古車の中でも日本車に人気が集まり、トヨタ、日産が輸入量のシェア1位、2位となっています。

実際はアラブ首長国連邦の中でも、右ハンドルの自動車は走行ができないため、国内流通用ではない場合が多い状況です。

輸入した中古車は一旦国内に保管し、それを右ハンドル規制のない国に輸出しているため、輸入量が多くなっているのがこの理由です。

2位はニュージーランド。約116000台を輸出しています。日本と同じ右ハンドル、左側走行であることと、輸入規制がないために日本の中古車の輸入が多くなっています。

3位はロシアで95000台。ロシアも、中古日本車の人気が高く、日本からの輸出台数も高い位置にあります。

特に極東地域、ウラジオストクなどでの人気が高く、地理的にも日本海を隔ててすぐ隣なので、他の地域に比べても日本との貿易において有利な場所とも言えます。

中古車輸出先国

チリ、南アフリカ、ケニア、スリランカと続きます。チリ以外は日本と同じ、左側通行、右ハンドルになっています。

このような中古自動車輸入国では、中古車をパーツに分けて輸入することとあります。

さまざまな規制から逃れるために一旦分解して輸入するため、必要なパーツや需要の高いもののみを選抜したり、効率よく運び出しができるなどの理由でこのような方式で運ばれていることがあります。

海外では中古車を長く使用する傾向にあるので、その輸入されたパーツを使用して修理をし長く使用することを想定しています。

まとめ

このように世界の各地域では異なる中古車の使われ方がしており、販売台数や、使用年数もさまざま。

国土の広さや、自動車の重要性、自動車を生産している国なのか、自動車生産国が地理的に近いのか、など色々な理由により中古車の市場規模などが異なってきます。新型コロナウイルスの影響で、新車販売台数が各国で落ち込んだり、経済状況も悪化する国が多い中、これからの世界の中古車市場もどう変化していくのか注目です。

<参考>

中古車販売台数

http://www.jada.or.jp/data/year/y-u-touroku/y-u-all/

自動車税

https://www.mlit.go.jp/jidosha/kensatoroku/sikumi/zyuuryouzei.pdf

中国の中古車取引

https://www.yamaguchibank.co.jp/portal/special/asia/2019/qingdao_02.pdf

中国人気中古車

https://zuuonline.com/archives/184461

ヨーロッパの中古車販売

https://www.google.co.jp/amp/s/www.best-selling-cars.com/europe/2019-full-year-europe-car-sales-per-eu-and-efta-country/amp/

アメリカの中古車市場

https://www.mckinsey.com/industries/automotive-and-assembly/our-insights/used-cars-new-platforms-accelerating-sales-in-a-digitally-disrupted-market#

シェア率

https://asia.nikkei.com/Business/Japan-automakers-reach-for-40-American-market-share

中古車、右ハンドル車禁止国

https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-101001.html

日本からの中古車輸出

http://www.jada.or.jp/wp-content/uploads/eb028d73dfb51721f536d9d2aaf64577.pdf

ロシアの人気中古車

https://www.google.co.jp/amp/s/www.sankeibiz.jp/macro/amp/210323/mcb2103230621003-a.htm

関連する事例

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。