調味料メーカー各社のグローバル戦略(キッコーマン、ミツカン、味の素、キユーピー、マルコメ)

海外で日本食ブームが起こり、寿司や天ぷらは人気の日本食メニューとなっています。

これらの日本食に欠かせないのが醤油です。醤油の製造販売で最大手のキッコーマンの商品は、現在海外約100カ国で展開されています。

海外マーケティングを始めた1957年は、現地の人が「茶色の液体」を不気味がり、キッコーマンは販売促進に苦戦したそうです。

 

 

キッコーマンは4月24日、2019年3月期の決算において、純利益は前期比で9%増の過去最高の259億円となったことを発表しています。

同社は国内の醤油、食品、飲料事業のイメージが強く持たれていますが、実は海外での売上高が全体の6割となっていると聞くと驚く方も多いでしょう。

この結果、北米の冷凍食品とアフリカの調味料で不振が続く味の素を抜いて10年ぶりに純利益で国内調味料業界首位に立つ可能性が高いと言われています。

 

キッコーマン

世界で醤油を日常的に使う人口はまだ2億~3億人程度ですが、中長期的な成長力という観点から、市場開拓の余地は大きいと言われています。

世界的に起こったコロナウイルス感染拡大によって巣ごもり需要が一時的に増えています。

調味料業界各社は、このことをチャンスとし、いかにお客を捉えて生活必需品として定着させることができるかが肝となるでしょう。

 

ここでは、日本の調味料が欧米で受け入れられた理由や、調味料の海外市場で成功しているキッコーマン、ミツカン、味の素の事例をご紹介します。

 

 

調味料業界の動向

世界市場

リサーチ情報を提供するResearch Station, LLCの調査によると、スパイスと調味料の世界市場規模は堅調な成長が続き、2020年には148億ドルに達すると見込まれています。

また、同社の海外最新リサーチ「うま味調味料の世界市場2022年予測」の調査において、2017年から2022年にかけて平均年成長率5.6%で推移しており、2022年には81億8000万ドルに達すると予測されています。

 

 

コロナ渦での醤油の売上

2020年度に入ってまもなく、新型コロナウイルスの感染拡大によって在宅勤務や外出制限が続いています。

そのため人々の食の場面は外食から内食へのシフトが起き、外食向けの商品を製造販売する調味料業界各社は打撃を受けています。しかし、救われたのは、外食向けビジネスが縮小する一方で家庭用ビジネスが伸長している傾向です。

それでは、コロナウイルス感染拡大後各社にどのような動きがあったか見てみましょう。

 

キッコーマン

高収益を続けてきた海外醤油事業は飲食店向けの需要が減りましたが、6月下旬、英国の食品業界の雑誌ザ・グローサーは「スーパーマーケットの醤油の棚が空になった」と述べました。

巣ごもりで急増する需要に対してボトルの供給が追いつかない状況になっています。

しかし、2020年3月期まで7期連続で最高益を更新し続けてきましたが、今期は外食への売上に置いて、新型コロナウイルスの影響が出始めるのではないかと予測されています。

 

ヤマサ醤油

1~6月の今上期、前年実績を上回って推移しており、コロナ禍による業務用の苦戦を家庭用の急な需要増で補うことができました。

しかし、まだ感染拡大が続く状況下、下期も同傾向は続くと判断しており、内食増を好機に生かした提案をする動きを見せています。

 

味の素

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要の増加を背景に、調味料などが好調巣ごもり需要の伸長により家庭用(調味料・食品、冷凍食品等)の販売が増加。

その一方、外食用・業務用の販売減で減収。北米などの家庭向け冷凍食品は好調に推移しています。

本業のもうけを示す事業利益は9%減の900億円と従来予想から120億円上方修正しました。

 

キユーピー

3~5月の第2四半期、感染拡大の影響により営業利益が40%落ち込み、業務用は料飲向け40%減、給食30%減、コンビニ15%減となりました。

家庭用はマヨネーズやカット野菜などが巣ごもり需要から伸長したものの、業務用の落ち込みをカバーするには遠く及びませんでした。売上は前年差39億円の減少となり、東日本大震災を上回る過去最大の衝撃を受ける結果となっています。

 

ミツカン

ミツカンの吉永最高経営責任者(CEO)は「納豆や家庭向け調味料が前年同期に比べ2桁増の勢いで伸びている」と述べました。

飲食店に納める業務用商品の減収を上回っているという。今期の業績見通しは開示していません。

 

マルコメ

巣ごもり需要の影響で、2020年のみそ生産量は4月に前年を上回り、マルコメは2020年3月期全てのカテゴリで前年を上回りました。

コロナウイルスの影響で「料亭の味」と「液みそ」が伸び、さらなる成長の兆しを見せています。

 

コロナ禍でも海外事業が好調なキッコーマン

キッコーマン北米

https://tsukaueigo.com/32143784-2/

 

1957年に米カリフォルニア州に醤油販売会社を設立後、北米を中心に「ソイソース」や「テリヤキ」の販売を成功させてきました。「ソイソースといえばキッコーマン」と言われるほどキッコーマンは海外展開で認知度を広げています。

 

20年3月期の連結決算では、醤油を中心とした海外食品の製造・販売の営業利益が192億円でしたが、この利益額は全社の半分近くを海外事業が稼いだことを意味しています。

北米では日本の3割強より高い6割近いシェアを握っています。

 

今回コロナ禍に見舞われたことにより、21年3月期の海外事業の見通しは不透明感が漂っており、連続最高益の更新は一旦終止符が打たれるかもしれません。QUICKコンセンサスの市場予想平均によると、純利益は前期比1割強の減益の233億円と予測されています。

キッコーマン業績推移

https://toyokeizai.net/articles/-/226079?page=3

逆境から巻き返すための新規市場の開拓として、今年3月、同社はキリンホールディングスから、ブラジルで清酒や醤油を生産する子会社を買収しました。手薄だった南米地域にリーチし、現地生産ができればシェア拡大の足がかりになるでしょう。

 

 キッコーマンの海外戦略の歴史

キッコーマンの醤油は現在世界100カ国以上で愛用されており、海外に7ヶ所の生産拠点を持っています。「醤油は世界で愛される調味料になる」というキッコーマン社の革新から、第二次世界大戦後、特にアジア以外の北米に本格的な輸出が始まりました。

https://www.kikkoman.co.jp/kiifc/tenji/tenji14/america03.html

サンフランシスコに販売会社を作った1950年代当時、今まで醤油を使ったことのない人々に、どうやって紹介し食べてもらうかが最初のハードルでした。

そこで同社は和食を持ち込むことではなく、「いかに現地の食材や料理に醤油を浸透させるか」を考えました。

素材を選ばずに、いろいろな料理になじむ醤油の特徴を活かす戦略で、現地の食文化との融合を図りました。結果的に異国の地に醤油を浸透させることに成功したのです。

 

北米マーケットにおいて具体的に行った宣伝活動や啓蒙活動は下記の4つです。

  1. 「All-Purpose Seasoning」(万能調味料)と位置づけ、「Deliciouson Meat」(肉に合う)というキャッチフレーズを付けた
  2. スーパーマーケットで醤油で味付けした肉を焼き、顧客に試食してもらった
  3. 家政学士の考案により、主婦目線に立った醤油を使ったアメリカ料理のレシピを作って広めていった
  4. 地元の人々に愛されるブランドを目指し、「キッコーマンはアメリカのブランド」と定着させるため、「日本製」として販売しなかった

徹底的な現地化をしたことが成功の要因となったことが分かります。

 

急成長のきっかけとなったテリヤキ

明治時代の輸出の目的は、アメリカの日本人移住者向けに販売するためでした。

時代とともに渡米する日本人は増加し、来日するアメリカ人も増加し始めた時代です。

 

来日したアメリカ人は、アメリカ料理であるステーキやハンバーグに醤油をかけることを覚え、そこに、当時醤油の需要の伸び悩んでいたキッコーマン社が目をつけたのがテリヤキの起源です。いまや「テリヤキ」という名称は“teriyaki”という単語は英英辞典にも掲載されています。

 

また、北米におけるテリヤキソースでは「ヨシダソース」も有名です。

約30年前に、創業者である吉田潤喜氏によってアメリカで発売されたヨシダソースは、今では一日平均7万本が生産され、14カ国以上で販売されており、グループ会社18社を合わせて年商250億円にものぼると言われています。

 

 

 

ミツカンのM&Aを中心とした海外戦略

ミツカンは国内だけでは大きな成長は見込めないと考え、グローバル展開に踏み出し、数々の現地食品メーカーを買収してきました。

グローバル展開を加速させるため、英語表記の持ち株会社Mizkan Holdingsを設立し、「日本とアジア」、「北米」、「欧州」の3地域に分けて運営しています。2019 年度、海外売上高比率50.9%となりました。

 

ミツカン海外比率

http://www.mizkan.co.jp/company/recruit/graduate/work/global/

 

ミツカンの海外における主力商品はパスタソースです。北米、欧州とそれぞれの特徴を見てみましょう。

 

北米

事業は大きく分けるとパスタソース、食酢、ペッパーの3つを主軸に展開しています。

パスタソースの主要ブランド「RAGÚ(ラグー)」と「BERTOLLI(ベルトーリ)」が主に稼いでおり、全米の家庭で親しまれているパスタソースです。

http://www.mizkan.co.jp/company/newsrelease/2014news/140522-00.html

 

 

欧州

2002年に本格進出し、北米同様パスタソースが主力商品で、その他ではビネガーやピクルスが好調です。今年、すし酢を中心とする日本食事業と食酢ブランドである「SARSON’S(サーソンズ)」が前年を上回りました。

 

味の素の地産地消の海外戦略

100年以上前にうま味調味料である「味の素」を開発した味の素は、食品メーカーの中では早くから世界中に展開し始め、売上の6割を海外事業で稼いでいます。現在では世界26の国と地域に拠点を設けて、現地に密着した事業展開を通し、130以上の国と地域に商品を届けています。

https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/event/investor/main/014/teaserItems1/01/linkList/0/link/20190117.pdf

 

海外コア展開“Five Stars”と呼ばれるタイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ブラジルに注力しており、2020年を目途に売上高を2倍に増やす計画を掲げています。味の素は、各国の調味料市場に参入する成功ポイントを2つ挙げています。

①参入する国の人口が多いこと、または今後の人口増大が見込まれること

→ 安定的な事業を確立させるために、ある程度の市場規模が必要なため

 

②進出国が醤などの発酵調味料を受け入れる食文化である

→穀類・魚等を発酵させて作った調味料を料理に使用する東・東南アジアでは「うま味」という考え方が浸透しやすい地域のため

 

味の素が異文化社会に受け入れられ成功した要因は、現地に生産拠点や法人を設立して、日本の常識を押し付けるのではなく現地の常識を重視したことと言われています。

 

マルコメの海外戦略

醤油と味噌は日本の伝統的な調味料ですが、醤油と味噌の輸出量はともに右肩上がりになっています。

平成24年以降醤油の輸出量が急伸していますが、味噌もゆるやかな伸びを示しています。

醤油も味噌も伸びているのは、2013年にユネスコ無形文化遺産が和食を指定してから、海外で和食ブームが起こり、日本食レストランが増えているからです。チーズなどの発酵食品になじみのあるEU域内では特に味噌を受け入れやすい土壌があると言われています。

https://www.sankei.com/economy/photos/191009/ecn1910090064-p1.html

 

これまでにご紹介したように、醤油のキッコーマン、酢のミツカン、うま味調味料の味の素は売上半分以上が海外が占めています。一方、マルコメの海外売り上げはまだそれほど多くないのが現状ではありますが、海外に45拠点持ち、展開に力を入れています。

https://jba.org/pdf/JBA0319_WEB.pdf

 

 

キユーピーの海外戦略

キユーピーの売上高の内訳によると、海外売上高比率は5%と少ない比率になっています。

上記のグラフ「海外のエリア別売上推移」を見てみると、海外の売上に貢献しているのは中国市場ということが分かります。

 

当初キユーピーは日本で販売しているものと同じマヨネーズを売ろうとしていたのですが、結果が出ずに苦戦していました。

そこで1999年に現地の人の味覚に合うようにか「砂糖入りの甘いマヨネーズ」を販売しました。

そのことがきっかけで現地に浸透していき、また洋食文化の影響によって中国人も生野菜を食べる人が増えたことが売上につながったのです。

 

https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1410/15/news011_3.html

 

■最後に

食品業界において北米展開の成功は世界の成功を意味すると言われており、食品業界は海外進出をスタートする際、まず北米での成功を目指す傾向にあります。

今回は調味料業界各社の海外事業についてご紹介しましたが、各社の成功要因に共通して見られるのは「現地化」でした。食品業界の企業が海外展開を考える際には「現地の人々の胃袋を掴む」ことも重要です。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62100370Q0A730C2DTB000

https://biz-journal.jp/2018/01/post_22088.html

https://times.abema.tv/news-article/2376609

https://www.kikkoman.com/jp/corporate/about/oversea/development.html

https://www.ssnp.co.jp/news/soy/2020/08/2020-0730-1757-16.html

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59827150R00C20A6L91000

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/042400297/

https://news.infoseek.co.jp/article/dreamnews_0000159888/

http://researchstation.jp/report/MAM/2/Spices_Seasonings_Market2020_MAM212.html

https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP502802_V10C19A2000000/

https://news.nissyoku.co.jp/news/yoshiokau20200720042511652

https://news.yahoo.co.jp/articles/0f81ee03222e5fa1ede1e65088307d26af3266a0

https://shokuhin.net/33380/2020/07/08/topnews/

http://www.mizkan.co.jp/company/newsrelease/2020news/pdf/R20029.pdf

https://globalwing.jp/ajinomoto

https://www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/pdf/2014/03/14/a1150458.pdf

http://pub.sgu.ac.jp/~nakamura/zemron09-10.htm

https://spydergrp.com/columns/global/2011/

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