セブン&アイのSpeedway買収から見る米国進出/M&Aを通じた海外展開と米国EC市場規模、AmazonGO

セブン&アイ・ホールディングスは8月3日、子会社7-Eleven, Inc.が米国のSpeedway(コンビニエンスストア・ガソリンスタンド事業)のブランドを210億米ドル (2兆2176億円)で取得すると発表しました。

7-Eleven, Inc.は、全米に9046店(2019年12月時点で米国コンビニエンスストア業界シェア5.9%)を持っています。

今回のSpeedwayとの統合後、店舗数は約1万4000店、全米シェア8.5%となります。米国人口密集地トップ50のうち47の地域でプレゼンスを獲得する予定です。

 

日本企業によるアメリカの企業の買収は成功事例が少ない中、セブン&アイ・ホールディングスの前身であるイトーヨーカドーは経営危機に瀕した米国7-Eleven, Inc.を買収し、復活させることに成功した稀な企業です。

今回のこのアメリカにおけるビジネスの拡大にはどのような勝算があるのでしょうか。

飽和状態にある日本のコンビニ業界の現状、アメリカ企業の買収の実情、日本企業が脅威として認識すべきAmazon Goについてお伝えします。

 

セブン&アイによる米セブン&アイの買収

米セブンイレブンとは

アメリカのセブンイレブンの前に、その前身であるサウスランド社にまず触れたいと思います。

 

前身

もともと、1927年アメリカのテキサス州ダラスで製氷会社4社が合併してできた会社です。

当時電気冷蔵庫が普及していなかった社会で、サウスランド社は氷販売店としてスタートしました。

来客者から「食料品や調理器具などの日用品を扱ってくれると便利だ」と言われるようになり、お客様の声からセブン・イレブン」は生まれました。お客さんが欲しいものはできるだけ売るというスタンスの中で、ガソリンも売るようになりました。

 

しかし、1960年代から急成長し、1986年12月の決算時には売上高1兆3607億円、税引き前利益が477億円の優良企業となった同社は、1980年代から経営危機に陥り始めます。

要因は主に、①商品構成の変化 ②ガソリン販売の増加 ③コンビニエンスストア業界の競争激化でした。

 

1989年12月、同社はイトーヨーカドーグループに再建の救済を求め、これによりイトーヨーカドー側はサウスランド社の破綻により資本・経営参加することを決定。

1991年、イトーヨーカ堂とセブンイレブン・ジャパンによって経営破綻したサウスランド社は買収され、サウスランド社の再建が始まります。

米国セブンイレブン創業から現在まで

 

買収後復活を遂げた米セブンイレブン

1991年にセブンイレブン・インクの前身サウスランド社が経営不振に陥って以来、セブン‐イレブン・ジャパンが長年にわたって改革を進めてきた結果、米国セブンイレブンは経営の復活を遂げることになりました。

 

米国セブンイレブン・インクの営業利益は4億7832万ドル(前年比116.6%)と、セブン&アイ連結決算ではセブンイレブン・ジャパンに次ぐ規模となりました。

 

Speedwayの買収の背景、メリット

 Speedwayとはどんな会社か

ガソリンスタンド経営と付随するコンビニエンスストア事業を展開するSpeedwayの経営はアメリカ合衆国オハイオ州フィンドレーに本社を置く石油精製会社マラソン・ペトロリアムによって行われています。

 

MARATHON

 

2018年4月30日、マラソン・ペトロリアムは同業のアンデバーを買収し、シェア2位と5位の合併により、米国内の独立系石油会社として最大規模となりました。

しかし、石油精製事業へ注力するために、2019年にコンビニ部門の売却を進めることになりました。そこでセブン&アイが買収するという経緯に至ったのです。

 

日本におけるコンビニ飽和論

以前新浪剛史ローソン元社長が「無理な出店を続ければ大きな閉店がある」と発言したことは、日本におけるコンビニ店舗が飽和状態にあることを意味しています。

セブン&アイがSpeedwayを買収した別の背景には、このコンビニの飽和状態から脱却する目的もあるようです。

 

セブンイレブンはここ数年、毎年のように1000~1500店と大量出店してきましたが、2020年2月期の新規出店数は前期の1389店より500店以上少ない850店となりました。

この現象はファミリーマートやローソンも同じで、出店を控える傾向にあります。

セブン&アイの営業収益構成を見てみると、国内コンビニの収益は伸び悩んでいるのが分かります。

 

営業収益国内と海外

 

今回のSpeedway買収は高い成長を続けるための戦略的な決断です。

相応のリスクがある分、期待リターンも高いでしょう。

セブンはコンビニ大手3社の中で唯一商社との明確な資本関係を持たない企業形態を取っているため、経営の自由度が高い点は期待ができます。

 

メリット

その他は、米国における税制優遇措置が経営上のメリットです。

取引の完了後、15事業年度の終了時までの間に合計約30億ドル(正味現在価値)の節税メリットを見込むと言われています。

 

買収発表後セブン&アイの株価が下落した市場心理

井阪社長は「新型コロナウイルスの終息はまだ見えていないが、5年後、10年後の成長を見据えた上で今回の買収は千載一隅のチャンスだった。短期的にも公共交通機関より自家用車の使用が感染防止のため増えているため、ガソリンスタンド事業とコンビニ既存店の売上は手堅い。今後この巨額の投資を回収するため、早期にシナジーを発揮、他の投資案件の検討は厳しく精査していく」としています。

 

しかし、コンビニもガソリンも成長市場ではないとの見方もあり、このことは株価下落を招いたと言われています。

どのような否定的な意見があるのか、見てみましょう。

 

  • アメリカのコンビニは総菜類が少ないなど、商品構成が日本とは大きく異なる。国内に蓄積されたノウハウがあまり活かせない。
  • アメリカではコンビニのガソリンスタンド併設店舗が多いが、電気自動車(EV)時代には不利になるとの見方がある。
  • アメリカのコンビニは日本のコンビニのような品揃えがありません。雑貨店とコンビニの間のような位置づけとなっており、日本のコンビニ各社が提供する細かなオペレーションは、アメリカでは不可能。アメリカではコンビニが成長産業とは思われていない。
  • アメリカはコロナウイルスの感染者数が世界最多となっています。GDPの大幅な下落も心配される要因です。米国商務省が7月30日に発表した2020年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率は前期比年率マイナス32.9%、統計開始(1947年)以来最大の減少幅を記録しているので経済回復までに最低数年かかるのではないかという懸念。

 

海外企業のM&Aは難しい

アメリカのM&Aの市場規模

 

GDPの米国と日本

 

日本の経済成長率が低いことは明らかです。自国通貨建てで1990年を基準にこれまでの変化を比較してみると、この間にアメリカは実質GDPが約2倍に増えていましたが、日本は3割程度増えただけでした。

名目GDPで比較すると、物価が上昇を続けているアメリカの拡大に比べて、物価が上昇しない日本の伸びの低さはさらに著しいでしょう。

 

コロナウイルスの発生以前ですが、近年アメリカのM&A市場は特に活発化しています。

2014年から2019年まで、アメリカのM&Aは6年連続で1兆ドルを超えており、市場希望は100兆円を超えています。

 

日本企業による海外企業M&Aの背景と課題を必要とする理由

現在日本企業は、国内需要の減少、経済のグローバル化、新興国の経済成長、AI・IoT 等のデジタル化などといった数多くの時代の変化に直面しています。

国内で既存事業を継続しているだけでは持続的な成長が見込めないのが実情となっているのです。

このような事態を打開し、グローバルに通用するビジネスモデルを構築するための選択肢が海外への M&Aです。

 

しかし、海外 M&A に乗り出した日本企業は買収後の経営統合(Post-Merger Integration/ポスト・マージャー・インテグレーション)に直面し失敗するケースが多く、日本企業がアメリカ企業のM&Aを成功させてきた事例はあまりありません。

 

セブン&アイは以前米セブン・イレブンの買収で成功している、日本企業においては少ない成功事例となっている企業です。

今回また成功すれば、アメリカにおけるセブン&アイのプレゼンスはさらに高まっていくのではないでしょうか。

 

アメリカにおけるセブンイレブンの脅威はAmazon Goか

アメリカ小売(EC)の市場規模

 

アメリカEC市場規模

 

アメリカのEC市場額は右肩上がりに増加しています。

売上シェアが最も大きいカテゴリは、トップがおもちゃ次に趣味、DIY用品です。

コロナウイルス感染拡大はEC市場を逆に活性化している動きもあるので、2021年以降はこの予想を上回る可能性も出てくるかもしれません。

 

EC市場(食品)

それでは「食品」に焦点を当てた場合のEC市場はどうでしょうか。食品も順調に市場を拡大していることが分かります。

 

EC市場食品

 

このグラフとは別のアメリカでの調査ですが、アメリカの食品EC市場は右肩上がりに推移し、コロナウイルス感染拡大の影響を除けば、2023年には約2倍の380億ドルに達すると予想されています。

 

EC小売り業界のニューノーマル

新型コロナウイルスの影響が続くこのウィズコロナ時代では、小売業ではこれまで以上に変化が進むと見られています。オムニチャネル専門家のクリス・ウォルトン氏は、今年4月、「新型コロナウイルスは小売業界に好機と革新をもたらしている」とフォーブスで述べました。

 

今後EC小売り業界が時代のニーズに合わせるポイントとして、下記の5つが挙げられています。

  1. 食料品のオンライン販売普及
  2. キャッシュレス化の促進
  3. レジなし店舗やモバイル決済の導入拡大
  4. 店舗の役割の変化
  5. 倉庫システムの自動化・ロボット導入の促進

 

食料品のオンライン販売の普及について。ファブリック(注)が実施したアンケート調査によると下記のような情報が得られています。

 

  • 新型コロナウイルスの流行以前は食料品の購入方法においてオンライン販売が占める割合はわずか5%に過ぎなかった。しかし感染拡大後は、約2倍の9%に達したという
  • 感染拡大後の数週間で食料品をオンラインで購入した回答者の2割が、初めてサービスを利用したと答えている。
  • これまで主な利用者であったミレニアル世代に限らず、今後はより幅広い年齢層も利用するようになると見込まれ、
  • 食料品のオンライン販売の割合は2020年末までに12%に達すると予測している。

 

コロナウイルス感染拡大防止のためのレジ無し店舗

米国各州で経済再開が進められている中で、今後、小売売上高がどのように回復していくかが問われています。

また、新型コロナウイルス収束後のニューノーマルにおいて消費行動の変化にいかに対応していくのかが注目されるでしょう。

アメリカのレジ無し店舗は日本のレジ無し店舗と違って感染対策の部分で一歩先を行っているようです。

 

Amazon Go

専用のモバイルアプリ上で決済を行う機能を備え、従業員と顧客の接触を防ぐことができます。

 

サムズクラブ

ウォルマート傘下の会員制倉庫型小売店のサムズクラブはモバイル決済機能「スキャン&ゴー」を全店舗で導入。

買い物客はダウンロードしたモバイルアプリを利用して商品のバーコードをかざしながらレジを通らずに買い物ができます。

2016年から同サービスを開始し、コロナウイルス感染拡大後は、新規利用者数は約5倍にまで達しています。

サムズクラブ

 

セブンイレブンの将来の脅威とみなされるAmazon Goとは

2016年12月にAmazonが発表して話題を呼んだレジ無しコンビニです。

1号店は今年2018年1月にシアトルでオープンしました。

 

AmazonGO

 

2019年5月時点でシアトルに4店舗、シカゴに4店舗、サンフランシスコに3店舗、ニューヨークに1店舗あります。

2021年までに最大3,000店舗まで増やす計画があります。

無人レジ、そのまま改札を出ることでセキュリティ上も心配のないAI精度であることから、安心して買い物ができるのが特徴です。

 

Amazon Goは商品を売ることではなく、最先端のAIを導入した「ユーザー体験」に重きを置いている点もかなり先進的なビジネスモデルなのではないでしょうか。こちらの動画でどのように買い物をするかご覧になってみてください。

 

来店前にアプリで登録

Amazon Goの店内に入る前に専用アプリのダウンロードと登録が必要です。登録時はAmazon.co.jpのアカウントも利用できますが、その場合は改めてクレジットカード情報の登録が必要です。

 

QRコード取得

登録が済むと、「入場券」としてQRコードが発行されます。

それを店舗入り口にある「改札」にかざして入ります。※現段階ではセキュリティを考慮するため人数制限が70名までとされています。

 

レジを通さない

レジは存在しないため、手にとった商品は出店時の改札を通り抜けるだけで購入したことになり、会計が完了します。数分後にアプリへレシートが送付される仕組みです。

 

最後に

 

食品EC市場規模

 

こちらのデータはemarketer.comの「食品のEC事業の市場規模」の予測です。

2023年にはいずれも市場規模が伸びていることが分かります。特に、中国がの成長はすさまじく、続いてアメリカ、日本と来ています。

 

食品のEC事業はまだまだ成長の余地があるマーケットです。

もしAmazonGoのようなもともEC事業をやっていた企業がコンビニの要素を兼ね備えてくると、コンビニ業界にとっては脅威となりかねません。

将来を見据えて、どのような優位性で立ち位置を示していくかが重要となるでしょう。

 

<参考>

https://www.youtube.com/watch?v=dth40wXAlDU

https://diamond.jp/articles/-/205871?page=4

https://strainer.jp/notes/7076

https://mastory.jp/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AEM&A

https://www.ryutsuu.biz/abroad/m080313.html

https://maonline.jp/articles/7andi-speedway

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-08-14/QF206FT0AFB701

https://nerimarketing.net/overseas-ecmarket/

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/08/1f30b5bf010b826d.html

https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/6cb5727a837f248a.html

https://www.businessinsider.jp/post-162108

https://www.arabnews.jp/article/business/article_19634/

https://d8r.ai/series/amazon-go/

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。

> 海外進出の進め方 > 日本企業が陥りがちな罠

海外事業戦略
無料相談会を開催中!

各業界に実績のあるコンサルタントが以下のようなテーマにお応えする無料相談会(初回は無償)を毎週開催しています。

  • 海外事業に関する市場実態把握と進出国の選定およびコンサルティング
  • 各国の代理店リストアップとパートナー選定および現地商談
  • 特定複数か国での競合との差別化戦略、マーケティング戦略のコンサルティング
  • 流通実態(現地視察、家庭訪問)、小売店での価格調査 etc

是非、海外事業戦略策定にお悩みの方はお気軽にお申し込みください。

申し込む

ご相談は無料です。お気軽にお問合せください。

弊社世界各地を飛び回っているコンサルタントと一緒に、まずは「考える」ところから進めてみませんか?
共に組み立てていきましょう。