医薬品の水平分業化!世界で活躍するCMO/CDMO企業4選を紹介

医薬品業界では、バイオ医薬品のシェアが拡大しています。世界における医薬品の売上高の約4割がバイオ医薬品とのことです。バイオ医薬品へシフトすることで、医薬品業界では水平分業化が進んでいます。そこで注目されている分野がCMOやCDMOです。

本記事ではCMOとCDMOの意味や違い、同分野において世界で活躍する企業4選を紹介します。

CMO/CDMOとは

CMOとはContract Manufacturing Organizationの略で、医薬品の製造を代行する企業です。日本語で、医薬品受託製造企業と呼びます。

CDMOはContract Development and Manufacturing Organizationの略で、医薬品の製造の代行だけではなく、医薬品の開発の支援も行う企業です。日本語で医薬品受託開発製造企業と呼びます。

つまり、CMOとCDMOの違いは、医薬品の開発部分を担うかどうかです。

バイオ医薬品製造では莫大な初期投資が必要になることや、開発費が年々増大していることから、CMOやCDMOを活用した水平分業化が進んでいます。

医薬品産業の水平分業のイメージは以下のとおりです。

出典:経済産業省「バイオCMO/CDMOの強化について

このように水平分業化が進むことで、医薬品業界においてCMOやCDMOの存在感が増しています。

拡大が期待されるCMO/CDMO市場

CMOとCDMOの市場規模は、2018年時点で約5,000億円でした。2019年以降の10年間は、年平均成長率8%が予想されており、2028年には1兆4,000億円を突破する見込みです。

CMOとCDMOの世界市場の実績と推移予想は以下のとおりです。

出典:経済産業省「バイオCMO/CDMOの強化について

世界で活躍するCMO/CDMOメーカー特集

CMOやCDMOは医薬品分野の成長領域として期待されています。そこで、この章では世界で活躍するCMO/CDMOメーカー4社を紹介します。

Lonza(ロンザ)

出典:Lonza

Lonza(ロンザ)は1897年に設立され、スイスに本社を置くバイオテクノロジー企業です。35カ国以上に開発・製造の拠点を持ち、約18,000人の従業員を抱えています。

主要事業はバイオ医薬品、低分子医薬品、細胞・遺伝子、カプセル・健康食品原料です。2023年の売上高は67億スイスフラン(約1兆720億円)で、CMO/CDMOの代表格です。※1スイスフラン=160円換算

Lonzaの経営状況

Lonzaの経営状況を売上高とEBITDA(営業利益+減価償却費)の推移から考察します。

参考:Lonza「Investor Relations

Lonzaは2019年のコロナ流行により大きく売上が落ち込んだものの、その後は順調に回復し、2023年の売上高は67億スイスフランでした。また、EBITDAは上昇傾向を維持し、同社が順調に成長していることを示しています。

2022年の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:Lonza「Investor Relations

Lonzaはヨーロッパとアメリカが主要地域です。なお2022年の売上高62.23億スイスフランのうち、日本における売上高は2.27億スイスフランでした。アジアのなかで日本が最も売上高が多く、次いで中国の1.61億スイスフランです。

Lonzaの事業内容

Lonzaの主要事業はバイオ医薬品、低分子医薬品、細胞・遺伝子、カプセル・健康食品原料で売上高に占める構成割合は以下のとおりです。

参考:Lonza「Investor Relations

2023年のバイオ医薬品事業の売上高は、全体の半数を超え、前年比13%増を達成しています。

バイオ医薬品事業はCDMOを担う事業です。つまり、同社の成長に大きな役割を果たしているのがCDMO事業です。

CDMO事業では770社以上の顧客を抱えており、2023年には約130社が新たに利用しました。また、2023年に約350の新プロジェクトを契約しており、今後も成長が期待されています。

Catalent(キャタレント)

出典:Catalent Biologics

Catalent(キャタレント)は2007年に設立され、アメリカに本社を置くグローバル企業です。CDMOとして、年間8,000以上の製品開発・製造を支援しています。世界に50拠点を有し、約19,000人以上の従業員を抱えています。

Catalentの経営状況

Catalentの売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:Catalent「ANNUAL REPORTS

2022年までは順調に成長を続けてきましたが、2023年は営業利益が-1.63億ドル(約236億円)と急激に悪化しました。売上高は42億ドル(約6,090億円)であることから、利益率の悪化が要因と考えられます。※1ドル=145円換算

2023年の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:Catalent「ANNUAL REPORTS

Catalentの主要な地域はアメリカとヨーロッパで、そのなかでもアメリカの比率が高いことがわかります。

Catalentの事業内容

Catalentの主要事業は「バイオロジクス」と「製薬・コンシューマーヘルス」で、バイオロジクスの売上高が全体の46%、製薬・コンシューマーヘルスが54%でほぼ半々の割合です。

バイオロジクスでは遺伝子治療や細胞療法、バイオ医薬品に関する統合的なサポートを提供しています。製薬・コンシューマーヘルスは、医薬品や栄養補助食品、サプリメントなどの開発・製造をサポートする事業です。

また、CDMOとして成長を続けてきたCatalentですが、2024年2月に、デンマークの医薬品メーカーのNovo社と165億ドルで買収されることに合意しています。

参考:Bloomberg「肥満症薬の増産へ工場取得、ノボ・ノルディスクが110億ドルで

WuXi Biologics(ウーシー・バイオロジクス)

出典:WuXi Biologics

WuXi Biologics(ウーシー・バイオロジクス)は、中国に本社を置くCDMOです。中国・日本・アメリカ・ドイツ・アイルランド・シンガポールに拠点があり、約12,000人の従業員を抱えています。これまでに573の企業と協力し、数百種類のバイオ医薬品の開発やワクチンの臨床に携わってきました。

WuXi Biologicsの経営状況

WuXi Biologicsの売上高と純利益の推移は以下のとおりです。

参考:WuXi Biologics「Financial Reports

WuXi Biologicsの2023年の売上高は、84億人民元(約1,680億円)で前年比17.8%増を達成しています。2017年と比較すると、約13倍に拡大していることから、急成長をしている企業であることがわかります。※1人民元=20円

また、地域別の売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:WuXi Biologics「Financial Reports

中国に本社を置くCDMOだけあって、LonzaやCatalentと比較して中国の比率が高くなっています。ただし、中国よりも北米・ヨーロッパの割合のほうが高く、バイオ医薬品産業は北米やヨーロッパが中心であることがわかります。

WuXi Biologicsの事業内容

WuXi Biologicsの事業内容は、バイオ医薬品の発見・開発・製造を支援することです。2023年6月30日時点で、621件のプロジェクトに携わっています。また、同社はCRO(受託研究)とCDMO(受託開発・製造)を組み合わせたCRDMOに強みがあります。

FUJIFILM Diosynth Biotechnologies

出典:FUJIFILM Diosynth Biotechnologies

FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(富士フイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ)は、富士フイルムの子会社でバイオCDMO事業を担う部署です。アメリカ・イギリス・デンマークに拠点を持ち、抗体医薬品や遺伝子組み換えたんぱく医薬品、ワクチンなどのバイオ医薬品の開発・製造をサポートしています。

FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesの経営状況

富士フイルムグループの2021年度の売上高は、2兆5,258億円でした。ヘルスケア部門が8,017億円で、そのうちバイオCDMO事業が約1,499億円でした。

FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesは富士フイルムの完全子会社のため、すべての売上高は公表されていません。そこで参考として、デンマークを拠点とする子会社の売上高と粗利の推移を紹介します。

参考:FUJIFILM Diosynth Biotechnologies「Denmark ApS Annual Report

デンマークの拠点の経営状況だけみても、バイオCDMO事業が順調に成長していることが伺えます。

FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesの事業内容

FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesは、医薬治療薬や細胞治療薬、抗体医薬品などの最先端治療薬の開発・製造を支援しています。また、少量から大量生産まで受注できる「ワンサイト・ワンストップ」体制を整備しているのが特徴です。

さらに、富士フイルムはCDMO事業を成長産業と捉えており、4,100億円規模の大型設備投資を計画しています。

CMO/CDMOの強化で製薬大国の復活なるか

CMO/CDMOの推進により、医薬品産業は水平分業化にシフトしています。バイオ医薬品のシェアが拡大するなか、この流れは加速するでしょう。今後は、国内企業のCMO/CDMOの強化により、「製薬大国」の復活が期待されています。

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