2024年2月、テスラは日本で電動ピックアップトラックの「サイバートラック」を披露し、注目を集めました。
また共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏は、X(旧Twitter)やスペースXを率いる実業家で、世界的に影響力のある人物です。
話題に挙がることの多いテスラですが、「何がすごいの?」と思っている方もいるでしょう。
そのような方に向けて、本記事ではテスラの会社概要や経営状況、ビジネスモデルの特徴を解説します。
テスラとはどんな会社?
出典:テスラ「企業情報」
テスラはアメリカに本社を置くエネルギー関連企業です。電気自動車の先駆けとして知られており、中国でのシェア獲得や急激な成長スピードなどで注目を集めています。この章では、テスラがどんな会社なのかについて解説します。
会社概要
テスラの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | テスラ(Tesla, Inc.) |
設立 | 2003年7月 |
本社 | アメリカ・テキサス州 |
売上高 | 968億ドル(2023年) |
従業員数 | 10万人以上 |
年間納車台数 | 181万台(2023年) |
テスラは2003年に設立してから約20年で、自動車メーカーの時価総額ランキングで1位を獲得するほどに急成長しています。
テスラのミッション
テスラは、「世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速させること」をミッションに掲げ、その実現のために高性能な電気自動車の開発・販売を加速させています。ほかにも太陽光発電システムやクリーンエネルギーを蓄電するためのバッテリーの開発など、ミッション達成に向けた事業を拡大しているのが特徴です。
2021年に削減した二酸化炭素排出量は、8.4Mmt(ミリオンメトリックトン)に達しました。8.4Mmtは、200億マイル(約321億km)以上の走行で排出される二酸化炭素排出量に匹敵します。
つまり、電気自動車のイメージの強いテスラですが、サステナブルな社会の実現を目標に掲げ、エネルギー関係の事業を推進している企業なのです。
主要製品
テスラの電気自動車の主要製品はモデル3とモデルYです。2023年の年間納車台数180万台のうち、モデル3とモデルYで174万台の約96%を占めています。
・モデル3
モデル3は加速力や航続距離の長さが魅力のセダンタイプの電気自動車です。モデルYと比較するとコンパクトサイズに仕上がっています。
・モデルY
モデルYは車内のスペースを広くとったセダンタイプの電気自動車です。2023年に120万台以上納入され、世界で最も売れている自動車のモデルとなりました。
なおCleanTechnicaの調査によると、2023年6月のEV販売台数の世界ランキングは以下のとおりです。
出典:CleanTechnica「World EV Sales Now 19% Of World Auto Sales!」
上記のグラフから、EV産業をテスラの主要製品の2モデルが牽引していることがわかります。
テスラの経営状況
テスラの経営状況を売上高・純利益の推移から考察します。
参考:テスラ「Investor Relations」
テスラは創業時から2019年まで赤字が続いていましたが、2020年に初めて黒字化に成功しました。その後は順調に成長を続け、2023年の売上高が968億ドルで、純利益が150億ドルを達成しています。
地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:テスラ「Investor Relations」
アメリカと中国の売上高で全体の約70%を占めています。このように、中国のEV市場でシェアを獲得しているのがテスラの特徴です。
アメリカの売上高の推移
テスラのアメリカにおける売上高の推移は以下のとおりです。
参考:テスラ「Investor Relations」
テスラはアメリカにおいて、2022年に大きく売上を伸ばしています。2023年は前年よりも緩やかですが、拡大傾向を維持しています。
中国の売上高の推移
テスラの中国における売上高の推移は以下のとおりです。
参考:テスラ「Investor Relations」
テスラは中国市場において右肩上がりに成長を続けています。2023年には200億ドルを突破し、2014年と比較すると約45倍に拡大しています。
テスラの事業別売上高の推移
2023年の売上高は前年比18.7%増を達成するなど、テスラは好調を維持しているといえるでしょう。そのテスラを支える事業を考察するために、事業別売上高の構成割合を紹介します。
参考:テスラ「Investor Relations」
このようにテスラの売上高において最も大きなウェイトを占めているのがTotal automotive(自動車部門)です。さらに、各事業の売上高の推移と事業内容を紹介します。
Total automotive
Total automotiveは自動車部門のことで、業務内容は以下のとおりです。
- 電気自動車の設計・開発・製造・販売
- リース事業
- 規制クレジットの販売
- 中古車の販売
これらの事業による売上高の推移は以下のとおりです。
参考:テスラ「Investor Relations」
主要事業であるTotal automotiveは、グラフからもわかるように順調に成長を続けています。
Services and other
Services and otherは、保険収入や小売商品の販売などを行っている事業です。Services and otherの売上高の推移は以下のとおりです。
参考:テスラ「Investor Relations」
Total automotiveと比較すると、事業規模は10分の1ほどになりますが、この事業も成長を続けています。
Energy generation and storage
Energy generation and storageは、太陽光発電やエネルギー貯蔵製品の設計・製造・販売などを行っている事業です。売上高の推移は以下のとおりです。
参考:テスラ「Investor Relations」
3つの事業のなかでは最も売上高が小さいものの、2023年には60億ドルを突破しました。化石燃料からの脱却を図るためにも注目の分野といえます。
テスラのビジネスモデルの特徴
テスラのビジネスモデルの特徴は、電気自動車をオンラインストアで販売している点です。
従来の自動車産業では、ディーラーと呼ばれる実店舗の販売店を介して販売するのが一般的でした。しかし、テスラはオンラインストアを活用し、直接顧客に販売を行っています。
直接販売を行うことで、ディーラーなどへの手数料を省き、利益率を高めています。
またテスラは、最新技術を積極的に導入している点も特徴です。
例えば、電気自動車は他のメーカーに先駆けて開発を始めたり、自動運転技術などの次世代の技術にも積極的に開発・研究を進めたりしています。
テスラは持続可能性をキーワードに成長した企業
テスラのミッションは、「世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速させること」です。電気自動車や太陽エネルギー関連サービスも、持続可能性への貢献から生まれた製品・サービスといえます。
テスラは電気自動車のイメージが強いかもしれませんが、持続可能な社会の実現を目指している企業なのです。つまりテスラは、持続可能性がビジネスの成功につながることを示した良い事例といえるでしょう。