海外進出のアイデアを探している経営者や担当者はいませんか?1つのアイデアは、ウェルネス分野での海外進出です。
日本国内のウェルネス市場は約45兆円ですが、世界市場は約600兆円とはるかに大きな市場が広がっているためです。本記事では海外進出を考えている経営者に向けて、ウェルネスの概要や海外の成功事例について紹介します。
ウェルネスの概要
ウェルネス(Wellness)とは、健康の解釈をさらに広げた概念です。より良く生きるための健康的な生活習慣や、健全な心身・社会的な状態を指します。
似た言葉にヘルスケアがあります。ヘルスケアは心身を健康な状態にすることです。何か都合の悪い症状や病を発症した場合に、健康な状態に改善するときに利用します。一方、肉体的・精神的・社会的に満たされた状態を維持するための活動がウェルネスです。
ウェルネスの市場規模
出典:THE 2023 GLOBAL WELLNESS ECONOMY MONITOR
Global Wellness Instituteの調査によると、2022年の世界市場の規模は5.6兆ドル(約600兆円)でした。日本のウェルネス市場の規模は約45兆円であることから、世界のウェルネス市場には多くのチャンスがあるといえます。
また同調査によると、2027年まで世界のウェルネス市場は年平均成長率8.6%で拡大すると予測され、2027年には8.47兆ドルに達する見込みです。日本のGDPは4.26兆ドルなので、日本のGDPの2倍に成長することになります。
出典:The Global Wellness Economy Reaches a Record $5.6 Trillion
アメリカでウェルネスへの関心が高い理由
アメリカの市場規模は、約1.2兆ドルで世界最大の規模を誇っています。その主な理由は以下の3つです。
- 保険制度の問題
- 新型コロナウイルスの影響
- ウェルネス経営の実践
海外市場の動向を把握するには、まず最大の市場であるアメリカの背景について理解を深めましょう。
保険制度の問題
アメリカでウェルネスへの関心が高い理由は、保険制度の問題があるためです。
日本は国民保険制度により、一部の費用負担で医療を受けられます。しかし、アメリカの公的医療保険制度は高齢者・障がい者が対象で、すべての国民が対象ではありません。そのため、ほとんどのアメリカ人は民間の保険か勤務先の団体保険に加入しています。
そのアメリカの保険制度の問題点は高額な保険料や医療費です。
アメリカ人にとって勤務先がどの保険に加入しているかは、医療費に関わるため、勤務先を選ぶ際の重要なポイントになっています。アメリカ企業においては、質の高い人材確保のために、質の高い保険に加入するのが1つの戦略になっているほどです。
しかし、質の高い保険に加入するには保険料も高くなります。その保険料を抑えるには、加入者の医療費を抑えることが重要なため、健康を維持するウェルネスの考え方が重要視されているのです。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナの流行は、多くの人に心身の健康に対する不安を感じさせました。アメリカでも新型コロナの流行をきっかけに、ライフスタイルに大きな変化をもたらしました。例えば健康食品やサプリメントを取り入れたり、オーガニック製品を積極的に選択したりといった具合です。このようなライフスタイルの変化は、新型コロナの混乱が落ち着いた後も定着し、ウェルネスへの関心の高さにつながっているのです。
ウェルネス経営の実践
アメリカ企業では、競争力強化・人材戦略・保険料抑制のためにウェルネス経営が注目されています。
ウェルネス経営とは、企業が従業員の健康管理に関与し、目標とする健康状態へ導くためのサポートをする手法です。具体的には、モバイルヘルスケアアプリの導入やウェルネスプログラムの活用などです。
アメリカでは、従業員の心身の健康を維持することは、競争力を高めることに役立つと考えられています。また先に紹介したアメリカの保険制度の影響で、人材戦略や保険料抑制にも役立つため、一石三鳥の経営手法といえます。
日本のウェルネス経営の取り組み状況
東京商工会議所の調べによると、「健康経営を実践してみたいですか?」の問いに対して、20.8%の企業が「現在実践している」と回答しました。必要性を感じている企業は97.9%で、日本においても注目されています。なお日本では、ウェルネス経営を健康経営と呼ぶこともあります。
出典:東京商工会議所「健康経営に関する実態調査 調査結果」
ウェルネスの海外事例
ウェルネスでの海外進出の参考として、海外における4つの成功事例を紹介します。
PELOTON(ペロトン):フィットネスサブスク
出典:PELOTON
PELOTON(ペロトン)は、アメリカで人気のフィットネスサブスクです。
サービス内容はサブスクリプション型のアプリで、フィットネスバイクやランニングマシーンを使ったレッスンが受けられる仕組みです。PELOTONは、アプリの運営に加えてフィットネスバイクやランニングマシーンの販売を行っています。
2021年には売上高4,000億円、会員数が590万人を突破しています。
新型コロナの自粛生活において、「自宅でできる」という強みを生かして急成長を遂げたウェルネス企業です。
lululemon Studio(ルルレモン・スタジオ):鏡を見ながら運動できる
lululemon Studioは、自宅で鏡を見ながらインストラクターのクラスを受講できるサービスを展開しています。具体的には、モニターになっている全身鏡に映し出されるインストラクターを見ながら運動するという内容です。
lululemon(ルルレモン)は、ヨガウェアやスポーツアパレルなどを販売している企業です。そのlululemonが2020年にMirrorを買収し、始めたのがlululemon Studioで、コロナ禍において注目を集めました。
Headspace(ヘッドスペース):睡眠の質向上にアプローチ
出典:Headspace
Headspace(ヘッドスペース)は、メンタルヘルスを目的としたサブスクリプション型の瞑想アプリです。
睡眠の質向上やストレス・不安の解消、集中力の向上などを目的としたプログラムを配信しています。加えてエクササイズプログラムもあり、心身のケアができます。
分かりやすいデザイン性と機能が人気で、200カ国の地域で1億人以上に利用されているとのことです。
Virgin Pulse(ヴァージン・パルス):従業員向けウェルネスプログラム
出典:Virgin Pulse
Virgin Pulse(ヴァージン・パルス)は、ウェアラブルデバイスやアプリを利用して、従業員のウェルネスを促進するサービスです。
毎日の歩数やカロリー消費量、運動時間などの個人のデータを分析し、効果的なプログラムを提案してくれます。2021年時点で世界190カ国、1,400万人以上の従業員がVirgin Pulseを利用しています。
企業向けにウェルネスプログラムを提供しているのが成功の秘訣といえるでしょう。
ウェルネスで海外進出を成功させよう
新型コロナの流行により、世界中の人が健康について注目しました。その影響もありウェルネス産業は、年平均成長率8.6%で拡大し、2027年の世界市場規模は8.47兆ドルに達すると予測されています。
海外進出でアイデアに悩んでいるのであれば、今後チャンスの多いウェルネス市場への参入も1つの選択肢です。この機会にぜひ検討してみましょう。