
クイックコマースは、短時間で商品が届くことから、日本国内だけでなく海外でも人気のビジネスモデルです。海外進出の方法としても注目されています。
しかし、「今さら意味を聞くのは気が引ける」や「従来のECサイトとの違いがよくわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、クイックコマースの意味や従来のECサイトとの違い、海外の事例をわかりやすく解説します。
クイックコマースとは
クイックコマースとは、ECサイトやスマートフォンアプリで商品を注文すると、数十分という短時間で商品が配達されるビジネスモデルのことです。「今すぐ欲しい」という消費者のニーズに応えることができるため、食品や日用品と相性の良いサービスです。
クイックコマースの仕組みは、主に以下の2パターンがあります。
1. 実店舗の商品を配達する方法
スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの既存の実店舗にある商品を、受注後すぐにピックアップして配達する方法です。この方法では実店舗が倉庫の役割を果たし、スタッフが商品を準備して、配達員が近隣エリアの消費者に届けます。
2. ダークストアを利用する方法
ダークストアとは、実店舗としての機能がないクイックコマース専用の倉庫を指します。この方法は、効率的な在庫管理と配送システムの構築が可能なことから、よりスピーディーな配達を実現しやすいのが特徴です。
どちらの方法も、商品を保管している拠点から近隣エリアの消費者に素早く商品を届けるという点で共通しています。つまり、各地域に拠点を設けることで、即時配送を可能にしているのがクイックコマースの特徴です。
従来のECサイト(Eコマース)との違い
従来のECサイトは、大型の倉庫からトラックなどの大型車両を使い、広範囲の地域に商品を配送します。
一方、クイックコマースは、自動車やバイクなどを使って限られた範囲内に配達するのが一般的です。
つまり、クイックコマースと従来のECサイトの違いは、倉庫や拠点から消費者へ届けるまでの「ラストワンマイル配送」にあります。
クイックコマースの市場規模
Blueweave Consultingが発表した「クイックコマースの世界市場」によると、2023年の世界市場規模は358億米ドルでした。それが、2030年には2,935億米ドルまで拡大する見込みです。年平均成長率は35%で、急激な成長が予想されています。
一方、株式会社グローバルインフォメーションの「日本のクイックコマース市場」によると、2024年の日本国内市場規模は38億米ドルでした。それが、2032年には178億米ドルに達する見通しです。年平均成長率は21%で、世界市場に比べると成長速度は緩やかですが、日本国内でも急成長が予想されています。
クイックコマースのメリット
クイックコマース市場が今後急速に成長すると予測される背景には、このビジネスモデルが持つ高い利便性が関係しています。ここでは、クイックコマースの主な3つのメリットを紹介します。
メリット① 商品をすぐに届けられる
クイックコマースのメリットは、消費者に商品をすぐに届けられる点です。これにより、消費者に満足度の高い購買体験を提供できます。
メリット② 実店舗なしで運営できる
クイックコマースでは、必ずしも実店舗を構える必要がありません。ダークストアを利用する方法もあるからです。ダークストアは消費者が訪れる店舗ではないため、人件費や店舗の賃料を抑えられるというメリットがあります。
メリット③ 食品業界のEC化に貢献する
これまで食品業界では、「鮮度の維持」や「配送の難しさ」といった課題から、EC化が進みにくい分野でした。しかし、クイックコマースの登場により、温度管理が行き届いた短時間での配送が可能となり、これらの課題を解決できるようになりました。その結果、食品業界でもECサイトの展開がしやすくなりました。
日本のクイックコマースの課題
クイックコマースは、成長が期待されているビジネスモデルです。しかし、日本国内ではまだ普及の段階にあり、いくつかの課題も存在します。ここでは、日本のクイックコマースの課題を紹介します。
課題① 配達エリアが限定される
クイックコマースは、そのビジネスモデルの特性上、拠点と消費者の距離が重要です。さらに、配達エリア内に十分な数の見込み顧客が存在することも不可欠です。こうした条件を満たすのは、首都圏や大都市などの人口密集地域に限られます。つまり、クイックコマースの課題は、地方や郊外では展開が難しい点です。
課題② 配達員の確保が難しい
クイックコマースの迅速な配達には、配達員の確保が欠かせません。
しかし、日本は人口減少が進み、物流や配送業界の人手不足が深刻化しています。そのような状況下で、十分な配達員を確保するのは容易ではありません。そのため、日本でクイックコマースを展開するには、配達員をどのように確保するかが課題となります。
課題③ 配送コストが高い
クイックコマースでは、少量の商品を短時間で届けることが求められます。
そのため、1件あたりの配達効率が下がりやすく、配送コストの高さが課題です。配送コストを価格転換できない場合は、事業者がその分を負担することになり、経営を圧迫するリスクがあります。
海外のクイックコマースの事例
日本ではまだ課題のあるクイックコマースですが、海外では多くの成功事例があります。
そのため、海外進出の方法の一つと言えるでしょう。ここでは、欧州とインドの事例、アメリカのクイックコマースの現状を紹介します。
また、近年では東南アジア市場への関心も高まっています。東南アジアでビジネスを展開したい方は、「東南アジアで人気のECプラットフォーム5選」の記事も併せてご覧ください。
欧州:Getir(ゲティール)

出典:Getir
Getirは、トルコの日用品配送プラットフォームを運営する企業です。2015年に設立した同社は、クイックコマースを採用し、「超スピード配達」をセールスポイントに欧米に事業を拡大。2022年には企業価値が120億ドルに達し、トルコで2社目となるデカコーンとして注目を集めました。
※デカコーンとは、企業価値が100億ドル以上のベンチャー企業のことです。
インド:Blinkit(ブリンキット)

出典:Blinkit
Blinkitは、インドのクイックコマース企業です。「10分以内の配達」によって、シェアを拡大してきました。現在ではサービスが定着し、多くの消費者に日常的に利用されるようになっています。食品や化粧品、携帯電話、家電製品など、7,000点以上の商品を取り扱っているのが同サービスの強みです。
アメリカのクイックコマースの現状

出典:DoorDash
アメリカでは、フードデリバリーとクイックコマースを融合したサービスが広がっており、その代表的な存在がDoorDashです。食事だけでなく、日用品やアルコール、ペットフードなどの即時配達にも対応しています。また、月額制プラン「DashPass」により配送料を抑えられる点も、多くの利用者に支持されている理由の一つです。こうした取り組みの結果、DoorDashは2024年度に1億2,300万ドルの黒字を達成しました。
クイックコマースで海外進出
クイックコマースの市場規模は今後、急速に拡大すると予測されています。実際、アメリカのDoorDashは課題だった黒字化を2024年に達成し、その収益性を証明しました。
このように海外では多くのビジネスチャンスがあります。海外進出を検討している経営者様は、選択肢の一つとしてクイックコマースを検討してみてはいかがでしょうか。
海外の最新動向を知りたい方は、「2025年上半期|海外の注目ニュース」の記事もぜひご覧ください。