ヴィーガン・ベジタリアンの基礎知識

ヴィーガン・ベジタリアンの話題を聞く機会が増えたと感じませんか。話題になることが増えたのは菜食主義者の増加によりヴィーガンフード業界が今後成長していくとみられ、注目を集めているためです。

しかし、ヴィーガンとベジタリアンの違いを今さら聞けないというビジネスパーソンもいるでしょう。

そこで本記事では、ヴィーガン・ベジタリアンの違いや基礎知識、割合について紹介します。

ヴィーガン・ベジタリアンの違い

ヴィーガンとベジタリアンの違いは、卵や乳製品などの一部の動物性食品を食べるかどうかです。

ヴィーガンは「完全菜食主義者」のことで、動物性食品を一切食べない人を指します。具体的には以下の食品を食べません。

  • 動物の肉
  • 乳製品
  • はちみつ
  • 動物由来のゼラチン

一方ベジタリアンは「菜食主義者」と呼ばれ、卵や乳製品などの一部の動物性食品を食べる人を指します。ベジタリアンのなかでも食べる動物性食品によって、以下のように呼び方が異なります。

  • ラクトベジタリアン

肉類・魚介類・卵を食べない人でインドに多い

  • ラクトオボベジタリアン

肉類・魚介類を避けるものの、卵・乳製品・はちみつは食べる人で欧米に多い

  • オボベジタリアン

肉類・魚介類・乳製品を食べない人

つまり、ベジタリアンのなかでも厳格に動物由来の食品を避ける人がヴィーガンなのです。

ヴィーガン・ベジタリアンになる理由

そもそも、なぜヴィーガンやベジタリアンがあえて動物由来の食品を避けるのかといえば、以下の4つの理由があります。

  • 宗教の信条
  • 動物愛護
  • 環境保護
  • 健康維持・増進

宗教の信条

宗教によっては、肉や魚などの動物由来の食品を食べることを禁止しています。

例えば仏教では精進料理に代表されるように肉食が禁止です。ヒンドゥー教では牛や豚をはじめ、肉食を避ける傾向にあります。ジャイナ教は肉類・魚介類に加え、はちみつや卵なども食べません。

動物愛護

動物愛護・権利擁護を目的に、ヴィーガン・ベジタリアンになる人もいます。

簡単にいえば、動物に対して苦痛を与えたり搾取したりすることへの嫌悪感から、あえてそれらを食べないことで動物愛護を実践しているのです。動物愛護が目的のため、革製品やシルク、ウールといった動物製品を避ける人もいます。

環境保護

環境保護の観点からヴィーガンやベジタリアンになる人もいます。

現代の世界の課題といえば地球温暖化で、その大きな要因は温室効果ガスです。

温室効果ガスで有名なのは二酸化炭素ですが、牛のげっぷに多く含まれるメタンガスは二酸化炭素の25倍の温室効果があります。1頭の牛から1日300Lものメタンガスが排出され、世界では約15億頭の牛が飼育されているため、牛の飼育そのものが環境に負荷を与えていると考えられています。

家畜全体から排出される温室効果ガスは、世界の排出量の約14%にもなるというデータもあるほどです。

ほかにも動物性食品の消費には、以下のような問題があると考えられています。

  • 水質汚染

家畜の排せつ物や飼料の作物に使った化学肥料により川や海が汚染する

  • 穀物の大量使用

家畜を育てるためには大量の穀物が必要で、飼料のための広大な農地は森林破壊や生態系破壊などの原因になる

  • 生物の多様性の喪失

魚の乱獲や森林破壊などにより生態系を破壊することで、生物の多様性を喪失する可能性がある

これらの社会問題を解決するために、動物性食品を選択しないという考え方が広まっているのです。

健康維持・増進

植物性食品は健康維持・増進に役立つとされていて、ヴィーガンやベジタリアンを選択する人がいます。

動物性食品が体に悪影響を与える一例として、動物性植物の多い赤身肉やハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工品を食べすぎると、2型糖尿病・大腸がん・心臓病のリスクが高まるという報告があります。

ヴィーガン・ベジタリアンの割合

ヴィーガン・ベジタリアンを選択する人の割合は年々増加傾向です。この章では日本と世界の割合について紹介します。

日本の割合

Vegewelの調査によると、2023年時点で日本のベジタリアンの割合は4.5%、ヴィーガンは2.4%でした。日本におけるヴィーガンの推移は以下のとおりです。

2017年:1.0%

2019年:2.1%

2021年:2.2%

2023年:2.4%

また同調査で、ヴィーガン・ベジタリアンとまではいかなくても、意識的に動物性食品を減らすことがある方の割合は26.1%となっています。例えば「1週間に1日以上はお肉を食べない」という方も少なくないでしょう。

これらの結果から日本では、菜食主義を取り入れている人が増えているといえます。

参考:Vegewel「【23年1月】日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査

世界の割合

2018年時点において世界におけるベジタリアンの割合は5%、ヴィーガンは3%でした。ベジタリアンの世界人口は約6.3億人に達しています。そのうちアジアが79%と大多数を占めており、次いでアフリカが8%、アメリカが7%です。

1998年のベジタリアンの世界人口は5.3億人であったことから、20年間で1億人の増加です。

ヴィーガン・ベジタリアンの対応

ヴィーガン・ベジタリアンの増加傾向をビジネスチャンスと捉え、積極的に対応に乗り出す企業がでてきています。この章では日本・海外での対応事例について紹介します。

日本での対応

日本における訪日ベジタリアン旅行者は年間145~190万人、飲食費は年間450~600億円です。これほど多くのベジタリアン・ヴィーガンが来日したときに、どのように行動しているのかがビジネスを考えるうえが重要なポイントです。

あるアンケートにおいて外国人旅行者が飲食店を選定する際、「ベジタリアンなどの専門店を入店する」と回答したのは18%で、「対応店に入店する」と回答したのは45%です。同じアンケートをヴィーガンにしたところ「専門店に入店する」と回答したのは28%、「対応店に入店する」と回答したのは53%でした。

つまり、ビジネスを考えるうえではベジタリアンに対応することで、選択肢の1つに入れることを示しています。

対応事例 ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル

ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルでは施設内の4つのレストランと、ルームサービス、宴会でベジタリアンメニューを提供しています。専門メニューを用意するだけではなく、要望に応じて調理器具の分離の対応をしているのが特徴です。インドのメディアから取材を受けるなど、海外からの反応もありました。

世界の対応

世界においても、食肉や乳製品の摂取を抑える方が増えています。

そのためヨーグルトやチーズ、アイスクリームといった乳製品を取り扱う乳業メーカーでも対応する動きがみられています。例えばオーツ麦やココナッツミルクをベースにしたヨーグルトの開発や、ヴィーガン向けアイスクリームの発売などです。

若い世代がこのような植物性代替食品に興味を示しており、売上を後押ししています。そのため、今後も植物性代替食品の需要が高まっていくと予想されています。

名称規制

植物性食品の需要の高まりから、世界では動物性食品を植物由来の原料で作る植物性代替食品が多く出回るようになりました。すると問題になったのは、植物性代替食品の名称が誤認しやすいことです。

例えば、「植物性ミルク」のように乳製品を連想する「ミルク」がついているのに、実際には乳製品が含まれていないといった具合です。従来のミルクが欲しい方には紛らわしい名称でしょう。

そのため、世界的に植物性代替食品の名称を規制する流れにあります。

ドイツではミルク・クリーム・バター・ステーキ・ハンバーガーなどの名称を、植物由来の原料で作った食品に使用してはならない決まりです。フランスでも「ステーキ」など、肉を連想させる名称を植物性代替食品につけるのを禁止しています。

まとめ

ヴィーガンやベジタリアンなどの菜食主義者が年々増加していることから、ヴィーガンフード業界の市場拡大が予想されます。海外進出を検討している企業やインバウンド需要の影響を受ける企業にとっては、今後の動向を注視する必要があるでしょう。

また海外進出を考えるのであれば、各国の名称規制などのように押さえておくべきポイントがあります。ご不明な点があれば、海外進出支援のプルーヴにぜひご相談ください。

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