
ドン・キホーテは日本で有数のディスカウントストアです。豊富な品揃え、驚きの安さ、ワクワクさせる陳列方法、さらには24時間営業の利便性の高さが人気の秘密です。
そのドン・キホーテは近年、世界展開を推進しています。本記事ではディスカウントストアのドン・キホーテが世界展開を推進する背景や現状について解説します。
ドン・キホーテとは

出典:株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス
ドン・キホーテは、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が運営するディスカウントストアです。都心や地方都市などを中心に展開しており、所狭しと並ぶ圧縮陳列、約45,000アイテムという商品の豊富さで人気があります。
ドン・キホーテのコンセプトは、「コンビニエンス+ディスカウント+アミューズメント」の三位一体です。このコンセプトにより買い物の「ワクワク・ドキドキ」を追求することで、若者を中心に幅広い年齢層から支持されています。
ドン・キホーテの国内の出店状況
ドン・キホーテの国内の出店状況は、以下のとおりです。
店舗名 | 店舗数 |
---|---|
ドン・キホーテ | 256店舗 |
MEGAドン・キホーテ | 140店舗 |
ドン・キホーテUNY / MEGAドン・キホーテUNY | 63店舗 |
参考:PPIH「グループ店舗網NOW」
ドン・キホーテ系列の店舗は、国内に合計456店舗があります。なおMEGAドン・キホーテは売り場面積が広く、約6~10万アイテムを取り扱うファミリー型総合ディスカウントストアのことです。ドン・キホーテUNYとMEGAドン・キホーテUNYは、ドン・キホーテとユニーの双方の強みを生かした店舗です。
加えてPPIHはアピタ・ピアゴの131店舗、長崎屋の1店舗、ピカソの31店舗を運営しています。合計619店舗による国内の売上高は、2023年6月期で1兆6,208億円でした。
ドン・キホーテが世界展開する背景
国内で絶大な人気を誇り、大きな成功を収めているドン・キホーテですが、近年は世界展開を推進しています。社名のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、「環太平洋」を中心に進出するという意思から名づけられたほどです。ここでは、ドン・キホーテが世界展開する背景について紹介します。
人口減少による日本市場の縮小
ドン・キホーテが世界展開を推進する背景は、日本の少子高齢化・人口減少により日本市場が縮小すると予測しているためです。日本は少子高齢化が進み、すでに人口減少が始まっています。年々、高齢化率が高まるとともに、働き手である15~64歳の人口も減っています。

出典:厚生労働省「我が国の人口について」
厚生労働省によると、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%になると予測されているほどです。このような人口急減・超高齢化の問題として、内閣府でも経済規模の縮小の可能性を指摘しています。
年々減る労働力人口は、経済にマイナスの負荷をかけ続けます。加えて急激な人口減少は、国内の市場規模の縮小をもたらし、投資先としての魅力を低下させるとしています。人口減少と超高齢化の2つの負荷により、一旦経済規模が縮小すると次の縮小を生むという「縮小スパイラル」に陥る可能性も指摘されているほどです。

出典:内閣府「人口急減・超高齢化の問題点」
PPIHはこのようなリスクを考慮し、5年後・10年後を見据えて海外への出店を推進する必要があると考えています。
訪日観光客からの人気
PPIHが海外展開を推進する背景は、訪日観光客からの人気です。コロナ流行前、訪日観光客からは商品が所狭しと並ぶ店内で宝探しのような購入体験が人気でした。これをヒントに新たな市場として海外に目を向けたのです。
ディスカウントストアの市場規模
世界に目を向けると、コロナ流行やウクライナ侵攻、イスラエル・ハマス戦争など、先行きの不透明感から消費者は低価格商品を求めています。つまり、ディスカウントストアの需要が増えているのです。
国内のディスカウントストアの市場規模は4兆円以上なのに対して、アメリカの市場規模は14.5兆円以上(1ドル=145円換算)と試算されています。全米に1万8,000店舗を展開する大手ディスカウントチェーンのダラー・ゼネラルの売上高は、2023年3月期で前年比10%増の378億ドル(5兆4,873億円)でした。
このことからも、世界でのディスカウントストアの市場規模が拡大しているといえるでしょう。
ドン・キホーテの世界展開の現状

PPIHの海外リテール事業は、ドン・キホーテUSAやDON DON DONKIなどを含む5つの事業があります。事業名と店舗数は以下のとおりです。
事業名 | 店舗数 | 概要 |
---|---|---|
Don Quijote (ドン・キホーテUSA) | 3 | アメリカのハワイ州のオアフ島で展開しているディスカウントストア |
DON DON DONKI (ドンドンドンキ) | 43 | 東南アジアに展開しているドン・キホーテで、店内の商品は日本市場向けの商品が中心 |
MARUKAI | 11 | 海外でスーパーマーケットを運営する事業 |
TIMES | 24 | ハワイで展開しているスーパーマーケット |
Gelsons | 28 | アメリカで展開しているプレミアムスーパーマーケットチェーン |
参考:PPIH「海外リテール事業」
PPIHは、ディスカウントストアの46店舗とスーパーマーケットの63店舗で海外展開をおこなっています。出店先の一覧は以下のとおりです。
国・地域 | 店舗数 |
---|---|
アメリカ | 66 |
シンガポール | 16 |
タイ | 8 |
香港 | 10 |
台湾 | 5 |
マレーシア | 3 |
マカオ | 1 |
参考:PPIH「グループ店舗網NOW」
また、2023年6月期の北米事業の売上高は2,335億円で、アジア事業の売上高は823億円でした。PPIH全体の売上高は1兆9,368億円であることから、海外売上比率は約16%となります。2020年の海外事業の売上高1,151億円と比較すると、急拡大しているといえるでしょう。
なお、2030年に海外事業の売上高1兆円を目標に掲げているため、今後も海外事業を積極的に推進するとみられます。
ドン・キホーテの海外戦略の特徴
ドン・キホーテの海外戦略の特徴は、日本の商品を適正価格で販売している点です。
東南アジアに進出している「DON DON DONKI」では、日本に旅行しなくてもお得に日本の味が楽しめるとして食品が人気です。例えば香港1号店で初日に桃が3トン、タイ1号店で初日にイチゴが3,000パック、アジア全体で1年間に焼き芋が400トン売れました。
このように、日本の食品を適正価格で販売することで、現地のファンの獲得につながっています。ドン・キホーテのコンセプトの「コンビニエンス+ディスカウント+アミューズメント」を、海外でも実践することで成功したといえるでしょう。
将来の日本市場の縮小に備えて海外展開を検討しよう
ドン・キホーテは国内有数のディスカウントストアです。ドン・キホーテを運営するPPIHは、国内事業で1兆6,208億円を売り上げるなど事業を順調に拡大しています。しかし、そのようななかでもPPIHは日本市場の縮小を予測し海外展開を積極的に推進しているのです。
人口減少・少子高齢化が進む日本において、市場が減少するリスクは決して低くありません。事業の継続性や安定性を高めるためにも、PPIHのように海外展開を検討してみてはいかがでしょうか。