宇宙産業で存在感を高めるインド|急成長の背景と成長戦略の特徴を解説

宇宙産業は、今後の拡大が期待される次世代成長市場として注目を集めています。世界経済フォーラムの調査によると、同市場の規模は2023年時点で6,300億ドルでしたが、2035年には1兆7,900億ドルに達すると見込まれています。

その宇宙産業において、近年特に存在感を強めているのはインドです。宇宙関連スタートアップの増加に加え、日本企業との協業といった動きも見られています。

本記事では、インド宇宙産業の現状を整理するとともに、成長の背景をわかりやすく解説します。

宇宙産業においてインドの存在感が拡大

インドでは、宇宙開発関連のスタートアップ企業が急増しています。インド科学技術大臣のジテンドラ・シン博士によると、その数は399社で、国内の関連産業の経済規模は約84億ドルに達しているとのことです。市場規模としては世界全体の約2%にとどまるものの、民間宇宙企業数ではアメリカに次ぐ世界第2位を誇ります。

また同氏によると、インドの政府機関であるインド宇宙研究機関(ISRO)はこれまでに434機の外国衛星を打ち上げ、3億2,300万ユーロ、2億3,300万ドルの収益を上げているとのことです。このようにインドは、宇宙産業の推進を通じて外貨獲得に成功しており、同分野は今後、インド経済において重要産業になるとしています。

さらに、インド政府は今後10年で宇宙産業の市場規模を4〜5倍に拡大する目標を掲げています。こうした動きから、宇宙産業におけるインドの存在感が強まっているのです。

参考:The Economic Times「Space sector to be important contributor to future growth of India’s economy: Jitendra Singh

インド宇宙産業が急成長している要因

インド宇宙産業が急速に成長している要因は、政府主導で産業構造そのものを転換している点にあります。具体的には、ナレンドラ・モディ政権が進めてきた「民間企業への開放」と「支援の拡大」です。

従来、インドの宇宙開発は、インド宇宙研究機関を中心に政府主導で進められてきました。しかし、さらなる成長には民間部門の参入が不可欠との認識から、2023年に公表されたインド初の宇宙政策により、民間企業に対して宇宙産業への門戸が開かれました。これにより、インド宇宙産業は政府主導から官民一体型へと転換しています。

さらにインド政府は、民間企業によるイノベーションを後押しするため、100億ルピー(約175億円)規模のベンチャー・ファンドを設立しました。この支援策により、研究開発や事業拡大に必要な資金を確保しやすくなったことから、スタートアップ企業が増加しました。

このようにインド政府は宇宙産業を将来の重要産業と位置づけ、2033年までに経済規模を440億ドルへ拡大する目標を掲げています。さらに中長期的には、2035年までに宇宙ステーションを開発、2040年までに有人月面着陸といった野心的な計画も示しています。

インドの宇宙開発における主な成果・実績

インドは宇宙開発において、これまでに数多くの成功を積み重ね、高い技術力を証明してきました。ここでは、インドの主な成果・実績を紹介します。

PSLVロケットの高い成功率

インドの宇宙開発を支える中核技術の一つが、国産ロケットのPSLVです。PSLVは主に小型衛星の打ち上げに用いられており、これまで63回の打ち上げのうち60回に成功するなど、約95%という高い成功率を誇っています。こうした安定性は、インド宇宙産業の競争力を高めています。

火星探査計画の成功

2013年、PSLVロケットによって打ち上げられた火星探査機「マンガルヤーン」は、翌2014年に火星周回軌道への投入に成功しました。これは世界で4カ国目の成功例で、アジアでは初の快挙です。同ミッションは8年間にわたり運用され、火星の表面や大気などを観測しました。限られた予算の中で成果を上げた点は、国際的に高く評価されています。この成功により、インドは低コストで高度な宇宙探査を実現できる国として、宇宙開発分野における技術力を世界に示しました。

人工衛星の撃墜に成功

2019年、インドは自国の人工衛星をミサイルで破壊する実験に成功し、衛星撃墜能力を保有する世界で4カ国目となりました。この成果を受けて、ナレンドラ・モディ首相は「インドは宇宙大国の仲間入りを果たした」と発言しました。実際にこの実験の成功は、インドが宇宙空間における防衛技術においても一定の水準に達していることを示しています。

無人探査機で月面着陸に成功

2023年、インドの無人探査機「チャンドラヤーン3号」は、世界で4カ国目となる月面着陸に成功しました。さらに、着陸地点が月の南極付近であった点も特筆すべき点です。月の南極付近への着陸は、世界初の快挙となりました。この成功は、月探査に不可欠な高精度の制御技術や航行技術をインドが有していることを示しています。

これらの実績は、インドがアメリカ、ロシア、中国に次ぐ水準の宇宙技術を獲得していることを裏付けています。

インド宇宙産業の成長戦略の特徴

インド宇宙産業の成長戦略の特徴は、低コスト化と小型化にあります。アメリカのSpaceXのような大手企業と競合するのではなく、小型衛星というニッチ領域に特化することで競争力を高める戦略です。インドはこれまで、他国と比べて限られた予算の中で数多くの成果を上げてきました。低コストでありながら実績を積み重ねてきた点は、インド宇宙産業の大きな強みです。

また、宇宙データの活用にも注力しています。通信や農業など、質の高いデータが重要な分野に向けて、費用対効果の高い衛星サービスやハードウェアの提供を目指しています。

日本・インド間で広がる宇宙産業の協業

出典:JAXA「LUPEX

宇宙産業において存在感を強めるインドは、国内産業の育成にとどまらず、他国や海外企業との共同研究・協業を推進しています。

代表的な事例の一つは、日本とインドが共同で進める月極域探査プロジェクト「LUPEX(ルペックス)」です。同プロジェクトは、日本が持つロケットや月面ローバーの技術力とインドの着陸機開発能力を組み合わせ、月の南極で水を探すことを目的としています。

また、民間分野においても協業の動きが広がっています。例えば、スペースデブリ(宇宙ゴミ)除去に取り組む日本の株式会社アストロスケールです。同社は、インドの宇宙関連企業3社と共同事業契約を締結し、現地での協力体制を構築しています。インドと日本の専門技術を組み合わせることで、新たな宇宙ビジネスの創出が期待されています。

このように、インド宇宙産業は、日本のスタートアップ企業にとって協業先の有力な候補です。技術連携に加え、市場開拓や事業拡大の観点からもインド宇宙産業の重要性は今後さらに高まっていくと考えられます。

参考:PR TIMES「アストロスケール、インド宇宙企業との連携強化のため現地企業3社とMOUおよび共同事業契約を締結

宇宙ベンチャーの成功の鍵は海外企業との連携

インド宇宙産業は、低コスト・小型化を軸とした成長戦略と政府主導による制度改革や支援を背景に、国際的な存在感を高めています。宇宙産業の市場規模は今後さらに拡大すると見込まれる一方で、競争環境は一層激化していくでしょう。こうした状況の中では、単独で技術開発や市場開拓を進めることには限界があると考えられます。そのため、日本の宇宙ベンチャーにとって、インド企業との連携は、技術補完と海外市場へのアクセスを同時に実現できる有力な選択肢と言えます。

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