世界でジャパニーズウイスキーが人気というのはご存じでしょうか?
ジャパニーズウイスキーは世界5大ウイスキーに数えられ、年々輸出金額が増加しています。国際的な品評会でも数多く受賞し、品質の高さは世界レベルです。
本記事ではウイスキーの日本・世界の市場規模、ジャパニーズウイスキーの現状、人気ブランドを紹介します。
日本と世界のウイスキー市場
ジャパニーズウイスキーについて解説する前に、まずは日本と世界のウイスキー市場の現状について理解を深めましょう。この章では国内のお酒・ウイスキーの消費量、世界の市場規模を紹介します。
日本国内のお酒の消費量
日本国内のお酒の消費量は、国税庁の発表によると2011年が851万キロリットル、2021年が772万キロリットルと10年で約10%も減少しています。清酒・ ビール・ブランデー・発泡酒など多くの品目の消費量が減少するなか、ウイスキーは増加傾向です。
日本国内のお酒全体とウイスキーの消費量の推移を、以下のグラフにまとめました。
ウイスキーは2020年・2021年にやや減少していますが、コロナの影響が大きいと考えられます。それでもウイスキーは10年で消費量が78%増加しており、国内でもウイスキーを選択する方が増えていることを示しています。
また株式会社グローバルインフォメーションの調べによると、日本のウイスキーの市場規模は2021年で7億2,180万米ドル、2028年に約14億1,260万米ドルに拡大する見込みです。
参考:株式会社グローバルインフォメーション「ウイスキーの日本市場」
世界のウイスキー市場規模
世界のウイスキー市場規模は、同じく株式会社グローバルインフォメーションの調べによると、2022年に640億米ドルに達し、2028年には913億米ドルに達すると予測されています。
年平均で6%の成長が見込まれており、今後も注目の市場であることが伺えます。
参考:株式会社グローバルインフォメーション「ウイスキー市場」
ジャパニーズウイスキーの状況
日本で造られたジャパニーズウイスキーは、国内に限らず海外でも評判が高く、世界5大ウイスキーの1つです。そのようなジャパニーズウイスキーの現状を、輸出動向・輸出先から考察します。
日本のお酒の輸出動向
日本のお酒の輸出状況は、国税庁の調査によると以下のグラフのように好調です。
出典:国税庁「最近の日本産酒類の輸出動向について」
日本のお酒全体の輸出金額は2021年に初めて1,000億円を突破し、2022年は1,392億円で前年比21%の増加を達成しています。これほど急拡大の成長を支えているのはジャパニーズウイスキーです。
ウイスキーの2022年の輸出金額は560億円で、最も輸出金額が高くなっているためです。
輸出金額の拡大からジャパニーズウイスキーは、世界で認知度・人気が高まっているといえます。
ウイスキーの輸出先の1位は中国
ジャパニーズウイスキーの最大の輸出先は中国です。2022年の中国への輸出金額は196億円で、輸出総額の35%を占めています。
ジャパニーズウイスキーの輸出先ランキングは以下のとおりです。
順位 | 国・地域 | 金額 | 前年比 |
---|---|---|---|
1位 | 中国 | 196億2,500万円 | +15.4% |
2位 | アメリカ | 109億8,900万円 | +6.1% |
3位 | フランス | 50億4,400万円 | +9.7% |
4位 | シンガポール | 37億900万円 | +112.5% |
5位 | オランダ | 31億900万円 | +2.2% |
6位 | 台湾 | 23億5,900万円 | +53.6% |
7位 | 香港 | 17億3,500万円 | -3.2% |
8位 | オーストラリア | 14億8,900万円 | +25.4% |
9位 | イギリス | 14億5,200万円 | +269.6% |
10位 | マカオ | 11億9,600万円 | -8.3% |
参考:国税局「各酒類の主な輸出先(2022年)」
中国が安定して拡大しているのに加えて、シンガポールやイギリスへの輸出も急拡大しています。上位国の前年比から世界各国で、ジャパニーズウイスキーの需要が高まっているとわかります。
何故ジャパニーズウイスキーが世界で人気なのか?
世界にはスコッチウイスキー、アメリカンウイスキー、カナディアンウイスキー、アイリッシュウイスキーなど人気のウイスキーが多数あります。そのような歴史と人気のあるウイスキーに並んで、世界5大ウイスキーに入っているのがジャパニーズウイスキーです。
日本でウイスキー造りが始まったのは1923年のことで、他と比べて歴史の浅いジャパニーズウイスキーが人気を集めている理由は以下の3つが挙げられます。
- 希少価値が高く・投機的な購入がある
- 世界の品評会で数多く受賞
- 繊細でバランスが良い味
希少価値が高く・投機的な購入がある
日本のウイスキーは生産量が少ないため、希少価値が高く、投機的な商品として人気です。
例えば、サントリーの「山崎55年」は、限定100本・定価300万円で販売された最高峰のウイスキーです。その「山崎55年」がオークションに出品されると、約8,500万円で入札されました。
ほかにも幻のシングルモルトウイスキーと呼ばれる「軽井沢1960年」が約1,400万円で入札されたこともあります。
このように高額な入札が相次いでいるため、投機的な購入をする方がいるのです。
世界の品評会で数多く受賞
日本のウイスキーが世界で人気の理由は、品質の高さです。その証拠にジャパニーズウイスキーは、世界の品評会で数多く受賞しています。
例えばウイスキーの国際的コンテストの「ワールド・ウイスキー・アワード2023」では、以下の3銘柄が世界最高賞を受賞しました。
- 竹鶴ピュアモルト/ニッカウヰスキー株式会社
- イチローズモルト&グレーン ブレンデッドジャパニーズウイスキー2023/株式会社ベンチャーウイスキー
- 新潟亀田ニューポットピーテッド/株式会社新潟小規模蒸溜所
このように品評会で品質の高さを示すことで、ジャパニーズウイスキーの認知度が高まり、人気につながっているのです。
繊細でバランスが良い味
ジャパニーズウイスキーが人気の秘密は、その味にあります。
和食に慣れ親しんだ日本人は、刺激の強い味よりも繊細でバランスが整った味を好む傾向にあります。そのため、ジャパニーズウイスキーも「繊細でバランスが良い」と評されることが多く、日本らしい独特な味わいが世界で人気を集めているのです。
ジャパニーズウイスキーの人気ブランド
ジャパニーズウイスキーとして、世界で人気のメーカーは以下の2つです。
- サントリー
- ニッカウヰスキー
この章では各メーカーの特徴、ブランドの受賞履歴などを紹介します。
サントリー
出典:サントリー
サントリーのウイスキーは、創業者の鳥井伸治郎氏が1923年に「サントリー山崎蒸溜所」を建設したことから始まります。国産第1号のウイスキーを誕生させ、長年にわたってジャパニーズウイスキー業界を牽引してきました。
そしてサントリーの人気ブランドに「山崎」「響き」があります。
山崎
創業者の鳥井信治郎氏には「良い原酒は良い水が生み、良い熟成は良い自然環境なしにはあり得ない」という確信があり、その場所として京都の山崎を選んだのです。
その鳥井信治郎氏の次男の佐治敬三氏が、「日本を代表するシングルモルトウイスキーを造る」と決意し、誕生させたのが「山崎」です。
「山崎18年」の受賞歴
- 2005 SWSCダブルゴールド
- 2006 ISWSトロフィー
- 2007 ISC金賞
- 2008 SWSCダブルゴールド
- 2009 SWSCダブルゴールド
- 2010 SWSCダブルゴールド
このように数多くの品評会で受賞し、サントリーを代表するブランドに成長しています。
※シングルモルトウイスキーとは大麦麦芽のみを使用し、単一の蒸溜所で造られたウイスキーです。
響
複数の蒸溜所の原酒を混ぜ合わせて造るウイスキーを「ブレンデッドウイスキー」と呼びます。80万個ともいわれるサントリーの樽のなかから、原酒を厳選し造り上げられているのが「響」です。
「響」は日本を代表するブレンデッドウイスキーで、数多くの受賞歴があります。
「響17年」の受賞歴
- 2005 SWSC金賞
- 2007 ISWS金賞
- 2009 ISC金賞
ニッカウヰスキー
出典:ニッカウヰスキー
ニッカウヰスキーは、日本ウイスキーの父とも呼ばれる竹鶴政孝氏が創業した企業です。竹鶴政孝氏はマッサンの愛称で知られ、「マッサン」のテレビドラマが大ヒットしたのを覚えている方も多いでしょう。
現在では、日本を代表するジャパニーズウイスキーとしての地位を確立しています。
竹鶴
ニッカウヰスキーの代表的なブランドは、創業者の名を冠する「竹鶴ピュアモルト」です。モルト(麦芽)だけを使った原酒をブレンドしたブレンドモルトウイスキーで、ワールド・ウイスキー・アワード2023で10回の受賞歴があります。
まとめ
ジャパニーズウイスキーは、清酒と並んで日本を代表するお酒に成長しています。さらに、ウイスキーの世界市場は今後も拡大する見込みで、ジャパニーズウイスキーの需要もますます増えていくはずです。 そのため日本各地で新しいウイスキー蒸溜所の建築が計画されるなど、ビジネスにおいても動きが活発です。今後もぜひジャパニーズウイスキーに注目しましょう。