
海外進出や海外事業の拡大においては、市場調査や消費者調査、法規制調査などで現地の情報を入手・把握することが欠かせません。こうした重要な調査の一つに、海外商流調査があります。商流を正しく把握することは、事業における不要なトラブルの回避やボトルネックの解消につながるためです。本記事では海外商流調査の目的や具体的な方法、調査の精度を高めるポイントをわかりやすく解説します。
海外商流調査とは?
海外商流調査とは、海外事業において「商品の所有権がどのような経路で移転していくのか」を明らかにし、取引構造を調査・分析することを指します。
海外事業では、商品が国境を越えて流通することが一般的です。商習慣や取引ルールも国や地域ごとに異なるため、商流は国内事業に比べて複雑になりやすい傾向があります。
この複雑な商流を正しく把握できていないと、コストの増加や利益の圧迫、さらには取引でトラブルを招くリスクがあります。こうしたリスクを回避し、海外事業を成功に導くためには、事前に海外商流調査を実施することが重要です。
商流・物流・金流の違い
商品が流通する際には、「商流」「物流」「金流」という3つの流れが発生します。これらは一見似ているように見えますが、それぞれ意味が異なります。海外商流調査の理解を深めるには、まずこれらの違いを把握することが大切です。ここでは、3つの違いについて解説します。
- 商流:所有権の流れ
商流とは、「商品の所有権」が誰から誰に移るのかという流れを指します。例えば、原材料メーカーから製造業者、製造業者から卸・小売業者、さらに消費者へといった流れです。商品の流通にどの企業が介在し、どのように取引に関わっているかを示すものです。
・物流:商品の流れ
物流は、商品そのものがどのように運ばれるかの流れです。重要なポイントは、商流と物流は必ずしも一致しない点です。例えば、消費者が小売店で商品を購入した際、所有権は「小売店から消費者」へ移ります。しかし、商品がメーカーの倉庫から直接消費者に配送されるケースもあるでしょう。このような場合は、たとえ所有権が小売店にあっても小売店を経由せずに消費者の元に届きます。
- 金流:お金の流れ
金流は、取引に伴うお金の流れです。どの企業がどこに対して支払うのかだけでなく、決済手段や支払うタイミングなども含まれます。各国の商習慣や決済期間の違いにより、商流や物流のタイミングとは大きくズレて発生することもあるためです。
このように取引の実態を正確につかむには、商流・物流・金流を把握することが必要です。
海外商流調査の目的

海外商流調査は、商流を把握して終わりではありません。分析結果を基にして、業務改善や収益性の向上につなげてこそ意味があります。そのためにも、ここでは代表的な3つの目的について把握しましょう。
商流の可視化・最適化
海外事業では、複数の企業や国をまたいで取引が行われるため、商流の全体像が見えにくいという特徴があります。そこで重要になるのは、海外商流調査による「商流の可視化」です。商流を可視化することで、不要な中間業者の見直しや流通経路の簡素化が可能となり、コスト削減や価格競争力の向上につながります。
ボトルネック・リスクの把握
海外の商流には、非効率な流れや不利益につながるリスクが潜んでいることがあります。海外商流調査を実施し、取引の全体像を明確にすることで、こうしたボトルネックやリスクに適切な対策を講じることができます。代表的なリスクは以下のとおりです。
- コストが増大するリスク
中間業者が過剰に介在するケースです。想定以上のマージンやコストが発生する可能性があります。こうした無駄な構造があると、利益が圧迫されるだけでなく、価格競争力の低下にもつながります。
- 法規制・許認可のリスク
商流を把握することで、どの国・地域の企業が関与しているのかが明確になり、対応すべき法規制や許認可の特定の手がかりになります。例えば、輸入規制がある国を経由している場合、規制の影響を受けないルートへの見直しといった対応が挙げられます。
- パートナーリスク
信用力の低いパートナーが商流に含まれている場合、債務不履行や財政状態の悪化、遂行能力などで問題が発生するリスクがあります。こうしたリスクを防ぐためには、商流をさかのぼって分析し、パートナーの実態や信用力を見極めることが重要です。これは、与信管理の観点からも重要な取り組みです。
このように、海外商流調査によってリスクを把握することで、商流の最適化やパートナーの見直しなど、具体的な対策につなげることができます。
最適な販売チャネルとパートナーの特定
海外進出を検討している段階においても海外商流調査は重要な役割を果たします。商流調査の目的には、自社にとって最適な販売チャネルとパートナーを見極めることも含まれているためです。例えば、現地代理店を活用すべきか、自社で直接販売すべきか、それとも卸売業者に一任すべきかといった戦略も商流を基に検討できます。
海外商流調査の方法・手順
効果的な海外商流調査を行うには、適切な手順を押さえた上で実施することが重要です。ここでは5つのステップに分けて解説します。
既存の商流分析
まずは、既存の商流を分析します。すでに海外事業を展開している場合は既存事業の商流を分析、海外進出を検討している場合は競合他社の商流を分析しましょう。こうした分析を行うことで、現状の課題や効率性を把握でき、自社にとって最適な商流の検討ができます。
情報収集(デスクリサーチ・現地調査)
次に、仮説検証のための情報収集を行います。主な手法はデスクリサーチと現地調査です。
デスクリサーチでは、統計データや業界レポート、各国の法規制などの公開情報を活用し、市場の構造や法規制リスクなどを把握します。効率的に広範な情報を収集できる点が特徴です。一方、現地調査では実際のパートナーや流通業者へのヒアリング、店舗視察などを通じて実態を確認します。デスクリサーチだけでは見えにくい、リアルな商流の把握に役立ちます。
商流図の作成とボトルネック・リスクの特定
集めた情報を基に、商流を可視化します。文章ではなく図として示すことがポイントです。「特定の代理店に依存している」「不要な中間業者が存在している」といった、ボトルネックやリスクが明確になるためです。
パートナー候補の抽出
次に、どのパートナーと連携すべきかを検討します。既存の商流にとらわれず、より効率的で信頼性の高い相手を選定することが重要です。例えば、現地で強い販売ネットワークを持つ代理店へ切り替える、あるいは卸売業者に販売を一任するといった選択肢が考えられます。パートナー選定にあたっては、信用力・販売力・実績などの観点から評価しましょう。
調査結果を基に最適ルートの検討
最後に、これまでの分析を踏まえて、最も効率的でリスクの低い商流を検討します。例えば、中間業者の見直しはコスト削減に有効です。直販モデルに変更することで利益率の向上も期待できます。重要なのは、自社のリソースやビジネスモデルに適した商流を設計することです。
海外商流調査の精度を高めるポイント

海外商流調査の精度を高めるために、押さえておきたい3つのポイントは以下のとおりです。
①徹底した調査
1つ目のポイントは、徹底した調査により実態を把握することです。デスクリサーチだけでなく、パートナーへのヒアリングや現地調査など、様々な調査により抜け漏れを防ぎます。
②商流の可視化
2つ目のポイントは、複雑になりがちな商流を図示することです。取引の流れやコストなどを書き込むことで、ボトルネックやリスクを把握するのに役立ちます。
③専門家の知見の活用
3つ目のポイントは、専門家の意見を参考にすることです。海外事業の商流を把握するには、商習慣や法規制、文化などの複雑な情報を把握する必要があります。自社だけでは正確に把握するには限界があるため、専門家や調査会社の知見を取り入れることで、より精度の高い分析ができます。
商流を把握して海外事業の成功確率を高めよう
海外商流調査は、海外事業のボトルネックやリスクを把握するのに有効な手法です。商流を可視化し、非効率な流れや潜在的なリスクを洗い出して改善することで、事業の収益性や持続性の向上が期待できます。調査の効果を高めるには、ポイントを押さえた上で、適切な手順で進めることが重要です。
PROVEでは、多様な調査手法を通じて海外事業を支援しており、海外商流調査にも対応しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

