【2025年最新】米国の関税問題の現状とASEAN各国の対応

米国の関税問題は、世界経済に大きな影響を及ぼしています。その影響を強く受けている地域の一つがASEANです。

多くの日本企業が進出先としてASEANに注目していますが、米国の相互関税によるリスクも懸念されているからです。

本記事では、米国の関税問題の現状やASEAN各国の対応状況、日本とASEANの経済連携強化の動向について解説します。

米国による関税問題の現状

米国の関税問題とは、貿易赤字の是正を目的に、米国が各国に対して高い関税を課している問題です。米国の政策が目まぐるしく変化しているため、ここでは現状を整理します。

8月1日に関税発動の予定

米国は、世界各国に対して相互関税を課す方針を打ち出し、関税率を4月2日に発表しました。このうち、一律10%の関税は実施されましたが、各国の追加関税については90日間の猶予期間が設けられました。

日本もこの期間内に、合意を目指して交渉を開始したものの、7月9日の猶予期限までに合意に至りませんでした。すると、トランプ大統領は新たに8月1日を期限とする書簡を一方的に発表しました。

この書簡は日本だけでなく、マレーシア、ミャンマー、ラオスなどの一部の国に対しても送付されています。こうした動きを受け、米国による相互関税は8月1日から順次、本格的に発動される見通しです。

日本は相互関税15%で合意

7月25日、日本は日米交渉で合意したことを発表しました。8月1日より25%の相互関税が課される予定でしたが、交渉の結果、15%に引き下げられました。すでに自動車部品には25%の関税が課されていましたが、これも15%に引き下げられる予定です。また、発動時期については未定で、今後の発表が待たれます。

ASEAN主要6カ国への米国関税率一覧 

米国が4月2日に発表した相互関税リストには、ASEAN諸国も含まれており、その税率は国によって異なっていました。当初発表された、ASEAN主要6カ国に対する相互関税の一覧は次のとおりです。

国名米国への関税米国が課す関税(相互関税)
インドネシア64%32%
マレーシア47%24%
フィリピン34%17%
シンガポール10%10%
タイ72%36%
ベトナム90%46%

※「米国への関税」とは、各国が米国に対して課していると米国が主張する関税を指します。ただし、その算出方法は明らかにされていません。

ASEAN主要6カ国の対応

前述の表のとおり、米国は多くのASEAN諸国に対し、高い相互関税を課す方針を発表しました。そのため、交渉の行方によっては、各国の経済に大きな影響が及ぶ可能性があります。ここでは、ASEAN主要6カ国の対応や米国との交渉の進捗について紹介します。

インドネシア

インドネシアは当初32%の相互関税を課される予定でしたが、交渉の結果、19%で合意しました。ただし、インドネシアは相互関税を引き下げるために、以下のような譲歩をしています。

  • 米国からの99%の輸入品に対して関税を撤廃する
  • 農産物の出荷前の検査を不要とする
  • 自動車の輸出拡大に向けて、米国の自動車安全基準を受け入れる
  • インドネシアは重要鉱物の輸出規制を撤廃する

交渉の結果、インドネシア側の市場開放が大幅に進む形となりました。

参考:Reuters「インドネシア、対米関税ほぼゼロに 米は相互関税19%に引き下げ

マレーシア

マレーシアに対する相互関税は、当初24%とされていましたが、7月7日に公開された書簡で25%へと引き上げられました。

マレーシアの製造業では、一律10%の関税による影響が出始めています。これ以上の影響を抑えるため、マレーシア政府は交渉を急いでいますが、現時点では合意に向けた具体的な見通しは立っていません。

他のいくつかのASEAN諸国が米国と合意し、8月1日の期限が迫っている中、今後のマレーシアと米国との交渉の行方に注目が集まっています。

フィリピン

フィリピンは当初、17%の相互関税が課される予定でしたが、7月に公開された書簡で20%へと引き上げられました。こうした状況の中、7月22日に行われた米国との交渉で、最終的に19%で合意に至りました。この合意に際して、フィリピンは米国からの輸入品に対する関税を撤廃しています。

シンガポール

シンガポールに対する相互関税は10%で、4月の時点で課されています。

しかし、シンガポールはもともと米国と自由貿易協定を締結しており、米国からの輸入品には関税を課していません。さらに、シンガポールは対米貿易で赤字を抱えている状況です。このような中、関税を課せられたことについて、シンガポールは米国への失望を表明しています。

一方で、米国はこの一律10%の関税について交渉の余地を認めていません。そのため、シンガポールは、対応に苦慮しているのが現状です。

タイ

タイは36%の相互関税が8月1日から課される予定です。そのため、タイはそれまでに米国との合意を目指しています。具体的には、米国からの輸入品に対して多くの品目で関税の撤廃を提案していますが、まだ合意には至っていません。

ベトナム

ベトナムには当初、46%という非常に高い相互関税が課される予定でした。これは他のASEAN諸国と比べても際立って高く、背景には米国が1,000億ドルを超える貿易赤字を抱えている状況があります。

こうした中、ベトナムは早い段階から米国との交渉を開始し、米国製品への関税撤廃を譲歩することで、最終的に20%の相互関税で合意に至りました。これは当初の半分以下に抑えられたことになり、ベトナム政府の外交努力の成果と評価されています。

ただし、米国は第三国からの積み替え品に対しては40%の関税を課す方針です。これは中国からの迂回輸出を防ぐための措置と考えられています。

日本はASEANとの経済連携を強化

米国の関税政策によって世界経済が不安定化する中、日本では官民でASEAN諸国との経済連携を強化する動きがみられます。ここでは官民双方の事例を紹介します。

日・ASEAN外相会議の開催

2025年7月10日、マレーシアのクアラルンプールで日・ASEAN外相会議が開催され、日本からは岩屋毅外務大臣が出席しました。

会議の中で日本は、ASEANが共同体発足10周年の節目に掲げた「ASEAN共同体ビジョン2045」を全面的に支持する方針を表明。また、以下の分野でASEAN諸国との協力が進んでいることも報告しました。

  • 学生・スポーツ交流
  • 青年交流
  • 脱炭素化に向けた取り組み
  • 国際貿易における多角的体制の維持
  • サイバーセキュリティの強化

このように、ASEANの重要性が高まる中、日本政府は様々な分野でASEAN諸国との連携を強化しています。

参考:外務省「日・ASEAN外相会議

日本企業で進むASEAN進出

ASEANとの経済連携は、民間企業の間でも進んでいます。その事例の一つが日本ハム株式会社とタイの食品企業チャロン・ポカパン・フーズとの業務提携です。

チャロン・ポカパン・フーズは、アジア有数の大手総合食品企業で、アジア各国に販売ネットワークを構築しています。日本ハム株式会社は、同社との提携を通じてアジア地域への食品事業のさらなる拡大を目指しています。

参考:日本ハム株式会社「タイ最大の食品企業Charoen Pokphand Foods(チャロン・ポカパン・フーズ) 社との包括的業務提携合意

ASEAN主要6カ国での法人設立の手続きについて詳しく知りたい方は、「ASEAN進出ガイド」をご参照ください。

激変する米国関税で高まるASEAN地域への期待

米国の相互関税政策により、世界経済は不透明さを増しています。特にASEAN主要国では、米国との関税交渉により目まぐるしく状況が変化しています。これらの動向は、海外進出や事業展開を検討されている企業様にとって、重要な判断材料です。今後も各国の交渉の行方に注目しましょう。

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