
GIC(シンガポール政府投資公社)は、シンガポールの外貨準備金を管理・運用する政府系ファンドです。政府系ファンドとは、各国の政府が公的資金を運用するための組織のことです。世界中の政府系ファンドによる運用額は、13兆ドルを超えているとされています。
本記事ではGICの会社概要や経営状況、主要事業についてわかりやすく解説します。
GICとはどんな会社?

出典:GIC
GICは、シンガポール政府が100%出資する政府系ファンドです。現在、世界11カ所に拠点を構え、40カ国以上で投資活動を展開しています。その目的は、シンガポール政府に長期的かつ安定したリターンをもたらすことです。具体的には、20年間という投資期間で、世界のインフレ率を上回る実質利回りを達成することが求められています。※実質利回りとは、投資の運用・管理に必要なコストを差し引いた運用利回りのことです。
ここでは、GICの会社概要や歴史、経営理念について紹介します。
会社概要
GICの会社概要は以下のとおりです。
| 会社名 | GIC Private Limited |
| 本社 | シンガポール |
| 設立 | 1981年 |
| 拠点 | 世界11カ所 |
| 投資対象国 | 40カ国以上 |
| 従業員数 | 2,300人 |
| 実質利回り | 年率3.8% ※2025年3月31日までの20年間 |
歴史
GICの設立には、シンガポールの政治家であるゴー・ケン・スウィー氏が深く関わっています。
同氏は1973年から1985年まで第2代副首相を務めた人物です。そして、「国家の外貨準備金を、単に通貨防衛のためだけに大量に保有する必要はない」との考えを示し、余剰外貨準備金を長期的に運用することを提唱しました。
この考えに基づき、1981年、シンガポール政府は100%出資の政府系ファンドとしてGICを設立しました。
1990年代以降、GICは積極的に海外へ事業を拡大。現在では世界11カ所に拠点を持ち、40カ国以上で投資活動を行う国際的な政府系ファンドに成長しています。
なお、2025年時点の同社の運用資産額は約8,000億ドルと推定されています。
参考:Reuters「シンガポール政府系ファンドGIC、投資収益率が5年ぶり低水準」
経営理念
GICは、経営理念の中核として5つの価値観「PRIME」を重視しています。「PRIME」が示すそれぞれの価値は以下のとおりです。
- P:Prudence(慎重さ)
適切で予測可能なリスクを取るために、堅実な判断を行う。
- R:Respect(尊重)
全ての人を尊重し、相手の考え方ややり方に敬意を払う。
- I:Integrity(誠実さ)
倫理的に正しいことをする。
- M:Merit(功績)
成果と能力に応じて公平に評価する。
- E:Excellence(卓越性)
プロフェッショナルとしての誇りを持ち、高い成果を追求する。
GICの20年間の実質利回りの推移
GICの目的は、国家の外貨準備金を長期的に運用し、安定したリターンを確保することです。すなわち、継続的な運用益の創出が求められています。この目的を達成するために、GICでは成果指標として20年間の実質利回りを採用しています。以下は、その利回りの推移です。

出典:GIC「Our Portfolio」
2025年3月31日時点の20年間の実質利回りは3.8%で、これは世界のインフレ率を上回る水準です。このことから、GICは長期的な運用目標を達成しているといえます。グラフからもわかるとおり、近年は4%前後で推移しています。
なお、GICは収益額を公表していません。
GICの事業内容
GICの主要事業は、シンガポールの外貨準備金を管理・運用することです。ここでは、GICの投資戦略とポートフォリオの概要について紹介します。
投資戦略
GICは投資戦略として、「テクノロジーへの投資」と「サステナブルな投資」を重視しています。それぞれの戦略は以下のとおりです。
テクノロジーへの投資
GICは優良な企業や技術、ビジネスモデルを見出すことに注力しています。特にテクノロジー分野への拡大を進めており、その中で使用しているのが「テクノロジーに対するODE」と呼ばれる社内フレームワークです。ODEは3要素で構成され、それぞれの要素の内容は次のとおりです。
O:Offence(攻め)
転換期における成功者に投資し、技術革新から利益を得る。
D:Defence(守り)
破壊に直面する既存の投資を守る。
E:Enterprise Excellence(企業の卓越性)
テクノロジーを投資や組織運営に活かす。
引用:GIC「テクノロジーへの投資」
GICはこのODEフレームワークを活用し、スタートアップへの直接投資から、公開株式・非公開株式に至るまで、幅広い対象に対して投資判断をしています。
サステナブルな投資
GICは長期的な視点を持つ投資家として、「サステナブルな投資」を使命の中核と位置付けています。持続可能性に優れた企業こそが、長期的に安定したリターンをもたらすと考えているためです。
また、GICは投資活動を通じて、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現にも取り組んでいます。その一環として、気候変動対策に積極的な企業や、グリーンテクノロジーの導入・拡大に取り組む企業への投資を推進しています。
ポートフォリオ
GICは、長期的なリターンを安定的に確保するため、資産や地域などの観点から分散投資を行っています。以下のグラフは、GICのポートフォリオを資産グループ別に分類したものです。

参考:GIC「Our Portfolio」
また、ポートフォリオの地理的分散を示したのが次のグラフです。

参考:GIC「Our Portfolio」
このようにGICは、リターンとリスクのバランスを重視しながら、ポートフォリオを分散しています。
GICと日本の関係
GICは日本との関係が深く、30年以上にわたり日本で活動を続けています。特に、不動産分野において多様なポートフォリオを構築している点が特徴です。ここでは、その代表的な2つの事例を紹介します。
事例① ホテル・レジャー31施設を取得
GICは2022年2月、株式会社プリンスホテルが保有するホテル・レジャー事業の31施設を取得すると発表しました。GICはこの取引を、日本全国の一等地にある高品質な資産をポートフォリオに加える貴重な機会と捉えています。
参考:GIC「西武ホールディングスからホテル・レジャー事業資産31施設の取得を発表」
事例② 日本の物流施設6棟を取得
GICは2023年4月、大和ハウス工業株式会社が開発した先進的な物流施設6棟を、8億ドル以上で取得すると発表しました。同社は、これらの施設が安定的で多様な収益源になると見込んでいます。
このように、GICは日本の不動産を積極的に取得し、ポートフォリオを拡充しています。
参考:GIC「GICが6棟の物流施設をブラックストーンから8億米ドル以上で取得」
政府系ファンドGICの動向に注目しよう
GICは、世界40カ国以上で長期的かつ分散的な投資を行っており、日本の不動産市場においても存在感を強めています。
運用資産額は約8,000億ドルとされており、経済への影響力は無視できない存在です。
そのため、世界経済や各国市場の情勢を把握する上でも、同社のポートフォリオや動向に注目しましょう。
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