ナットウエスト・グループとはどんな会社?会社概要や業績を紹介

ナットウエスト・グループ(以降は、「ナットウエスト」と言います。)は、イギリスに本社を置く金融会社です。同社はかつて経営危機に陥り、イギリス政府が株式を保有するかたちで救済されましたが、2025年5月にその全株式が売却され、17年ぶりに完全民営化されました。本記事では、ナットウエストの会社概要や経営状況、成長戦略についてわかりやすく解説します。 

ナットウエストとはどんな会社? 

出典:ナットウエスト 

ナットウエストは、個人、法人、公共機関、富裕層に対して金融サービスを提供しているイギリスの金融会社です。ここでは、同社の会社概要や歴史、企業理念を紹介します。 

会社概要 

ナットウエストの会社概要は以下のとおりです。 

​​会​社名 NatWest Group PLC 
本社 イギリス 
設立 1968年 
顧客数 1,900万人以上 
従業員数 60,700人(2024年12月31日時点) 
売上高 293億ポンド(2024年度) 

歴史 

ナットウエストの起源は、イングランドとウェールズ全土に存在した200以上の小規模銀行にさかのぼります。その中核を担っていたのが、1727年に創設されたロイヤル・バンク・オブ・スコットランドです。1985年にロイヤル・バンク・オブ・スコットランドとウィリアムズ&グリンズ銀行が合併し、イギリス初の全国規模の銀行が誕生しました。 

1988年にはアメリカの銀行を買収し、海外事業を強化。1993年にはプライベートバンクのアダム・アンド・カンパニー、2000年にはナットウエスト銀行を買収しました。グループはさらに拡大を続けましたが、2008年の世界金融危機で経営が悪化し、政府の管理下に置かれることになりました。 

その後は事業再編に取り組み、2020年にはグループ名をナットウエスト・グループに変更。イギリス政府は一時84.4%の株式を保有していましたが、保有比率は段階的に引き下げられ、2025年5月にすべての株を手放しました。 

企業理念 

ナットウエストは企業理念として、「可能性を進歩に変える銀行」というパーパスを掲げています。 

この理念の実現に向けて、同社は企業支援にも力を入れています。2024年には、イギリス全土の12拠点を通じて、2,000社以上の企業を支援し、企業家の成功を後押ししました。 

ナットウエストの経営状況 

ナットウエストの経営状況として、直近6年間の売上高と総収益の推移を紹介します。 

参考:ナットウエスト「Reports archive」 

2024年の売上高は293億ポンド(5兆6,670億円)で、2023年の254億ポンド(4兆8,260億円)と比較して、39億ポンド(7,410億円)増加しました。一方、2024年の総収益は147億ポンド(2兆7,930億円)で、2023年の148億ポンド(2兆8,120億円)と比較して、1億ポンド(190億円)減少しました。※1ポンド=190円換算 

売上高が増加した要因は、各事業の成長が挙げられます。一方、総収益が減少した要因は、預金残高が無利子預金から有利子預金へ移行したことによる費用増が挙げられます。 

同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:ナットウエスト「Reports archive」 

ナットウエストはヨーロッパ、アメリカ、アジアにも展開していますが、売上高の95.7%はイギリス国内からのものです。このことから、同社は実質的にイギリス市場に特化した金融機関であると言えます。 

ナットウエストの事業別売上高の推移 

ナットウエストの経営状況について、事業売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。 

参考:ナットウエスト「Reports archive」 

ナットウエストは、法人や機関向けの「コマーシャル&インスティテューショナル」を主軸としながら、個人向けの「リテールバンキング」や、富裕層向けの「プライベートバンキング」にも積極的に取り組んでいます。ここではさらに、各事業の内容とともに、売上高と収益の推移について紹介します。なお、事業再編の影響により、データは過去4年分のみです。 

コマーシャル&インスティテューショナル 

コマーシャル&インスティテューショナルは、法人や機関向けのサービスを提供する事業です。イギリスを中心に国内外で事業を展開しています。同事業の売上高と収益の推移は以下のとおりです。 

参考:ナットウエスト「Reports archive」 

2024年度の売上高は124億ポンド(2兆3,560億円)で、2023年度の109億ポンド(2兆710億円)と比較して、15億ポンド(2,850億円)増加しました。また、2024年度の収益は80億ポンド(1兆5,200億円)で、2023年度の74億ポンド(1兆4,060億円)と比較して、6億ポンド(1,140億円)増加しました。 

売上高と収益がともに増加した要因は、貸付金額の増加による収入増が挙げられます。 

リテールバンキング 

リテールバンキングは、イギリスの個人向けのサービスを提供する事業です。同事業の売上高と収益の推移は次のとおりです。 

参考:ナットウエスト「Reports archive」 

2024年度の売上高は90億ポンド(1兆7,100億円)で、2023年度の74億ポンド(1兆4,060億円)と比較して、16億ポンド(3,040億円)増加しました。一方、2024年度の収益は57億ポンド(1兆830億円)で、2023年度の59億ポンド(1兆1,210億円)と比較して、2億ポンド(380億円)減少しました。 

売上高が増加した要因は、主にクレジットカードの無担保ローンや住宅ローンの増加が挙げられます。
一方、収益が減少した要因は、預金残高の利子や人件費の増加が挙げられます。 

セントラルアイテム&その他 

セントラルアイテム&その他には、財務、法務、広報、人事などのコーポレート機能に加えて、他の事業に関連しない事業が含まれています。同事業の売上高と収益の推移は以下のとおりです。 

参考:ナットウエスト「Reports archive」 

2024年度の売上高は51億ポンド(9,690億円)で、2023年度の49億ポンド(9,310億円)と比較して、2億ポンド(380億円)増加しました。一方、2024年度の収益は1億3,000万ポンド(247億円)で、2023年度の4億1,000万ポンド(779億円)と比較して、2億8,000万ポンド(532億円)減少しました。 

売上高が増加した要因は、事業成長ファンドによる収益の増加が挙げられます。一方、収益が減少した要因は、不動産のリース解約に伴う損失が挙げられます。 

プライベートバンキング 

プライベートバンキングは、イギリスの富裕層向けの金融サービスを提供する事業です。同事業の売上高と収益の推移は次のとおりです。 

参考:ナットウエスト「Reports archive」 

2024年度の売上高は28億ポンド(5,320億円)で、2023年度の22億ポンド(4,180億円)と比較して、6億ポンド(1,140億円)増加しました。一方、2024年度の収益は9億7,000万ポンド(1,843億円)で、2023年度の9億9,000万ポンド(1,881億円)と比較して、2,000万ポンド(38億円)減少しました。 

売上高が増加した要因は、運用管理資産総額の増加に伴う収入増が挙げられます。一方、収益が減少した要因は営業費用の増加が挙げられます。 

ナットウエストの成長戦略 

出典:ナットウエスト「Our strategy」 

ナットウエストは、持続的な成長を目指して、以下の3つを戦略の柱としています。 

規律ある成長 

新規顧客の獲得に加え、既存顧客との関係をより深めることです。これにより、顧客一人ひとりに対して、より多くの価値を提供することを目指しています。 

銀行全体の簡素化 

将来を見据えたプラットフォームやオペレーション体制の整備です。AIアシスタントの導入や、システムの近代化により、業務効率と品質の向上を図っています。 

積極的なバランスシートとリスク管理 

バランスシートを活用し、リスクを適切にコントロールしながら収益を拡大することです。 
ナットウエストはこれらの戦略を通じて、競争力の維持や持続的な企業価値の向上を目指しています。 

完全民営化後のナットウエストの動向に注目 

2025年5月、ナットウエストは17年ぶりに完全民営化されました。同社はイギリス国内で大きな影響力を持つ金融機関です。今後の経営方針や成長戦略によっては、イギリス国内だけでなく海外市場にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、ナットウエストの動向には引き続き注目しましょう。 

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