
シンガポールは、強固なガバナンスと革新的な金融政策を背景に、アジアを代表する国際金融センターとして発展してきました。そのシンガポールに本社を構えるDBS銀行は、東南アジア最大級の銀行として知られています。香港やその他の中華圏、東南アジア、南アジアなどで幅広く事業を展開している点が特徴です。本記事では、世界的にも注目を集めるシンガポールの金融市場において存在感を高めるDBS銀行について、会社概要や経営状況、成長戦略をわかりやすく解説します。
DBS銀行(DBS Bank)とはどんな企業?

出典:DBS銀行
DBS銀行は、中華圏・東南アジア・南アジアというアジアの主要成長市場を軸に事業を拡大している金融機関です。Global Finance誌の「世界最高の銀行」に選出されるなど、国際的にも高い評価を受けています。また、デジタルバンキングの先駆者として知られており、持続可能な社会の実現に向けた取り組みにも積極的です。ここでは、こうした強みを持つDBS銀行の会社概要や歴史、経営理念を解説します。
会社概要
DBS銀行の会社概要は次のとおりです。
| 企業名 | DBS Bank Ltd |
| 本社 | シンガポール |
| 設立 | 1968年 |
| 総資産額(2025年度) | 8,970億シンガポール・ドル |
| 進出地域 | 19市場 |
| 従業員(2025年度) | 約40,000人 |
歴史
DBS銀行は、1968年にシンガポール政府により「The Development Bank of Singapore Limited」として設立されました。当初は、シンガポールの新興産業への資金提供と新たな産業の育成という役割を担っていました。
1970年代には、国内の産業支援や都市開発への融資を通じて基盤を構築。1976年には東京に初の海外拠点を設立するなど、早くから海外進出を開始しました。
1980年代以降は、住宅ローンやインターネットバンキングなどの新たなサービスを導入し、商業銀行としての機能を強化。1998年にはシンガポールのPOSB銀行の買収により東南アジア最大級の銀行へと成長し、その後も香港や中国、インドネシアへ事業を拡大しました。
2010年代以降はデジタル化を加速させ、「世界最高のデジタルバンキング」と評価されるまでに進化しています。さらに近年はサステナビリティや社会貢献にも注力し、アジアを代表する金融機関としての地位を確立しています。
経営理念
DBS銀行の経営理念は、「Make Banking Joyful(銀行取引をもっと楽しく)」というビジョンに象徴されます。デジタル技術を活用した日常生活に溶け込む金融サービスを提供することで、顧客の生活を豊かにし、企業の成長や社会の発展に貢献することを目指しています。
また、同社は「Purpose-driven bank(目的志向の銀行)」であることを重視している点も特徴です。持続可能な社会の実現に向け、以下の3つを柱とした経営を推進しています。
- 責任ある銀行業務
- 責任ある事業慣行
- 社会的インパクトの創出
これらの取り組みを通じて、長期的な成長と持続可能性の両立を目指しています。
DBS銀行の経営状況
DBS銀行の経営状況として、直近5年間の総収益と純利益の推移を紹介します。

参考:DBS銀行「AGM and EGM」
2025年度のDBS銀行は、総収入・純利益ともに高水準を維持しました。総収入は前年度比で2.7%増加し、過去最高となる229億シンガポール・ドル(2兆7,480億円)を記録しています。一方で、純利益は約110億シンガポール・ドル(1兆3,200億円)と、前年度と比べてやや減少しましたが、依然として高い収益力を維持しています。※シンガポール・ドル=120円換算
2025年度はシンガポールと香港における基準金利の大幅な低下、シンガポール・ドル高という不利な為替の厳しい状況下においても成長を実現していることから、同社の事業の安定性が伺えます。
また、総収入における地域別の構成割合は以下のとおりです。

参考:DBS銀行「AGM and EGM」
同社の主要地域はシンガポール、香港、その他の中華圏で、これらの地域で総収入の89%を占めています。
DBS銀行の主要事業
DBS銀行の主要事業は、個人向け銀行業、法人・機関向け銀行業務、市場取引事業の3つです。それぞれの総収入に占める割合は以下のとおりです。

参考:DBS銀行「AGM and EGM」
各事業の事業内容と特徴について解説します。
個人向け銀行業務
DBS銀行の個人向け銀行業務および資産運用事業は、個人顧客に対して次のような金融サービスを提供する事業です。
- 預金サービス
- ローン・住宅ローン
- カード・決済サービス
- 投資・保険商品
同社の収益を支える中核事業の一つで、2025年度は投資商品やバンカシュアランスの拡大を背景に成長しました。特に資産運用分野では、運用資産残高の増加とともに手数料収入が大きく伸び、全体収益の押し上げ要因となっています。
※バンカシュアランス(Bancassurance)とは、銀行と保険を組み合わせた造語で、銀行で保険商品を販売するビジネスモデルのことです。
法人・機関向け銀行業務
DBS銀行の法人・機関向け銀行業務は、金融機関や政府系機関、大企業などの大口顧客に対して、次のような金融サービスを提供する事業です。
- キャッシュマネジメント
- 証券・信託サービス
- 資金運用
同社の中核的な収益源の一つであり、アジア域内の経済活動を支える重要な役割を担っています。2025年度は、金利低下や市場の不確実性といった環境下にありながらも、手数料収入の拡大や取引銀行サービスの成長により、安定した業績を維持しました。特にアジアのAI投資やグリーンインフラ、中東のインフラ投資といったメガトレンドが需要を押し上げました。
市場取引事業
DBS銀行の市場取引事業は、為替や金利、債券など幅広い金融商品を対象に売買を行い、収益を生み出す事業です。金融市場の動向を捉えながら機動的に取引することで、グループ全体の収益を支える重要な役割を担っています。
2025年度は、市場環境の変動を背景に取引機会が拡大し、同事業の収入は前年度比49%増と大きく伸長しました。なお、個人向けや法人・機関向けの金融商品の運用はそれぞれの事業に計上されます。
DBS銀行の成長戦略の特徴
DBS銀行の成長戦略の特徴は、「アジア特化」と「デジタル化」の2点です。中華圏・東南アジア・南アジアといった成長性の高い市場に経営資源を集中することで、持続的な成長を実現しています。また、デジタルバンキングの推進により、利便性の高いサービス提供と業務効率の向上を同時に達成している点も強みです。
さらに近年は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化しており、収益性だけでなく社会的価値の創出にも注力しています。こうした戦略により、長期的な成長を実現しています。
まとめ
DBS銀行は、シンガポール、香港、その他の中華圏といったアジア市場に特化した進出戦略と先進的なデジタル化により、アジア有数の金融機関へと成長しました。3つの主要事業がバランスよく収益を支え、安定した経営基盤を築いている点も強みです。今後もアジアの経済成長を背景に、同社の存在感はさらに高まっていくでしょう。
また、シンガポールをはじめとする東南アジアへの進出を検討している企業にとって、現地市場の正確な情報は不可欠です。PROVEでは各種調査を通じて、海外事業の拡大や進出を総合的に支援しています。シンガポールに関する情報収集や市場調査をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

