
ホンリョン・グループ(Hong Leong Group)は、マレーシアやシンガポールに本社を置くコングロマリットです。金融サービスや製造業、不動産などの複数の分野で事業を展開しています。本記事ではホンリョン・グループの概要や歴史、主要事業をわかりやすく解説します。
ホンリョン・グループとは?

出典:ホンリョン・グループ
マレーシア財閥のホンリョン・グループは、東南アジア、中国、ヨーロッパ、オセアニアなどに拠点を持つコングロマリットです。グループ全体で13社の上場企業を擁し、約3万人の従業員を抱えるなど、幅広い分野でグローバルに事業を展開しています。
創業 | 1941年(シンガポール法人) 1963年(マレーシア法人) |
創業者 | クェック・ホンプン |
従業員数 | 約11,000人(2024年6月時点) |
事業分野 | 金融サービス、製造業、ホスピタリティ&レジャー、不動産 |
拠点 | 東南アジア、中国、ヨーロッパ、オセアニア |
歴史
ホンリョン・グループは、1941年にシンガポールで創業者クェック・ホンプン氏によって設立されました。建築資材の販売から始まり、1963年にはマレーシアへと進出しました。マレーシアでは、クアラルンプールの小さな店舗で事業を開始し、貿易業から建築資材の製造へと発展。さらに、不動産や金融サービスなど、幅広い分野への進出を積極的に進めました。
1994年には中国の不動産市場にも参入し、北京、上海、南京、天津といった主要都市でオフィスビルや高級住宅の開発に注力しました。このような拡大路線により、現在はマレーシア財閥として、マレーシアやシンガポールを中心に強い影響力を持つコングロマリットに成長しています。
価値観
ホンリョン・グループは、経営目標を推進するための基盤として、次の価値観を重視しています。
誠実:誠実に事業を営む
人材重視:人材の質を高める
起業家精神:起業家精神を育成する
革新:イノベーションを推進する
品質:顧客の期待を上回る製品とサービスを提供する
成長:既存業務を継続的に改善し、新たなビジネスチャンスを創出する
団結:目的意識と調和、友情を大切にし、組織の一体感を育てる
社会的責任:企業の成果を社会の発展へと還元する
ホンリョン・グループの事業内容と主要企業

ホンリョン・グループは、6つの主要事業を展開しています。ここでは、各事業内容と主要企業を紹介します。
金融サービス
金融サービス事業では、マレーシアを中心にアジア各国で銀行業務や生命保険、損害保険、投資銀行、資産運用などのサービスを提供しています。
■主要企業
- ホンリョン・フィナンシャル・グループ
ホンリョン・グループの金融サービス事業を統括する投資株式会社です。
- ホンリョン・バンク
マレーシアを代表する商業銀行の一つで、同国を中心に金融サービスを提供しています。
- ホンリョン・キャピタル
投資や資産運用に関する金融サービスを提供している企業です。
- ホンリョン・イスラム銀行
イスラム教では、利子を取って金銭を貸すことを禁止しています。また、投機的な取引も禁じられています。このようなイスラム教の教えに則った金融サービスを提供しているのがホンリョン・イスラム銀行です。
製造業
製造業では、消費財や集積回路、半導体デバイス、オートバイ、セラミックタイルなど、多様な製品を製造・販売しています。
■主要企業
- ホンリョン・インダストリーズ
子会社を通じて、オートバイ、セラミックタイル、海洋関連製品の製造を行う企業です。
- マレーシア・パシフィック・インダストリーズ
子会社を通じて、半導体デバイスや電子部品の製造、組立、テスト、販売を行う企業です。
- ホンリョン・ヤマハ・モーター
1978年にヤマハ発動機株式会社とのフランチャイズ契約により設立されました。マレーシアでヤマハ製オートバイの製造、組立、販売を行っています。
ホスピタリティ&レジャー
ホスピタリティ&レジャー事業は、主にイギリスでホテル運営やレジャー関連サービスを展開しています。
■主要企業
- GL
GLは、ホテル経営、石油・ガス、不動産開発、レジャー産業への主要分野に投資を行う持株会社です。具体的には、イギリスに16棟のホテルを所有するクレルモン・ホテル・グループを運営しています。また、同社はハワイにも不動産を所有し、オーストラリアのバス海峡において石油・ガスの生産にも携わっています。
- ランク・グループ
ランク・グループは、国際的なレジャー企業です。イギリスやスペインでビンゴ大会やカジノに加えて、スポーツベッティングのデジタルチャンネルを運営しています。
不動産
不動産事業は、マレーシア、シンガポール、中国で不動産開発、資産管理、ホテル管理を行っている事業です。
■主要企業
- グオコランド・リミテッド
グオコランド・リミテッドは、不動産開発および不動産投資の2つの事業を展開する企業です。同社は、質の高い商業施設の開発を手がけており、安定した賃料収入と資産価値の向上を目指しています。代表的な物件には、マレーシアの「ダマンザーラ・シティ」、シンガポールの「グオコ・タワー」などがあります。
企画・設計から開発、運用、資産管理に至るまで、バリューチェーン全体を自社で担う一貫した体制が強みです。2024年6月時点で、グループの資産は約65億6,000万シンガポール・ドルに達しています。
- タワー・リート
マレーシアに拠点を置く不動産投資信託会社です。質の高いオフィスビルと商業用不動産に投資し、中長期的な成長を目指しています。
プリンシパルインベストメント
ホンリョン・グループのプリンシパルインベストメント事業は、香港に拠点を置くグオコ・グループ・リミテッドが担っています。プリンシパルインベストメントとは、自社の資金を活用して企業の株式などに直接投資する手法です。
■主要企業
- グオコ・グループ・リミテッド
香港、中国、シンガポール、マレーシア、イギリス、オーストラリアに拠点を置き、アジア太平洋地域およびヨーロッパを中心に事業を展開しています。また、金融サービス、ホスピタリティ&レジャー、不動産といった主要事業も展開しており、各事業が連携しながらグループ全体の企業価値向上に貢献しています。
フード
フード事業は食用油やホームケア製品、健康食品などを開発・販売している事業です。
■主要企業
- ラム・スーン
ラム・スーンは1930年に設立され、当初は食用油、米、コプラ(ココヤシの果実の胚乳を乾燥させたもの)の取引を行っていました。1961年に香港での事業を開始し、1997年にホンリョン・グループの一員に加わりました。現在の主要製品は食用油、小麦粉、ホームケア製品です。
- マヌカヘルス・ニュージーランド
マヌカヘルス・ニュージーランドは、自然健康食品やヘルスケア製品を主に開発、販売している企業です。主要製品には、マヌカハニー、プロポリス、ローヤルゼリー、咳止めシロップ、サプリメントなどがあります。
マレーシア経済を牽引するホンリョン・グループ
ホンリョン・グループは、マレーシアとシンガポールを拠点に、複数の事業を展開するコングロマリットです。海外進出にも積極的に取り組んでおり、日本では三井不動産グループと提携し、銀座でホテルチェーン「三井ガーデンホテルズ」を運営しています。こうした取り組みにより、同グループはアジア太平洋地域を代表する財閥の一つとして、存在感を高めています。今後の動向にも注目しましょう。