
リライアンス・インダストリーズは、インドに本社を置くコングロマリットです。石油・ガス、小売り、デジタルサービスなど、複数の事業を手掛けています。本記事では、リライアンス・インダストリーズの概要や主要事業について詳しく解説します。
リライアンス・インダストリーズとは

リライアンス・インダストリーズは、インド財閥のリライアンス・グループの中核企業の一つです。ここでは、同社の会社概要や歴史、企業理念を紹介します。
会社概要
リライアンス・インダストリーズの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Reliance Industries Limited |
本社 | インド |
設立 | 1973年(前身企業の創業1958年) |
顧客数 | 約4億8,210万人 |
従業員数 | 34万7,362人 |
売上高 | 10兆インドルピー(2024年度) |
歴史
1957年に創業者のディルバイ・アンバニ氏は、インド・ムンバイで繊維事業を開始しました。1965年には「リライアンス・テキスタイル」を設立し、1966年に繊維工場を開設。1977年に株式を公開すると、7倍の応募超過を記録し、同社の成長基盤を確立しました。
こうして、一代でリライアンス・グループをインド3大財閥へと育て上げたディルバイ・アンバニ氏ですが、1986年に発作により後遺症が残ったため、事業は2人の息子へと引き継がれました。
2002年の同氏の死後、兄弟間の対立が表面化し、最終的に兄ムケシュ・アンバニ氏がリライアンス・インダストリーズを、弟アニル・アンバニ氏がリライアンス・ADA・グループを率いる形でグループが分裂。その後、2006年にリライアンス・インダストリーズは小売業に進出し、わずか8年で国内最大の小売業者に成長しました。2020年には、インド企業として初めて時価総額2,000億米ドルを超え、世界有数のコングロマリットとなりました。
企業理念
リライアンス・インダストリーズの企業理念として、同社のパーパス(目的)・ミッション(使命)・バリュー(価値観)を紹介します。
- パーパス
「Growth is Life(人生は成長)」 - ミッション
すべてのステークホルダーに尊敬され、革新的で価値を生み出す組織となる。 - バリュー
パーパスとミッションを実現するために、同社が重視している6つの価値観は次のとおりです。
1. 顧客価値
常に顧客を喜ばせることを第一に考える。
2. 当事者意識
会社の成功と評判を高めるために、当事者意識を持つ。
3. 尊敬
ステークホルダーに対して常に敬意を払う。
4. 誠実さ
法令を順守し、高い倫理観を持ち、すべての行動に誠実かつ謙虚な姿勢で臨む。
5. ワンチーム
個人の成功よりもチームを優先し、チームの能力開発に尽力する。
6. 卓越性
あらゆる活動において、成長と改善の可能性を常に探求する。
リライアンス・インダストリーズの主要事業

出典:リライアンス・インダストリーズ「Energy」
リライアンス・インダストリーズの6つの主要事業について解説します。
石油・ガス
石油・ガス事業は、深海油田や炭層メタンガス田から原油や天然ガスを採掘する事業です。同事業は、インドの天然ガス生産量の約30%を占めています。また、2024年度の売上高は2,400億インドルピー(4,320億円)で、前年度比48%増を実現しました。これは主に、天然ガスの生産量の増加によるものです。※1インドルピー=1.8円換算
石油化学製品
石油化学製品事業は、ガソリンやディーゼル、ジェット燃料といった輸送燃料やポリエステルなどを製造、販売している事業です。2024年度の売上高は5兆6,000億インドルピー(10兆80億円)で、前年度比5%減でした。同事業はリライアンス・インダストリーズの売上高の半分以上を占める中核事業です。
小売り
リライアンス・インダストリーズの小売り事業は、インドで最大規模を誇ります。2024年度の売上高は3兆インドルピー(約5兆4,000億円)に達し、前年度比17.8%増の成長を記録しました。
全国に展開する店舗数は18,836店にのぼり、オンラインと実店舗を融合させたオムニチャネル戦略により、3億人以上の顧客を獲得しています。
取り扱い商品は家電、食料品、ファッションなど多岐にわたり、海外の有力ブランドとの提携も積極的に行っています。インドの小売市場は、すでに世界トップ5に入っており、2030年までには世界第3位の市場になると言われています。
このような急成長を続けるインド市場において、同社の小売り事業はその中心的な存在として今後ますます注目を集めるでしょう。
デジタルサービス
デジタルサービス事業は、インド全土に向けて5Gネットワークや固定ブロードバンドの提供を行っている事業です。2024年度の売上高は1兆3,000億インドルピー(2兆3,400億円)で、前年度比11.0%増の成長を記録しました。
加入者は4億8,180万人を突破し、そのうち1億800万人が5Gネットワークに移行しました。また、固定ブロードバンドは、全国5,900都市以上にサービスを展開しています。
インドの5G加入者数は2029年までに8億人を超えると見られており、この分野における同社の役割はますます重要性を増していくと考えられています。
新エネルギー
新エネルギー事業は、リライアンス・インダストリーズが2035年までに、カーボンニュートラルの実現を目的に開始した事業です。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と削減量を合算すると実質ゼロになることです。
具体的には、再生可能エネルギーやグリーン水素、グリーンケミカル、エネルギー貯蔵によって実現を目指しています。
インドのエネルギー需要は、2030年までに15,000 TWh、2050年までに26,000 TWhに増加するとの予測もたてられています。このように急拡大するエネルギー需要に対して、同事業は主導的な役割を果たすと期待されています。
メディア&エンターテインメント
メディア&エンターテインメント事業は、ニュースやスポーツ、映画、ドラマなどの多様なコンテンツを配信している事業です。2024年度の売上高は1,000億インドルピー(1,800億円)で、前年度比49.0%増の成長を実現しました。
テレビ部門は視聴率12.7%を占める国内有数のテレビネットワークを形成しており、デジタルプラットフォームでは、2億2,500万人が視聴しています。特に、インディアン・プレミアリーグ(IPL)の配信により、視聴者数が増加しました。広告収入の伸びも堅調で、事業全体の収益性が高まっています。
また、2024年にはウォルト・ディズニーと提携し、インド最大のエンターテインメント企業を設立しました。これにより、同事業のさらなる事業拡大を目指しています。
参考:Forbes JAPAN「インド最大のエンタメ企業誕生、リライアンスとディズニーが合弁会社を設立」
リライアンス・グループの次の一手に世界が注目
リライアンス・インダストリーズは、複数の事業で成長を遂げたインド財閥です。近年では、ウォルト・ディズニーと提携したのに加えて、生成AI分野の最前線を走るOpenAIとの提携の可能性が報じられ、世界から注目を集めています。このように、リライアンス・グループは新たな分野への挑戦を続けることで、その存在感を強めています。
参考:Reuters「オープンAIとメタ、印リライアンスとAI提携協議=報道」