
日本企業の海外進出先は多様化が進み、従来の主要国だけでなく、新たな市場への関心も高まっています。そこで本記事では、今後の海外戦略を考える上で参考となる「日本企業の海外進出国ランキングTOP10」を紹介します。
日本企業の海外進出国ランキングTOP10
外務省の海外進出日系企業拠点数調査(2023年)の結果から、海外進出国ランキングTOP10は以下のとおりです。
順位 | 国・地域 | 日系企業拠点数 | 順位 | 国・地域 | 日系企業拠点数 |
1位 | 中国 | 31,060社 | 6位 | ベトナム | 2,394社 |
2位 | アメリカ | 8,982社 | 7位 | インドネシア | 2,182社 |
3位 | タイ | 5,856社 | 8位 | ドイツ | 1,947社 |
4位 | インド | 4,957社 | 9位 | マレーシア | 1,617社 |
5位 | 韓国 | 3,003社 | 10位 | フィリピン | 1,604社 |
参考:外務省「海外進出日系企業拠点数調査」
海外進出国として最も多く選ばれているのは中国であり、2位のアメリカと比べても、進出企業数は約3.5倍にのぼります。
近年の傾向
外務省の海外進出日系企業拠点数調査の2023年と2018年のデータを比較し、上位10カ国の企業拠点数の変化を表したのが以下のグラフです。

参考:外務省「海外進出日系企業拠点数調査」
注目すべきは中国で、過去5年間で1,289拠点が減少しました。一方、韓国は2,058拠点、タイは1,931拠点、ベトナムは578拠点が増加しました。これらの動向から、日本企業の進出先は中国から他のアジア諸国へと分散しつつあり、特に韓国やタイへの注目度が高まっています。
日本企業に人気の海外進出国の特徴
日本企業に人気の海外進出国トップ10の特徴や進出する利点などを解説します。
中国
中国は日本企業から最も多く選ばれている海外進出国です。越境EC市場の拡大、豊富な労働力、法人税の優遇措置など、多くのメリットがあるためです。しかし近年は、米中関係の悪化による高関税の導入や、台湾との緊張の高まりなど、地政学的リスクが増しています。こうした背景から、より人件費の安いアジア諸国への移転を検討する日本企業も増えています。
人口 | 約14億人 |
GDP | 約18兆1,000億ドル(2022年) |
面積 | 約960万平方キロメートル |
首都 | 北京 |
進出の多い業種 | 製造業(自動車、電化製品、金型製造、工作機械、半導体製造装置) |
参考:外務省「中華人民共和国」
アメリカ
アメリカは、世界最大のGDPを誇り、国民一人あたりの消費額も世界トップクラスです。その圧倒的な市場規模は非常に魅力的で、世界中の企業が進出先としてアメリカを選ぶ大きな理由となっています。しかし、アメリカは50の州で構成されており、州ごとに優遇制度や法人設立の手続きが異なるといった課題も存在します。
人口 | 約3億3,650万人(2024年6月) |
GDP | 27兆3,609億ドル(2023年) |
面積 | 9,833,517平方キロメートル |
首都 | ワシントンD.C. |
進出の多い業種 | 製造業(自動車、科学・医薬、一般機械、電気・電子機器) |
参考:外務省「アメリカ合衆国」
タイ
タイは、東南アジアの中でも特に人気の海外進出先です。高い経済成長率に加え、豊富で安価な労働力があることから、中国からの生産拠点の移転先として注目を集めています。また、アジアにおける物流やビジネスのハブとしての役割も期待されています。
人口 | 6,609万人(2022年) |
GDP | 5,135億ドル(2023年) |
面積 | 51万4,000平方キロメートル |
首都 | バンコク |
進出の多い業種 | 卸売・小売業、製造業(自動車、電化製品) |
参考:外務省「タイ王国」
インド
インドは人口の増加に伴い、経済規模が急速に拡大しています。2027年には、日本やドイツを抜いて世界第3位の経済大国になる見込みです。こうした成長性の高さから、多くの企業が進出先としてインドを選んでいます。一方で、ビジネス習慣の違いや地域ごとの特色があり、進出にあたっては地域の特性を正確に見極める必要があります。
人口 | 14億3,807万人(2023年) |
GDP | 3兆5,676億ドル(2023年) |
面積 | 328万7,469平方キロメートル |
首都 | ニューデリー |
進出の多い業種 | 製造業(化学・医薬、精密・医療機器) |
参考:外務省「インド」
韓国
韓国経済の大きな特徴は、財閥が強い影響力を持っている点です。日本企業にとって韓国への進出には、地理的な近さや日本文化への理解が深いことなど、多くのメリットがあります。さらに、韓国は半導体や自動車といった分野で高い技術力を有しており、これも進出先としての魅力の一つとなっています。
人口 | 約5,156万人(2023年) |
GDP | 1兆6,643億ドル(2022年) |
面積 | 約10万平方キロメートル |
首都 | ソウル |
進出の多い業種 | 製造業(半導体・電子産業、自動車)、IT・通信 |
参考:外務省「大韓民国」
ベトナム
ベトナムは人口が1億人を超え、若く優秀な人材が豊富である点が魅力です。また、資源が豊富な上に、物価や雇用コストが低いため、多くの企業が進出先として選んでいます。さらに、GDPの成長率が5%を超え、経済が成長し続けている点も高く評価されています。
人口 | 約1億30万人(2023年) |
GDP | 約4,300億ドル(2023年) |
面積 | 32万9,241平方キロメートル |
首都 | ハノイ |
進出の多い業種 | 製造業、卸売・小売業、IT・通信業 |
参考:外務省「ベトナム社会主義共和国」
インドネシア
インドネシアの特徴は、2億人を超える人口と急速に拡大する中間所得層による大きな消費市場です。さらに、世界最大の親日国として知られ、日本企業にとって多くのビジネスチャンスがある国の一つです。
人口 | 約2.79億人(2023年) |
GDP | 1兆1,790億ドル(2023年) |
面積 | 約192万平方キロメートル |
首都 | ジャカルタ |
進出の多い業種 | 卸売・小売業、製造業、IT・サービス業 |
参考:外務省「インドネシア共和国」
ドイツ
ドイツは、ヨーロッパ最大の人口と経済規模を持つ国です。国民のサステナビリティへの関心が高いため、環境を意識した製品を扱う企業にとってはビジネスチャンスの多い国です。さらに、ドイツはヨーロッパ市場への玄関口として地理的に優れており、物流やビジネスのハブとしても活用されています。
人口 | 約8,482万人(2023年) |
GDP | 4兆3,050億ドル |
面積 | 35.7万平方キロメートル |
首都 | ベルリン |
進出の多い業種 | 卸売・小売業、製造業、サービス業 |
参考:外務省「ドイツ連邦共和国」
マレーシア
マレーシアは外資企業の誘致に積極的で、税制優遇や輸入関税の減免といったメリットを提供しています。人口の多くを若年層が占め、所得水準も上昇していることから、今後の市場拡大が期待されています。
人口 | 約3,350万人(2023年) |
GDP | 4,341億ドル(2022年) |
面積 | 約33万平方キロメートル |
首都 | クアラルンプール |
進出の多い業種 | 卸売・小売業、製造業、IT・通信業 |
参考:外務省「マレーシア」
フィリピン
フィリピンは、海外から進出する企業に対して手厚い優遇制度を提供しており、その代表例が経済特区です。経済特区には、法人税の免除や関税の優遇など、魅力的な制度が整備されています。さらに、2050年まで人口増加が続くと予測されており、労働力の増加や内需の拡大が期待されています。
人口 | 1億903万人(2020年) |
GDP | 3,936億ドル(2021年) |
面積 | 298,170平方キロメートル |
首都 | マニラ |
進出の多い業種 | 卸売・小売業、IT・通信業 |
参考:外務省「フィリピン共和国」
成功する海外展開は進出先の見極めから始まる

日本企業の海外進出国として、これまで中国が圧倒的に多く選ばれてきました。しかし、米中関係の悪化や地政学的リスクの高まりにより、過去5年間で減少傾向にあります。一方で、韓国、タイ、ベトナムなどの他のアジア諸国が増加しており、多様化が進んでいます。
海外展開を成功させるには、このような国際情勢の変化に柔軟に対応し、適切な進出先を見極めることが重要です。
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