中小企業は海外進出を目指すべき。課題や失敗する原因、成功事例を紹介

国内市場だけにとどまらず、海外の市場を視野に入れて海外進出する企業は増えています。海外進出は大企業だけがするものではありません。実際に、中小企業で海外進出している企業も多いのです。内需だけでは販路に限界があります。新たな潜在層やユーザー獲得のためにも、今まさに中小企業も海外進出するべきといえます。

今回は、中小企業の海外進出における課題、失敗要因や成功事例をご紹介します。

中小企業が海外進出したほうがいい5つの理由

空 世界経済

日本国内の中小企業にとって、海外進出は今とてもメリットがあるといえます。それでは早速、中小企業が海外進出するべきといえる理由を5つピックアップしていきます。

国内市場の縮小

日本は現在超高齢社会に突入しており、人口減少は世界でも類のない規模になりました。国内需要の減少も莫大なものといえるでしょう。国内の市場では、売上の伸びている業界もあれば、横ばい、もしくは縮小している業界も様々ではありますが、日本のGDPの伸び率を見てみると、1995年頃からずっと停滞しています。

今後も、モノが余ってしまう状況が続き、今回の新型コロナウイルスの影響などもあり厳しい経済環境が続くでしょう。国内市場は今後も縮小傾向であるといえます。

海外企業の日本進出

2020年10月時点で、海外に進出している日本企業の数は前年比増減率約8.5%増加の80,373拠点となりました。

(外務省が在外公館などを通じて実施した外務省の海外進出日系企業拠点数調査による)https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html

海外進出している日本企業のうち、業界でいうと製造業が最多で14,245拠点が海外進出しています。また、進出先で最多のエリアは、アジアで56,315拠点です。この数字を見ても日本企業の海外志向が伺えます。中でも、新興国の市場は日本企業にとって魅力的です。次に新興国の市場拡大についても説明します。

新興国の市場拡大

新興国、特にアジア地域は進出先として魅力的であると先述しましたが、詳しくご説明していきましょう。

アジア地域のGDPは、2020年にはアジア以外の世界各国の合計GDPを追い抜き、2030年には全世界の成長のおよそ60%を占めると予想されています。また、世界経済に新たに参入する24億人の中流階級においても圧倒的多数(90%)を占めることとなるのです。中国、インド、東南アジアの地域が、アジア太平洋地域の成長の大部分を占め、世界でも大きな影響を与えるでしょう。日本からも近いアジア地域は中小企業にとってチャンスが多くあるといえます。

外資の優遇税制による節税

コスト面での海外進出メリットについて説明します。外資に関する奨励制度を活用することができます。

日本貿易振興機構(JETRO)で、詳しく掲載されていますが、各国でそれぞれ奨励業種が定められています。例えば、マレーシアにおける現在の奨励業種は、製造業、農業、観光業(ホテル業を含む)、R&D(研究開発活動)、職業訓練事業、環境保護に資する事業、プリンシパル・ハブ、ICT事業などがあります。こういった業種の場合は、法人税が免税になるといったメリットがあります。様々に条件がありますので、進出先が決まっている場合は是非ご確認ください。まだ進出先のエリアが決まっていない場合にも制度の利用できる国を探してみると、検討材料になります。

コスト削減

海外進出におけるコストは、人件費や材料費だけではありません。移動や調査費用などもかかります。自社のビジネスにとって掛けるべき、削減すべきコストを見極めて適切なコスト削減を目指していく必要があります。

削減できるコストとしては、海外進出はメリットが大いにあるといえます。特に新興国への進出の場合は、経済特区が設けられており生産コストなどを抑えやすいのです。税制面での優遇が受けられ、削減すべきコストは抑えていけるため、適切なコスト削減を目指せるのです。

中小企業の海外進出における課題

中小企業が海外進出をするためには5つの課題があります。販売先の確保、必要資金の確保、信頼できる提携先・アドバイザーの確保、進出先の市場動向・ニーズの把握です。これらを挙げる経営者は多いのです。これらの課題をいかに解決できるかが、海外進出を成功させる鍵です。

世界地図とビジネスマン

販売先の確保

新興国の中国・東南アジアでは、人口増加や先進国の海外資本受け入れにより、めざましい経済発展を遂げています。日本企業では特に製造業の多くが海外進出を目指して動いています。しかし、日本以外の先進国もやはり進出の動きがありますので、製品・サービスの販売先の確保が大きな課題なのです。国内と異なり、世界レベルでの競争に参入しなくてはならなく、取引先から値下げ要請があるリスクも考えられるでしょう。優良な販売先の確保はまず課題になってきます。

為替変動のリスク

販売先の確保に次いで、海外進出においてのリスクは為替変動です。新興国の中国・東南アジアなど、社会情勢が不安定なこともあります。この影響で為替が大きく変動して不利益を被ることが考えられます。さらに、為替変動によって急激な売上増となる場合には、税金額も増大しますので、中小企業にとっては管理すべきリスクです。為替は変動的なものであるため、そのリスクを適切に管理することはなかなか難しいものです。

必要資金の確保

中小企業にとって、海外進出するための必要資金の確保も重要な課題です。日本政府の公的支援金、銀行融資、ベンチャーキャピタルによる出資など、必要資金を確保しなくてはなりません。また、海外での事業展開には、信頼できるパートナー企業やアドバイザーを確保するのも大事ですが、これには時間と資金をかけていくことになります。国内事業の低迷への活路として海外進出を選択する企業も多いですが、足元の業績が不安定だと、コスト削減だけで必要資金を確保することが難しくなります。また、進出後のリスクマネジメントとしても、ある程度の余剰資金を確保しておく必要があります。

信頼できる提携先・アドバイザーの確保

中小企業が海外進出で成功するのには、現地での信頼できるパートナーやアドバイザーの確保が大きなポイントとなります。しかし、国内で探すのとは全く状況が異なります。海外のパートナーやアドバイザーとしての信頼性を見極めるのは難しい課題となるでしょう。自力で探すのは困難なため、まずは進出先のエリアに詳しいコンサルティング企業に相談してみるのがおすすめです。

進出先の市場動向・ニーズの把握

5つ目は、進出先の市場動向・ニーズの把握が課題となります。進出先の国独自の文化、生活習慣、制度の違いにより、日本国内でヒットした製品・サービスだとしても、進出先でも成功するとは限りません。進出先の国のニーズに合わせて「ローカライゼーション」の戦略を練る必要があります。自社の製品・サービスをそのままの形で進出先で販売するのではなく、自社の強みを活かしながらいかに進出先の市場、ニーズに応えるかが重要です。そのために、準備として事業計画、進出先に関する詳しい調査を行う必要があります。

中小企業が海外進出で失敗してしまう原因

中小企業が海外進出で失敗してしまう主な原因を、事前調査不足、グローバル人材の確保・育成不足、人件費の高騰、カントリーリスク、提携先との不和の5つを挙げてご紹介します。

事前調査不足

海外進出は中小企業にとってメリットが大きいものの、準備不足でスタートすると、どこかで失敗しやすくなってしまいます。進出にあたっての準備を十分に行わなかったことにより、例えば、予想よりも大幅にコストがかかってしまうことがあります。資金不足が生じた結果、将来的な回収が難しくなってしまう追加貸付が発生する、といった失敗ケースもあります。事前に、進出先エリアに詳しい調査会社やコンサルティング企業などを利用して調査を行い、計画も現実的なものを立てていく必要があります。

グローバル人材の確保・育成不足

2つ目の失敗要因として、自社に海外進出を担うグローバル人材の不足があります。現地での販売先の確保や市場動向・ニーズの把握はグローバル人材が不可欠です。中小企業は深刻な人手不足、資金調達不足のため、グローバル人材育成の環境をつくりあげるのは容易ではありません。失敗を防ぐためには、海外進出に関わる自社の部署と協力しながら、現地に詳しいコンサルタントや公的機関の活用がおすすめです。長期的な育成環境の構築はもちろん、即戦力としてのグローバル人材の採用、外部機関の利用を検討する必要があります。

人件費の高騰

かつては人件費削減の目的で海外進出する企業が多くありましたが、現在では、特に東南アジア諸国では人件費が上昇している状況です。つまり、以前のような人件費削減効果はあまり得られていないのです。この傾向は今後も続く見通しとなっており、人件費削減を目指して海外進出を検討している企業にとっては、別の面から海外進出の戦略を練る必要があります。

カントリーリスク

「カントリーリスク」とは、進出先の政治・経済の状況の変化によって為替市場などに混乱が生じるリスクのことをいいます。まだ日本では浸透しきっていないカントリーリスクですが、あらかじめ想定することが難しく、海外進出を目指す中小企業にとっての失敗要因としても挙げられます。カントリーリスクでは、その国で起こる自然災害や戦争・テロ・不可抗力などに影響されます。進出先にとって何がきっかけでどんなことが起こるのかを想定し、それに対する対策をあらかじめ決めておくなども失敗を防ぐためには最低限必要でしょう。

提携先との不和

海外進出における失敗要因として、現地提携先との不調和も多く指摘されています。特にアジア地域ではこの傾向があります。提携先との不和要素としては、品質の悪さ、価値観の相違、経営権の問題、人物の調査不足などが報告されています。日本とは違う考え方なのは当たり前ですが、優良な提携先を選びたいものです。スタートさせてから問題にならないよう、事前の調査・準備が大変重要であることがわかります。

海外展開で成功した企業事例

会社としての規模が小さくても、特定の製品・サービスで世界的なシェアを持つ企業は少なくありません。その背景として、日本企業ならではの技術力や情熱があります。海外で成功した企業の事例をご紹介します。

事例①日東建設株式会社

土木建設業者である日東建設は、北海道雄武町に本社を置いています。工事の施工だけでなく非破壊の建築検査機の開発や販売なども行っています。地元の建設事業に従事していた同社が海外展開を決めたのは、2001年「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」が閣議決定され、公共事業の受注が激減したことがきっかけでした。

同社が英語版ウェブサイトを立ち上げたところ、海外からの問い合わせが急増し、2011年からはアメリカ、韓国、台湾、イギリスの展示会・商談会参加や、トルコ・フランスでもトップセールスを行い、販売実績を上げていきました。現在は韓国、米国、台湾をはじめ、ナイジェリア、シンガポールなど6ヶ所に販売店を設置し、注文が入ると本社から郵送、もしくは代理店経由で顧客の元に届くようになっています。

事例②アイオニック株式会社

千葉県に本社を置くアイオニック株式会社が製造している歯ブラシ「KISS YOU」は、間接販売を含めると世界50カ国に広がっています。1991年にオーストリアに輸出、その後アメリカ、ブラジル、中国、台湾、タイなどに進出しています。価格も500円前後とお手頃なのが魅力です。海外でのシェアはタイが一番だといいます。

アイオニックの海外展開の特徴は、柔軟に海外市場のニーズや状況に合わせていることです。中国ではネット販売中心、ブラジルでは歯科医からの問い合わせが多かったため歯医者の歯科材料の一つとしてメーカーを通して販売しています。2017年からは世界の有力な代理店を本社に呼び、グローバルマーケティング会議を開催しており、さらに広がっていきそうな勢いをみせています。

事例③株式会社マブイストーン

沖縄県にあるキャラクターコンテンツ事業会社の株式会社マブイストーンは、2012年に創業した従業員5名の企業です。沖縄発ご当地ヒーロー「琉神マブヤー」を、 各国の風土・文化に対応したヒーローとして改訂し、現地でのTV放映やグッズ・DVD販売に繋げる仕事など手掛けてきました。上海フィルムマートに初出展させたのがきっかけで、海外進出をすることとなりました。現地での交渉や契約を単独で行ったため、スキームが出来上がるまでは非常に苦労したものの、国際弁護士を始めとする専門家からの協力もあり、海外進出を成功できたといいます。中国の他に、マレーシアへも販路開拓を実施しました。事前の現地調査を綿密に行い、現地向けにカスタマイズしたストーリーを制作することができ、マレーシアでも成功しています。

海外展開支援施策や制度を活用しよう

中小企業の海外進出には、行政機関の海外展開支援施策や制度の活用をおすすめします。経済産業庁の国内・海外販路開拓強化支援事業では、地域経済の活性化を図るため、地域資源の活用や中小企業者と農林漁業者の連携による新商品・サービスの開発や販路開拓を支援しています。

JETROの新輸出大国コンソーシアムでは、海外展開を目指す企業向けのコンシェルジュが日本全国に配置されており、コンシェルジュが各分野の専門家や各分野の専門機関との橋渡しをしてくれる仕組みとなっています。海外展開の費用援助を受けられたり、最小限の費用でサポートを受けることができますので、是非活用してみてください。

https://www.chubu.meti.go.jp/c81katsuyou/index.html

https://www.jetro.go.jp/consortium/

まとめ

中小企業の海外進出について、様々な面からご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?最近ではコロナショックで海外マーケットがどのように変化するのかわからないということもあるでしょう。

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