日本企業の海外進出は年々増加傾向にあります。かつては製造業が海外へ工場を移して人件費削減を狙う、といった企業が多かったですが、近年では卸売業やサービス、IT・通信など幅広い業種の企業が海外進出を行っています。
海外進出をする上では、業界ごとに海外進出に向いている国・そうでない国を考えることが必要です。またメリット・デメリットを含めて、海外進出を成功させるためのポイントを事前に知っておくとよいでしょう。
日本企業が海外進出をする理由

いまでは大企業だけではなく、中小・ベンチャー企業も海外進出をする企業が増えています。日本企業が海外進出をなぜ行うのか、以下3点に関してご紹介します。
- 新たな市場開拓
- グローバル競争において生き残るため
- 生産拠点を海外へ移転
新たな市場開拓
国内は少子高齢化や人口減少により市場の縮小が予想されるため、今後事業を継続・販路拡大を目指すには海外に目を向けるべきです。例えば人口増加や経済成長が見込まれる東南アジアやアフリカ諸国の新興国は、GDPが増加傾向にあり消費者の購買能力も上昇しているため、事業拡大の可能性は大いにあるでしょう。
また東アジア圏や米国への進出なども人気があります。 日本国内だけでなくグローバルに事業展開をしていくことで、自社商材のマーケットを広く獲得していくことができます。
グローバル競争において生き残るため
世界で事業展開をしている企業はマーケティングや経営戦略が非常に強いです。ですので国内だけを視野に入れていると、もし海外企業が経営資源を多く割いて国内市場に参入された際に負けてしまう可能性があります。さまざまな業界において日本企業の技術力は高く評価されており、今後勝ち残っていくためには、グローバル市場に目を向けてビジネスを展開する必要があります。
生産拠点を海外へ移転
生産コストや人件費を抑えるために、海外へ生産拠点や工場を移す企業も増えています。また日本よりも税率が低い国に進出をすることによって、税制優遇の観点から海外進出する日本企業も多くあります。市場開拓先に伴い、生産コストや人件費が低く見受けられる東南アジア諸国へ生産拠点を移転するケースが増えています。東南アジア諸国は経済特区制度を設けている国も多いので、税制面で優遇がされやすいです。
海外進出のメリット
海外進出のメリットとして、以下4点をご紹介します。

- より大きな市場を求めて販路開拓できる
- 材料費や人件費、税金などのコストを削減できる
- 企業やブランドイメージの向上
- 新しい商品やサービスの開発が見込める
より大きな市場を求めて販路開拓できる
少子高齢化や人口減少が深刻化する日本は市場が縮小していきますが、世界全体の市場に目を向けた場合、新興国を中心に人口は増加傾向にあり市場の拡大が期待されています。 また、日本国内の成熟産業などは競合会社でひしめき合っており、レッドオーシャン化している現状も少なくありません。海外ではその製品・サービスはまだ未開発な場合も多く、海外市場に販路開拓をすることで売上拡大を見込むことができます。 そして国内では、市場縮小に伴い製品やサービスの幅を広げ多角経営をしている企業も多いですが、海外市場に販路を広げることで、ひとつの製品・サービスのみに事業を集中することで利益拡大を狙うことができます。
材料費や人件費、税金などのコストを削減できる
原材料費が国内よりも比較的安い発展途上国への進出をすることで、コスト削減を図ることができます。海外で販路開拓の見込みがあり、日本よりも材料費が低い国に進出をすることでより多くの利益獲得ができる可能性もあります。 人件費に関しても発展途上国やアジア圏の新興国に進出をすることで、ある程度のコスト削減が見込めます。
例えば東南アジアなどIT人材の例ですと、技術力が高く多言語を話すことができる人材も多く、人件費を抑えながら優秀な海外人材を獲得できるという点でメリットは大きいでしょう。 法人税率や税制優遇など、税金面でのメリットもあります。日本の法人税率は少々高い印象がありますが、アジア圏の各国など日本よりも法人税率が低い国も見受けられます。また外国企業の誘致のために経済特区を設けて、税制優遇を受けられる国もあります。
企業・ブランドイメージの向上
国内だけではなくグローバル事業展開をすることは、自社にとって大変価値のある経験やノウハウを得ることができます。海外ビジネスを軌道に乗ることができれば、自社商材のマーケットを獲得・拡大していくことができます。それが自社の強みとして他社との差別化にもなり、企業価値・ブランドイメージの向上に繋がることでしょう。
海外ビジネスによる売上拡大を図りつつ、国内と海外で経験やノウハウを共存していき、自社のブランディングを確立していきましょう。
新しい商品やサービスの開発が見込める
文化や風習などが異なる日本と海外では、現地人の意見を取り入れたり文化風習を理解したりすることで新たな商品のアイデア発想やサービス開発が見込めるでしょう。また一般的に現地のビジネスパートナーや企業との事業提携などを通じて、海外ビジネスを推進していくことも多いです。そこで触れたノウハウを融合することによっても自社にとって新たな発見があると思います。今度はそれを日本国内においても新しい商品・サービス展開を狙っていけば、自社の企業価値・ブランドイメージ向上にも繋がって会社として良い方向に向かうはずです。 海外進出をすることにより、海外事業だけではなく国内の既存事業に関しても良い相乗効果が期待できます。
海外進出のデメリット
海外進出のデメリットとしては、下記などが挙げられます。
- 人材のマネジメントや育成にコストがかかる
- 人件費が上がる可能性がある
- カントリーリスク
- 法規制による参入障壁
- 文化や価値観を理解する必要がある
人材のマネジメントや育成にコストがかかる
現地で海外人材を雇用するに当たって、注意すべき点がいくつかあります。決まった出社時間に出社をしない人や、採用してもすぐに離職してしまうケースも少なくありません。日本も転職をすることが当たり前になりつつありますが、海外では日本以上に人材が流動的であり、待遇面でより良い会社があれば転職してしまうというのも一般的です。人材定着のために自社のビジョンを理解してもらったり、本人のスキルアップや昇進などマネジメントや人材育成にコストがかかることもあらかじめ認識しておきましょう。 社内人材を現地駐在させたい場合も、日本以上に数多くの手当などが発生しますのでコストがかかります。海外ビジネス経験のある人を選出できれば良いですが、もし社内にいない場合は新たに人材を雇用する必要も出てくるため労力がかかります。
人件費が上がる可能性がある
安い労働力を求めて海外進出をしていた日本企業も以前は多くありましたが、今後は同じような目的で進出するのは難しくなってくるでしょう。これまで中国の生産拠点などは人件費が低く大量生産も行ってきましたが、ここ数年で賃金上昇が何倍にもなっています。
最近では東南アジアなどの新興国やアメリカにおいて、賃金上昇の流れがシフトしてきています。 ですが異なった見方をすれば、人件費が上がるということは現地労働者の購買力が高まるということにもなりますので、将来的な顧客単価の上昇に繋がる可能性があり、メリットがあるとも感じられます。
カントリーリスク
カントリーリスクとは、進出先の国や地域において政治・経済状況の変化によって、為替変動があった場合に資産価値が変動するリスクを意味します。
新興国や発展途上国などは政治・経済情勢が不安定なところも多く、為替変動の可能性が高いので海外進出時には注意が必要です。場合によっては、債務不履行により国の経済が破綻してしまうこともあり得ます。 事前に為替レートと数量を予約する為替予約をすることで、為替変動リスクを回避することはできます。ただ業種によっては外資比率などが決められているケースもあるため、事前確認をしっかり行いましょう。
法規制による参入障壁
現地国の制度や法規制によっては海外進出のハードルが高くなってしまいます。近年では例えば、エネルギー・インフラ関連の業種は外資系の新規参入が難しくなっています。飲食や小売業などでは外資比率に規制があり、出店審査が通らないケースもあります。主に製造業以外の業種が何らかの規制によって、海外進出に対する参入障壁が高くなってしまうケースが目立ちます。 その他、商標権や特許権、食品関係であれば農薬規制など業種によって特有の規制もありますので、事前に確認すべきところです。
文化や価値観を理解する必要がある
国が違えば言語の違いをはじめ、文化や価値観、ビジネスマナー、一般常識、嗜好など日本と異なるものが多いです。それらの相違からその国に対しての理解がないと思われると、悪い場合、そのエリアで海外ビジネスを今後展開できなくなる恐れがあるくらい商習慣を理解することはとても大切です。
国によっては、例えば宗教の習慣がビジネス活動にも大きく関わっており、1日に数回のお祈りの時間が必要であったり、食事面への配慮は不可欠です。 その国の文化や価値観、商習慣を理解することが、顧客との良い信頼関係を築くことにも繋がります。
海外出張などビジネス習慣においても注意をしましょう。例えば名刺交換は日本においてビジネスマナーとして重んじられていますが、海外では名刺交換に対してさほど重要ではなかったりします。また国内のBtoBビジネスの場合、社内承認など最終意思決定まで時間がかかることもありますが、海外では迅速な決断が求められることが多いです。
海外進出を成功させるためには?

海外進出を成功させるためには、以下の点に着目をすることが大切です。
- 市場(マーケット)を知ること
- 経済状況、物価を把握すること
- どのようなものを求めているのか、顧客(ユーザー)を知ること
市場(マーケット)を知る
海外で販売先があるのか、競合製品はあるのかといった海外市場をよく知ることは、海外進出をするに当たって必要不可欠です。また日本との市場比較や類似マーケットと比較をすることで、市場規模感やポジショニングを把握することができ、海外の事業戦略や売上予測などに役立てることができ、海外進出成功の一助となるでしょう。
経済状況、物価を把握する
海外進出をするに当たって事前調査することは数多くありますが、その中でも進出国の経済状況を把握することは重要度がとても高いです。経済状況を把握する際には、物価も大きな指標となります。例えば飲食や小売業を出店するにあたり、現地の物価が売上に直結するといっても過言ではありませんので、経済状況や物価について事前に確認をしておきましょう。
顧客(ユーザー)を知る
海外と日本では文化やライフスタイルが異なるため、現地のニーズに合った製品やサービスを提供するよう検討しましょう。現地国のことをよく知りどのようなものを求めているかを把握することで、現地の人たちの心を掴み、海外事業が軌道に乗っていくことでしょう。
海外進出は進出先の国に合わせた戦略が必要
日本で売れているものをそのまま海外で売ろうとしても通用しないことが多いです。国が違えば文化や風習、ニーズ、価値観などがそれぞれ異なりますので、進出先の国に合わせた戦略が必要です。海外進出を検討する際は、進出国の事情をよく調査したうえでどう製品やサービスを提供していくか、入念に戦略を立てましょう。
まとめ
新たな市場開拓による事業拡大やコスト削減などを求めて、海外進出を目指す日本企業が増えています。しかし海外進出をする際にデメリット面も考慮しなければなりません。 多くの外部要因が伴う海外進出を成功させるためには、海外市場調査・海外調査がとても大切です。
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